2013年6月27日木曜日

第17回TPP交渉会合でどんな進展があったのか!?─ペルー会合におけるステークホルダー会議の一端を公開

第17回TPP交渉会合がペルーの首都リマで5月15〜24日に開催され、利害関係者(ステークホルダー)向けの説明会が開かれました。

「STOP TPP!! 市民アクション」 が関わる国際ネットワークが共有したステークホルダー会議のメモを翻訳しました。

知財保護について米国からの新たな提案があったのかとの質問への回答や、米国議会でのTPA(貿易促進権限)をめぐる質疑などが興味深いものがあります。(翻訳:清水亮子/監修:廣内かおり)

  * * * * *

TPP上級交渉官による説明会からのメモ
リマ(ペルー) 2013年5月19日

【主催国ペルーによる冒頭の説明】
交渉5日目。公式代表700名、利害関係者300名、報道関係者200名、利害関係者フォーラムでは、50の発表が行われる大規模な会合。

2013年内の決着にむけた作業について、各大臣からの新たな支持を取り付けた。APEC会合の合間を使って年内決着するため、首脳らも懸命に計画を練った。

【大きな進展のあった分野】
 衛生植物防疫(SPS)、電子商取引、法的及び制度的問題
【本日開始の分野】
 貿易の技術的障壁(TBT)、投資、労働、その他
【課題が残る分野】
 知的財産権(IP)、環境、競争
【時間が必要な分野】
 モノ、サービスの市場アクセス、投資

今週は建設的議論が行われた。会合の継続とともに、二国間会合の前進が見込まれる。

質問:米国は医薬品について、新しい知的財産権IPの条文を提案したか?

米国:
医薬品と特許問題は議論が始まったばかり。新しい条文は提案されていない。(米国内)内部で実施している審議を続けていくなかで、この会合での議論に反映できればと考えている。政府はこの問題を重要視している。達成目標も複数ある。

質問:米国の提案に対する影響調査について触れていたが、医薬品への市場参入影響が9,000万ドルというものだった。各国政府も米国提案について同様の影響調査を行っているか?

ペルー:
それぞれの提案をペルーの観点から注意深く分析している。情報を共有し、他の大臣たちと協力している。良い影響を指摘する研究もある。

質問:金融サービスについて及び、貿易と金融サービスとの関係について得た教訓に関する質問。米国上院銀行委員会の委員、エリザベス・ワレン上院議員が先日、上院銀行公聴会で「ウォールストリート(※金融関連企業)がTPPや環大西洋貿易投資パートナーシップを利用して、トッド・フランク法(2010年に成立した濫用的金融サービス実務から消費者を保護するための法律)を骨抜きにしようとしていることに対して、不満が高まっている。言い換えれば、公衆の面前ではできないことを、貿易協定を通して静かにやろうとしている」と語っている。これは、過去のFTAのルールが金融規制を制限する可能性についての懸念が高まっていることと軌を一にしている。過去のFTAに該当する章の中で、金融再規制が骨抜きにならないようにというワレン上院議員の懸念を考慮して変更が加えられている部分はどこか。

米国:
議会と協力して金融サービスの取組みを監視しているので、我々が行なっていることは金融政策を制限する米国の法律に抵触することはない。

議会とはすべての提案について、密に連絡を取り合っている。最高裁判決など最近の決定について、いくつかはここで話し合われるだろう。米国政府の立場などについても。

質問:TPPはタバコ会社に対して、喫煙規制の主権を侵害する道を与えることにならないか

ペルー:
既存の多国間協定であるFCTC(たばこの規制に関する枠組条約)と協力し、ここでの作業について多くの情報を得ている。我々には、ここでの決定を他の国際協定の取り決めと整合させる義務がある。ペルーについて言えば、政府は正当な目的のためなら規制する権利があり、それはタバコだけでなく、他の分野でも同様である。

ニュージーランド:
TPPのルールで定めていることは、政府が公益のために規制する能力をきちんと維持できるようにすることだ。金融サービスについては慎重な措置、そして健康についても。

質問:なぜインターネット問題をTPPから切り離さないのか。SOPA/PIPAについては大きな抵抗があった。SOPA著作権保護法(Stop Online Private Act)/PIPA知財保護法(Protect IP Act)やACTA模倣品・海賊版防止条約(Anti-Counterfeiting Trade Agreement)のような提案について、どのような交渉をしているのか?

ペルー:
現在17回目の会合だ。すべての問題を1つにまとめられるのか、どの問題がどの章で扱われるべきか?全体像を見失わないことが大切。

ACTA/SOPAに関し、ペルーの観点では、これはTPPに関わる問題。ペルー代表は自国の法律や国際的取り決めとの整合性をとるよう作業にあたっている。

質問:TPPとTPPの非常に野心的な目標を大いに支持している。TPPが域内の貿易環境を整えてくれることを期待している。なぜ多国間交渉ではなく、二国間交渉なのか。日本が参加する前に野心的な市場アクセス、そして事前に表明している重要事項について(※メモが途切れているため内容不明)

カナダ:
TPPは我々にとってカギとなる。その理由の1つは野心の水準が高いこと。設定されている目標は非常に重要だ。もうひとつの要素は、TPPが地域内協定であること。地域の結びつきによって二国間のFTA以上の便益がある。どうすれば我々はそのプロセスに到達することができるのか。各国がどのように現状からそこに至るのかは、その時点でのさまざまな力学の作用の結果である。

日本はカナダ、メキシコと同じように、TPPのパートナーたちに対して前向きなシグナルを発したと思う。確実なのは、日本が加盟する時に交渉がどこまで進んでいるかに関わらず、日本はそれを受け入れるということだ。

質問:米国議会の通商政策に関する権限委任の異常さや、共和党がオバマ大統領へのファストトラック権限(個別賛否でなく一括採決を前提に交渉)の付与に積極的ではないことを考える時、米国のような、幅広い権限を特別に委任されないままで、交渉にどのような影響が出ると、上級交渉官たちは見ているのか。

ペルー:
私はいつもペルーの内政を尊重するよう他の国々にお願いしている。よって米国の内政についてはコメントを控える。

ニュージーランド:
我々はみな、政府を代表して交渉にあたっている。我々の交渉結果もニュージーランド議会を通る必要がある。

米国:
TPA(貿易促進権限Trade Promotion Act:ファストトラック)発動に関する視点を出していただいたことに感謝する。議会で議論が始まったのはついこの前のことだ。ファストトラックについてのあなたの評価には同意しかねるが。

質問:スケジュールについて

ペルー:
新たにTPP参加各国の大臣たちから支持を得た。今年中の決着を目指す。共通の土台を模索し、すべての作業を終えるようと努力している。

質問:交渉妥結までに日本以外の国が参加を承認される可能性は?

ペルー:
日本が交渉に参加することについては合意が得られた。各国には、日本加盟に向けてそれぞれの国内手続きがある。次の会合については、今会合の最後には分かるだろう。(質問には回答せず)

質問:電話の利用者が電話のロックを解除できるかどうかに関する質問

米国(多分メモをとっていない?):
デジタル著作権法は、(米国の)いくつかのFTAには反映されている。TPPでは様々な利害があり、均衡点を模索中。デジタル経済の枠組みを発展させようとしている。デジタル経済から得られるプラス面を拡大し、同時に、マイナス面からの保護も考えなければならない。政策空間を整えるよう努力している。

(翻訳:清水亮子/監修:廣内かおり)

2013年6月10日月曜日

「TPPをとめる!5.30国際シンポジウム─韓米FTA・NAFTAからの警告」が開催されました!

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「STOP TPP!! 市民アクション」が協力した国際的な集会「TPPをとめる!5.30国際シンポジウム─韓米FTA・NAFTAからの警告」(主催:TPPに反対する人々の運動/TPPを考える国民会議)は、5月30日東京都内で開かれ、市民など約100名が参加しました。(写真:TPPに反対する人々の運動)

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ジェーン・ケルシーさん

ジェーン・ケルシーさん(ニュージーランド・オークランド大学)がはじめに登壇し、「TPPを推進したい人びとは『TPPは、21世紀型の協定だ』と言うけれど、モンサント、シティバンク、ファイザー、ハリーウッドなど、自分たちこそがこの世界を支配する権利があると信じている大企業のための21世紀にほかなりません。少なくともわたしたち(ピープル)にとっての21世紀ではありません。食の主権、気候変動問題、貧困や雇用不安、乱高下する金融市場に対応する21世紀ではないのです」と言いました。

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朴錫運さん

金鐘佑さん(韓国・弁護士)の他に、韓米FTAに反対する国民運動本部の共同代表を務めている朴錫運さん(韓国)が、韓国でのFTA反対運動の経過を説明したうえで、「単純な経済協定ではなく、韓国の法律体系を米国化するものだ」と同FTAを批判。「TPPも本質は同じで、日本の主権が侵される」と述べました。

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権寧勤副理事長

また、「韓国農漁村社会研究所」の権寧勤副理事長(韓国)は、「韓米FTAによって今後、食料自給率が低下し、世界の飢餓問題をより深刻化させる。アジアとアメリカの農業体系は違う。水田は生物多様性を守っている」など、農業の大切さを訴えました。

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マリカルメン・リャマス・モンテスさん

さらに、20年前に、米国とカナダ、メキシコの間で締結された「北米自由貿易協定」(NAFTA)の問題を追求している、メキシコの労働組合活動者のマリカルメン・リャマスさんが、「NAFTAによって多くの分野の人々が影響を被った。労働者の実質所得は低下し、かつては一家は1人の労働で賄えたものが、今では3人が働かないと食べていけない。農産物価格も米国からの輸入で半分に下がり、農家は失業した」と、その厳しい現実を報告しました。

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海外ゲストとともに登壇した新潟の農家・天明伸浩さん(TPPに反対する人々の運動共同代表)

シンポジウムでは、これから各国の現状や情報を共有し合い、「TPPに象徴される新自由主義に基づくグローバリゼーションに対抗する運動も地域に根ざし、国境を超えてつながろう」と、アピールを確認しました(原文は記事後半)。

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by ユープラン

なお、海外ゲストは東京でのシンポに前後して、北海道、山形、新潟、栃木、愛知、大阪、鳥取、福岡、鹿児島、沖縄で、それぞれ集会に参加してTPPの問題を訴えました。

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★ ☆ 集会アピール ☆ ★

今日2013年5月30日、私たちはこの場に寄り合い、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が人びとの日々の営みに何をもたらすのか、をめぐって話し合いました。メキシコ、韓国、ニュージーランドからのゲストに、日本のコメ作り百姓が加わっての話し合いを通して、私たちはTPPの本質を分かち合うことができました。
NAFTA(北米自由貿易協定)、韓米FTA(韓国米国間自由貿易協定)、TPPと続く新自由主義に基づくグローバリゼーションは、その地に住み、働く大多数の人びとの生存の条件を破壊し、“平和におだやかに生きる権利”を奪います。そこでの主役は、巨大化し、地球規模で動きまわる多国籍資本です。日本企業も他ではありません。
そして、日本政府はいま、そのTPP交渉参加を決定しました。
今日の寄り合いで私たちが得ることができたもっとも大事なことは、”生きる権利”の破壊は国境を越え、圧倒的多数の人びとの上に襲いかかるということです。そうだとすると、TPPに象徴される新自由主義に基づくグローバリゼーションに対抗する運動も、地域に根差しそして国境を越えてつながる大きな渦をつくりださなければなりません。
このことを今日の寄り合いで得た共通の思いとして分かち合いたいと思います。TPPに対抗し、国家を超え、国境をまたぐ人びとの運動の大きな渦をつくりだすために動き出しましょう。

2013年5月30日
「TPPをとめる!5.30国際シンポジウム」参加者一同

Statement

Today, the thirtieth day of May, we gathered and talked about what the Trans Pacific Partnership Agreement (TPP) would bring to the daily livelihood of ordinary people. Through the discussion among overseas speakers from Korea, Mexico and New Zealand, and a Japanese expert rice grower, we learned and shared the essence of the TPP.

Neo-liberalistic globalization represented by a series of FTAs such as North American Free Trade Agreement (NAFTA), Korea/US Free Trade Agreement (KORUS FTA) and TPP destroys basics of lives of most people living and working in the community, and deprives them of their rights to live in peace and gentleness. The leading figures in the arena are multinational corporations who have grown gigantic and swagger everywhere in this world. Japanese corporations are no exceptions.

And, now, Japan has decided to join the TPP negotiation.

We, on our part, learned today among others that powers who destroy our “right to live” move across borders and attack an overwhelming majority of ordinary people. Therefore, our movements to oppose to the neo-liberalistic globalization represented by the TPP should take steadfast root in the community and create a vortex of people’s linkage across the border.
We would like to share this resolution as what we mutually learned today. Let us take a step forward to create a vortex of people’s movement which opposes to the TPP, transcends nations and go across borders,

30 May, 2013
STOP TPP !! 5.30 International Symposium

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Organized by;
National Conference to Consider the TPP
People’s Action against TPP

2013年5月25日土曜日

5月25日に「TPP参加をとめる!5.25大集会」が芝公園にて開催!

4月2日に「TPP参加をとめる!院内対話集会」を開催しました。その次の展開として、5月25日に集会が開催されます。「STOP TPP!! 市民アクション」では5月25日に「TPP参加をとめる!5.25大集会」を開催することになりました。

【チラシ】

※クリックするとpdfチラシをダウンロードできます。

【とき】
5月25日(土)12:00〜16:00(詳細は以下)

【ところ】
芝公園23号地(最寄り駅、地下鉄三田線「御成門」駅) 

http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/map001.html

【予定】
1.プレ集会 12:00~(TPP反対の文化イベントを予定)
2,大集会  12:30~1時間程度「集会」
3,デモ行進 13:45~(全体終了16:00の予定)
(銀座を通り東京駅横・鍛冶橋駐車場解散予定)

3月15日に安倍首相が行った公約破りのTPP交渉参加表明に続き、4月12日に発表された、TPP交渉参加にむけた事前協議の「日米合意」は、包括的で高い水準の協定を達成するという「TPPの輪郭」を改めて確認するとともに、アメリカの要求を丸呑みするだけという内容です。これでは、安倍自公内閣が言うところの「国益を守る」どころか、国民のくらしやいのち、食の安全、雇用や地域経済などが壊され、国の主権までもが脅かされることが、いよいよはっきりしてきました。
交渉に参加してしまえば、TPPの秘密主義で、交渉の中身をあれこれを持ち出して途中離脱はあり得ません。まだ遅くはありません。参加表明を撤回し、TPP交渉への参加を止めるべきです。
私たちは、これまでも多くの団体・個人の思いを集め、国際的な連携も進めながら、TPP交渉参加反対の運動を進めてきました。参議院選挙を前にしたいま、安倍内閣にTPP交渉参加を断念させるため、標記「TPP参加をとめる!5.25大集会」をよびかけることとしました。
TPP交渉参加に反対するすべての人たちの力で集会を大成功させ、政府や財界、アメリカのねらいにストップをかけるため、ぜひみなさま方におかれましても、「TPP参加をとめる!5.25大集会」の趣旨にご賛同いただくとともに、たくさんの方々にご参加いただけますようお願い申し上げます。




【賛同・出席】
賛同・出席は以下のフォームにてお申し込み下さい。
http://my.formman.com/form/pc/T8lk1dGveIYMlDnS/

※締めきりました!

【集会名】
「TPP参加をとめる!5.25大集会」

【よびかけ】
STOP TPP!! 市民アクション

【趣旨】
安倍首相の参加表明があったものの、国民のいのちや暮らし、雇用、地域を壊し、主権をも脅かすというTPPの危険性や秘密主義が明らかになるにつれて、「交渉参加反対」「自民党の公約違反は許されない」の声はさらに高まっています。この声を参議院選挙に向けて社会的にアピールするため、市民、さまざまな団体、超党派の国会議員、さらには地方でTPP交渉参加反対運動をすすめているすべての団体、個人にも広く呼びかけて開催します。
集会では、今の情勢を共有し、さらに確信を持ってたたかいをすすめられるようにすることにも留意したものにします。

【主な内容】
①各界・各分野からの決意表明
②超党派国会議員の挨拶

【参加のよびかけ】
(1)さまざまな階層や地域の声が反映された集会となるように企画します。「開催の趣旨」への賛同と「非暴力を貫くこと」を原則に、多くの団体へ賛同と参加を呼びかけます。
(2)銀座デモでは、私たちの主張が市民によく分かるように、プラカードや横断幕を準備するなど、大いに工夫しましょう。

【財政】
カンパでまかなうことを基本とします。カンパにご協力頂ける団体は、下記口座へお振り込み頂くとともに、会計担当(近藤)へ送金の旨メールをお送り下さい。
(1)口座番号:ゆうちょ銀行 名義「STOP TPP!! 市民アクション」
*ゆうちょ銀行から振り込む場合:記号10050 番号69005641
*他の金融機関から振り込む場合:店名〇〇八(ゼロゼロハチ) 店番008 普通預金口座6900564      
(2)会計担当近藤メールアドレス:mkykondo【a】ybb.ne.jp(【a】を@に変えて送信下さい ※迷惑メール対策の都合上)

【事務局連絡先】
国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館内
電話:03-3372-6112 FAX:03-3370-8329
Eメール:center【a】shokkenren.jp(【a】を@に変えて送信下さい ※迷惑メール対策の都合上)

2013年5月18日土曜日

ISD条項よりも問題?!──リーク翻訳から見える「Regulatory Coherence(規制の内外調和)」の実態

「Regulatory Coherence(規制の内外調和)」についてのリーク情報です。これは、日本でも問題視されている「ISDS」や「Transparency」と共にTPPの本質を代表する項目です。じっくり読むととんでもないことが書いてあります(訳語が一定していませんが、ここでは“規制の内外調和”としておきます)。また、TPPにおける非公開性・秘密主義がどのように取り扱われているかが、冒頭の文章で分かります。

★ ★ ★

環太平洋パートナーシップ(TPP)
─ 規制の内外調和 ─

発出元:2010年3月4日付 機密指針

論拠:1.4(b)
機密扱いからの除外:TPP発効4年後、発効しなかった場合には交渉終了後4年後
*この文書は了解なく公表することはできない。しかし、郵送、もしくは機密扱外のeメール、ファクシミリ、盗聴防止機能のない電話での会話でやりとりされ、機密保護されていないPCへの保存は可能。資料はセキュリティの効いた建物、部屋、もしくは保管庫に施錠管理されること。

【規制の内外調和】

第Ⅹ.1章:
一般条項

1.規制の内外調和には以下のものが含まれる:
(TPP加盟国は規制の内外調和の定義に対する適切な範囲に関する検討を深めること)

2.加盟国(団体)は以下の重要性を認める:
a.規制の内外調和に関する条項、特に、加盟国間における、物品の貿易、サービス、投資の促進に関するものについて、本協定による恩恵を保つこと、
b.各国が妥当と認識する水準において、加盟国が規制上の優越事項を特定し、この優越事項に対応する規制措置を確立および行使する国家としての自主権、(※注1)

※注1.この文言は、加盟国の権利を規定する協定の前書きに記載されるべきか、または正当な目的を追求するうえでの各国の規制の権利に関する指針として別の章のなかで追記するか、再度見直しが必要とされる可能性がある。

c.この規制が公共政策の目的、つまり環境保護、労働権、市民や労働者の健康と安全を達成するために果たす役割、
d.規制措置を策定、遂行する上での幅広い利害関係者の参加、
e.加盟国の国際的な義務を考慮に入れた地域の規制協力。

第Ⅹ.2章
国家レベルの調整機関を含む、調整および検証の手順や仕組みを持つ中心的機関の設立

1.規制の内外調和とは、一般的に適用される規制措置を構築するための手順について、関係閣僚間の協議と調整を促す国内の仕組みを通して促進されるということを、加盟国は認めている。さらに加盟国は、規制措置に関する情報が確実に一元管理され、広く頒布されることによって、規制事項に関する加盟国間の関与が高まることを認識している。それゆえ、各国は、中央政府のレベルで新たな規制措置(”対象となる規制措置”)の一元的な調整と検証を促進するための手順または仕組みを確実に備えるよう努力すること。そして、この目的を達成するための国の調整機関の設立および管理を検討すること。各加盟国は、法律、条令、その他の手段のいずれかに関わらず、公表されている基準を基に、対象となる規制措置の範囲を決定すること。各加盟国が独自に対象となる規制措置の適切な範囲を決定してしまう可能性はあるが、その際は必ず、本章の適用を回避する目的で任意に範囲を制限することなく、十分に広い範囲を定めること。

国の調整機関またはその他の適切な手順または仕組みの設計、権限の範囲、制度上の位置づけなどが、各国の国内事情(発展段階および政治的、制度的構造の違いを含む)によって様々であることは予測されるものの、X2.1にて言及した調整機関、手順または仕組みは、概して、制度上の一貫性を促進させるために最大の効果を発揮できる一定の共通する特徴を有するべきであることを、加盟国は認める。その特徴は以下のとおり:

a.制度上の構成要素を定め、政府と外部関係者の信頼に足る十分な資源と地位が付与されていることを証明する法的、行政的公文書があること、
b.策定した措置により、以下のX.3章に規定された内容を含むがそれに限定されない
良い規制慣行がどの程度行われるかを判断するために、対象の規制措置を見直し、その見直しに基づいて提案する権限があること、
c.本協定のX章に盛り込まれた透明性の規律を促進する重要な役割を果たすこと、
d.省庁間の重複、反復を可能な限り減らし、省庁間で相反する要求が出ないようにするために、各省庁間の調整と協議を強化し、また、特定の規制分野に関心のある省庁に対し規制策定への参加を促して、一貫性のある規制の促進を保証する能力があること、 
e.決定権を持つ者に対して、構造的な規制改革を行うための提案能力があること、
f.検証した規制措置、構造的規制改革に対するあらゆる提案事項について、本調整機関自身の制度的改善に関する最新情報を含め、定期的に活動を報告すること。

3.国の調整機関、手順、仕組みを通じて、各加盟国は、(i)規制措置の策定に関して検証責任を持たない中央政府レベルのすべての規制当局、および(ii)各加盟国の領土内における、関連の準政府機関との連絡経路を維持する方法を、可能且つ適切な範囲で模索すること。

第Ⅹ.3:核心的な良い規制慣行の履行
1.国の調整機関、手続き、仕組みを通じ、各国は、対象となる規制措置の検証責任の遂行において、加盟国の目的を達成するためにもっとも良い措置を考案するため、各国によって設定された経済影響評価の限界を超える対象の規制措置を講じる場合は、国内法に準じて、規制影響評価の実施を行うよう関連当局を後押しすること。

a. RIA規制影響分析Regulatory Impact Analysisは、特に以下を確認すること:
(1)課題の重要性の評価と規制行動の必要性の説明を含め、規制当局が対応しようとする課題と政策目標、 
(2)政策目標を実現するための、潜在的に効果があり、且つ妥当な実現可能性を持つ
代案、
(3)該当する場合、選択された代案が、波及効果を考慮する一方、質的な利益を含む純利益を最大化する方法で、政策目標を実現すると結論づける理由。
b.規制影響評価には以下が含まれること
(1)計画された規制措置のあらゆる面において、政策目標達成のために規制する必要があるか、または国内法に準じて、規制によらず/自発的な方法で政策目標を達成できるか否かの検討。
(2)負担や利益は数量化することが難しいことを理解しつつ、実現可能性があり国内法に反しない範囲内での、可能な各代替案の費用と利益の評価。代替案のなかには、規制しないという選択肢を含む。
(3)その選択肢が他の代替案より優れている理由の説明。該当する場合は、可能な他の選択肢に対する純利益の規模の比較を提出すること。
(4)特定の規制当局が持つ権限、責務、資源の範囲内で、もっとも合理的に取得可能な、科学的、技術的、経済的その他の情報を基にした決定事項。

2.「純利益」とは、計画された規制活動による予想上の利益と費用との差である

2.加盟国は、RIA分析に関連する可能性のあるこれらとその他の「良い規制慣行」の概念が、APEC-OECD規制改革統合チェックリストおよび技術的規制のための良い規制慣行に関するAPEC情報記録に反映されることを認める。

3.加盟国は、技術的な事項に対応する規制措置のなかに、その措置を理解し、適用するには関連分野の専門性が必要になる場合があることを認識し、対象となる規制措置が簡潔明瞭、且つ整理され、理解しやすいものになることを保証すること。

4.各加盟国は、本協定第Ⅹ章に規定された透明性の規律に従い、関連する規制当局が、
対象となる規制措置、規制の分析、データおよびその捕捉資料を誰でも入手できるようにし、場合によっては、こうした情報を閲覧、再発行できるようオンライン上に掲示することを保証すること。

5.各加盟国は、政策目的を達成するためのより効果的な規制制度を作るため、具体的な
規制措置について、修正、簡素化、拡大、廃止が必要かどうかを決めるため、適切な頻度で、既存の重要な規制措置の一部またはすべてを検証する手続きを確立または維持すること。
加盟国が規制上の手段を見直す際に考慮すべき項目には、基本的な技術変化など環境の変化により措置が不要になったり、時代遅れとなっていないか、また規制での協力活動や規制の拡大を通してその効果が高められるものはないか、などが含まれる。

6.各加盟国は、規制当局によって今後最低12か月以内の発行が妥当と思われる規制措
置の記載を含む、規制予定報告書を毎年発行すること。

7.各加盟国は、対象となる規制措置に関して他の加盟国間および各関係者間をうまく協力させるためのあらゆる方法を検討すること。その一部は以下のとおり。

a.他の加盟国との情報交換、対話、会議
b.他の加盟国および中小企業を含む利害関係者との情報交換、対話、会議
c.他の加盟国との規制活動の協調
d.最良の方法を共有し、また、関連する規制手法、基準、手続きを調和させる取り組みへの参加、および、規制措置の策定過程におけるそうした取り組みの検討
e.他の加盟国の規制手法、および国内法に反しない適切な範囲内での、国際的、地域的、その他の協議の場における進捗を検討するのに十分な時間を確保した規制スケジュールへの配慮

第Ⅹ.4章:
セクター方式による取組み
加盟国は、本協定の他の章で定められた義務の範囲内で、該当する場合は、特定の商品およびサービスセクターに関連する規制の調和を高めることを目的に、具体的な手法を開発する取組みに価値があることを認める。
それゆえ、加盟国は、本協定の他の章の規定に基づいて設立された委員会や組織に定められた責任を害することなく、本協定の他の章のセクター間規制の一貫性に関する条項の実施と運用について、定期的に協議し、以下の第X.X章に関連する将来のセクター別手法の潜在性を念頭に、これらの条項に関するあらゆる知見との関連性を調査すること。


第Ⅹ.5章:
制度上の枠組み

1.加盟国はここに、規制の内外調和に関する委員会を設立する。同委員会は、総意に基づいて意思決定され、協定の発効後1年以内に召集され、その後少なくとも1年もしくは2年に1度召集され、本章の実施と運用に関する課題を検討し、将来の優先事項を確認する。その中には、本協定の他の章の下で定められている義務に関して、加盟国間の規制一貫性に関係する協力活動に対する潜在的なセクター別イニシアティブが含まれる。

2.将来の優先順位を特定するため、同委員会は協定の他の章に基づき設立された他の組織の活動を考慮し、活動が重複しないことを確認する。

3.同委員会は、規制協力への取り組みが徐々に重視されるようになること、他の関連する協議の場で進められている政策が軽視されたり、重複したりすることがないことを確実にするため、行動計画を策定、管理する。それゆえ委員会は、加盟国が参加している他の協議の場における協力活動を定期的に確認する。

4.加盟国は委員会に対し、Ⅹ章2.1遂行のために創設された手順または仕組みに関する情報を速やかに提供すること。この情報には、今後設立される予定の機関の責任と活動、対象となる規制措置の範囲が含まれる。さらに各加盟国は、協定発効後1年以内にⅩ章2と3の遂行に関して、他の加盟国の求めに応じ情報を提供するための連絡先を特定すること。

5.同委員会は、本協定発効後少なくとも5年に1度、国家の調整機関、手順、仕組みを維持する上での良い規制慣行や最良の実践事例、その規律強化と改善に向けたX章2および3を実行した加盟国の経験を検討すること。

第Ⅹ.6章:
利害関係者の関与

第1回の会合において、規制の内外調和に関する委員会は、全加盟国の様々な立場、分野の人の参加を保証するため、本協定を通じて、規制の内外調和を向上させる取組みに関心を持つ人々が見解を述べる、有意義な機会の提供を保証する仕組みを構築すること。

第Ⅹ.7章:
定義
「規制措置」とは、法令順守の義務が生じる中央政府レベルの規制当局により、提案または最終の形式で一般的に適用される措置を指す。

第Ⅹ.8章:
紛争解決
第Ⅹ章 このX章(紛争解決)への適用は「調整機能の一元化を促進し、新しい規制措置を検証するための手順または仕組み」を確保するという義務に限定される。ある加盟国が第Ⅹ章の目的に照らして約束不履行の訴訟を起こす場合、その加盟国は、相手の加盟国が(1)義務を侵したこと、(2)そのような侵害が両国間の貿易と投資活動を阻害したこと、を証明する必要がある。 

第Ⅹ.9章 秘密保持:
この章のいずれも、加盟国の国内法により開示が禁止または除外されている情報、または公開によって情報提供者の競争上の立場が不利になる情報などの機密情報の公開を要求するものではない。
(翻訳:田所剛/監修:廣内かおり)

オバマ政権が狙う他国の公共政策とは─2013年版「外国貿易障壁報告書」で明らかにする

米国のパブリック・シチズンが、“かの有名な”米国・外国貿易障壁報告書から、TPP参加国+日本をピックアップして批判を展開しました。TPPや事前協議では多少ソフトになっているものでさえ、この報告書ではかなり厳しい押し付けをしていることが分かります。

★ ★ ★

マギー・ヘンダーソン(パブリックシティズン)
2013年4月4日

オバマ政権が「2013年版米国の外国貿易障壁報告書」で狙う
TPP加盟諸国における数々の公共政策

今回の報告書は保健、金融、宗教、その他配慮を要する政策を撤廃すべき「貿易障壁」として槍玉にあげ、TPP交渉の異論の多さを浮き彫りにする

ワシントンD.C発―オバマ政権は、TPP交渉国におけるセンシティブな国内政策を狙った報告書を発表し、アメリカが撤廃をめざす「貿易障壁」であることを確認した。これを受けて本日パブリックシティズンは、米国通商代表部(USTR)の2013年外国貿易障壁報告書で公表されたTPP加盟諸国の国内政策標的リストを見れば、11カ国の広範な協定の交渉がまとまらず、繰り返し交渉完了期限が過ぎている理由が驚くほどよくわかる、と述べた。

406ページにわたるUSTRの報告書は撤廃すべき「貿易障壁」として、公衆衛生に関する政策から金融規制、政治的に配慮を要する製造業および農業の政策、さらに宗教的規範に至るまでを槍玉にあげる。USTRは現在および今後予想されるすべてのTPP交渉相手国の政策を批判。その中には、医薬品価格を管理するニュージーランドで評判の良い保健政策、市民の個人健康情報の海外移転を防止するオーストラリアの法律、銀行に対する十分な自己資本の保有を定めた金融危機後のベトナムの規制、そしてチーズは生乳から作られることを要件とするカナダの基準が含まれている。

例えば、圧倒的にイスラム教徒が多いマレーシアに関して、USTRの報告書は(マレーシア)政府が「食肉処理場に対してハラール(訳注:イスラムの戒律に従って食肉処理した動物の肉)専用の施設を維持し、ハラールとハラールでない製品を確実に隔離輸送するよう定めている」ことを批判。イスラム教の食肉加工要件に関する概念をコーデックス委員会が定めた要件と一致させるよう提案している。コーデックス委員会とは国際的な食品規格団体であり、多国籍食品企業が中心的役割を果たしている団体である。また、5人のうち3人がイスラム教徒であるマレーシア人に伝統的に禁止されている豚肉およびアルコール飲料の輸入に対するマレーシアの規制にも異議を唱えている。さらに、消費者5人のうち3人がイスラム教徒である同国の豚肉およびアルコールの輸入制限も問題視している。

「他国の国内政策に対するこのあまり外交的とは言えないオバマ政権の標的リストが出される以前から、TPPは暗礁に乗り上げていた。多くの国の交渉担当者は、アメリカの要求する外国製薬会社の特許独占の拡大や、政府補償を命令できる国際法廷で外国人投資家が金融、保健、環境政策に対して異議申し立てできる条項を拒否してきたからだ」とパブリックシティズンのグローバル・トレード・ウォッチ責任者、ロリー・ワラックは言う。「アメリカが、撤廃を望むTPP諸国の国内政策をあからさまに挙げたところで、オバマ政権はこれらの国の人々のTPPに対する懸念を強めるだけである。」

この外国貿易障壁報告書のなかで、USTRが最も詳細に政策批判をおこなっているのが日本だ。日本は最近TPP交渉への参加の意思を表明した。報告書は16ページを費やして、食品表示制度が消費者によけいな情報を与えていると厳しく非難し、日本が公的保険制度をいかにして確実に再構築すべきかの大枠を示し、政府に対し(在日の)外国の大学に税制優遇措置を与えるよう促し、さらに日本の軍装備品に関する国産へのこだわりを嘆いている。(アメリカにも軍の調達に関して同様の規定がある。)

報告書はまた、日本の農業政策を狙い、例えば「日本の消費者は、もっと簡単に手に入るなら、高品質の米国産のコメを買うだろう」から、国内の米作農家に対する保護を緩和するようにと勧告している。安倍晋三首相率いる政党は、強力な農業団体の支持を受け、TPPの関税撤廃の対象からコメ、小麦、大麦、牛肉および豚肉、砂糖、乳製品の除外を国に求める政治的な立場を承認している。反対に、USTRの報告書はこれら配慮を要する分野のうち1つ(砂糖)以外のすべてを優先度の高い自由化の標的として挙げている。

複数のTPP諸国に対し、USTRの外国貿易障壁報告書は、米国議会でつぶされたオンライン海賊行為防止法案(SOPA)で提案されたものと同種の著作権実施対策の採用を奨励している。例えば、報告書はオバマ政権が「チリに対しインターネット接続サービス業者の責任制度を修正し、著作権および関連する権利を侵害するいかなる行為に対しても有効な対策を認めるよう促してきた」と指摘する。

USTRの報告書はいくつかのTPP諸国に言及するなかで、政府を汚職まみれ、あるいは無能力であるとまで言って非難している。例えば、報告書はペルーの連邦政府の3つの行政機関のうちの2つは、責任を全うするのに必要な「公平性」や「専門性」に欠けると述べている。

またUSTRは、TPP諸国の「貿易障壁」に対する世論の批判を盛り上げようとしている。しかし、その「貿易障壁」はあまりに定義が細かく、もたらされる結果も些末なもので、あきれるほど範囲の狭いアメリカの企業利益に動機づけられたようにみえる。例えば報告書は、シンガポールの「非医薬品チューインガム」の輸入制限、カナダの「パン粉をまぶしたチーズ・スティック」に対する高い関税、そしてペルーによる「5年以上経過した中古車」輸入の拒否を槍玉に上げているのだ。数百ページにわたる報告書の中で、以下はそうした内容を如実に表わすTPP諸国に関する論評の一部である。

【ベトナム】
· USTRはベトナムによる「銀行業界の資本基盤改善を目的とした新たな規制」を新しい形の貿易制限として挙げている。報告書は特に新たな自己資本比率規制をあげ、銀行に「艱難辛苦」をもたらすとして非難する。

・USTRは「『堕落している』とみなされる文化的製品」の輸入を阻止するベトナムの決定に注目し、その政策を「非関税障壁」の1つに挙げる。

・報告書はベトナム経由で他の目的地へ行く途中の特定の製品の輸送に関するベトナムの禁止措置を標的にしている。これらの「貿易に対する障壁」には「危険廃棄物、…冷凍の動物性副産物およびクズ肉」の積み替えの制限が含まれる。

・報告書は 「米国はベトナムに対し、デジタル上の著作権侵害を含め、深刻化する知的財産権侵害の問題と闘うため、より積極的な行動をとるよう引き続き要請していく」と述べている。報告書によると、こうした要請を受けてインターネット接続サービス業者と政府は「権利保有者」(例えば米国のメディア企業)が侵害とみなす違反をより厳重に取り締まることに関する話し合いが行われた。―この侵害は米国議会でつぶされたオンライン海賊行為防止法(SOPA)の重要な部分である。

・報告書は、あからさまにしかも断定的にベトナムを「公務員の汚職と非効率な官僚組織が蔓延している」と非難して結びとしている。

【シンガポール】
・シンガポールは「アジアで2番目にソフトの海賊版の率が低い」と褒めてはいるが、報告書はやはり、この国は「末端利用者のソフトに対する防止策となる罰則規定が不十分だ」と主張する。

・報告書は(シンガポールの)国内銀行の外国人の所有権の許容割合が増えているにもかかわらず、「シンガポールは3大地方金融機関の企業支配権あるいは企業取得を外国人に認めないと表明した」と指摘する。すなわち報告書は、シンガポールの最も重要な銀行の外国人による企業取得に対する同国の不安を貿易の障壁として挙げている。

・報告書は、ほとんどの「シンガポールに事務所を持つ外国の法律事務所はシンガポールで弁護士業務ができない…」という事実を嘆く。報告書はシンガポールで弁護士業務が許可されたとしても、外国の法律事務所はシンガポールの法の理解に基づいてシンガポールの法廷に訴訟を起こすことができないという点を指摘している。

・報告書は、アルコール、タバコ、自動車に対するシンガポールの税金を取り上げ、それらの税は「社会的および/あるいは環境的根拠から」課税されていることを指摘する。USTRはこれらの税の廃止を明白に求めてはいないが、迷惑な貿易障壁を列挙する報告書のなかで、そうした措置を取り上げる理由は見つけたようだ。

【ペルー】
・USTRはペルー政府に対し全面的な非難の言葉を挙げ連ね、3つの連邦行政機関のうちの2つを槍玉に上げている。報告書は率直にこう述べている。「米国、ペルーのどちらの企業も、行政機関の官庁、監督官庁、税務所、そして裁判所はそれぞれの任務を遂行するのに必要な財源、専門知識、あるいは公平さにしばしば欠けるのではないか、という懸念を持ち続けている。」しかし報告書はその後、連邦政府の公正さと能力をあからさまに問題視するような議論は展開していない。

・USTRは、ペルーの個人情報保護法が「国境を介したデータ流通に依存する企業の間に懸念を引き起こしている」と指摘する。報告書によると、それらの企業は、ペルー人の秘密情報を入手するときに事前に同意を得なければならないというペルーの要件に懸念を抱いているようだ。

・報告書はペルーが米国の中古品に興味がないことを貿易障壁として挙げている。中古品の中には「古着および使い古しの靴(慈善の寄付としてのものは除く)、中古のタイヤ、5年以上経過した自動車、(重量3トンまたはそれ以上の)8年以上経過した大型トラックなどがある。」

【ニュージーランド】
・USTRは、ニュージーランドの医薬品の費用抑制制度の運営に成功している同国の政府機関である医薬品管理局(PHARMAC)について「強い懸念」を表している。報告書によると、これらの懸念は「米国の利害関係者」―すなわち医薬品価格を抑制するためのニュージーランドの政策に長く反対してきた米国の製薬会社―から出たものである。USTRは、PHARMACがこれら「利害関係者」に対し適切な「透明性、適時性、および予測可能性」を提供していないと非難している。加えて、PHARMACが以前は「規制の対象外だった」医療機器などの分野にまで費用抑制政策を拡大しようとしていることに異議を唱えている。

・報告書は、オンラインの著作権侵害の申し立てを厳しく取り締まるニュージーランドの新しい法律について「権利保有者」(例えば米国のメディア企業)が支持していると指摘する。しかし、続いて報告書は、米国の複合メディア企業がその法律のもとで、侵害の疑いに対する訴訟に支払わなければならない費用に不快感を表明している。負担金は21ドルである。

【メキシコ】
・本レポートが挙げた最初の投資障壁は「メキシコの石油・天然ガスセクターが民間投資に非常に閉鎖的である…」という点だ。米通商代表部はこの理由が「メキシコ憲法が炭化水素鉱床の国有化を義務付けているから」であることは認めている。

・米通商代表部は「メキシコ沿岸50km以内にある住宅不動産の外国人保有」を禁止するメキシコの法律を取り上げることも妥当であると考えている。本レポートは、米国市民がメキシコ海岸地帯を買収できないことを「投資障壁」であるとまで指摘している。

・本レポートはメキシコに、政府調達政策をいかに変更するか、求められてもいない助言をし、例えば、国家レベルの透明性基準は「汚職を回避し競争を育成するように”調整”されるべき」とする勧告が含まれている。

【マレーシア】
・圧倒的にイスラム教徒が多いマレーシアに関して、USTRの報告書は(マレーシア)政府が「食肉処理場に対してハラール(訳注:イスラムの戒律に従って食肉処理した動物の肉)専用の施設を維持し、ハラールとハラールでない製品を確実に隔離輸送するよう定めている」と批判。イスラム教の食肉加工要件に関する概念をコーデックス委員会が定めた要件と一致させるよう報告書は提案している。コーデックス委員会とは国際的な食品規格団体であり、多国籍食品企業が中心的役割を果たしている団体である。

・USTR also takes issue with Malaysia’s restrictions on importation of pork and alcohol, products traditionally forbidden for the three out of every five Malaysians who are Muslim.
米通商代表部はまた、5人のうち3人がイスラム教徒であるマレーシア人に伝統的に禁止されている豚肉およびアルコール飲料の輸入に対するマレーシアの規制にも異議を唱えている。

・本レポートは「マレーシアにおける政府調達プロセスについて、米国政府は引き続き懸念を表明する」としている。「マレーシアが、伝統的に政府調達を利用して国の公共政策目標を後押ししてきた」というものだ。特に米通商代表部が困惑した政策目標として「マレー人先住民族であるブミプトラの経済活動への参画促進、地場産業への技術移転、外貨の流出削減、地元企業に対するサービス・セクターの雇用機会の創出、マレーシアの輸出能力向上」などが含まれている。

【チリ】
・本レポートによれば、米国は「チリに対して…著作権および著作隣接権のあらゆる侵害行為に対する効果的措置を講じられるよう、ネットサービス・プロバイダの法的責任管理体制の修正を強く迫っている。」なお、同様の条項は、あの失敗に終わったオンライン海賊行為防止法(SOPA)の一部として米国民および連邦議会によって完全に拒絶されている。同条項がユーザー作成型コンテンツへの徹底した取り締まりを可能にし、技術革新を阻害し、インターネットの自由を制限してしまうのではないかという懸念が広まったためである。

【カナダ】
・本レポートは、米国のイーライ・リリー製薬会社によって昨年提出された通知に言及し、米国製薬産業に関する懸念を伝えている。同通知でイーライ・リリー社は、カナダの特許政策全体に直接挑むために、北米自由協定(NAFTA)の投資家特権を利用する計画を発表した。この「投資家対国家」条項に基づく攻撃は、イーライ・リリー社製医薬品の特許がカナダの特許性基準を満たしていなかったために無効とされたカナダ判決に対して着手されたものだ。米通商代表部は、もう1つの最近の特許無効判決―ファイザー社のバイアグラに対するもの―についても言及している。この無効判決によるNAFTAの「投資家対国家」に基づく訴訟はまだ起きていない。米通商代表部がこれらの訴訟を含めるということは、米国企業がカナダの特許法に挑戦するのを政治的に支援するのでは、と公衆衛生当局担当者の間で不安が広がっている。

・本レポートは、主要な外国投資および買収が国に純便益を確実にもたらすように精査されねばならないとするカナダの政策に反論している。米通商代表部によると、この基準は適用範囲が余りに広すぎる。

・米通商代表部は、アルコールの流通を管理するカナダの地方政府の政策により、米国産ワインと蒸留酒のカナダへの輸出が大いに妨げられている、と失望感をあらわにしている。リポートは、政策を制定する「州運営の酒類管理委員会」を特に問題視しているが、これらは例えば、ペンシルベニア州酒類販売管理委員会などの州レベルの委員会と大差ないのである。

・本レポートは、カナダ連邦政府の幅広いデータを整理統合するプロジェクトについて説明し、データ統合に関わる企業が政府資料をカナダ国外に移すことが許されないとする規定について批判している。米通商代表部によれば、データの海外移転(オフショア)は「今日の情報に基づく経済」に合致するものであり、カナダ連邦政府は様々な政府資料を海外に移すことを躊躇してはならない、ということだ。

・本レポートは、カナダのセンシティブ品目である酪農および家禽類肉製品向けの一般的な供給管理プログラムについて攻撃している。米通商代表部によれば、当プログラムはカナダの農業従事者を支援し、生活を安定させているものの、米国生産者によるカナダへの大幅な輸出増を制限すると説明している。

・カナダの輸入障壁によって損なわれてきた米国産「酪農製品」の実例として、米通商代表部は一品目を選び出している。それは「チーズ・スティックのパン粉揚げ」である。

・本レポートはカナダの「チーズ成分規格」を、米国産「酪農製品」がカナダで販売されるのを阻害するものと非難している。米通商代表部が懸案事項として挙げる主要基準は、「チーズ製造プロセスにおける最低生乳(殺菌の必要がなく加工もされていない搾ったままの乳)含有量」についてのカナダの規定である。

【ブルネイ】
・本レポートはブルネイに対し、軍事調達プロセスについてすべての軍事契約決定の論理的根拠が「公開」されていない、と厳しく非難している。

【オーストラリア】
・通商代表部は、オーストラリアが市民の個人情報をクラウド・コンピューティング経由で諸外国へ移し、海外で保管することに抵抗していることに対し不満を表わしている。本レポートは、守秘義務のある医療保健記録のオフショア保管を禁止するオーストラリアの新たな法律を特に取り上げている。米通商代表部は「地理的リスクではなく、慎重に扱うべきデータの安全性を保障するリスクベース・アプローチ」を推奨している。とは言うものの同段落で、オーストラリアは愛国者法を引き合いに出して「クラウド・コンピューティングに付随する法的および規制上のリスクがあることを証明している」としており、控えめだがオーストラリアも実はリスクベースなのだ。米国人弁護士も、愛国者法は米国市民のデータ機密性を脅かすとして、長い間同じ様な懸念を表明してきた。本レポートは、愛国者法は擁護しないようである。

・本レポートは、オーストラリア関連の論評の中で一節(セクション)全体を「血漿文画製剤」にあてている。本レポートは、「米国は、オーストラリアで血漿文画のための競争的且つ開かれた入札制度が欠如していることをいまも憂慮している」と明確に述べている。米通商代表部は明らかに、米国企業がオーストラリア市民の血液を「文画」する平等な機会を得ることを望んでいる。

【日本(TPP参加見込み国)】
・本レポートは日本の食品表示政策を容認しないことを表明している。食品表示政策は「食材および食品添加物の名称をすべて含有率と共に列挙しなければならず、さらに製造過程の説明をも盛り込むことを義務づけている」。消費者たちが自ら消費する製品情報をこれまで以上に要求しているいま、日本の進歩的な食品表示政策は「厄介なもの」であり「ライバル企業に機密情報を公開してしまうリスクがある」と米通商代表部は苦情を述べている。

・本レポートは「日本郵政公社(国営の郵便・貯金・簡易保険の公共企業体)が民営化されるべきかどうかについては中立のままでいる」と慎重に述べている。しかし米通商代表部は「日本政府の郵政改革努力を米国企業は注意深く監視し続ける」ことを明言。さらに米通商代表部は、そうした監視は決して「中立的」ではなく、米国政府は「日本政府に対して日本の貯金・保険・宅配便市場において、日本郵政事業会社と民間セクターの参加企業との間に公平な競争の場を実現すべく、確実にあらゆる必要な対策が講じられるよう要求し続けることになる」とが明らかに述べている。このように米通商代表部は、国内唯一最大の公社が民営化されるべきかどうかの日本政府の決定を尊重している。だが一方、政府当局が典型的に、消費者に利するよう公的機関経由で提供している優遇措置は剥奪されるべきである、と強く印象づけている。

・米通商代表部は、日本の軍事調達契約すべてが外国企業に開かれていないことを厳しく非難している。本レポートは、防衛製品や防衛システムは国内で開発・生産されるものだとする日本人の「一般的な特恵」に対して苛立ちを見せる。「国の安全保障の要件(必需品)をもっと効率良く、もっと安価に満たせるような外国のオプションがある時…」は、国家安全保障論にはまったく根拠がないようだ。(但し、米国以外で議論される場合に限る。(米国の)バイ・アメリカン法は軍事調達品も対象にしているのだ)

・本レポートによると、米国政府は日本政府に「外国の大学と協働して、日本の学校と同等の優遇税制を与える全国規模の解決策を見つけるように迫っている」とのことだ。なぜ日本政府は、外国の私立大学にも日本の学校に便宜を図る優遇税制と同じものを提供すべきなのか? 米通商代表部によると、このむしろ変則的要求に応じることは、外国の大学が「日本の教育環境に比類なき貢献をし続けるため」に必要であるから、だそうだ。

・米通商代表部は、日本政府が頻繁に「不透明」な政策諮問団体を利用すると非難している。「会員でない者は、諮問団体の審議に情報提供する有意義な機会を与えられないことが多すぎる」と指摘しているのだ。しかしこの批判は、ほぼ文字通り、米通商代表部自身への非難にもなる。米通称代表部はメンバーのほとんどが企業代表から成る排他的で不透明な公式の貿易アドバイザー制度を管理運営しているのである。米通商代表部は日本に対し、利害関係者すべてが、必要に応じて参加したり直接情報を提供したりする有意義で十分な機会を確実に与えるように、と続けている。一方、米国の利害関係者もまた、米通商代表部に対して、密室で行われる貿易アドバイザー制度の門戸を開くよう要請しているが、いまだ「有意義」な変化は見られていない。

・米通商代表部は、日本における政治的にセンシティブなコメの輸入政策に狙いを定め、これらの政策を「高度に規制され、不透明な」制度と呼び、「日本の消費者への有意義なアクセスが制限されている」としている。本レポートは、当該制度の下では米国産米の殆どが日本の消費者に届かないと嘆き、さらに日本人消費者は「米国の高品質米がもっと容易に入手できるようになったら購入するであろう」と主張している。日本人消費者による米国産米への選好が実現されていないという主張を具体化するために、本レポートは「産業調査」を引用している。

・続けて本レポートは、コメ、小麦、牛肉、豚肉および酪農製品に関する日本の政策にひとつひとつ狙いを定め、関税や割り当て、国の流通制度に異議を唱えている。これら標的にされた農業部門は、日本において最も政治的にセンシティブなものに含まれ、TPP交渉において関税撤廃から外されねばならないセクターであると与党の自由民主党によって指摘されてきたセクターである。

(翻訳:戸田光子、小幡詩子/監修:廣内かおり)

2013年5月5日日曜日

STOP TPP!!官邸前アクション・5月7日18:00〜 TPP交渉参加の即時撤回を!

12年8月から始まり、毎月第一火曜日に開催されているストップTPP行動「STOP TPP!!官邸前アクション」(主催:STOP TPP!! 官邸前アクション実行委員会)が7日18時に開かれます。ぜひみなさんの声を集めてTPPを阻止しましょう!(以下、転載)
☆ ★ ☆

★安倍首相と自民党の公約破りを許さない!★
★完全敗北の事前協議!私たちには害ばかり!★
――TPP交渉参加の即時撤回を!――


 3月15日、安倍首相はTPPへの参加表明をしました。多くの反対・懸念の声を無視し、説明も情報公開も不十分なまま、さらに自民党が先の総選挙で掲げた6つの公約を破る形での表明です。遅れて交渉に参加する国には大変に不利な条件が課されることも明らかになっており、また残された交渉の機会も多くはありません。
このような状況の中での参加表明は、到底許されるものではありません。
 しかしながら、その後、日本政府は米国をはじめとする参加各国との「事前協議」を進めてきました。すでに報道でも明らかになっているとおり、米国との二国間協議は完全なる「日本の一方的譲歩」であり「敗北」です。こうした協議の結果、米国を含む11カ国は、4月20日のAPEC会議の場で「日本の交渉参加」を認め、米国USTRは自国議会へ日本の参加に関する手続き通知を行いました。
 事前協議のプロセスおよび結果は、TPP交渉のもつ本質そのものを表しています。
つまり、「秘密」と「嘘」で塗り固められ、どの国も自国の国民には何ら明らかにしていないこと、あらゆる品目で徹底した完全撤廃(=自由貿易)が目指されていること、米国が圧倒的に力を持っていることなどです。
 こうした中で、遅れて参加した日本政府が私たちに約束した「聖域」などは守れるはずもなく、しかも米国とはTPP交渉と並行して非関税措置に関する交渉が行われるという約束もさせられています。これだけでも、すでにTPP参加の意義やメリットはまったくないということが明らかです。言い換えれば、私たちの暮らしのあらゆる分野において、メリットがないどころか、農業や雇用、食の安全などが破壊される一方あるわけです。
 私たちは、TPP参加の不当性・非民主性を訴え、日本の参加表明撤回を求め、「STOPTPP!!官邸前アクション」を開催します。参加表明後、全国各地で起こる怒りの声と呼応しつつ、改めて参加表明撤回の声を大きく広げていきたいと思います。ぜひご参加・ご取材ください。

2013年5月2日
STOP TPP!!官邸前アクション実行委員会

●日時:5月7日(火)18:00~20:00
●場所:首相官邸前

★当日のアピール内容
1.恒例!「サルでもわかるTPP」
2.徹底分析 「秘密と嘘」の「日米事前協議」
3.直前!TPP交渉のいま(予定)
◎その他、国会議員、ゲストスピーチなど

【主催】STOP TPP!! 官邸前アクション実行委員会
http://notpp.jp/TPP_kantei.html
ツイッター:https://twitter.com/TPP_kantei (当日の実施状況はツイッターにて告知します)

【呼びかけ人】安部芳裕(プロジェクト99%)/内田聖子(アジア太平洋資料センター〈PARC〉)/こみねまいこ(プロジェクト99%)/坂口正明(全国食健連)/ふくしまゆみこ(プロジェクト99%)/まつだよしこTPPって何?)/安田美絵(『サルでもわかるTPP』著者)

2013年4月13日土曜日

4.2「TPP参加をとめる!院内対話集会」が開かれました!



4月2日衆議院議員会館で「STOP TPP!! 市民アクション」の呼びかけで、224団体による賛同を受け、約150名の参加者を得て“院内対話集会”を開催することが出来ました。
 3月15日の安部首相によるTPP交渉参加表明を受け、準備を進め、以下の趣旨に沿ってこれまでTPP反対の運動に取り組んできた団体などに呼び掛けたものです。

<趣旨>:当日配布資料から

「STOP TPP!! 市民アクション」は、これまでTPP交渉参加反対で運動してきた団体・政党・会派、国会議員が、改めて連携を強め、国民的規模で協力に運動を進めていくことをめざして、「TPP参加をとめる!院内対話集会」を呼び掛け、開催させていただくこととしました。

 私たちは、交渉参加表明がなされた後も、様々な反対運動が共に力を合わせ、市民、諸団体や超党派の国会議員の声を国内外に届け、TPPを阻止する決意でいます。
 本集会では、参加した各団体が情勢の認識を共有し、今後の運動の方向について率直な意見を出し合い、重要な局面では声を掛け合って共同の取り組みが出来るきっかけの会合としたいと思います。

 当日は、野田克己さん(大地を守る会)の司会で議事が進められ、冒頭の坂口正明さん(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)による簡潔で適確な交渉参加表明に対する批判と幅広い共同行動を目指そうという問題提起を兼ねた挨拶で集会が始められました。そして政党代表の発言、団体代表からの発言、会場からの発言の3部構成による活発な集会とすることが出来ました。

 挨拶に立つ坂口正明さん

 TPPから日本の食とくらし・いのちを守るネットワ-ク(幹事団体:JA全中、全漁連、全森連、全国農業会議所、生活クラブ連合会、パルシステム生協連合会、大地を守る会、中央酪農会議)からのメッセ-ジも読み上げられました。

 多くの発言者が、地域からの地道な取り組み、その積み上げによる大規模な共同行動、国際連帯の重要性を訴えられました。その点で大きな成果があったと言えますが、今後はその実現のための丁寧な働き掛けをそれぞれの団体で意識することが問われると思われます。

〇挨拶
 安部首相と自民党は「聖域を守る、公約を守る」と主張しているが、日米共同声明は守るべきものを何も勝ち取っておらず、明らかな公約違反である。また秘密交渉である限り、理由を開示し国民が納得できる形で交渉から降りることは出来ないはずだ。TPP参加国の国民の利益を裏切り、グロ-バル企業の利益を拡大するTPPには一貫して反対してきた。幅広い結集で持って参加反対の世論を盛り上げ、参院選を含む社会的な大運動を巻き起こしていきたい。

1.各政党代表の発言

〇生活の党:佐藤公治 参議院議員
8年前の郵政選挙を堀江貴文氏と戦った。その時の延長線上に今の政治・社会のム-ドがあり、棄権を感じる。日米関係は大切だが、北朝鮮・中国に対して毅然とすべきとの論調には、何故米国にはそのような態度を取れないのか、と言いたい。

〇みどりの風:舟山康江 参議院議員
TPPに代表される新自由主義の流れに対峙すべきとの思いで結党した。交渉参加表明後にも多くの反対の声が挙がっていることに心を強くしている。国会でも頑張るが、TPP参加阻止の国民運動を作ろうという声を挙げることが大切。

〇民主党・「TPPを慎重に考える会」:篠原 孝 衆議院議員
TPPは大きな枠組み、社会全体を覆うものだ。国民の安全は防衛だけでなく、食・医療。雇用などを抜きには守れない。安倍政権はこれらのこと、特に雇用には全く触れていない。

〇社会民主党:福島瑞穂参議院議員(党首)
 超党派の女性議員でJA全中にも行き頑張ってほしいと要請をし、昨年は米国の労組も訪ねた。彼らもTPP反対を言っていた。TPPを受け入れることは社会保障も雇用もいのちも、主権までも危うくさせるもの、そして大企業だけには利益をもたらすものだ。

〇日本共産党:紙 智子 参議院議員
安部首相による国民との約束破りと交渉参加表明という亡国の約束に怒りを覚える。国際的な流れを見るべき。TPPで中国・インドなどを抜きにアジアの成長を取り込むことなどあり得ないし、守るべきモノを危うくさせるだけである。今からでも間に合う、国民的運動で包囲の輪を作ろう。

2.賛同団体からの発言

〇北海道農民連盟:委員長 山田富士雄
食料基地北海道、輪作体系の農業は一つの作物が危うくなるだけで経営全体が崩壊する。空気・水そして食と農なくして生活は出来ない。TPPはこのこととの整合性を全く持っていない。

〇パルシステム神奈川ゆめコ-プ:理事長 吉中由紀
TPPは互恵の社会を踏みにじるもの。消費者が声を挙げることが大切と思い、これまで反対運動に取り組み、100万人の食造りの自給運動もやってきた。国益だけを叫ぶのは戦前に戻るような空気を感じる。国際連帯、相互の互恵を考えることがTPPでは大切だ。

〇自由法曹団:弁護士 瀬川裕貴 
弁護士の立場でISDS条項を懸念している。韓国も早速提訴された。法規制だけでなく行政措置も対象になり得る。一度負ければ同様の提訴が続き制度変更に追いつめられる。国内での提訴に加え国際仲裁も出来るというのは、外資のみの特権だ。

〇全国保険医団体連合会:会長 住江憲勇
TPPは米国の戦略的意図を体したもの、医療でも貫かれている。医薬品へのアクセスの改訂要求や民間医療保険の拡大など医療法第7条の営利・配当禁止が覆される。TPPは閉鎖的な協定で、これでは世界の国々は入ろうとしないだろう。

〇TPPを考える国民会議:代表世話人 原中勝征
あらゆる団体・政治家は国民の生活を守るべきものと考え反対運動に参加している。TPPは守るべき基本、日本の固有の価値を毀損するもの。大震災の後人々は互いをいたわり生き延びてきた。これは。金が正義という価値観とは相いれないものだ。

〇主婦連合会:会長 山根香織 
TPPには一貫して反対してきた。関税撤廃が前提でない、ということだけで受け入れられるものではない。グロ-バル企業の利益を守るために、地域、固有の歴史や価値、文化を危うくするもの、競争原理があってはならないところにもそれを導入するものだ。

〇JA岩手ふるさと:胆沢地域センタ-・営農経済課長 亀井房雄
被災3県の農業はやっと30数%が再開。TPP参加でこれも頓挫するだろう。岩手県農協中央会では30%の農業が崩壊するとの試算結果を出した。しかし今日の各発言のようにTPPは農業だけの問題ではない。今後もその立場で反対をしていく。

〇全国労働組合総連合:事務局長 小田川義和
多国籍企業によるル-ル造りに断固反対。先日フランスやポルトガルの労組と交流してきたが各地でEPAに対する怒りの声を実感した。すでに労働法制はTPPと同じ方向に進みつつある。内外の連帯を強めたい。

〇メッセ-ジ紹介
「TPPをとめる!院内対話集会」にご参集の皆様におかれましては、日頃より、TPP反対の活動を精力的に展開されていらっしゃいますことに、心から敬意を表します。さて、安倍首相は3月15日に、TPPへの参加を正式に表明しました。ご承知のとおり、TPPは、例外なき関税撤廃により、わが国の農林水産業に壊滅的な被害をもたらし、地域経済を圧迫することは疑いようもありません。
 そればかりでなく、食の安全性、医療、雇用など、私たちの食、暮らし、命を守る諸制度を強引に変容させ、私たちの生活に重大な影響をもたらすものです。そのため、当ネットワ-クはこれまで、TPPが国民生活や地域社会全体の問題であることを広く訴え、様々な方面と連携し、国民運動を展開して参りました。私たちは今後とも、TPP断固反対を掲げ、みなさんと同じ思いで、全力で戦い抜くことを固くお誓い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。
平成25年4月2日
TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワ-ク

3.会場からの発言及び団体発言者からの応答

〇バラバラに戦っても駄目だ。参院選でも野党は統一候補を目指すべき。
〇直接的大規模行動を提起してほしい。
〇中央での行動に加え地域からの運動が必要だ。地域でも外国ファンドによる不採算事業からの撤退要求などTPP無きTPPとも言える実態が進み地域が壊れようとしている。
〇各地域でも諦めずに自民党を含めて議員に働きかける運動を続けよう。
〇食糧自給の問題を懸念しているが、官僚はマイナスの影響試算は出し難いと言う。議員から強く働きかけて欲しい。
〇国会でも試算の内容・基礎に疑問を呈している。農水大臣も再試算の可能性もほのめかした。
〇情報公開・収集を強化すべきだ。
〇国民の声を参院選にぶつけよう。
〇後期高齢者問題の時に、国民の声が強ければ議員も動くと感じた。国民運動を作ろう。
〇TPPに危うさを感じている議員も多いが、業界団体ごとに条件闘争に流れるのが怖い。地域での横の運動の広がりが重要。また地域が壊れるのは日本だけではない、国境を越えた国際連帯の運動が欠かせない。

 最後に司会が参院選・TPP反対の地域からの取り組み、大規模集会などの行動、国境を越えた運動が重要であり、その運動作りのための提起を互いにしよう、という取りまとめをして閉会しました。

 政党挨拶とは別に日本共産党・笠井亮議員(衆)及び田村智子議員(参)、生活の党・三宅雪子前議員が出席され、また秘書の方による代理出席もいただきました。

<賛同団体一覧(224団体、2013年4月2日現在)>

アーススピリッツ/アール・エッチ・エス/ISフーズ/アイフォーム・ジャパン/アオティア/あかれんが/秋川牧園/アジア太平洋資料センター/アジア農民交流センター/A SEED JAPAN/ATJ(オルター・トレード・ジャパン)/ATTAC Japan(首都圏)/APLA/アマナクラ/アリモト/安間産業/遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン/飯尾醸造/井口食品/一の塩/井筒ワイン/いりえ茶園/いわみ地方有機野菜の会/上島/AMネット/エコ・コミュニケーションセンター/エコワン/遠忠食品/置賜百姓交流会/オーガニック本間/大潟村げんき有機部会/大牧牧場/おきたま自然農業研究会/おきたま興農舎/おびなた/オブネットwith粋男会/月山パイロットファーム/華農/蕪栗米生産組合/川端グループ/川原製粉所/甘楽町有機農業研究会/紀ノ川農協/協同センター・労働情報/くらぶち草の会/グループ八ヶ岳/国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会/高生連/コープスター会/小金沢養蜂/国産生薬/黒怒/コッコー/埼玉大地の会/埼玉西部産直グループ/佐久ゆうきの会/桜井食品/札幌中一/佐渡トキの田んぼを守る会/SAP/さんぶ野菜ネットワーク/サンファームヤマサ/サンライス有機の会/サンワローラン/食の安全・監視市民委員会/庄地区無農薬研究会/庄分酢/紫雲寺土の会/JAみやぎ仙南/JA岩手ふるさと胆沢地域/JAやさと(やさと農協)/JA茨城県中央会/JAいわて くじ短角牛肥育部会/JA函南東部(函南東部農業協同組合)/JA秋田ふるさと/JA佐久浅間(佐久浅間農業協同組合)/JA佐久浅間 臼田有機米部会/自然耕房/自然食通信社/士別農園/島源商店/ジャパンマシニスト社/首都圏青年ユニオン/自由法曹団/主婦連合会/上越有機農業研究会/上州なっぱの会/庄内協同ファーム/庄分酢/食政策センター・ビジョン21/食と農の再生会議/知床ジャニー/新藤/新日本婦人の会/新萌会/水車むら農園/スター食品工業/Stop!TPP/生活クラブ連合会/生活アートクラブ/全農林労働組合/全日本農民組合連合会/全国労働組合総連合/生活クラブ共済連/全国学校給食を考える会/全国商工団体連合会/全国生協労働組合連合会/全国保険医団体連合会/全国労働組合連絡協議会/仙台黒豚会 ライスネット仙台/全通/全日本民主医療機関連合会/全日本金属情報機器労働組合/全農協労連/総合農舎山形村/脱WTO/FTA草の根キャンペーン/大一食品工業/大地を守る会/大徳醤油/大文字飴本舗/タカハシ乳業/竹中池湧水有機・松商グループ/武久/田中屋製菓/谷口海産/玉屋珈琲店/地球的課題の実験村/千葉畑の会/千葉北部酪農農業協同組合/中央社会保障推進協議会/千代菊/漬物本舗/TPPを考える国民会議/TPPに反対する人々の運動/TPPって何?/天恵グループ/天鷹酒造/東都生活協同組合/徳岡商会/どさんこ産直センター/利守酒造/長崎有機農業研究会/ながさき南部生産組合/中津ミート/中野水産/中村醤油/中山商店/懐かしい未来/成清海苔店/日本消費者連盟/日本医療労働組合連合会/偽百姓/にいがた有機農業推進ネットワーク/日本自治体労働組合総連合/日本食品工業/日本婦人団体連合会/二本松有機農業研究会/日本有機/農山漁村文化協会/農民運動全国連合会/農民連京都産直センター/はたちょく九州/花とハーブの里/羽山園芸組合/パルシステム茨城/パルシステム生活協同組合連合会/パルシステム神奈川ゆめコープ/パルシステム共済生活協同組合連合会/パルシステム埼玉/パルシステム東京/パルシステム千葉/ピープルズ・プラン研究所/東日本産直センター/肥薩自然農業グループ/常陸野産直センター/広島県漁業協同組合連合会/ファビナス/フォーラム平和・人権・環境/福栄/フジワラ化学/舟形マッシュルーム/フルーツバスケット/ふるさと海土/Project99%/プロスペリティ/ふろむあーす&カフェオハナ/房総食料センター/朋和商事/北海道農民連盟/マゴメ/増野/松幸農産/松田農園/マリーレン/まるほ食品/丸共バイオフーズ/マルダイ商事/まるや八丁味噌/丸夕田中青果加工/丸和油脂/三崎いか直販センター/南伊豆水産/宮島醤油フレーバー/無農薬生産組合/武蔵地鶏会/ムサシ堂/ムソー/Meisters Backstube/メイド・イン・アース/朋和商事/もっこす倶楽部/モリ産業/山形南陽のんのん倶楽部/やさか共同農場/野菜くらぶ/やまくに/山織/山形県有機農業者協議会/ゆうきの里東和/横浜土を守る会/米沢郷牧場/ライスロッヂ大潟/酪農王国/リバーグリーン(以上、224団体)

【問合せ先】
STOP TPP!! 市民アクション事務局
メールアドレス:muramachitpp【a】gmail.com(【a】を@にかえて送信下さい)