2015年5月4日月曜日

5月19日にTPPを考えるフォーラム を開催!「TPP 交渉 合意しないことこそ“国益” ─ 見逃せない問題の数々─」


TPPを考えるフォーラム
TPP 交渉 合意しないことこそ“国益”
─ 見逃せない問題の数々─

日時:5月19日(火)18時30分~21時(開場18時)
場所:日比谷図書館(地下)コンベンションホール
 千代田区日比谷公園1-4(最寄り駅:地下鉄「内幸町」「霞ヶ関」駅)

 日本政府は、日米首脳会談やアメリカ議会でのTPA法案協議をはずみに、5月末といわれる閣僚会合での「大筋合意」をめざして、秘密交渉を続けています。

 しかし、ここに来て、ISDS(投資家国会間紛争処理)、知的財産権などで多国籍企業の横暴がいよいよ明白になり、各国で反対運動が盛り上がっています。加えて、安倍内閣のコメを含む農産品での譲歩は、明らかに国会決議違反です。大義も無く、自らが掲げた“国益”も無視したTPP交渉は、即刻止めるべきです。

 TPPには「一利」でもあるのか・・いま一度ここから考え、思いを発信しましょう。

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◇パネル討論・パネリスト
・「一人ひとりに関わる著作権問題」
  香月啓佑氏(インターネットユーザー協会事務局長)
・「ISDSの実態と多国籍企業の論理」
  岩月浩二氏(TPPに反対する弁護士ネットワーク)
・「農産品の扱いはこれでいいのか」
  高橋一成氏(新潟県農協中央会常務理事)
・「TPP交渉の現局面と参加各国での反対運動」
  内田聖子氏(アジア太平洋資料センター・PARC事務局長)
 
◇参加費:500円
 
□ご参加については、できるだけ事前にお申し込み下さい。
*お申し込みは info※shokkenren.jp(←※を@に) あるいはFAX 03-3370-8329へ

主 催:5.19TPPを考えるフォーラム実行委員会
よびかけ:醍醐 聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会)
     中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク)
     山根香織(主婦連合会)
連絡先事務局:国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)
〒151-0063 東京都渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3階
TEL.03-3372-6112 FAX.03-3370-8329 E-mail:info※shokkenren.jp(※→@)





 

2015年4月9日木曜日

米国「パブリック・シチズン」がTPP投資関連リーク文書を分析─ISDSで増加する米国の負担

ワシントンDCに拠点を構える米国シンクタンク「パブリック・シチズン」が、《2015年版の投資に関する漏えい資料》について、ISDSを中心に分析をしました。

その中で強調されているのは、これまで途上国中心に締結されてきた自由貿易協定(FTA)と異なり、米国自身が提訴される危険性があると喚起していること。また2012年の漏えい文書に載っていた公共政策を例外扱いする保護規定などが削除され、交渉経過の中でますます多国籍企業の利害を反映したものになってきている点です。

その上で、現在各国で情報開示要求やISDS批判が高まっていることや、米国議会でのTPA法案への反対も強いことなどを踏まえ、今回の漏えい文書は交渉を進める側には降って湧いたような災難だろうとコメントしています。(翻訳:池上明/監修:廣内かおり)

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パブリック・シチズンによる2015年1月版の投資に関する漏えい資料の分析概要の紹介(15.03.25ウィキリークスISDSリーク)
※原文と漏えい文書にアクセス可能→
http://citizen.org/documents/tpp-investment-leak-2015-release.pdf

TPP文書の漏えいにより、無数の外国企業がアメリカの政策に異議を申し立て、税金による賠償を要求できる強大な力を新たに獲得することが判明
外国企業が享受できる法的制度が明らかになれば、TPPに対する論争は激化し、オバマ大統領が推進するファストトラック条項(貿易促進権限)は、いっそう困難になるだろう

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【ワシントン発】漏えいした環太平洋経済連携協定(TPP)の投資関連文書により、次のことが明らかになった。(アメリカの)国内企業は就労機会を低賃金国へ移しやすくなり、多くの外国企業は国民に責任を負わない国外の仲裁機関においてアメリカ政府の決定、法律および裁判所の下した規制を訴え、税金による賠償金の支払いを要求する権限を新たに獲得するようになる。非公開のTPP交渉開始から5年が経ったいまウィキリークスが公開した文書は、TPPによって拡大される、物議を醸す「投資家対国家の紛争解決」(ISDS)制度に対する懸念の高まりが当然であることを立証している、とパブリック・シチズンは述べた。

漏えい文書が立法化されると、アメリカで操業する日本やその他TPP交渉国のおよそ9,000もの外国籍企業は、アメリカの国内企業と外国の企業とに同等に適用される政策についてアメリカ政府を提訴する新たな権限を獲得することになり、ISDSによるアメリカの負担はかつてないほど増加する。現在までアメリカは、ISDSに基づく攻撃に直面することはほとんどなかった。これはISDS条項が適用された過去の協定は、アメリカで投資活動をする企業がほとんど存在しない発展途上国と締結されたものだったためである。

今回の漏えいにより、アメリカの過去の協定におけるISDS条項と同様のものがTPPでも採用されることは明らかである。(米国の過去の協定では)同条項によりこれまで(投資受入れ国における)土地利用規制や、水、エネルギーおよび森林資源政策、そして保健、安全および環境の保護、さらには財政安定化政策とその他諸々に関して攻撃され、海外投資家に対する36億ドル以上の賠償が法廷命令として下されてきた。ISDSの脅威に関する懸念を少しでも払拭すべく、オバマ政権は過去の協定で生じた問題点はTPPでは改善されると主張してきたが、今回の文書を見るかぎり、ISDS条項を採用したアメリカの過去の協定と比べても新たな保護規定は見当たらない。それどころか、合意されていない分野がほとんど残されていない今回の文書には、2012年に漏えいしたTPPの投資関連条項に含まれていた多様な保護規定も削除されている。

「秘密のベールがとり除かれるにつれ、TPPは強大な力を新たに多国籍企業に付与するものと理解せざるを得ない。我々の主権を脅かし、アメリカの納税者を、何十億ドルという新たな負担の脅威にさらし、アメリカ企業がアメリカの法律の下では持たない特別な権利をアメリカ国内で操業する外国企業に特典として付与している」と、パブリック・シチズンのグローバル・トレード・ウオッチ責任者、ローリー・ワラックは述べた。

「今回の漏えいは、企業のロビイストにとって、そしてTPPの議会通過を採決させるためにファストトラック権限の委任について議会の説得に努めている政権側にとっては災難だ」。この漏えいが起きる前から、アメリカやその他TPP交渉国の法律専門家、全米州議会議員連盟、ケイトー研究所そして議員や市民団体の多くは、ISDS制度に反対を表明してきた。外国の個別企業を主権ある政府と同等の地位に引き上げ、国内の法廷を回避して法廷外の仲裁機関に政府を「訴える」ことによって、公的な協定を私的に行使する権限を与えるものだと主張してきたのだ。ISDS仲裁機関の仲裁人には民間の弁護士が充てられるが、彼らは有権者に対して、あるいは判例に基づく制度および重大な利益相反規定に対して説明する責任を問われない。今回の規則には、本案に対する上訴がいっさい認められていない。多くのISDS弁護士は、互いにその役割を交代しあっており、「裁判官」と、会社のために政府を訴える弁護士との両方を務めるもので、本来的に利益相反関係を生じるのである。

TPPでISDS制度がさらに強化されれば、公共利益を侵害するISDS訴訟事件が頻発することになるだろう。南アフリカやインドネシアなど他の国々は、ISDS条項の盛られた条約から撤退し始めている。1960年代以降にISDSの協定が生まれてから最初の30年間で発生したISDS訴訟件数は世界全体でちょうど50件だが、それに比して2011年から13年にかけては、少なくとも毎年50件の外国投資家によるISDSの提訴が行われた。最近の訴訟事件には次のようなものがある。カナダでの医薬品特許制度上の経費節減政策に対するイーライ・リリー社の攻撃、オーストラリアでのたばこ規制という保健政策に対するフィリップ・モリス社の攻撃、カナダでのシェールガス水圧破砕法の停止措置に対するローン・パイン社の攻撃、アマゾンでの有害物大量汚染に伴う支払いを命じたエクアドル裁判所に対するシェブロン社の攻撃、そしてドイツでの原子力発電の段階的廃止政策に対するバッテンフォールズ社の攻撃である。

「当然ながら、多国籍企業だけがそれに見合った法律制度の恩恵を受けられるのであり、彼らは国内の法廷および法律を回避する権限を与えられ、そして我々の国内企業に適用されるのと同じ法律を順守したくないが故に、高給の企業弁護士を擁して法廷に臨み、我々の税金による無制限な賠償金を奪い取る」とローリー・ワラックは述べた。

※漏えい文書のパブリック・シチズンによる分析の原文はこちらをクリックして開く。(更に原文の1ページ、2行目”posted”から漏えい文書の原文を開くことが出来る。)
http://citizen.org/documents/tpp-investment-leak-2015.pdf

TPPによって外国投資家およびアメリカで操業している企業は、アメリカ企業がアメリカの法の下では利用できない広範囲の新しい実質的な手続上の権利と特権を与えられる。これは、国内と国外の企業に等しく適用されるアメリカの政策、裁判所の命令そして行政措置を順守することにより生じる費用に対する補償を、外国企業が要求することを認めるものである。

これには以下のものが含まれる:
・外国投資家は、あるべき待遇による「期待利益」が脅かされることを根拠として、国内及び外国の企業に等しく適用される新たな政策に対して提訴する権限を付与される。これには行 政措置(新たな環境政策、保健政策または金融政策など)に起因する損害、つまり外国企業の投資価値の減損(漏えい文書が「間接的収用」と呼ぶもの)または以前の政府の下では承認された外国投資家への規制水準の変更(同文書が外国投資家にとっての「待遇の最低基準」と呼ぶものに対する違反のこと)に対して、異議を申し立てる権利が含まれる。

・漏えい文書では、アメリカの以前の協定に見られた「待遇の最低基準」という条項とほぼ同様の文言が含まれている。この文言は仲裁機関が、最も警戒すべきISDS規制を発動したときに利用した文言である。仲裁機関はこのあいまいな「権利」を広義に解釈し、ISDS条項を持つ協定には実際には存在しない「投資が行われる国の法律上及び事業上の環境を変えることはない」というような新しい義務をねつ造してきた。このような拡大解釈に基づいて、アメリカの協定の下での「待遇の最低基準」という義務条項は、ISDS係争の全提訴事件の4分の3で外国投資家が「勝利」をおさめる結果を作った。

・この文書は、外国投資家がアメリカの法律で運用されているのと同様の権利に属する財産権よりも、さらに広い分野にわたる財産権が適用される、「間接的収用」であるという訴えに基づく賠請求を認めている。アメリカの法律で許容される「間接的収用」に基づく賠償の範囲は限定されており、一般的にその賠償は、物理的な不動産(例えば土地)を侵害する行政措置の場合にのみ有効となる。しかし漏えい文書では政府が、動産、知的所有権、金融手段、政府の許認可、金銭、少数株式権、その他不動産以外の形態にある財産を規制する時にも、外国投資家が「間接的収用」を訴えることを認めようとしている。

・外国企業は、財政の安定化を進めるための資本規制およびその他の裁量的なマクロ金融規制に対して、賠償を要求することができる。国際通貨基金ですら、資本規制反対から、財政危機を防止または緩和する目的で政策手段を立案する場合には資本規制の支持へとその姿勢を変化させているなか、この義務は資本規制または金融取引税の行使を規制している。資本規制のための「一時的保護規定」として提案された条項では、過去にTPP交渉国政府が金融危機を回避するために用いて成功したものも含め、多くの標準的な資本規制を守ることはできないだろう。

・漏えい文書では、製薬企業に対して、知的財産権の創設、制限または取消しに関する世界貿易機関(WTO)の規則違反を根拠に、TPPのISDS仲裁機関を利用して賠償を要求することを新たに容認している。現在、WTO規則を私的に行使する権限は投資家に付与されていない。けれどもこの投資関連のTPP漏えい文書では、個別の外国投資家が、入手可能な薬品を確実に手に入れられるようにするための政府の政策を直接提訴する権限が与えられる。政府がWTO規則に違反しているとISDS仲裁機関がみなせば、企業はTPPの禁じる知的財産権の「収用」に該当すると訴えることができるのだ。

・外国投資家に対する政府の義務の拡大解釈を可能にし、それを根拠に賠償を命令するISDS仲裁機関の裁量を制限する新たな保護規定がない。漏えい文書には、2005年の中央アメリカ自由貿易協定(CAFTA)以来のアメリカの協定に見られるものと同様の「保護規定」に関する文言が盛られている。TPPでも「保護規定」条項が単純に模倣されているが、CAFTAの仲裁機関はそれを無視し、いかなる政府も同意していない義務に基づいて政府を規制し続けている。2012年に漏えいしたTPPの投資関連文書に見られた保護規定も、今回の漏えい文書では削除されている。間接的収用から公共利益を保護するための規制を削除した規定である。そこでは、「非差別的規制措置…つまり、国民の健康、安全および環境の保護のような、正当な公共の福祉を目的として設計され適用される政策は間接的収用にあたらない」という表明が行われている。今回の漏えい文書では、アメリカの過去の協定に盛られていたような決定的な抜け道が加えられたことによって、その保護条項は骨抜きにされている。

・アメリカを含むほとんどのTPP交渉国は、外国投資によるISDS提訴是認の決定を公開することを決めている。オーストラリア、カナダ、メキシコそしてニュージーランドは外国投資家を事前承認する権利を留保している。しかしアメリカは、計画された外国投資についてその投資が国の安全に対して脅威となるかを裁定するための外国投資委員会の検討結果に例外はないとした。

・ISDS仲裁機関が、外国投資家に対して賠償として支払うことを政府に命ずる金額は、「将来的な期待利益」を根拠とする。その期待利益とは、TPPで認められている投資家の実質的権利に対する違反だとして投資家が攻撃対象としている公共的政策がなかった場合に、投資家が取得できただろうと仲裁機関が推定する利益である。

・文書は、アメリカ政府を世界銀行及び国連による法廷の裁定権限に従わせるものとなろう。全てのTPP交渉国も、同様の最低権限に従うことに同意しているが、オーストラリアだけは「一定の条件次第では」同様の行動をとるかもしれないと表明している。

・ISDS制度に固有の構造的な偏向または利益相反関係は、いっさい矯正されない。ISDS仲裁機関の仲裁人には、有権者や判例に対していかなる責任ももたない高給の企業弁護士が充てられる。彼らは、「裁判官」としての活動と、投資家が起こした政府への訴訟事件を擁護するという役割を交互に務めることを容認されている。訴訟を起こした企業はさらに「裁判官」のうち1名を直接選ぶことができる。今回の文書では、仲裁人が公平であること、利益相反関係を明らかにすること、直接的な利害関係がある場合に自身を不適格であるとすること、が要求されていない。仲裁人の決定に対して、本案を上訴するための内部的及び外部的な機構はいっさいなく、また法定手続きの誤りに対する訴えは、企業弁護士で構成される他の仲裁機関で決定されることになる。漏えい文書では、投資家に支払うべき政府の賠償および仲裁人の料金のような費用の割り当ての金額を、仲裁機関が決定できるとしている。2012年に漏えいした文書には仲裁人の時間当たり料金について、現在支払われている料金幅での最低金額(何人かの仲裁人が受け取っている時間当たり700ドルと比較して、時間当たりおよそ375ドル)を標準とする条項が見られたが、今回これは削除されている。

・「投資」の定義が拡大されれば、TPPによる広範囲で実質的な投資家の権利は、「不動産」をはるかに越えた領域に拡張適用されるであろう。それは、金融手段、知的所有権、規制許認可などに関連した行政措置や政策に対するISDSの攻撃を許容することになる。2012年の漏えい文書の条項では、「投資」の定義、したがって提訴に服する政策の範囲になるのだが、それらを限定しようとしていたものが今回は削除された。また以前漏えいした条項では政府調達、補助金等に関するISDS提訴は容認されていなかったがそれも削除された。

・「投資家」の定義の拡大によって、TPPの非加盟国企業および実際に投資を行っていない企業が、TPPが外国投資家のために確立しようとしている強大な特権を利用することができるようになる。その結果、例えばヴェトナムにある多くの中国の国有企業も、この文書によればアメリカ政府を「訴え」、賠償を要求することができる。

・漏えい文書によると、アメリカの交渉団はいまだに、他の大部分のTPP交渉国の異議を無視して、外国投資家に対しTPP締結国政府と彼らの契約に関する紛争について、次に関する件を ISDS仲裁機関に持ち込める権限の付与を追求していることが明らかになった:国地における天然資源の採掘権、インフラ整備のための政府調達、公益事業の運営に関する契約など
(漏えい文書では、まだ合意に至っていない文言に大カッコがつけられている。パブリック・シチズンは、どの国がどの条文を支持しているかを列挙している文書を見つけている)。

ISDS制度の最終目的は、政府が外国投資家の工場または土地を収用し、国内の裁判制度では賠償されない場合に賠償を獲得する手段を外国投資家に与えることにあったはずだ。時間とともに、その規則と解釈は著しく拡張された。この問題点は、TPPによってさらに悪化することが漏えい文書から明らかになった。提訴を最後の手段として選択するのではなく、企業によるISDS制度の利用は激増し、攻撃の対象となる政策や行政措置が無限に拡大され、実際の収用に対する提訴の事例はほとんど見られない。

外国企業はこのような提訴を駆使して、たばこ、気候、鉱業、医薬品、エネルギー、公害、水、労働、有害物、開発など非貿易的な国内政策を攻撃してきた。政府が勝訴した場合でも、政府は法定費用の分担についての支払いを命じられることがある。ISDS訴訟事件で訴えられている政策が弁護士にかけた費用のみでも平均して合計800万ドルであり、たとえ政府が勝訴を期している場合でも、提訴だけで政府の政策立案に対する委縮効果をもたらすだろう。

アメリカおよび11の環太平洋諸国(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポールそしてヴェトナム)の交渉官は、ここ数ヶ月でTPPを完成させようと秘密交渉に必死になっている。
(翻訳:池上 明/監修:廣内 かおり)

2015年4月1日水曜日

ミレヤ・ソリス(ブルッキングス研究所):TPPの地政学的重要性と危機にある自由主義経済秩序

 2015年3月13日ブルッキングズ研究所のミレヤ・ソリス(Mireya Solis)氏のTPPについての小論を翻訳しました。
 米国にとってのTPPの地政学的重要性が簡潔に示されています。一方でTPPが合意されなかった場合の問題や、TPAとの関連で議会が新たな地政学的・経済的に負わされるべき責任を展開しています。日本での反対運動における視点とも共通する側面もあるとも言えるのではないかとも思います。(翻訳:戸田 光子/監修:廣内 かおり)

 ミレヤ・ソリス氏は2012年9月に“中立・超党派(?)”のシンクタンクとして世界的にも著名なブルッキングス研究所が日本研究の専門部署を設置した際に研究所のシニア・フェローとして採用され当該部著の責任者に就任した前アメリカン大学准教授。ハーバードの修士・博士課程を卒業し、専門は東アジアの比較政治学、通商政策、日本外交と対外経済政策。

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TPPの地政学的重要性と危機にある自由主義経済秩序
(英語の原文は⇒ The geopolitical importance of the Trans-Pacific Partnership )

 地政学の再来を物語る材料にわれわれは囲まれている。中東の内戦とロシアのウクライナ侵攻がニュースの見出しを占領しているのは言うまでもない。だが、より静かに、潜在的にはより重大な戦略的敗北がアメリカに迫っている=環太平洋経済連携協定(TPP)失敗の可能性だ。なぜ、ほとんど聞いたこともないような通商協定がはかなく崩壊することを心配しなければならないのか? 簡単に言えば、交渉の失敗は、米国の指導力、戦略的地域での重要な連携の深化、新興経済国における市場形成の促進、そして通商政策の未来に壊滅的な結果をもたらすからだ。以下を考慮されたい。

 米国は国際貿易のルール作りができなくなるだろう。世界貿易機関(WTO)はこの20年間、貿易と投資に関する新たな多角的ルールを作ることができないでいる。そしてその間、世界をまたにかけるサプライチェーンは国際的な生産および貿易の形態を大きく変えた。 TPPのような大規模な自由貿易協定(FTA)は、21世紀の貿易の現実にふさわしい新たなルールを提起しようとしているのだ。焦点となっているのは、分散した生産チェーンの効率的管理に欠かせないサービスの自由化(電気通信、交通、など)、対外投資および知的財産権の保護、そして国有企業による略奪的市場行動の回避である。しかしWTOは行き詰まり、各国がさまざまなグループを形成して、経済統合のための基準をそれぞれ定義しようとする分散的競争のシステムに変わってきた。オバマ大統領が警告したように、我々が貿易に関する規則を決めなければ中国が決めるだろう。そして、中国が重商主義的慣行を脱皮するよう促す道が閉ざされることになるだろう。

 アジアへのリバランス(再均衡)が行き詰る。TPPは、米国のアジアへのリバランス政策の(軍事的展開の方向転換に続く)第2段階となるものだ。つまり、この戦略が前進するか、あるいはもたつくかはTPPの命運にかかっている。TPPが失敗に終われば、米国の大国としての力に対する疑問が、再び醜い頭をもたげてくることになる。世界で最も活力に満ちた経済地域と確実につながっていくというアメリカならではの政策も無に帰すだろう。TPPが登場する以前、米国はアジアで進む地域主義から取り残されようとしていたことを忘れてはならない。

 米・日の二国間同盟は重要な支柱を失う。貿易はこれまで両同盟国にとって対立を生む問題だった。TPPが失敗に終われば、米国と日本は農業と自動車の市場アクセスに関する過去の摩擦を乗り越え、21世紀経済の中心となる金融サービスの国際化、知的財産の保護、そしてインターネット経済の管理などの分野に進むことができなくなるだろう。

 国際貿易の課題は行き詰まりを迎えるだろう。TPPが失敗に終われば、この時代の最も重要な貿易課題への取り組みは完全に止まってしまう。そうなった時、貿易上の課題を如何にしたら前進させることが出来るだろうか?WTOは制度的にも、大規模な統合的な課題を前進させるのにはふさわしくない。自ら名乗り出た12ヶ国で協定をまとめることができないのなら、ほかにどんな選択肢があるのか。TPP交渉が崩壊すれば、環大西洋貿易交渉が成功するチャンスは大いに減り、東アジアの貿易協定が大規模な統合を果たす可能性も少なくなるだろう。

今こそTPPの時なのだ!

 TPP協定妥結への扉は急速に閉じられようとしている。2016年の米国大統領選挙が迫っており、今年は厳しいスケジュールの中で多くの重要な節目になる目標を達成しなければならない。貿易促進権限(TPA)法案の採択、市場アクセス分野の米・日協議の現状打開、TPP交渉の全参加国による大筋合意、そして最終的通商協定の採決である。

 何よりもまずTPAを米国議会において通過させる必要がある。TPAに関して何週間も動きのない週が続けば、通商政策はワシントンの機能不全の政治情勢にも影響されない領域だ、とする見通しも立ち行かなくなる。そして、端的に言えばTPAなしにはTPPはないのだ。TPAの議会通過は通商協定を採決する条件ではない、というのが通常の見解ではある。だが、これは技術的議論だ。TPAの本質的役割は、複雑な通商協定の交渉と批准を成功させるための政治的手段だ、と理解する必要がある。

 国内では、TPAは議会が米国の政策の軌道と目標を定める上で重要な役割を持つ、ということを改めて確認するものである。権限を放棄させるどころか、TPAが通れば、議会は通商政策の目標を設定する責任を保持し、交渉の進捗を評価され、通商協定の運命を決定する最終決定者として行動することになるのである。

 国際的には、TPAは交渉相手国に対し、慎重に推し量り相互に譲歩をした包括協定が、批准段階で瓦解することはないことを改めて確認している。とはいえ、確かに、これまで議会が再交渉を要求してきたこともあり、TPAは信頼性のある仕組みとしては不完全である。それでも、たとえTPAのもつ信頼性がわずかなものだとしても、それがなければ、米国が有利な条件を手に入れることはできないだろう。TPP交渉参加国は、将来あり得るだろう“要求”を純粋に懸念しているか、あるいは、デリケートな問題に対して政治的痛みを伴う譲歩を避けるための完璧な口実を得ることになるからである。どちらにしてもTPAを欠くことはアメリカの通商交渉担当者たちの立場を弱めることになる。

TPPが失敗に終わったら、だれの責任か?

 TPPを通過させることはアメリカにとって地政学的、経済的な利益になるだろう。これらの恩恵を得るのに参加国の労働者あるいは規制主権を犠牲にする必要もなく、犠牲にするものでもない。それどころか大規模な自由貿易協定の下では、参加国は(国内で)規制の権利を保持する。というより、協定の目的はより質の高い雇用を創出するために国際的な競争力を高めることにある。

 それにもかかわらずTPPが失敗に終わったら、次なる問題は当然、責任を負うべきは誰か、ということになる。議会は、TPAの可決に失敗すれば、自由主義経済秩序の構築を主導しようとする米国の試みにおいて、足を引っ張ったと言われかねないことを肝に銘じるべきである。

英語の原文⇒ 
■ The geopolitical importance of the Trans-Pacific Partnership
http://www.brookings.edu/blogs/order-from-chaos/posts/2015/03/13-geopolitical-importance-transpacific-partnership
(翻訳:戸田 光子/監修:廣内 かおり)

2015年3月20日金曜日

「いかなる最終合意にも強固な知的財産権保護基準」を!─米国4上院議員からオバマ大統領にあてた書簡

米国政府の立ち位置を示す議会での面白いやり取りと、医薬品業界の強いロビ-活動を示す米上院議員4名連名の2015年3月11日付書簡を翻訳しました。この中で、TPP交渉で“12年間”を主張している米国が議会答弁では“7年間”としていることに製薬業界が怒っている様が、上院議員の書簡の中に見られます。

TPP交渉の大詰めを迎え、知財保護における医薬品デ-タ保護が米国対途上国の間の対立もあって最難航分野と言われています。途上国は現行の2年間を少しでも短くと主張する一方、米国は自国のル-ルである12年間を主張しています。そしてそれ故に、交渉の遅れを生じているともみられています。昨年も米国の医薬品業界は途上国に業界関係者を派遣したり、先般のハワイでの首席交渉官会合の際も大挙押し掛けて交渉に圧力を掛けていたようです。(翻訳:小幡 詩子/監修:廣内かおり)

              ★ ☆ ★

拝啓 オバマ大統領

現在TPPの交渉を進めている大統領のご努力に対し、我々は謝意を表するものです。しかし、本協定が参加諸国に経済的利益を与える可能性があるとはいえ、いかなる最終合意も、米国の知的財産保護を含む主要な優先事項に関するわが国の確約をより強固にするものであることが不可欠です。

つきましては、TPPが現在および将来に向けてこれらの基準を満たすようにするために、最終合意において知的財産権の高い基準―生物製剤データ保護期間を12年にすることなど―を維持するよう切にお願い申し上げる次第です。このようなデータ保護があれば、技術革新を進める人々による創意工夫の追究を可能にしつつ、必要となる相当額の初期投資を相殺するに足る十分な保護を与えることができます。

しかし我々は、特許権保護の維持、とりわけ生物製剤にのみ12年間データを保護するという約束は、オバマ政権にとって我々が思うほどには強固なものではないのではないかと懸念しています。米保健福祉省の2016年度予算案には、ここ数年、国内データ保護12年を7年に短縮する案が含まれています。上院財政委員会の公聴会で、保健福祉省長官のシルビア・マシューズ・バーウェル氏は本案と現在進行中のTPP交渉との関わりについて具体的に質問され、「オバマ政権の見解(立場)としては、思うに…7年でやって行くべきではないか」と言明しました。長官の発言は、政権が我々に何度か確約してき“12年基準”の維持という立場と矛盾します。

ご承知の通り、米国経済の活力ある部門は技術革新を伴う産業が支えています。これらの産業は、熟練の技術を伴う、高賃金の仕事を国内で創出するのみならず、活力に満ちた、急成長を見せる数多の産業において、米国を世界的な先導者となしています。TPPにおける標準以下の知的財産条項は、将来の貿易協定にとって危険な前例を作ることになり、グローバル市場における米国の競争力を弱体化させることになります。また、雇用や将来の技術革新も同様に危険にさらすことになりましょう。

わが国の活力ある生物薬剤部門は、しっかりとした知的財産権保護法が与える影響を示す優良な事例になっています。生物製剤産業は、推計340万人の雇用を支え、生産額として7890億ドルを生み出しています。これらの経済的成果は米国の強力な知的財産権保護法の直接的結果であり、生物薬剤産業は新しい画期的な治療薬を開発する研究に莫大な投資を続けることができているのです。本法律を、国内的にもまた国際的貿易取引の一環としても弱体化させるようなことがあれば、我が国の革新力および患者たちが画期的療法の恩恵を受ける機会に、重大な影響を及ぼすことになりましょう。

TPP交渉の進展に伴い、我々も大統領およびフロマン通商代表がいかなる最終合意にも強固な知的財産権保護基準が確実に盛り込まれるよう尽力されることを、求め続ける次第であります。

敬具
2015年3月11日
(自署)
上院議員Thomas R. Carper      上院議員Robert Menendez 
上院議員Maria Cantwell     上院議員Robert Casey

(翻訳:小幡 詩子/監修:廣内かおり)

2015年3月15日日曜日

TPPを考えるフォーラム「地域を破壊するTPPは止めよう!」に150人が来場

 
 「3.9TPPを考えるフォーラム実行委員会」が主催して、東京ウイメンズプラザ・ホールにて上記シンポジウムが150人の参加を得て行われた。

□まず呼びかけ人の「主婦連合会」山根香織会長が開会あいさつで、「秘密交渉を続け、政府がメリットやデメリットも示さないTPP交渉は国民の合意も得られていない。私たちは、グローバル企業中心の社会を作ろうとするこの動きに対して、「地域」を切り口に今日は討議しよう」、と提起した。

□基調講演では京都大学大学院の岡田知弘教授が「TPPは地域に何をもたらすか」と題して、TPPが締結された場合の地域経済・社会への影響をわかりやすく説明した。

 岡田さんは「TPPをめぐる日米それぞれの政治経済的背景」を振り返った後、TPP交渉が取り決めようとしている分野がサービス、投資などまで広範囲にわたることを指摘し、多国籍企業の資本蓄積欲求に対応した「いっそうのグローバル化」を求めている、と警鐘をならした。

 次に岡田さんは、今日の集会のテーマに沿って「TPPに参加した場合、地域でどのような問題が起こるのか」を説明した。関税が撤廃されれば政府の試算以上に10.5兆円の生産が減少すること、関連産業での雇用への悪影響が見込まれ、その数は190万人の減少となること(これは東京、神奈川、大阪などで著しい)、総じて地域経済を担う産業は「原則無関税化」の衝撃を受けるとした。また非関税障壁による影響も大きいことを指摘した。すなわちその悪影響は、農林水産業のみならず、あらゆるモノやサービス、取引、投資、労働、食品・医療・建築の安全基準にかかわること、医療・金融などサービス市場の開放を求められること、国・地方自治体がおこなう「政府調達」で「国際入札」が求められ、地域社会の仕事が地元企業と外国企業の奪い合いになること、条約が国内法に優越する日本の法制のあり方やISD条項によって国民主権が侵害される恐れがあることだという。
 また、地域社会への影響は「TPPを先取りする安倍流の構造改革」によってもたらされていることだという。アベノミクスの成長戦略を担う規制改革会議、産業競争力会議、財政経済諮問会議はそれぞれ、労働時間規制の緩和、農協・農業委員会制度の改革、混合診療を打ち出したり、医療法人の持ち株会社制度、原発早期再稼働などを打ち出したのである。さらに、3.11被災地に関する「復興特区制度」においては農外資本による水耕栽培(採算がとれず撤退した事例もある)など自然に反した事業、企業的農業だけが短期的に所得向上するしくみなどによって、日本の食料・エネルギー・国土の持続可能性が危機に陥っている、と警鐘をならした。
 さらにまた国家戦略特区による「岩盤規制」の撤廃と資本参入が始まっており、諮問会議や特区区域会議委員となった民間議員が事業者に有利な提案を行い、政策の運用をコントロールしている、と指摘した。これは東京、大阪においては都市再生、医療などにおいて、容積率緩和、外国人医師の登用、保険外併用などが実施され、兵庫県養父市では農業委員会の権限を市長に移管するなどの動きがあり、こうして「世界で一番ビジネスのしやすい環境」をつくろうとしている、というのだ。
  こうした事態に対し、岡田さんは、「小さくても輝く自治体フォーラム」に参加する各地の実践例をもとに、医療、保健、教育、産業、雇用、環境、国土保全などを地域で相互に関連させ、問題を解決する地域再生の取り組みが大切だ、と強調した。
 
□次に、本フォーラムの呼びかけ人でもある、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」の中野和子事務局長がコーディネーターとなってパネル討論が行われた。


 まず、全国農協青年組織協議会の善積智晃理事が、「TPPは地域の崩壊をもたらす」ことを強調した。韓米FTAで明らかになったように、TPPにより農産物の低関税化が進めば、国民の命の基となる、食料供給も滞り、それらの安全・安心の確保ができなくなる恐れがある。また安倍首相のいう「地方創生」もそのねらいは大企業の活動を農村に持ち込むことであり、国土保全も立ちゆかなくなるであろう。これは農村社会の崩壊を意味する。国民の理解も得られていない秘密主義のTPPには反対する、と述べた。

  こうした事態に対して、善積さんは、熊本県では「熊本グリーン農業」を推進する条例を作ったり、学校給食の取り組みなどによって、有機農業、農薬を減らす試み、消費者との結びつきなどを試みている、と紹介し、全国でのTPPに対抗する運動の必要性を訴えた。

□福岡県歯科保険医協会の杉山正隆副会長が、「TPPが医療を壊す」ことを強調した。

  国民皆保険制度によって、日本国民はいつでもどこでも医療に自由にアクセスできる。政府は表向きはこの制度を堅持するというが、TPPによってこれが実質的に崩壊する。
 具体的には、医薬品の特許保護を強化し先発医薬品メーカーが新薬の臨床データの独占権を持ちジェネリック医薬品が普及しにくくなる、政府の医薬品の保険償還価格の決定に製薬会社を参加させ、価格が米国並みに高騰する、「診断・治療・外科的方法」が特許保護の対象である米国ルールが導入される恐れである。また政府の「国家戦略特区」構想により、すでに混合診療がひろがり金を出せる人だけが良い医療を受けられる流れが始まろうとしている。株式会社の病院参入によって、産科、小児科、歯科を軽視し収益を優先する傾向が高まり、医師・歯科医師・看護師などの免許の相互乗り入れによって、外国人スタッフが参加することで医療の水準の低下の恐れがあるのだ。
 これに対する批判的運動は2011年ごろから国際エイズ会議・学会での患者・感染者・医療者の怒りとなっている、と杉山さんは映像によって紹介した。

□討議では、フロアーから「著作権問題」に取り組んでいる、一般社団法人・インターネットユーザー協会から、TPPで著作権が著作者の死後50年から70年に延長される恐れ、著作権侵害訴訟の非親告罪化の問題点が訴えられたのをはじめ、パネリスト同士でもTPPの問題点が討議された。

□次に、アジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子事務局長が海外の地域から取り組まれている運動を紹介した。米国では連邦議会においてTPA(大統領貿易促進権限法)をめぐって慎重論があり、米国民の間でもTPPフリーゾーン運動も起きている。ニュージーランドでも今TPP反対の一斉行動が盛り上がっている、ということだ。
                                                         
□最後に本フォーラムの呼びかけ人の一人で「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の醍醐聡さんが閉会のあいさつをおこない、その中で、TPPへの「無関心」というより「無知」が問題だと感じていたが、今日は参加者とともにTPPに関する「知」を磨くことができた。4月の統一地方選挙ではTPPを争点化し、No!を突きつけよう、と訴えた。
(記 山浦康明)

2015年2月25日水曜日

3月9日TPPを考えるフォーラム開催!「地域を破壊するTPPは止めよう! 」

TPPを考えるフォーラム
地域を破壊するTPPは止めよう!
-公約も国会決議も踏みにじる「合意」はあり得ない-


 ◇基調講演:
「TPPは地域に何をもたらすか」
  京都大学大学院教授・岡田知弘

◇パネル討論・パネリスト
・農業を考える 
  善積智晃氏(全国農協青年組織協議会理事)
・医療を考える 
  杉山正隆氏(福岡県歯科保険医協会副会長)

◇資料代:500円

□ご参加については、できるだけ事前にお申し込み下さい。
*お申し込みは次のホームページから 
http://www.stop-tpp-forum.blogspot.jp/

日本政府は、この春、TPP交渉の「大筋合意」をめざして、国会決議で「除外あるいは再協議」とされている米、牛肉・豚肉まで譲歩を重ねていると伝えられています。これら農産品に限らず、TPPは地域経済・雇用、医療、さらには司法権など国家主権をも脅かすと心配されています。

4月は、統一地方選挙です。これまで多くの自治体議会が、TPPには「反対・慎重に」の決議をしてきました。「地域を壊すTPPはいらない」の声で、TPP推進勢力に審判を下しましょう。

いま、3~4月の「大筋合意」をめざした閣僚会合が取りざたされる中、地域を守るためにも、「情報開示もしないまま国会決議を踏みにじる合意は許されない」の声を、今一度発信しましょう。

日時:
3月9日(月)18時30分~20時50分(開場18時)

場所:
東京ウイメンズプラザ・ホール(渋谷区神宮前5-53-67/地下鉄「表参道」B2出口など)



主 催:3.9 TPPを考えるフォーラム実行委員会
よびかけ:醍醐 聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会)
     中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク)
     山根香織(主婦連合会)

連絡先事務局:アジア太平洋資料センター(PARC)
〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-7-11 東洋ビル3F
TEL.03-5209-3455 FAX.03-5209-3453 
E-mail:office※parc-jp.org(※を@に変換して送信ください)

2015年2月12日木曜日

「主要な未解決事項の最も効果的な解決策」レビン米下院議員が“効果的な協定への道のり”を発表

1月22日に発表された民主党のレビン下院議員のTPPに対する提言です。レビン氏は民主党の重鎮で、かつ通商を扱う下院歳入委員会の有力メンバ-でもあります。USTRにも影響力を持っており、TPAの成立の可否に大きな影響を持つと見られています。また、彼自身、USTRが自分を納得させるまではTPAの審議には乗らないとしています。
TPAには多くの民主党議員が反対をしており、TPP交渉が大詰めを迎える中で議員・業界団体から更に強い圧力が掛けられ始めています。通商促進の立場の共和党も、オバマ大統領を批判する立場でもあり、そのため民主党議員の相当数のTPA賛成がなければTPA可決に積極的にはならないとも見られています。

そのような文脈でレビン議員の提言を捉えておくことが必要かもしれません。ちなみに、レビン議員は前回シドニ-での閣僚会合に突然姿を見せたのですが、その際民主党の篠原議員と前職の首藤信彦氏が面談をされています。(翻訳:清水亮子・西本裕美/監修:廣内かおり)

米国下院歳入委員会幹部メンバー  
民主党 サンダー・M・レヴィン

2015年1月22日
環太平洋戦略的経済提携協定:効果的な協定への道のり

現在行われているTPP交渉は、この時代で最も重要なものだ。

加盟12ヵ国のGDPは世界全体の40%に相当し、世界最大の経済大国の中でも最も開発の進んだ市場中心経済の国から、小さくて最も開発の遅れた計画経済国家まで含まれている。加盟国には日本も含まれているが、米国はこれまで日本と農業、自動車などの重要分野で、公正な競争の場を作ることができなかった。また加盟国の中には、労働条件、人権、法の統治などに深刻な懸念を抱えた国もある。

交渉の範囲は、過去のいかなる多国間交渉もはるかにしのぐ広いテーマにわたっており、知的財産権、医薬品の市場参入、金融規制、食品安全措置、基本的労働・環境基準、国境を超えたデータの流出入、国有企業などが関わっている。

TPPによって、米国の企業、労働者、農家は、高い基準と新市場の開拓が可能になるかもしれない。あるいは、低い基準、非競争的なビジネス慣行、貿易のもたらす恩恵が広くいきわたらないシステムから抜け出せず、アメリカの家計を逼迫させる可能性もある。

交渉開始から4年が経過したが、多くの重要な問題が未解決のままで、TPPは重要な岐路に立たされている。これらの問題を解決できるかどうかで、TPPの利点やTPPが近年締結された複数のFTAの成果のよりも一歩進んだものになるかどうかが決まる。

これから説明するのは、主要な未解決事項の最も効果的な解決策と私が考えるものだ。これらについて成果が出れば、TPPは、とても重要で、多くの超党派の支持を得られる協定になるだろう。米国通商代表部がこれらの成果を出せると確信するまで、議会は今後も追及の手をゆるめてはいけない。

I. TPPの未解決事項
1. 農産物市場アクセス
問題点:米国の農産物輸出は、年間1400億ドルを超える。この額は、海外市場における市場アクセスの障壁を実質的に取り除くことができればさらに大きくなり、米国の家庭にもなんらかの影響をもたらすだろう。日本は600近い産品を関税撤廃から除外しようとしており、米国がこれまで交渉してきたどのFTAよりもその数は多い。他の国々、たとえばカナダも今のところ、農産物の市場アクセスの交渉に十分に取り組んでいない。昨年、140名の下院議員が大統領に書簡を出し、農産物市場アクセス交渉の現状について深い懸念を表明したが、それには正当な理由がある。

解決のための提案:TPP協定では、アメリカから輸出される事実上すべての製品に対する関税その他の諸経費を、ある決まった日までに撤廃すべきだ。関税の完全撤廃とならない限られた例外品目についてTPP協定は、関税率割当その他において、米国の輸出産業にとって有意義な新しい市場アクセスを確立すべきだ。正確な時間軸と限定的例外品目を政府が決める際には、議会と利害関係者たちはその決定に関与すべきである。

さらにTPPは、 (1) 各国政府が人間・動物・植物の生命と健康を守る正当な措置をとる権利を保持しつつ、衛生植物検疫措置(SPS措置)が不当な貿易障壁を作り出さないような履行可能な義務を含み、 (2)地理的表示保護のための国内システムの不適切な使用を通じた米国産品の市場アクセスの弱体化を排除・予防すべきだ。

2. 日本の自動車市場へのアクセス
問題点: 米国の日本に対する貿易赤字は、対中国に次いで二番目に大きく、そのうち4分の3近く(74%)が自動車産業の赤字だ。これによって米国の製造業と労働者は打撃を受けている。日本の自動車産業の閉鎖性は悪名が高く、米国が自動車輸入を何十年にもわたって開放してきたのに対し、日本の自動車市場における輸入車のシェアは、他のいかなる先進国よりも低い。1年に米国が日本車を100台輸入するごとに日本は米国産自動車を1台輸入する計算になる。米国は過去において、日本の市場開放のための交渉を何度か行ってきたがいずれも失敗に終わっている。この問題に効果的に取り組むには、新たなアプローチが必要とされる。

オバマ政権はこれまで、米国産自動車のいかなる関税引き下げも、TPP加盟の2ヶ国間で他の製品に関して交渉したいかなる期間と比べても、最長の交渉期間を伴い、(しかし)おそらくその結末は他の加盟国の手に委ねられることとなり、そのため米国においては、ある産業と他の産業が反目しかねないような立場をとってきた。オバマ政権は、段階的廃止がいつ始まっていつ終るのか、具体的な時期については明言していない。

解決のための提案:日本の自動車市場(乗用車・トラック・自動車部品を含む)に関して、そして歴史的に米国からの輸出品に対して閉ざされてきたその他あらゆる製品の市場に関して、日本が当該の製品の米国からの輸出に対して市場開放を確実に行うのに十分な期間、米国は、日本から輸入する同等の製品に対する関税を維持すべきだ。日本の自動車市場に関しては、米国は以下の2つのうちいずれかのアプローチをとるべきだ。 (1)日本が他の大半の先進工業国と同様の輸入に対する開放性を着実に示し次第、関税を段階的に撤廃する、あるいは、(2) TPP協定が施行されてから少なくとも25年は関税引き下げを行わず、少なくとも30年は関税を撤廃しない。

3. 為替操作
問題点:米国の上下院議員の過半数は、強力で実施可能な通貨に関する義務をTPP協定に盛り込むことをオバマ政権に対して強く求めてきた。TPP加盟国の中には、日本のようにこれまで通貨操作を行ってきた国が多く含まれる。オバマ政権は、まだTPP交渉のなかでこの件について提起していない。

国際通貨基金(IMF)は、すでに価格操作を禁止しており、どのようなケースを価格操作というのかを見定めるためのガイドラインを開発している。問題は、IMF には実施のための仕組みが欠けていることだ。TPP加盟国は、IMFの既存の規則を取り入れ、これらの規則を踏まえて、TPPで実行可能なものにすべきだ。

フレッド・バーグステンをはじめ、多くの貿易拡大の提唱者たちが、この行動を要求してきた。「格差なき繁栄に関する委員会」が最近出した報告書には実際、こう書かれている。「新たな貿易協定には、為替操作を防止するための規則を明示的に盛り込むべきだ。それらの規則では、相互の貿易特恵と、為替レートが他の国を犠牲にして、ある加盟国を利するようなことがあってはならないという相互理解とが、適切に結びつけられなければならない。」

解決のための提案:TPP協定には、TPP加盟各国が為替レートを操作して、国際貿易における不公正な競争優位性を獲得することがないよう、各加盟国が長年従ってきたIMFによって課される義務と一貫性のある、実施可能なルールを盛り込むべきだ。(IMFのルールは、政府が外国為替市場に介入する通貨操作と金融政策とを、明確に区別している。)

4.国有企業
問題点:今日の貿易は、特にアジア太平洋地域において「国家資本主義」の性格をますます帯びるようになってきている。国有企業への政府の支援、商業ベースに基づかない国有企業の行為などがこれに当たる。これらの行為は、米国の労働者や企業を犠牲にして、貿易を歪曲するものである。

TPP加盟各国が一般的義務の条文に関連して連帯し始めると、国有企業の定義を狭くしたり、各国ごとの例外をもうけるなどして、条文に書かれた義務が弱められる危険がある。

解決のための提案:TPP協定は、貿易の歪曲を排除・防止すべきであり、国有企業や国営企業の商行為への関与を優遇するような不公正な競争を排除・防止し、とりわけ差別と貿易歪曲的な補助金を廃止・防止するような規則や、透明性を高めるための規則などを通じて、国有企業と国営企業の関与が純粋に商業ベースだけに基づくことを確実なものにしなければならない。重要なのは、国家が支配するあらゆる企業(会社の株式の半分以下ではあるが、支配可能なだけの株式を国が所有する場合を含む)に対して国有企業の規則が幅広く適用されるべきだ。そして、TPP加盟国は、例外措置を最小限にとどめ、また全ての例外が、目的に沿って厳格に設定されることを確保しなければならない。

5.原産地規則
問題点:原産地規則とは、TPP地域以外を産地とする原料を最終製品にどのくらいまで使い、TPP協定の関税ゼロの適用を受けることができるのかを定めるものである。例えば中国のようなTPP加盟国でない国から輸入した原料がかなり含まれているかも知れない製品を、アメリカに関税ゼロで輸出できるような緩やかなルールを主張してきた国々もある。しかし、緩やかな原産地規則によって米国や他のTPP加盟国の生産や雇用が促進されることはない。そして、TPP加盟国でない国々が、TPP協定によって課される義務を引き受けることなく、TPP協定の利益を享受すべきではない。

解決のための提案:原産地規則は、特に米国産製品と米国産原料を使った製品について、TPP協定による利益を最大限にTPP加盟国が受けとることができるようなものでなければならない。原産地規則が決着する前に、政府は実証的証拠に基づく報告書を議会に示し、自動車製品、繊維、アパレル製品など原産地規則が重要な意味を持つ品目について原産地規則に関する説明をすべきだ。

6.労働者の権利
問題点: 環境分野や手頃な価格の医薬品へのアクセスなど他の主要な条項と同様に、2007年の“5月10日合意”には、貿易協定としてこれまでになく厳しく、かつ徹底した法的強制力をもつ労働分野の義務が含まれている。“5月10日合意”は、TPPにあますところなく反映されるべき根本的な原則であり、今後もそうあり続けなければならない。
 (訳注5月10日合意:2007年5月10日にブッシュ政権とペロシ下院議長との間にむすばれた、「FTAの議会承認を早期に得るために、FTAに労働権・環境保護に係る条項を付加する 旨の合意」)

TPPには、他の条項と同様の紛争解決メカニズムを適用している“5月10日合意”の労働条項が含まれるべきである。この条項の義務は、加盟国が交渉に取り組みはじめたばかりの分野でも、完全に履行されなければならないが、TPP加盟国のなかにはそれが簡単ではない国もあるだろう。特に、独立した労働組合が許されておらず、すべての労働者を代表するとみなされた、政府と結びつきの強い労働組合が1つだけ存在する共産国ベトナムにとっては厳しい規制だ。またブルネイ、マレーシア、メキシコにおいても履行は困難だろう。

解決のための提案: TPPには以下の義務が含まれるべきである:
(1)   国際的に認められている労働者の権利の保護手段を適用し維持すること
(2)   労働法の施行
である。これらの義務には、TPP協定における他の義務と同様の紛争解決制度が適用されるべきである。TPP交渉参加国は、以下のように、この義務を履行し、厳正に実施することに合意しなければならない。

 (i) 労働者は、彼らの選択によって、自主独立の組合へ参加・形成する権利を有し、組合は、特定の連合体に所属することを要求されず、どのような連合体を形成・所属するかに関して、組合自身が自由に選択できる、こととする。

(ii) TPP加盟国は、米国連邦議会に実施法案が上程される前に、TPP協定を順守するための法と規制を導入するために必要なあらゆる措置を採り、かつそのような法改正を実施するために必要な新たな手続きや制度変更を採択しておかなければならない。

 (iii) TPP協定における労働分野の義務を果たすためにその国の労働分野の体制を大幅に変革しなければならないTPP加盟国に関しては、TPP協定発効の日から、当該加盟国におけるTPP労働関連の義務を順守しているかどうか、専門家による独立した委員会(パネル)を設立し、定期審査および公開報告を行う。この際、当該加盟国及び関係者からの情報提供並びに他の関連情報・報告に基づく構造的な改革に焦点を充てることとする。上記委員会が、当該加盟国がその義務を順守していないと判断した場合、その判断は、紛争解決の章における調停委員会の最終報告として扱われる。例えば、合意により、第一審でTPP協定との不適合を排除する、もしくは、最終審として、TPP協定による便益を一時停止にするなど、TPP協定の一連の手続きに則って取り扱われる。

7. 環境保護
問題点: TPP交渉参加国は、過去の貿易協定の条文にそのまま7つの多国間環境協定を盛り込んだ“5月10日合意”とは異なる環境保護体系を検討中である。形式は内容に比べれば重要ではないが、TPPは、法的拘束力のある義務を含む“5月10日合意”を全体的に維持、発展させた水準にしなければならない。しかし、貿易相手国の多くは、保全のような重要な課題を含め、その基準にも満たない水準まで条文の規制を弱めようとしている。

解決のための提案: TPPには、貿易及び投資における環境保護の基準に関し、以下に示すように、少なくとも2007年の“5月10日合意”で確立された水準以上を確保する義務が含まれなければならない;

 (A) TPP加盟各国は、主要な多国間環境協定を履行する施策を採用、維持し、環境保護法を確実に執行すること、

 (B) 違法に捕獲された産品の取引及びサメのひれ切りを禁止すること。違法取引を許可することが知られている準政府組織による行為を含む。

 (C) 過剰に漁獲されている魚種の漁を推進する補助金を禁止すること、

 (D) 気候変動に対処する協調的な取組を推進すること、

 (E) 環境保護義務に対しても、TPP協定における他の義務と同様の紛争解決及び救済措置が適用されること。

8. 医薬品へのアクセス
問題点: WTO規則の下で要求される知的財産権を強化する一方、TPPには、手頃な価格で購入可能な医薬品へのアクセスを確実に確保できるようにした“5月10日合意”の条項が含まれなければならない。しかし、“5月10日合意”において合意された慎重なバランスにゆさぶりをかけている国があり、TPP協定下での医薬品へのアクセスが制限されることになるかもしれない。例えば、発展途上国に対して、ごく限られた移行期間のみ、“5月10日合意”の基準を適用させようとする圧力がある。

解決のための提案: TPP協定は、カタールのドーハで採択されたWTOによる知的所有権の貿易関連の側面に関するTRIPS協定と公衆衛生に関する宣言、革新を育て、全ての人々のために医薬品へのアクセスを促進する“5月10日合意”を共に尊重すべきである。

9. 人権
問題点: TPPのような自由貿易協定により、貿易国間には非常に親密な経済関係が確立される。ほとんどの連邦議会議員もアメリカ市民も、基本的人権を無視する国とそのような関係を確立することを望んでいない。

解決のための提案: 交渉参加国それぞれと協定を結ぶかどうかを決定するにあたり、大統領は、当該国政府が、国際的に認知された人権に常に敬意を示しているのか、また懸念のある分野に対して対策を講じているのかという点を考慮しなければならない。

10. 国家主権: 独自規制の権利
問題点: 貿易は互恵的で水準を引き上げるとはいえ、米国や他のTPP交渉参加国が、主権国家としての規制の権利を放棄するよう要求されているわけではない。TPPの規則は、米国およびTPP交渉参加国が適切に規制する権利を維持できるように、慎重に策定される必要がある。

解決のための提案: TPP協定は、消費者利益、公衆衛生、安全、環境、プライバシー、金融システムの健全性と安定性、国家安全保障などの公益目的の正当な対策を講じる政府の権限を守るべきである。

A. 食の安全に対する対策
問題点: 過去の米国の自由貿易協定(FTA)には、加盟諸国の食の安全対策に関する規範は含まれていなかった。しかしながら、米国の農産物輸出業者は、産品を海外市場に輸出する際の越えられぬ障壁に、たびたび不満を感じてきた。その結果として、彼らは、TPPに対し、衛生及び植物検疫のより幅広い規範を強く要求している。同時に、米国は世界で最も利益を上げられる市場であり、他国の輸出業者が参入したいと考えていることは明白である。我々は、新しい規範が、我が国の規制に関する主権を脅かすことのないようにしなければならない。つまり、TPPの規則は、米国政府やその機関(米国農務省、食品医薬品局、税関・国境取締局)の決定権を護らなければならないし、我が国政府としては、それらの機関に対して、危険な輸入品から国民を守るために必要な手段と体制を確保しておかなければならない。

解決のための提案: TPP協定は食の安全を守るための正当な対策を弱めるものであってはならない。大統領は、TPP協定に従うことが要求される可能性のある米国の法令、規制、慣例に対するすべての変更を、連邦議会でのこの協定の討議の前に特定しなければならない。また、輸入食品が米国内で生産された食品と同程度に安全であることを確認するための費用に関する法令も制定されるべきである。

B. 投資と投資家対国家間紛争解決(ISDS)
問題点: この問題については、交渉担当者及び交渉参加国の幅広い層が、その内容を慎重に吟味している。TPPの交渉国のいくつかは、ISDSを支持せず、若しくは、国家による規制の権利を確実に担保できる予防策を求めている。エコノミスト誌、ケイトー研究所、ドイツ政府(ISDS発祥の地)もISDSに関する懸念を表明している。これらの紛争は近年激増し、公共の福祉や環境規制にとって、これまでにない費用のかさむ問題となっており、政府の行動に萎縮効果をもたらすことにもなるだろう。

解決のための提案: TPPに、以下のような国家の主権を守るための新たな条項が含まれるようにする。(1) 金融危機を予防又は緩和するための資金の越境移転を制限する政府の権利を認めること (2)いわゆる「最低待遇基準」の明確化(カナダの鉱山会社グラミス・ゴールド社がNAFTAのISDS条項により米国政府を訴えた事件の判決に倣って) (3) TPP諸国が投資分野の義務の解釈について合意するためのメカニズムの内包化。仲裁に持ち込まれた申立てが、裁判所によって原告に有利な賠償が認められるべきという申立てではないことの決定を含む、(4)“ 5月10日合意”の文言との結合――その文言に従えば、TPP協定は、国内法下の国内投資家に対するものより実質的に大きな権利を付与されるものではない、と明確に述べられている。つまり米国と同様に、国内法下の投資家の権利は、TPP協定と同等あるいはそれ以上に保護される。

C. 煙草規制
問題点: 最近の国際紛争の多くは、米国のクローブ入りタバコ禁止措置を含め、タバコ対策に対するものである。政府は2013年、それまで支持していた、タバコだけは紛争に巻き込まれない安全域とする方針を、TPP交渉においては求めないことを決定した。さらに、米国が締結する貿易協定の中では、タバコは通常の公衆衛生上の例外として扱われることを単に明示することを提案した。しかしTPPでは、より強固な対応が必要で、政府による行動が待たれる。

解決のための提案: TPP協定はその仕組みにおいて、タバコに関する無差別的な公衆衛生対策が、TPPの義務に矛盾するとして問題にされるようなことがあってはならない、と明確にすべきである。

II. 連邦議会議員と利害関係者に対する透明性
連邦議会の全議員が、交渉参加国の立場に関する情報を含む交渉文書に、完全かつ遅延無しにアクセスできるようにする必要がある。連邦議会の各議員は、適切な機密保持権限とともに、TPP交渉の提案文書をすべて、遅延無く入手できる担当者1人を指名出来るようにすべきである。

政府は諮問委員会のメンバーが、米国及び他国の交渉提案文を入手できるようにすべきである。これにより、諮問委員会は、時宜を得た実効性ある助言を政府に提供することが可能になる。

(翻訳:清水亮子・西本裕美/監修:廣内 かおり)