2015年7月3日金曜日

GE、インテル、ジェネリック業界…USTRのメール交信報告から浮かぶ産業界のTPP人脈図

スイスに拠点を置く交際的なNGOで、国際的な知的財産に関する政策のもたらす影響などを紹介、報告をしている「知的財産ウォッチ」が米国の情報公開法Freedom of Information Actに基づいて入手したUSTRと産業界側の“顧問”(TPP交渉の助言者として認められた数百人もの業界代表)との間での電子メール交信についての概要報告の翻訳です。内容はTPPそのものの秘密情報を含むものではありません。しかし、これまで“数百人もの企業を代表するTPP交渉顧問”と言われていた面々が、実際USTRとの間でどんなことをしているのか、その一部の断面が実に生き生きと伺われる愉快なレポートです。 (翻訳:西本 裕美/監修:廣内かおり)

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産業界の秘密・緊密なTPP関与、米通商代表部(USTR)の機密メールで明らかに

米国と12の貿易相手国が秘密裏に交渉している環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の結果によって、あらゆる利害関係者が影響を受けうる一方で、企業代表は交渉テーブルの特等席に着いてきたことが、「知的財産ウォッチ」が入手した米通商代表部USTRの数百ページに及ぶ機密メールから明らかになった。このメールから、USTRでどのように政策が形成されていったかに関する貴重で興味深い知見が得られた。

交渉開始から数年、TPPは妥結間近であり、米国議会における大統領のファストトラック包括交渉権限(この権限下では、議会の役割は賛否の採決に限定される)の更新に関する討議における課題であると言われてきた。しかし、TPPの文書は、これまで決して―その一部が時折リークされたことを除けば―交渉参加国の市民に公開されてこなかった。ゆえに、今回の電子メール入手は上記の討議にとって時宜を得たものとなった。

「知的財産ウォッチ」は、情報公開法(FOIA)に基づく請求によって、USTR職員と業界側の顧問が交わした400ページあまりに渡る電子メールを入手した。その殆どは黒塗りの編集が施されていたが、それでもなお、これまでの経緯を理解するのに役立つ。

今回はじめて一般に公表された電子メール(2010~2013年)
(1), (2), (3), (4) [all pdf].

上記情報公開法による請求は、「知的財産ウォッチ」のためにイェール法科大学院「報道の自由と情報公開」専門法律相談所Media Freedom and Information Access Clinic により訴訟の対象として持ち込まれたものである。「知的財産ウォッチ」は貿易交渉そのものへの見解は示さず、TPP交渉における極端な秘密主義によって、この交渉についてなんらかの意味のある記事を執筆することができない、と主張してきた。TPPに関する報道は大抵、詳細に触れず会議の日程と課題を挙げるのみである。

[注:今回のメール公開を引き出したイェール大と「知的財産ウォッチ」による訴訟は進行中で、TPP文書自体の公開を目指しており、裁判所の判決を待っているところである。]

今回のメールで特筆すべきは、政府交渉者が業界の大物達に専門的知見や助言を求めたことではない。交渉者と業界側の顧問達が、彼ら以外のどんな利害関係者とも比べようがないほど緊密な関係にあることが暴かれたことである。

「知的財産ウォッチ」は、議会メンバー、中小企業、公益活動団体、学術団体、その他の”非認可”顧問との関わりの記録は請求しなかったので、それらとの緊密度を直接比較することは出来ない。しかし、例えば、公益全般を代弁する活動家が、いかに専門家として認められていたとしても、このレベルの近しい待遇を受けるとは想像しにくい。

メール交信に登場する”認可”顧問は、企業、業界団体から法律事務所までに及ぶ。彼らの中には、アメリカレコード協会、米国研究製薬工業協会PhRMA、ゼネラル・エレクトリック、インテル、シスコ、ホワイト&ケース(法律事務所)、高度医療技術協会(AdvaMed)、アメリカ映画協会、ウィレイ・レイン(法律事務所)、エンターテインメントソフトウェア協会、ファンウッド・ケミカル、米国化学工業協会、クロップライフ(アグリビジネス業界団体)、メドトロニック(医療機器メーカー)、アメリカン・コンチネンタル・グループ(コンサルティング会社)、アボット(医薬品メーカー)が含まれる(順不同)。ジェネリック医薬品業界の代表とのメール交信もある。

これら産業界の代表の多くは、USTRのOBである。

メール交換の例

USTR職員と産業界のメール交換は、交渉期間中に言及されたTPPに影響を与え得るあらゆる話題を網羅している。例えば、日本や他国を含めるようなTPP参加国の拡大、交渉参加国間の透明性に関する協定、医薬品アクセスに関するUSTRの公式声明、カナダとその文化、米国特許改革法案、知的財産権と環境問題に関する情報、ソフトウエアの特許適格性、EU・他の貿易協定・国際開発との関係、そして、予想通り、協定草案の構成要素に関する膨大な協議である。

例を挙げると、ゼネラル・エレクトリックの航空部門代表タヌジャ・ガーデは「“商行為に関わる秘密保護trade secret”に関して、君が提出した文章をシェアするか、電話で話せないか?」と依頼し、これに対してUSTRの職員プロビア・メータは「チャットしよう。月曜のどこかは?」と答えている。他の箇所では、ガーデはメータに「ダラスでの提出分について聞いたよ。いい内容だった。会議所には報告したか?(※米国商工会議所、産業界の団体)」と書き、メータは「有難う、タヌジャ。本当に君とジョーのおかげだよ!(※USTRの職員ジョー・ホワイトロックのこと)米国商工会議所の「TPPと知的財産」作業部会で先週報告したところだ。」と返している。

“商行為に関わる秘密保護”に関する議論には、他の大企業も参加している。デュポン、コーニング、マイクロソフト、クアルコムなどだ。

他の例では、エンターテインメントソフトウェア協会(ESA)の副会長ステーブン・ミッチェルが、交渉中の技術保護手段(TPM)に関するESAの分析の草案を提供している。USTRはこれに対し、「来週のどこかでランチの時間がとれるか?」と返答している。

シスコ・システムのジェニファー・スタンフォードはTPPとサプライ・チェーンの問題に関わっている。インテルのグレッグ・スレイターはまだ公開されていない課題に関するメモを提供している。ウィレイ・レイン法律事務所のティモシー・ブライトビルは省庁をまたがる提案のための国有企業(SOE)に関する文案を至急提供するよう依頼されている。

RIAA(アメリカレコード協会)は、電気通信の章を検討して質問し、”情報処理技術勉強会(ITAC)の選抜メンバーによる著作権法と施行に関するTPP草案”について議論し、インターネット・サービス・プロバイダーに関する文案にコメントし、ニュージーランドで行われている適法なオンライン音楽サービスの情報を提供している。国際知財同盟International IP Allianceも著作権とその施行に関与している。更に、著作権関連産業の代表らは、著作権の制限・例外、副次的責任の選択肢、安全ルールに関する彼らの見解を送付している。

ITACは、産業部門毎にいくつかあるUSTRの産業貿易諮問委員会である。

早い段階で、クロップライフのドゥグ・ネルソンは、彼のチームがクアランプールとベトナムで両国の官僚に対し、農業用化学品のデータ保護に関するロビー活動を行ってきており、「彼らが、データ独占重視のTRIPS協定第39条3項を受け入れることは確実である」と述べている。彼は、クロップライフが、ニュージーランドでの次のTPP会合でプレゼンの機会を持つか、あるいは米国代表団の一員として参加出来ないか問い合わせている。USTR職員のスタン・マッコイは、ニュージーランド政府が民間セクターの並行会合をどう扱うか知らないと回答している。

2011年のメールでは、マッコイはGEのロビイストに「特許改革法案の調印式にGEのCEOが出席するなら、ニュージーランドの貿易大臣ティム・グローサーが出席することを知っておいて欲しい。ニュージーランドにTPPで強力な知的財産(保護)の章を支持するよう勧める素晴らしい機会になるだろう。」と伝えている。

他には、ファンウッド化学のジム・デリスが原産地規則の草案を見て、言っている。「USTRに借りができた。この規則なら我々の規則と同じだ・・・喜ばしいことに。」

さらなる例として、AdvaMedのラルフ・アイブスは、USTRのバーバラ・ワイゼルとTPPに関するあるCEOの書簡について意見交換をしている。ワイゼルは、その書簡を見るまではコメント出来とした上で、「お気遣いに感謝するけれども、書簡の中の交渉人の名前は明かさないで欲しい」と言っている。アイブスは明らかに書簡の草稿と共に返答している。「(草稿に)手を入れてくれとは言わないが、こんな感じで送ってよいか教えて欲しい」。ワイゼルは、それに関して自分と会って話すよう要請しつつ返答し、さらに会合を設定するとしている。他の箇所では、AdvaMedが貿易に関する技術的障壁(TBT)の議論に参加している。

オーストラリアの医療産業協会が、USTR職員との直接の交信に加わっている。

今回の電子メールから明らかになったことで特筆すべきは、交渉官、そして業界の代表は、週末も休日も、数え切れないほど世界中を旅しつつ、非常にハ熱心に長時間働いていることだ。
USTR職員が定められた規則を守ろうと努力していることも、その交渉の秘密の度合いに同意すらしていないのかもしれないことも明らかになったようだ。2012年のある時点で、USTR「知的財産と革新」部長のヤード・レグランドはあるロビイストに伝えている。「あなたや関係者の皆さんと、必要ならすぐ連絡がとれるようになったことは喜ばしい。ご存知の通り、実際のところ、私は“非認可顧問”とは草案について話せないので。」

また他のところでは、USTRの首席交渉官バーバラ・ワイゼルから産業界に、同じことを何度も繰り返さないようにとの要請がなされたとの記載もある。(翻訳: 西本 裕美/監修:廣内 かおり)

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