2015年9月25日金曜日

日本と北米3ヶ国 自動車原産地規制で埋まらぬ溝

日本とNAFTAに参加する北米3か国(米国、カナダ、メキシコ)の間で、自動車および自動車部品の原産地規則に関する対立があります。現在残されているTPP交渉の主要対立点は、生物製剤の新薬データの保護期間、乳製品と自動車の原産地規則とされています。ところがニュー・ジーランドではキー首相もグローサー貿易担当相もここ2〜3日間、乳製品で大幅な目標を獲得することを諦めて国内を納得させるような発言が目立っています(次回の会合で合意できる内容が、我々が最大限獲得出来るもので、我が国にとって最良の結論だ)。

そして一方カナダでは総選挙で火花を散らしていることもあり、連日自動車の原産地規則問題が報道をにぎわしており、労組、地方自治体が反対の声を挙げています。米国・カナダの自動車業界はメキシコの輸出加工区に大きな投資をし、投資先の部品工場・自動車工場は米国とカナダが最重要の市場になっています。そしてただでさえ近年中国や東南アジアからの輸出に市場を奪われつつあります。自動車の原産地規則はほくべ3ヶ国にとって重要な問題であることは間違いありません。(2015年9月24日)(翻訳:田中 久雄/監修:廣内 かおり)



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自動車部品産業界が交渉会合に先立ち、TPPの原産地規則に圧力2015年9月10日付インサイドUSトレード紙から

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)における自動車原産地規則に関する今週(9月9日~11日)の4カ国交渉会合に先立ち、米国と日本がすでに取決めたこの分野の原産地規則をより強力なものにすることを、米国自動車部品メーカーは求めた。しかし完成車については、両国が出した結果以上に厳しい原産地規則を明確に要求するには至っていない。
米国自動車・部品産業協会(MEMA)は、マイケル・フローマン米国通商代表への9月9日付けの書簡と、カナダとメキシコの同業者団体と共に3ヶ国政府に送付した9月8日付けの共同書簡の中で、自動車部品の30%という域内原産比率(RVC)に反対した。しかし、両書簡では、米国と日本が自動車完成品について定めた45%という域内原産比率に明確には反対しなかった。

日米間の取決めに、カナダとメキシコの政府は、域外調達の割合をあまりに大きく容認し過ぎているとして7月に拒否したが、それには最低基準に適合すれば自動的に域内調達と見なす7種類の自動車部品リストもまた含まれていた。(インサイド米国貿易、8月28日掲載版)

9月9日付の書簡では、MEMA代表兼最高経営責任者のスティーブ・ハンシュ(Steve Handchuh)は、域内原産比率をあまりに低くすると、TPP域内で操業している米国自動車部品製造業者と、その域外で操業している日本の製造業者との競争関係を悪化させるだろうとほのめかした。彼はフローマンに対して、確実に「自動車部品の原産地規則が、自動車の完成品のために成立させた合意を(反映する)」よう要請したが、両方の分野の具体的な域内原産比率はなにも提示しなかった。
3つの業界団体からの9月8日付の書簡では、米国、カナダ、メキシコの貿易担当大臣に対して、「自動車完成品の最終合意をすべて反映する、自動車部品の原産地規則」を要求するよう促しているが、そのことは、原産地規則が自動車と部品の双方に適用されるならば、50%以下の数字でも書簡の署名者は受け入れ可能との道を開いていることを表している。   

部品メーカーは、日本、米国、メキシコ、カナダの交渉官が自動車の原産地規則に関する相違を縮めようと、今週ワシントンで共同会合を開催する時に合わせて圧力を強化した。同じ時期に、米国の上院財務委員会の3人の議員が、TPPの原産地規則を北米自由貿易協定で定められている62.5%と少なくとも同等にすることを要求た。
TPPにおける自動車問題の日本側の首席交渉官である森 健良は、水曜日(9月9日)午後に米国通商代表部次席代表代行ウェンディ―・カトラーとの会談を始めた。ワシントンには金曜日まで滞在する予定である。

カナダとメキシコの交渉官も木曜日と金曜日に協議に加わるだろうと、関係者は述べた。カナダの代表団はTPPの首席交渉官カーステン・ヒルマンが率いると、カナダ政府の広報官は話した。

他の交渉課題と同様に、カナダ政府の目標はカナダの製造業者が競争力を維持できる結果を確保することであると、その広報官は語った。
9月8日付けの書簡で初めて、米国、カナダ、メキシコの自動車部品製造業者は米日間の自動車の原産地規則の取決めに反対を明らかにした。しかし、カナダ自動車部品製造業者協会(APMA)とメキシコ全国自動車部品産業(INA)は、NAFTAが必要条件とする「純費用方式」(net cost method)による自動車部品に対する50%の現地調達比率を求める共同書簡を、8月20日に両政府に対し送付している。(純費用方式:取引価格から中間費用を除いた純費用から非原産材料価格を差し引き、純費用で割り算をした%)

しかしながら、MEMA、APMA、INAにより署名された9月8日付け書簡では、これら団体が求めているはっきりした数字を確認するには至らなかった。注目すべきは3団体が、50%の域内原産比率という自動車完成品の原産地規則を求めるNAFTA域内の自動車製造業者による提案を支持するということである。この点で、共同書簡は50%の域内原産比率というカナダとメキシコの自動車部品メーカーの断固たる要求とMEMAの柔軟な立場の双方に配慮しているように思える。

9月10日のインタビューで、MEMAの政府問題担当上級副代表アン・ウィルソンは、自分たちの団体がカナダやメキシコの同業者と特に同じような立場をとっているものではないことを認め、交渉の最終段階で重要なことは、現在協議されている内容が「過去の歴史(past history)」に反していると述べることであると語った。

彼女はまた、MEMAは自動車の完成品に対して域内原産比率の最低基準とはどうあるべきかという問題に明確な立場を示さないだろう、と語った。MEMAの柔軟な立場は注目すべきことであるが、その理由は、既に米国自動車メーカーは米日間で合意された自動車完成品の45%域内原産比率を受け入れるつもりであると示唆しているからである。
MEMAからの書簡は、自動車部品製造業者は74万人の直接雇用を伴う米国で最大の製造業部門を構成していることを強調したものである。「強力な原産地規則は、すべての自動車製造業者に十分な供給基盤を提供し、同時に部品製造業者にとっては国内外における成長機会を守ることになるだろう」、とハンシュは書いている。

そして、弱い原産地規則は特に小規模な自動車部品製造業者への痛手になるだろうと主張している。規模の小さなMEMAメンバーはメキシコに工場を持ち、ある程度の生産能力を他のTPPの国々に拡大していると伝えられているが、それでも米国内での事業における日本との競争の可能性に不安を覚えている、と書簡で述べている。

「それゆえ、米国通商代表部は警戒を怠らず、部品製造業者が国内及びTPP各国において生産能力を築き、維持する機会を提供しなければならない。原産地規則は、米国における部品製造業者に損失を及ぼすために使われてはならない」と、ハンシュは書いている。
自動車部品の原産地規則が低い水準であれば、北米やTPP域内の他の場所で事業展開をしている米国の製造業者に対してではなく、現在TPPの域外で事業展開しているかもしれない日本の部品製造業者に成長の機会を与えることになり、競争条件を悪化させることになるだろう、とウィルソンは警告した。(翻訳:田中 久雄/監修:廣内 かおり)

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