2012年6月3日日曜日

TPP第12回ダラス全体会合情報・USTRカ-ク代表のインタビュ-

5月のダラスにおけるTPP第12回全体会合の際のUSTRカ-ク代表とのインタビュ-記事(ロイタ-)を「TPPに反対する人々の運動」が翻訳しました。(翻訳:池上 明、田中 久雄)



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(ロイター記事)アジア太平洋地域での9カ国の自由貿易協定を作るための国際交渉については、アメリカは可能な限り開かれた姿勢でいるが、協議上交渉においては一定の秘密保持がされなければならないとアメリカの通商担当の代表者は語った。

「我々はできる限り、交渉過程において最も機能しそして透明性を確保するというオバマ政権の精神の範囲内で、極めて忠実に仕事を行ってきたと信じている」と、アメリカの通商代表のロン・カーク氏は、ダラスからのインタビューで述べた。そのダラスでは今週、アメリカの主催による、環太平洋戦略的経済連携 協定案に関する第12回目の全体会合が行われている。「しかし我々は、交渉力を維持し、同時に相手国がなるべく避けたい問題も、交渉のテーブルに進んで載せるよう促すこと出来るよう、ある程度の自由裁量と秘密保持とを確保しなければならないという、実践上の理由がある。」とカーク代表は述べた。

消費者のための政策提言団体であるパブリック・シティズンの国際貿易監視部門などの批判者たちは、交渉経過をもっと公開するよう求めてきた。彼らは、この協定によって、オンライン海賊行為の防止を目的にインターネット通信の自由が制限され、また医薬品の特許保護期間の延長により人命を左右する医薬品の入手が制限され、そして投資保護条項を利用して、アメリカ企業が多くの雇用を海外に移転することを助長させるなどの懸念を持っている。彼らは、一般の人の意見がもっと反映されるように、交渉参加国に対しTPPの草案の原文を開示するようしつように迫っている。

カーク代表は、金曜日(5月11日)のロイターとのインタビューで、現在の交渉では、そうするにはまだ早すぎる、と述べた。しかし彼は、「我々がひとたび草案で合意すれば、他の協定でもそうしたように、公開出来る時期が来るかもしれないだろう」と語った。
「いつ公開するのか、またしないのかの判断については、緊張関係はつきものである」とカーク代表は語り、10年ほど前に、米州自由貿易地域(FTA)の草案を公開し、結果として最終合意に達することが出来なかったことに言及した。

アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ペルー、シンガポール、ベトナム、マレーシアそしてブルネイは、年末までに広範囲にわたるTPP通商 協定の交渉に決着をつけたいと望んでいる。これらの国々は、貿易障壁を撤廃し、労働者の権利・環境保護そして知的財産権に関する規則などの分野に関する国 際基準をより高水準のものにするという点において、従来の協定よりもはるかに進んだ「21世紀の協定」となることを目指している。また、場合によっては中 国さえも含め、将来は他の国々の参加への道も開かれた協定であることを望んでいる。

<国有企業について>
ダラスの前市長だったカーク代表は、パブリック・シティズンやその他のTPP協定の批判者とも話し合いを行ったし、これからも反対論者が重要と考える事項 と実業界のそれとの比較検討を続けるだろうと語った。実業界は、この協定について、アメリカと急速に成長している地域との強力な結びつきを発展させること により、企業を成長させる絶好の機会とみなしている。

アメリカは、協定の目指す目標については可能な限り公開するよう努めてきたが、一方で、重要関心事項に関しては、各国が議論を尽くした上で合意するために 必要な秘密性は維持してきた、とカーク代表は述べた。オバマ政権は土曜日(5月12日)に、産業、労働、環境や貿易のそれぞれの関係の活動グル-プが9カ 国の交渉担当者と顔を合せ、それぞれの関心事項を議論できるよう「利害関係者の日」を開催した。TPP 協議におけるアメリカの交渉責任者であるバーバラ・ウェイゼル氏 Barbara Weiselは翌日の日曜日にも同じ団体と会い、交渉の進展についての概略を説明した。

USTRのサイトに掲載された情報によると、ウェイゼル氏に対する最初の質問は、TPPの原文公開の要請であった。アメリカ政府の立場は、「TPPの各章 の条文については絶えず進展しており、原文を公けに開示することはできない」というものであるとウェイゼル氏は説明した。しかし、アメリカの通商代表部事 務所は「アメリカの立場の取り方、都度の交渉概要、協議の進展に応じ諸課題にどのように対応するか」という点に関して、利害関係諸団体との間で熱心な議論 をしていると語っている。

一方、カーク代表は、アメリカは、私企業と、世界貿易で存在感を増している「国有企業」との間の競争条件を平準化する規則のための交渉を強力に推進してい る、と述べた。TPPの交渉に参加しているいくつかの国、特にベトナムには、協定により影響を受けることになる国有企業が多数存在している。そしてアメリ カは、より長期的な目標を掲げ、将来中国の多くの国有企業にも適用出来る規則の策定を目指しているのである。

カーク代表は、この問題は交渉担当者にとって中々厳しいものであることを認めた。彼は「これは、我々が何を達成しようとしているのか、またその狙いの水準 について相手を安心させる必要のある分野であり、もう少し時間が掛かるかも知れない」と述べた。そしてこの問題については、来月ロシアのカザンで開かれる アジア太平洋経済協力会議(APEC)の貿易担当相年次会議の場で、TPP交渉の相手方と議論をすることになるだろう、と付け加えた。

カ-ク代表は、6ヶ月前にホノルルのAPEC首脳会議で最初に表明された日本、カナダそしてメキシコのTPP協議参加への関心について、カザンで何らかの 決定がされるかどうかについては、明言を避けた。TPPの9カ国は日本、カナダそしてメキシコの参加への関心を歓迎しているが、この3ヶ国が協議に加わる までに解決されなければならない懸念が多数ある、と彼は語った。

「従ってある程度、我々9カ国がその決定をどのくらい早くできるかについては、我々が既に彼らにも明確にした諸課題について、日本、カナダそしてメキシコが解決する姿勢を見せてくれるのかどうかにかかっている」と彼は語った。

カーク代表は詳しく触れなかったが、日本については農業、自動車そして保険が、カナダについては農業と知的財産権保護が、そしてメキシコについてはいくつかの関税規則が、それぞれの主要課題である、とアメリカの産業界は述べている。
※Eric Beech and Christopher Wilson編集による。



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以下は上記の記事についてのJamie Love氏のコメント(翻訳:近藤康男)

全ての製薬会社、出版社は、以前米国政府の貿易担当であった人間により利害を代表してもらい、米通商代表部に(情報をもらい意見具申もする)顧問団の椅子 を用意され、そして政府により定期的に交渉中の原案についての概要説明を受けている。カ-ク代表は一般大衆に対しては合意された内容を知らせようとしてい るだけである。彼がもし、透明性により合意が不人気となることを恐れているとしたら、誰がその合意により最も助けられ、誰が最も痛手を負うかは明らかなの である。一般大衆は敗者となるのである。
与党民主党の下院議員がこの透明性という点についてこんなにもノンビリしているのは信じられないほどである。ラルフ・ネ-ダ-の格言が多くの真実を含んでいることを表している。民主党と共和党の唯一の違いは、企業が彼らに要望を出そうとする際の対応の速さだけである。

(2012/05/25 「TPPに反対する人々の運動」ブログに掲載されたものを許可を得て掲載しております)

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