2013年11月12日火曜日

フロ-マンUSTR代表「何が未解決の問題なのか、みんなの頭にはっきりと描かれている」「満足のいく結果を二国間交渉で導き出す必要がある」

米政府機関の閉鎖は解除されましたが、まだ閉鎖中の時にワシントン・トレ-ド・デイリ-がUSTRフロ-マン代表に独占インタビュ-をしています。

勿論フロ-マン氏がマイナスのコメントをすることはない訳ですが、バリ島での首脳会合以降、年内合意の目標を維持するために議会対策にかなり集中し、かつ議会の各関係委員会を総動員して取り組んでいる様子が伺われます。年内妥結を優先するために合意の水準を切り下げることも許されないという事情け中で、一方で中間会合や2国間交渉で妥協点を探ろうとする動きも垣間見ることができます。

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2013年10月15日(水)
ワシントン・トレード・デイリー第21巻207号からの紹介
フロマン米国通商代表部代表との議論

マイケル・フロ-マン米国通商代表部代表は昨日、WTD(ワシントン・トレード・デイリー)との独占インタビューに応じ、進行中の貿易における重要な出来事について語った。インタビューでフロ-マン代表は、目下、米国政府が閉鎖されているが、多くの重要な貿易分野において進展していることを強調した。
彼は、終わったばかりのバリ島におけるTPP参加国の首脳による協議とそれに続く環大西洋貿易投資協定の交渉(先週のブリュッセルでの交渉第2ラウンドは延期)に触れた。(WTD, 10/11/13)

フロマン氏はまたジュネーブにおける「バリ」危機について語ったが、WTOのロベルト・アゼベド新事務局長は12月はじめのWTO第9回閣僚会議までに貿易構想をまとめるためにできることはすべて行っている、とも述べた(この号の関連記事参照)。

オバマ政権は(ほかにも喫緊の懸念を抱えるが) 、大統領貿易促進権限や米国一般特恵関税制度(GSP)の更新など今後も様々な貿易問題について議会と密接に協議を続けていく。

以下は30分のインタビューを書き起こしたものである。

Q:大統領貿易促進権限と米国一般特恵関税制度の更新については、どのように進んでいますか?オバマ政権はどちらも達成したいことと思います。議会との議論はどういう状況ですか?どちらも今年中の決着を望んでいますか?

A: 大統領貿易促進権限については、オバマ大統領はそれを望んでいることを言明しており、われわれは早期実現を目指し、幅広い超党派の支持のある法案をまとめたいと思っています。ですから、管轄の委員会と作業を続けています。下院歳入委員会と上院財政委員会がこの数ヶ月間、法案についての作業を行っており、私たちもそれに協力しています。私たちは必要に応じて技術的支援を提供しています。できるだけ早く、できるだけ幅広い支持を得るために、協力に意欲的であると彼らにはっきりと伝えてあります。

一般特恵関税制度についても、私たちは更新の必要があると明言しています。両院には現在、はっきりとした更新をめざす法案が出ていると思います。私が感じるところ、両院とも目下ほかの問題に集中しているようですが、私たちの目標は、両院にできるだけ早く上程してもらうことです。重要な開発上の利益があることはもちろん、輸入に頼っているがゆえに現在高いコストに直面している企業にとっても重要な利益があります。ですから、議会が一般特恵関税制度の問題に注意を向けることができるようになった時には、これを進めてくれることを私たちは望んでいます。

Q:TPAとTPPの関係についてはどうお考えですか?TPPに決着をつけるためには大統領貿易促進権限が必要と感じておられるのか、あるいはTPAはむしろTPPを議会で通すためのものなのでしょうか?

A: TPAは重要な手段であり、できるだけ早く通せればよいでしょう。私たちは全力を上げてTPP交渉を継続しており、年内の決着を目指しています。前のTPAによって認められた既存の手続きのもとで議会と協力しているので、提案内容は、下院歳入委員会と上院財政委員会だけでなく、管轄する他の委員会も前もって目にしています。たとえば、農業問題の場合は農業委員会に提示sぅるなどです。私たちは積極的に議会を巻き込んでいますので、この間、議会が驚くようなことをTPPで交渉しているということはありません。しかしとにかく、繰り返しますができるだけ幅広い支持を得た上でTPAを早急に可決することが望ましいと思います。

Q:TPPの他の参加国は米国政府がTPAを持っていた方がいいと思っているとあなた方は感じていますか?交渉はいま最も困難な問題にさしかかっているので、合意について議会が承認するという一定の安心感を持てるのでは?

A:TPP交渉参加国は、オバマ政権がTPPを決着させて議会を通すことに専念していることを承知しています。彼らは米国での私たちの政策過程についてよく理解しており、私たちが貿易政策を議会と政府のパートナーシップとしてとらえており、議会が交渉のプロセス全体を通じて関与していることを分かっています。ですから、私は、繰り返しになりますが、議会は安心感を持っていて、驚くことはないと思います。私たちの議会のパートナーたちは、私たちが進めている内容はすべて知っており、これまでずっと意見や提案を出す機会を持ってきました。

Q:バリでのTPP首脳会合を受けて、TPPの現状についてお話しいただけますか?交渉官たちに対して、交渉を年内に終えるための具体的な事項について明確な指示が出ているのでしょうか?

A:7月から数か月は、交渉に大きな進展があり、いくつかの未解決の問題を解決しましたが、それだけでなく、残りの解決すべき問題を整理し、解決のための道筋を打ち立ててきました。主任交渉官の会合と閣僚そして首脳たちの会合との間、ここ二週間に、全TPP交渉参加国は、すべての未解決の問題や、今後全体として討議される必要のある事項や妥協点について明確な道筋を描き、取り組むべき内容とその方法を具体的に把握したうえでバリを後にしたと思います。


今後は厳しい交渉を行なわなくてもいいという意味ではありません。そういった交渉は今後もあります。しかし、何が未解決の問題なのか、みんなの頭にはっきりと描かれていると思います。これまで、それらを解決するための政治的指針が示されたり、政治的指針が主な妥協点を探るために有用だったこともありました。しかしそうした点については今後、交渉官たちが取り組んでいくことになります。

Q:現時点で、技術的な面で残っている問題はあるのでしょうか。それとも今後はフロ-マン氏やそれ以上のレベルでの交渉となるのでしょうか?

A:実際はまだ、あらゆるレベルでの問題があります。技術的問題はほとんど解決しましたが、残された問題には、中間会合や二国間交渉で交渉官が取り組まなければならないこと、そして最終的には閣僚がこれから行なわなければならない重要な作業が依然として存在します。

Q:残された課題の中で、内最も難しい問題を処理していくための道筋はあるのでしょうか?

A:主な未解決事項については、それぞれに解決への道はありますし、それらを処理していくための包括的な提案もあります。TPP交渉参加国の間には、交渉の次の段階で私たちが目標とすべきなのは、個々の主要な未解決分野で高い水準を確立してから、次に、特定の国がセンシティブな問題として挙げている特定の問題に集中し、かつ、すでに確立した高い水準と矛盾しないで議論することだということについて、全体的な合意があります。現在、私たちは取り組みを始めているところです。私たちは二国間で、それぞれの国の固有な問題について理解を深め、同時に全参加国による多国間交渉で、高い水準を確立しようと取り組んでいます。

Q:包括的提案が明確になってきたと言われますが、章と章の間で交換条件が可能な分野が明らかになってきたということでしょうか?

A:あるいは、ひとつの章の中で複数の未解決の問題がある場合もあります。ある国がある方向に前進し、それによって他の国が他の問題において別の方向へ前進できるということはあります。この種の議論を私たちはバリで始めたわけで、現在も交渉が続けようとしています。

Q:バリの会合を受けて、TPP交渉に参加している12カ国がすべて、ゴールすると思いますか?

A:全参加国がそのために努力していると思います。最終的には、これによってそれぞれの国が核となる関心をもつ事項に充分に対処できるのか、各国が判断する必要があります。しかし、すべての国はこれから数ヶ月間集中して、未解決の問題に取り組むために協力することになると思います。

Q. TPP交渉参加国は、交渉の終盤にさしかかった今、通貨操作の問題を議論に持ち込みたくないことが明らかなようですが、議会は積極的です。通貨操作の貿易に与える影響への議会の懸念に、TPP以外で対処する方法はあるのでしょうか

A: まず、私たちは議会との間でこの関心事を共有しています。ですから現政権の発足以来、例えば中国との通貨問題は私たちの最重要課題となってきました。大統領の方からこの問題が提起され、我々は 中国政府とのあらゆる会合で、取り上げてきました。G-20でも、適切な場合はG-7でも、IMF、WTOでも追求てきました。ですから、私たちもこの課題を共有しているのです。
問題は、これらの問題を最善のかたちで進展させることであり、解決のための最善の方法を議員や利害関係者たちと協議をしているのです。

Q:日本について、日本は米国との二国間合意がなければTPPに署名できないことは理解しているのでしょうか。あるいは、二国間合意まではTPP合意そのものがないのでしょうか?


A:私たちは、日本を含むものとしてのTPPを決着させるために、自動車、保険、非関税措置に関する二国間交渉で満足のいく結論に至る必要があると明言しました。そして日本は概して、TPP交渉そのものについては、たいへん建設的な姿勢で交渉のテーブルについています。
二国間交渉は、とても重要です。私たちは二国間交渉で進展が見られるよう、大変な努力をしています。最終的に、TPPを日本と一緒に終結させるには、満足のいく結果を二国間交渉で導き出す必要がありますから。

Q:これら二国間交渉はどのような段階にありますか?

A. 現在、進行中です。正式には8月以降、東京で一連の会合を行い、米国でも一連の協議を持ちました。日本は7月下旬にTPP交渉に参加し、8月初めにはウェンディ・カトラー代表補が日本に行ってきました。それ以来、私たちは多くのやり取りをしてきました。ほんの2~3週間前にはアジアで茂木大臣と甘利大臣にも会いました。ですから、交渉は進行中であり、彼らとは、満足のいく進捗をはかるためにはよい結果をださなければならないという点を明確にしています。

(中略)
Q.連邦政府閉鎖が続くことは、貿易交渉の遂行にどのような影響を与えていますか?例えば、あなた方は環大西洋貿易投資協定TTIPの第二次会合をキャンセルしなければならなかったし、オバマ大統領はバリ会合に参加できませんでした。それによって、他の国々が、米国を信頼に足る貿易相手国と見るかどうかに影響が出ないでしょうか。

A. まず、米国通商代表部のスタッフは、信じられないくらい献身的かつ勤勉で、連邦政府閉鎖の間も私たちの優先事項が重視されるよう手を尽くしています。具体的にいうと、ここ米国通商代表部には最小限の人員からなる基幹的なチームがあります。私たちはTPPが進展するようその最小限のチームを派遣し、その結果、大統領不在にもかかわらずかなりうまくいったと思います。
確かに大統領がいればもっとよかったかもしれません。しかし、勢いは継続できたと思います。ニュージーランドのケイ首相とケリー国務長官には、首脳会合を成功させる上で重要な役割を果たしていただき感謝しています。
WTOでの課題もあり、これは延期できません。WTOが始まる前にジュネーブに法律の専門家を派遣してこれらのケースについての議論を行うか、あるいは概要説明を提出しなければならず、このスケジュールは変えられません。

しかし確かに、影響はあります。今のところ、多くの問題を保留にしなければなりません。環大西洋貿易投資協定の交渉会合の延期であったり、二国間交渉の中で持ち上がった重要な問題をフォローするための相手国への関与の延期であったり、優先的に実施すべき重要な事項の延期などです。ですから、私たちにとっては大きな影響がありますが、貿易相手国側は理解してくれていると思います。私たちが前進させようとしてきたTPPやバリでの合意の勢いは失われることはないでしょう。もちろん私たちはみな、閉鎖が終わるのを待ち望んでいます。そうすれば、私たちのスタッフを配置に戻すことができ、現行の交渉に取り組み、既存の協定や合意を監視して、私たちの貿易の権利と貿易法の全面的な実施による雇用創出、成長の促進、中間層の強化、にとって非常に重要と私たちが考える問題について取り組みを続けることができるのです。

WTD: ありがとうございました。
(翻訳:清水亮子/監修:廣内かおり)

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