2014年1月25日土曜日

2014 年超党派連邦議会通商優先課題法案の概観

以下は提案者が委員長を務める上下院の委員会スタッフがまとめたもので、法案に込められた議会の求める交渉目標、特更にその権能を強化する意図を解説しています。近日中に翻訳予定の米国NGO「パブリック・シチズン」の分析と比較するとよいかと思います。(以下の翻訳文は、九州大・大学院の磯田 宏さんの翻訳文に基づき「STOP TPP!!市民アクション」の翻訳チ-ムがまとめたものです)

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2014 年超党派連邦議会通商優先課題法案の概観

上院金融委員会と下院歳入委員会のスタッフが作成。
確固たる通商上の課題を明らかにする:現政権は連邦議会と協議しながら取り組み、野心的かつ確固たる通商交渉に関わる確固たる、そして野心的な課題を追求するものである。

合衆国は現在、11のアジア太平洋諸国、EU の28 加盟国、新サービス貿易協定(TISA)におけるその他22ヵ国、およびWTO の159 加盟国と諸々の協定の交渉を行っている。

アジア太平洋およびEUとの交渉を合わせると約10 億人の消費者を有し、世界のGDP の3 分の2 近くを占め、世界貿易の65 %を占める市場を開放することとなる。TISAも世界のGDPの50%、サービス部門貿易の70%以上を占めている。

2007 年に失効した貿易促進権限(TPA)を更新することは、これらの交渉を成功させるために、そして連邦議会が実施法案を審議するために必要である。

既存法の強化と改善:2014 年TPA 法の3つの要点

連邦議会が委任した交渉目標を通じて、議会の持つ専決権を政権に実行させることとする:

交渉の開始前、交渉中、終了後において、十分な協議をおこない、情報開示の方法を確立して、連邦議員と国民に対し開かれた透明性の高い交渉の流れを確保する:
そして、最終的に実施法案に対して修正なしで賛否投票を行なう手続により、連邦議会が専決権を保持し、通商協定の承認について最終的な判断を下すことができるようにする。

21 世紀にふさわしい交渉目標に改める:連邦議会はTPA を通じて政権が追求すべき明確で野心的な交渉目標を設定し、交渉相手諸国に連邦議会の要求を知らしめる。2014 年TPA 法により既存の交渉目標を更新し、最新のものにする。そのことにより、合衆国の通商協定が世界最高のものとなるようにし、合衆国の物品、サービス、投資に対して市場開放が確実に行われるようにする。

デジタル時代にふさわしい新たな物品とサービスの目標を構築する:拡大した新しい条項は、サービスが経済のあらゆる部門に利益をもたらし、貿易を円滑化する役割があることを認め、野心的なTISA(新サービス貿易協定)交渉を促進する。また、(新たな条項は)国境を跨ぐ情報流出の保護などによりデジタル取引きを円滑化し、インターネットによる国際間取引きの重要性を認識するために新しい目標を設定する。

農業に関する規則を強化する:最新の諸条項は、衛生植物防疫措置に対して厳しく強制力のある規則を求め、地理的表示の不適切な使用に対処する。

投資におけるバランスの取れた目標を保持する:2014年TPA法は、海外投資に対する障壁を除去し、合衆国の投資家を不公平な扱いから保護するという確固たる目標を保持する。

知的財産を保護する:新たな条項はサイバー窃盗に対処し、企業秘密を保護し、合法的なデジタル取引を円滑にする。そして交渉目標として、合衆国の法律のように高い知的財産保護の水準を供与し、医薬品の開発と入手がこれまで以上に容易になることを保証する通商協定を引き続き求める。

労働と環境分野を最新のものにする:新条項は合衆国の最近の通商協定を反映したもので、通商相手国に対し国際的に認められた中核的な労働基準を採用、維持し、貿易と投資に影響を与えるような形でそれを放棄したり逸脱したりしないことを求めており、また同様に合衆国が署名国となっている多国間環境協定を採用、維持し、それを放棄したり逸脱しないことを求めている。いずれの場合も、他の強制力ある協定上の諸義務の場合と同様の紛争処理および救済措置を求めている。

  通貨操作に対処する:新たな交渉目標は、通商相手国の為替レートの操作防止を初めて求めている。例えば参加国間協力の仕組み、強制力ある規則、報告、監視、透明性、あるいは適宜その他の手段をつうじて実現する。

国有企業が及ぼす影響に対処する:新たな交渉目標は、国有企業による貿易の歪曲や不公正競争を除去し、国有企業が商業的な考慮のみによって活動することを確実にするよう求める。

より良い規制慣行を追求する:改定された新条項は規制慣行の改善、(国内外における)規制の整合性と一貫性、規制と基準設定過程のより強力な透明性を目的にしている。また政府の規定による賠償制度が透明であり、手続き上公正で差別性がないことを保証する。

国内優先の貿易障壁に対処する:新たな交渉目標は、合衆国の物品とサービスの輸出に対する国内優先を強制する措置や関連する障壁に対処する。

国際的な“バリューチェーン”を促進する:新たな条項が、合衆国の国際的なバリューチェ-ン展開を後押しし、通商協定が、益々相互関係を強め分野をまたがる貿易・投資活動の実態を反映するようにする。

強力な実効性を追求する:通商協定のなかで大統領が強力な紛争処理の仕組み担保するようにする。

貿易救済措置を保持する:合衆国が自国の通商関連法規を厳格に適用する権能を保持する。

連邦議会及び国民との協議を強化する:拡大した新条項によって議会の権限を強め、議会が交渉において重要な役割を果たすようにする。

協定条文の閲覧を確保する:法的に、全ての連邦議員が確実に交渉中の条文を閲覧できるようにする。

議会との協議を強化する:米国通商代表部USTR に対し、関心ある連邦議員とは誰でも、いかなる時も、面会し協議することを義務づける。交渉開始以前、交渉中、および終了後の協議義務の対象範囲を拡大する。

全ての連邦議員の交渉過程への参加を認める:連邦議員は誰でも「議会アドバイザー」として指名されることを認められ、交渉会合に参加を認められる。

上下両院に「交渉助言グループ」を設置する:上下両院に「議会助言グループ」を設置し、通商交渉の進捗を監督し、定期的な会合を義務づける。連邦議員は誰でも自分の見解を提出することができる。

国民及び各助言委員会との間の透明性および協力を促進する:国民参加と各助言委員会との情報共有に関する指針を書面にし、透明性、および国民の関与と協力の措置を求める。

協定実施法案に対する連邦議会による支配権を維持する:拡大された新しい条項は、連邦議会が実施法案の制定に対する支配権を持ち、修正せずに審議するための規則を制定することを保証する。

TPAを相当程度延長する:TPAを4 年間延長し、選択肢としてさらに3 年間の延長をおこなうことで、次期政権にもTPA による権限を与える。

しっかりとした報告義務を課す:通商諸協定の影響に関して報告義務を拡大する。全報告の公表を義務づける。

合衆国の主権を保護する:新たな条項では、連邦議会によらずして、通商協定により合衆国の法律を変更することはできないと明記されている。

協定実施法案の範囲を明確にする:協定実施法案には通商協定の「実効化のためにどうしても必要、もしくは適切である条文のみ」が含まれることを明確にする。

連邦議会による監視を強化する:TPA の諸手続は、特定の期間内に妥結した協定のみに適用されることを保証し、協定発効手続を厳格化する。

進行中の交渉に対する監視を確実にする:TPA は進行中の交渉に適用され、その際(連邦議会による)監視や協議の義務も含まれることを保証する。

強力で包括的な(TPAの)非承認手続きを付与する:通商協定が本法の目標に合致しない進展をたどる場合、また新たな(法案の)文言により、全ての通知や協議要請が承認されなくなる場合、TPA は不許可になることもある。
(翻訳協力:田所剛/監修:廣内かおり)

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