2012年8月30日木曜日

緑の党三カ国(豪州、カナダ、NZ)による共同声明を翻訳公開!

TPP交渉に参加する三カ国(ニュージーランド、オーストラリア、カナダ)の緑の党が共同声明を発表しました。(翻訳:磯田 寛  監修:廣内かおり)

☆ ★ ☆

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関する、緑の党三カ国による共同声明
(2012年8月19日)

 TPP交渉の渦中にある3カ国で活動する緑の党は,根源的に非民主的で不透明なTPP協定に対して重大な懸念を表明すべく、ここに共同声明を発表 する。投資の章の文書が漏洩して以来、我々は、このTPP協定が効果的に国を治める自国政府の権能を損ねる恐れがあると認識し、非常に憂慮してい る。TPP協定の諸条項によって、安全で、安価な価格の医薬品が入手しづらくなり、メディア(※映画やテレビ番組等の)に対する現地調達規制は軟 化し、ハイテク技術の革新は阻害され、さらに、将来、政府が公衆衛生や環境のために立法措置をとる権能さえ制約される可能性がある。
 また我々は、交渉過程の透明性が確保されるべきだと確信している。本協定は民主社会では容認できないほど機密性が高く、交渉は閉ざされた扉の向 こうで進んでいる。

自国の法令を定める権利
 オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの政府は元来、国民の健康や、消費者、労働者、環境に資する自国の法律を制定する権利を有している。漏洩したTPPの詳細から判明したのは、カナダやニュージーランドの国会または地方議会が、外国投資家や企業の利益を損ねる、または経営に負の影 響を及ぼす法律を通過させた場合、外国の投資家や企業は、カナダまたはニュージーランド(政府)を、国際仲裁機関に訴えることができる、という内容である。その対象となる法律には以下が含まれる(※オーストラリアは現在、この「ISDS条項」に同意していないため除外):-紙巻きタバコやその他のタバコ製品に、「警告」を表わす大きな絵図を付与する、または「プレインパッケージ」(販促効果のない、単調な柄の箱や包装)使用を義務付ける法令(カナダとオーストラリアでは既に導入済み、ニュージーランドでも今後導入予定)-遺伝子組換え食品・飲料の表示を義務付ける法令-カナダにおける乳製品の供給管理体制のような、農家の最低限の生活を守ることを目的とした農業規制を維持する法令 現在、オーストラリア政府は、政策で決定された法令の影響から多国籍企業を保護しようとするこのような条文には合意しない意向を示している。しかし、ニュージーランドとカナダは足並みをそろえることを拒否している。(カナダはNAFTAのもとでおこなわれた訴訟により、膨大な費用を負担し ているにも関わらず、である)

自由なインターネットの終焉
 TPPは、国内法では認められないような、インターネット利用に関する広範で厳しい法律で加盟国を拘束する手段をなんとか導入するために利用され ているのではないか、と我々は確信している。例えば、些細な非営利目的の著作権侵害に対する厳罰、著作権侵害にあたるホームページや“コンテンツ”を「まず停止させてから、尋問する」という方法、インターネットプロバイダーがプライバシー保護の予防手段を講じることなく(※著作権侵害を していると言い立てられたユーザーの)個人情報を当局に開示する可能性、などが含まれている。欧州議会は、同様の狙いをもつACTA(※模倣品・ 海賊版拡散防止条約)を圧倒的多数で否決した。(※日本の参議院ではほとんど審議もせず、圧倒的多数で可決)そしていま、同じ類の規制がTPPによって課せられようとしている。

大企業のための知的所有権
 2011年2月、知的所有権に関する章の条文が漏洩した。我々は、もっと緩やかで中庸な条文が採択されないかぎり、ニュージーランド、カナダ、 オーストラリアの消費者や学校、図書館は本やDVDに今より高い代価を支払わなければならなくなるだろうと予測している。著作権を持つものが、並行輸入を拒否することができるからである。中小規模のソフトウェアやIT関連企業も、特許法に制限されて、革新的な展望を圧殺されてしまうだろ う。そしてなにより、巨大製薬企業は、オーストラリアやニュージーランドの政府関係機関が信頼のおける、低価格の医薬品を手に入れることのないよう、この条項を利用することになるだろう。

閉ざされた扉
 我々が入手したTPPの条文に関する情報の大部分は、漏洩した文書から得られたものである。これは、交渉担当官が、国民の目に触れさせたくなかったものである。影響を受けることが必至の一般市民から、充分に開示された情報に基づく意見を集約せず、これだけ重要な協定が妥結されるべきではない。
 しかし一方、AT&T、ベライゾン(Verizon:携帯電話事業者)、シスコ(Cisco:ネットワーク機器)や大手医薬品企業、米国映画協会らの代表者は、条文を入手することが可能とされている。そして、民主的に選出された議員、保健や環境問題に取り組む団体、一般市民は蚊帳の外である。
 アメリカを含む政府はこれまでに、協定の条文の草稿を公開したことがあった。2001年には、米州自由貿易協定(FTAA)の全9章が提示されて いる。このときの情報公開では、貿易交渉の過程が「より透明性が高く国民の手に届く」ものになったとして、「重要な一歩」であると言われた。も し、これが2001年時点での、国民への説明責任の基準ならば、同様の基準が2012年の時点で実現していないことに当惑せざるを得ない。
 我々3党は、持続可能な開発と新しい雇用の創出を促進し、環境保全と人権擁護(団結の自由や団体交渉を含む)を伴う、公正で、真に進歩的な通商協定のみを支持することをここに共同で宣言する。我々は、それぞれの政府に対して,TPP協定をめぐる秘密のベールを取り払い、交渉過程のなかで国民の情報や意見を受け入れるよう要求するものである。

2012年8月17日金曜日

ワイゼル米TPP首席交渉官の会見─国内外の規制の一体化を求める“規制の一貫性”が焦点に

 7月16日に米国貿易代表部が利害関係者向けの会見を行った。TPP首席交渉官のバーバラ・ワイゼル氏と出席者とのやり取りの記録です。

「国内外の規制の一体化を求める“規制の一貫性”は指針であり、仮にTPP協定と同一の国内規制でなくともISDSによる提訴の対象とはならない」というUSTR主席交渉官の回答は更に注視する必要がありそうです。(翻訳:大谷一平 監修:廣内かおり)

※「規制の一貫性」については、「ジェーン・ケルシー:新たな世代の自由貿易協定がアルコール政策に及ぼす影響(後編)」(「TPPに反対する人々の運動」ブログ)も参考になります。

☆ ★ ☆

TPP第14回拡大会合に関する
米国通商代表部・交渉責任者バーバラ・ワイゼルによる会見
(2012年7月16日)


<冒頭の説明>
 サン・ディエゴ・交渉会合は非常に生産的だった。ダラス会合の勢いに後押しされ、サン・ディエゴ交渉会合が実り多いものになった。いま、条文の決着に向けて、急ピッチで動いている。多くの章で進展に手ごたえがあったが、まだ終結したとは言えない。交渉において決定した内容について、交渉官たちは自国に持ち帰り相談する必要があるからだ(米国もいくつかはその必要がある)。
 もっとも大きな進展があったのは、関税、サービス、政府調達、電気・電子通信、(?)協力の分野で、交渉会合で行ける所までいった。まだいくつか 主要な問題が残っており、今後解決していく必要があるだろう。
分野横断的な章でも大幅な進展があった。中小企業、開発、貿易の促進、競争政策/サプライチェーンなどの分野だ。開発については、新たな提案が議題にあがった。妥結に向けて迅速に進めることが私たちの目的ではあるが、開発関連の諸問題については非常に重要なので、さらに多くの時間を割く必要があると認識している。

 進展があった分野:TBT(技術的貿易障壁)、貿易救済措置、投資、金融サービス、労働。IPR(知的所有権)と電子商取引に関してはまだ先が長い。

 また、物品、サービスおよび投資の市場参入についても話し合われた。これらは米国との間でFTAが締結されていない国々との二国間交渉の形をとっている。交渉会合開始前に、修正提案があった。繊維に関しては、利害関係者から多くの意見を受けとり、現在検討中。交渉担当それぞれがすべての意 見について検討している。
 サービスと投資については、話し合いの大部分がNCM(不適合措置:条約と不適合な国内規制など)についてだった。NCMについては交渉会合開始前に新提案があった。まだやらなくてはいけないことが多く残されている。投資については条文そのものに関する作業がまだ多いが、市場参入について はそれほどでもない。市場参入と政府調達は話し合われなかった。
 USTR(米国通商代表部)は今後リーズバーグ交渉会合までの間に、いくつかの会合に関わる予定である。カンボジアでのASEAN(拡大経済相会 議)には(経済)担当相が出席する予定で、TPP交渉参加国と話し合いを持つ機会になる。
 ウラジオストックでのAPEC首脳会議の後、直ぐリーズバーグ交渉会合となる。多くの交渉官が休暇中だったり、ラマダンだったりするが、引き続き 進展させていきたい。
カナダとメキシコはリースバーグの交渉会合には参加しないが、10月に90日期間が過ぎた時点でスムーズに交渉に参加できるよう、USTRは両 国と緊密な協議を続ける予定である。メキシコ側の担当は先週ワシントンに来ており、8月もカナダ、メキシコ双方の担当がワシントンに来る予定である。日本についての情報はなし。

<質疑応答>
質問‐セレステAFL-CIO =米国労働総同盟産業別組合会議):TPPと既存の自由貿易との間で異なる基準がどう扱われるのか、いまだに理解できていない。厳しい方の基準が適用され るとも聞いたが、どのようにして“厳しい基準”が決定されるのかが不透明だ(例えば、何を「より厳しい基準」とするか、AFL-CIOと米商工会議所では見解が異なる)。

バーバラ:少し見方が違うようだ。私たちが言ったのは(例えば、一方が「30日前に意思を通達すること」と規定し、他方が「45日前に意思を通達 すること」とある場合のように)直接的な矛盾や不一致がない限り、双方の協定は共存するということである。このような不一致は皆さんが考えるほど 多くはない。ただし手順としては、相反事項のチェックリストを作成し、TPPのルールづくりが完成した後に、交渉官が一つひとつ明示的に解決する。TPPのルールすらまだまとまっていないため、これらの相反事項を解決する手順を作り上げていくという段階にまで進んでいない。しかし、透明 性の高い過程になることは確かだ。既存の自由貿易協定の当事者である二国間だけでなく、他の参加者にも影響を及ぼすため、他の参加者の意見も交渉に反映される必要がある。

補足質問‐セレステ:特定の事例について質問したい。NAFTAの労働に関する合意と、TPPで実施される可能性のある労働基準は不一致と見なさ れるのか、あるいは共存しうると見なされるのか?

バーバラ:理屈では共存しうる。そのような場合、不一致とする場合、米国もしくはその他の参加は、不一致であるという論拠を示す必要がある。

質問:リーズバーグ・交渉会合で利害関係者のための日程は予定されているのか?

バーバラ:その予定である。同じような形になるだろうが、今回の会場はもっと狭いので利害関係者のための日程やその他の手配を調整中。皆さんの中にはプレゼンテーションを希望する方々がいるかもしれないが、個人的には利害関係者たちとの1対1の対話形式のほうがよいと思う。

質問:12月の交渉会合の開催場所はどこか?

バーバラ:場所はまだ決まっていないが、米国ではないだろう。

質問‐メリンダ(パブリックシチズン):投資家対国家間紛争解決条項に関して、オーストラリアを例外扱いすることに反対しているニュージーランドに、チリが加わったことをサン・ディエゴで知った。米国はどのような立場をとるのか?オーストラリアが例外を主張し続け、それに対して他の国が反対し続ける場合、どのようなことが予想されるのか?

バーバラ:米国はチリ、ニュージーランドと同様の立場をとっている。投資家対国家間紛争解決条項が実施されることを強く支持し、協定の主要項目からいずれの国も除外されるべきではないというのが基本的な立場である。今後の展開については何も言えない。オーストラリアが投資家対国家間紛争解 決条項を受け入れるのか、他の国がオーストラリアの例外を認めるのか、もしくは折衷案が採用されるのか。決定するのはおそらく交渉の最終段階になるだろう。

質問‐マイク(アメリカン大学):USTRは知的所有権の立場についてPEPFAR(大統領エイズ救済緊急計画)やHHS(米国保健福祉省)、 (およびその他のジェネリック医薬品の消費者機関)に意見を求めているのか?

バーバラ:私たちの全ての政策は関係機関との緊密な調整過程の一部であり、すべての関係機関に意見を求めている。

質問‐ブルク(パブリックシチズン):知的所有権の主席交渉官が9月の交渉会合前にマレーシアを訪問する予定だと理解しているが、目的は?  USTRが新しい条文を交渉の場に挙げる予定だと思うが、それと関連しているのか?

バーバラ:マレーシアだけでなく他の数カ国をもまわる予定である。USTRは交渉会合開催の合間に色々な国をまわり、各国の懸念材料をよりよく理解し、合意の道を見つけようと努めている。まだ機が熟しておらず、新しい条文についてどうするかは何も約束していない。

質問‐クリス(ASH):USTRはリーズバーグでタバコの例外扱いを議題にあげるのか?

バーバラ:まだ決めていない。

補足質問 クリス:ある章がいくつか締結されるとすると、米国がタバコについての例外を議題にあげる際に、例外適用の範囲に影響はあるのか?

バーバラ:そのような場合があるとすれば、実際にはその章は妥結していないということである。

質問 WWF:規制の一貫性の章についてと、その章が例えば環境規制に及ぼす影響について説明してもらいたい?

バーバラ:規制の一貫性とは基本的に、規制の策定過程の透明性を促進する新しい章であり、様々な規制を策定する過程で協力的に作業を行うことを担保するものである。国によっては、規制を策定する過程に透明性がなく、規制の一貫性がなくなってしまう場合がある。米国のような開かれた透明性の ある過程を促進するのが狙いである。米国は規制づくりの指針を示す提案書を策定した‐OIRA(情報・規制問題局)を通じた米国の規制作りのようなものが提案されている。ただしこれらは義務ではなく指針であり、投資家対国家間紛争解決条項の対象にはならない。

質問 メリンダ(パブリックシチズン):サプライチェーン管理(注:ビジネス円滑化)/競争力の章について説明してもらえるか?これらは過去の米国、もしくはその他の自由貿易協定の条項をもとにしているのか?競争力の章は他の章の評価に組み込まれていると理解しているが、どの章なのか?これらの評価の目的は?

バーバラ:これは新しい章なので、過去のいずれの自由貿易協定の文言にも基づいていない。サプライチェーン管理を包括的に捕らえる試みだ。各国は 強力なサプライチェーンを進めようとしているが、その方法はいくつかの章に分散している。様々な章の規定をまとめ、サプライチェーン管理と競争力 の面から評価しようとするもの。これ自体は何かを新しく約束するものではない。評価する予定になっている章はまだ決まっていない。市場参入、原産地規則、関税、サービス、労働等があがっているが、検討中である。

補足質問 メリンダ:この章について、もっとも多く条文を議題にあげているのはどこの国か?

バーバラ:私たち(米国)だろう。

質問 セレステ(AFL-CIO): 規制の一貫性について、投資家対国家間紛争解決条項の対象にならないとのことだが、例えば企業は、規制の一貫性に関する章の指針に従って規制を策定していない、という理由で国家を訴えることができないということか?

バーバラ:できない。規制の一貫性の章には義務が含まれておらず、投資家国家間紛争解決条項の対象にはならない。

コメント セレステ(AFL-CIO):交渉の進展状況を考慮すれば、リースバーグでは交渉会合が終了しようとする時期に利害関係者との会見を開催してほしい。そのほうが、共有できる情報がより多くあるだろう。また、交渉担当官たちが私たちの意見をリアルタイムで聞けるよう、利害関係者が 建物内に入れるよう再検討してほしい。

バーバラ:逐一相談する必要があるほど、最終の段階には至っていない。休憩中に皆さんと会っているが、それで充分機能している。ただしリーズバー グは会場が狭いので、どのようにするかは検討しなくてはならない。利害関係者との会見を終了近くに持ってくることはできない。他の交渉担当官たち はまとめの段階に入り、引き揚げる用意をしているためだ。会見は、交渉からいったん距離を置いて、本当に重要な事柄を共有する方が役に立つと思 う。

質問:カナダとメキシコについて意見を聴取するプロセスはどのようなものか?

バーバラ:連邦公報の公示が出されている意見の募集は9月4日まで。9月の21日と24日に2回公聴会を開く。詳細は私たちのサイトに掲載されている。

質問‐マイク(アメリカン大学):リーズバーグで議論されるのは知的所有権の章のどの部分か?

バーバラ:具体的な条項を個々に見ていく予定。一般条項や著作権、それからおそらく商標や原産地表示にまで遡って行くかもしれない。

続き‐ブルク(パブリックシチズン)特許についての話し合いはないのだろうか?

バーバラ:その通りである。私たちの立場について皆さんや他の方々と話し合い、反映させる必要があるが、12月までにそれを実施する時間はないだ ろう。

質問‐ブルク(パブリックシチズン):今週ワシントンDCでAIDS国際会議が開催されているが…

バーバラ:ああ、そうですか??(皮肉を込めた口調で‐前日、1000人以上の活動家たちがUSTR前で抗議活動を行ったことを充分に知っている ということを明らかにするように)

続き-ブルク:そうです。できたら会議に来たTPP参加国からの活動家たちとUSTRの間で会合を企画したい。

バーバラ:そうしたいのだが、スケジュールによるでしょう。

【関連記事】
■ジェーン・ケルシー:新たな世代の自由貿易協定がアルコール政策に及ぼす影響(後編)(2012/04/18)
http://antitpp.at.webry.info/201204/article_3.html
■ローリー・ワラック:「また戻って再協議するのは非常に難しい」とワイゼル氏は説明(2012/07/12)
http://stoptppaction.blogspot.jp/2012/07/blog-post_12.html

次回のTPP全体会合は9月6日─国際NGOの中での分析と情報

 今回は7月上旬に米国サンディエゴで開催されたTPP正式ラウンド後に行われた情勢分析会議から作成したメモをお送りします。次回9月6日からの米国リースバーグでのラウンドに向け、国際的なネットワークで今後の運動が検討されています。大統領選による情勢変化の可能性や、知財・労働・環境など分野ごとの情報など必見情報が満載です。(内容紹介:近藤康男 監修:廣内かおり)

▽ ▼ ▽

TPP交渉サンディエゴラウンドを経て
(国際NGOの中での分析と情報)
2012年7月19日

「政治的解決」を許さない運動を
次回全体会合(9月)及び今年の末に向けて、現在意見が別れている課題を暗礁に乗り上げたままにしておくためにいまやるべきことを見極め、TPP交渉が「決着」できないよう、新たな議論を仕掛けていく必要がある。
実質的な内容を知らない大臣や首相の決断に弾みがつくので、9月(あるいは12月)までに決着を、という主席交渉官の指示を受け、括弧書き部分(合意されていない部分)の多くが削除され妥結に近い文言になっていく危険がある。APEC首脳会議にオバマ大統領が出席しないのはいいが、貿易担当相は妥協点を探り始めるだろう。
いくつかの課題は”政治的”で市民意識の向上や各国での反対運動があることを明確にするために、いまこそ力を注ぐ必要がある。そうすれば、政治レベルの重要な取引になった時、行き詰まったままの課題が意味を持つようになる。
各国のキャンペ-ンは非常に重要だが、TPPの命運を決めるのは米国だ。他の国々は、米国がもう行き詰まりだと言うまでは交渉を続けるだろう。
カナダとメキシコが交渉に参加する前にいくつかの分野をまとめてしまいたいという希望があり、“(議会承認のための)90日前通知”がすぐに送致されなかったのはそのためかもしれない。サンディエゴ会合が終わる頃には通知は送られたが…。12月にはカナダとメキシコは、いずれの分野であれ、まだ妥結していない分野の交渉に参加することになる。カナダを米国の仲間と見ている国もあるし、自国の味方になるかもしれないと考えている国もある。国有企業の問題については、メキシコは実質的にASEANの仲間になるという見方が強い。メキシコとカナダの戦いを支援するためにも彼らの交渉参加の前にどの分野の交渉を終了させようとしているか情報を集積する必要がある。
煙草規制の例外措置、著作権、環境、気候変動など、新たな21世紀の課題に対応しているように見せ、なんとか問題化した課題を消滅させ、問題は解決したとして利害団体を分裂させる可能性に注意したほうがいいだろう。

次回会合に向けて米国内の動き
次回の全体会合は9月6日に始まり、APECと重なる。おそらく8日のTPP参加国首脳会議の後でないと、主席交渉官は会合に戻ってこない。会場はワシントンDCから1時間ほどのリ-スバ-グ。柵などで囲まれたカントリ-クラブだろう。9月の会合を米国で行うというのはなかなかうまいやり方かもしれない。更なる圧力をかけることも必要だが、同時に政治的な課題や財源の問題を言い訳にするには米大統領選前の最後の機会でもある。リ-スバ-グはワシントンDCから近いので我々も味方を集められるが、産業界も同様だ。
米国内の諸団体は米国の政治状況に絡めた戦略を練る必要があるが、選挙が近く、簡単ではない。米国の諸団体はこの目的のために定期会合を開いているが、マイナス面を伴わずにどうしたら効果的な活動ができるかを見つける必要がある。選挙前のTPP関連の市民行動は民主党の票にとってマイナスになるだろうか?こうした弱点を逆手にとって、大統領選前にオバマ陣営がTPPへの圧力をかけられないようにするために、何ができるだろうか?
大統領やUSTR幹部が交替しても、TPP交渉はまず中止にならないだろう。しかしロムニ-が勝てば、環境や労働に関する野心的な提案は多少後退するかもしれない。障害を1つ取り除くことにはなるだろうが、ほかの課題については米国の立場に問題が残る。
知財分野では、USTRがワシントンを訪問して圧力をかけるだろうということは承知している。今後は他の交渉が今から9月までにどのように続けられるのかを見極める必要がある。当分は注視し続ける必要があるだろう。
ワシントンでは各国大使が交渉の妥協点を探るため、集中的な取り組みや圧力があるかもしれないが、こうした動きは目に見えず、米国の縄張りの中で行われる。ワシントンではTPP積極派のオ-ストラリアやニュージーランドからの圧力が予想される。

個別分野での動き
<IP  知的財産分野>
USTRが動く前に途上国が共同で対案を出す可能性について。TRIPSを改善し、IP法や慣行について整理したものになる可能性はある。そうであれば支持できるかもしれないが、現在の米国の提案に置き換わるとは考えにくい。TRIPSプラスαのような提案は、結局2007年交渉のような形で終わるだろうから回避したいところ。他の参加国と一緒に進む別の方法を探そう。
チリは結論に至る明確な考えを持っている。他の参加国は静観の模様。特許について、9月には議論されない予定。10月に中間会合がなければ正式な議論は12月まで延ばしたい意向だ。これについて、参加各国はあまり歓迎していない。私たちとしては、交渉プロセスに対応していく必要があるだろうが、交渉官は、高度なレベルで取引きがおこなわれる段階には至っていないと感じているようだ。

<Labour 労働>
USTRと会って、現在までの到達点について彼らの意見を確認してから、今後の動きを見極めたい。ペル-からの混乱を招く発言は、USTRがいかなる強制もできないことを示唆しているようだ。交渉の遅れにつながるかもしれないが、更に考察を重ね、探る必要がある。できるだけ早く労働問題の関係者を訪ねよう。それぞれの国の労組と意見交換をし、彼らに質問をしよう。
マレ-シアのNGOはサンディエゴ会合の報告を受け、情報を収集しようとしており、情報の更新が必要だ。マレ-シアは環境関連の内容には反対する意思を明確に表明している。
AFL-CIOは9月の米国の労働に関する立場について、幹部の会合は開いていない。選挙前には内部的にも対外的にもあまり前には出ない模様。選挙モ-ド一色で、選挙で失敗を招くようなことは望んでいない。しかし組合員が、TPPについて(組合員の利益になるよう)充分な取り組みがなされていないという印象を持てば、選挙後のオバマ大統領の動きについて質問を投げかける可能性もある。

<Environment 環境>
米国では、政治的立場を超えて環境団体の調整を進めるグル-プが動いているが、その戦略は多国間環境協定に対する米国の立場にテコ入れをしようというもので、5月10日の合意と拘束力のある執行可能な章を補強しようとしている。米国の立場は、他の参加国との間で大変な亀裂を生んでいる。早い段階で、米議会、に最近の協定にこだわるよう書簡を送ろう。環境団体からも同様。
気候変動:ニュージーランド、チリ、ペル-からの3つの正式な提案が俎上に挙がっている。NZの提案は化石燃料の生産または補助金の削除に関するもので、G20とAPECの立場を再度主張している。アジア・太平洋地域内の取引市場を見据えた二酸化炭素排出権の価格を決定するためのTPP参加国間の協定をめぐる気がかりな文言がある。これについては、京都議定書の動きを弱体化させ、離脱を勧める戦略と見るむきもある。もしTPPに市場メカニズムができれば、京都議定書の非継続が正当化されるのである。
ペル-の提案はNZの対極にあり、気候変動枠組み条約の原則を支持し、差異ある責任を伴う発展途上国寄りの提案である。情報を整理して一覧表を作成し、またIUTの情報を入手、引用する予定。気候変動は新たな協調のために骨抜きになるかもしれない、と聞いている。
生物多様性についてはほとんど情報なし。ペル-はもっと強い表現を求めているがまだ会合は開かれていない。おそらく高い目標を設定していると思われる。この問題については、非常に懸念事項が多い。
環境に関する物品・サ-ビス分野もオ-ストラリアがWTOでの同国の立場を押しすすめようとしている。おそらく市場参入の問題と思われるが、まだ始まったわけではなく、もう少し情報が必要。WTO問題で活動してきた人たちと連絡をとる予定。

<Investment 投資>
漏洩情報はダラスでの会合に提出されたもので、交渉の結果ではない。削除された括弧(争点として残されているという印)が多少あると聞いている。サンディエゴではSection Bの投資家対国家間紛争解決に焦点が当てられた。しかしどれだけの実質的課題に決着がついたかはハッキリしない。
Section Aについては争点となっている括弧印はあまり残っていない。そのうち、いくつかはダラス全体会合の前に決着している。公的債務に関する付属文書は賛成が1カ国だけなので諦めたようだ。ペル-は1点、ペル-と米国のFTAに含まれる内容を反映したク-リングオフ期間だけだが、括弧にこだわっている。いくつかの参加国は、GATTにおける 一般的例外規定条項であるART XXという方式よりも有用な、投資に関する一般的な広範囲の例外を考えている。財政収支の安定、保健、環境などをカバ-している。議論の早い段階で阻止する有効な手立てを考えてきた。いくつかの参加国が意味のある例外規定に関心を持っている。
オーストラリアはSection B(ISDS)では協議をしていない。チリはNZと同様、例外を設けるオ-ストラリアに反対したと語った。オ-ストラリアが例外を維持するなら、自分たちも同じようにしたいとする国がいくつか出てくるだろう。オ-ストラリアがこだわり続けるかどうかは、高度な政治判断となるだろう。
グァテマラの事例は丁度いいタイミングだ。焦点は2つの主要な法的課題:MST(最低待遇基準)の定義には、附則と国際的な慣習法のみを使おうという様々な関係者による請願が明示的に却下された。根拠は廃棄物管理の判例であり、TPPの提案ではMST問題が解決しないことを示している。また、一般的なMST違反に関する広範な自由裁量の問題もある。

2012年8月11日土曜日

いよいよ始まる!STOP TPP!!官邸前アクション  【火曜】も官邸前にGO! みんなの声でTPPを止めよう!

また新しいTPPストップアクションが生まれようとしています。

「STOP TPP!! 官邸前アクション実行委員会」が主催する官邸前アクション、
まずは8月21日(火)18時〜20時に開かれます。

ぜひみなさんの声を集めてTPPを阻止しましょう!

■■■
いよいよ始まる!
STOP TPP!! 官邸前アクション
【火曜】も官邸前にGO!みんなの声でTPPを止めよう!
■■■

●開始日:8月21日(火)18:00~20:00
(以降、毎週火曜日の18:00~20:00)

●場所:首相官邸前(国会記者会館前)
※最寄駅:丸ノ内線・千代田線「国会議事堂前」、
有楽町線「桜田門」、有楽町線・半蔵門線「永田町」等

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は、農業・漁業、医療、保険、知的財産、食の安全、地域経済・・・と、私たちの暮らしの隅々にまで悪影響を与えます。すでに国会議員や業界団体、労働組合、生協、NGO/NPO、市民など、多くの人びとが疑問の声を上げ、反対運動も広がっています。海外からのリーク情報からも、また北米自由貿易協定(NAFTA)や韓米FTA等の自由貿易協定が人びとの暮らしに与えた悪影響から考えても、TPP参加は、まさに主権と民主主義を破壊する、1%による暴力です。
にもかかわらず、政府と野田首相は、私たちの声を無視し、常に気にしているのは米国と財界の顔色ばかり――。

「野田首相、いい加減、私たちの声を聞いてくれませんか?(つーか、あなたもう首相じゃなくなるのよ!)」「米国と日本の一部の大企業の利益のために、私たちの命と暮らしを犠牲にするつもり? 冗談じゃない!」「いったい誰がどこで、TPPに参加することを決めるわけ?『国民的議論』っていうのはウソだったんだな!?」

こうした思いをぶつけ、なんとしてもTPP参加を止めるため、毎週火曜日に首相官邸前で「STOP TPP!!」を訴えるアクションを始めます。すでに官邸前では、脱原発(金曜日)、消費税反対(水曜日)の行動が継続して行われています。TPP問題は、経済成長をひたすら求め、社会に貧困を増大させ、人びとから主権を奪うという意味で共通しています。また国内で「脱原発」政策が実現しても、TPPに参加すれば国内法の改正が迫られたり、大企業が国家を訴えられるISDS条項等により、私たちの意思で「脱原発」が実行できない危険性もあるのです。

原発・消費税・TPPは、次回総選挙の重要なイシューになることは決定的。その意味でも、これらの課題をつなげて考え、ほんとうに政策を変えるためのアクションです。

ここまでひどい政策が進むのはもうたくさん! 
みんなでSTOP TPP!!を訴え、私たちの手に民主主義を取り戻しましょう! 

STOP TPP!& HELLO!DEMOCRACY!

================================
【みんなで有意義なアクションにするために】
※小雨決行/荒天中止(実施状況はツイッターにて告知します)。
※当日の発言は「STOP TPP!」の内容に限ります。それ以外のテーマ、団体紹介や宣伝はお控えください。
※開催時間内でのチラシ配布や署名集めはお控えください。
※歩行者・車両などへの迷惑を避けるため、スタッフの指示に従ってください。
================================

★主催団体★STOP TPP!! 官邸前アクション実行委員会
★呼びかけ人★ 安部芳裕(プロジェクト99%)/内田聖子(アジア太平洋資料センター〈PARC〉)/こみねまいこ(プロジェクト99%)/坂口正明(全国食健連)/ふくしまゆみこ(プロジェクト99%)/まつだよしこ(TPPって何?)安田美絵(『サルでもわかるTPP』)
★Twitter★ @TPP_kantei

2012年8月5日日曜日

米国三大労組が共同声明を発表!

米国の三大労組がTPPに対する共同声明を出しました。多くの雇用が失われたNAFTA(北米自由貿易協定)の失敗を軸に、「国益を犠牲にして企業の利益を優先する」自由貿易に対する危機感を持ち、「目先の利益追求で破滅に向かう非建設的な成長モデルを放棄」すべきと声明は訴えています。
 中身をじっくり見ると、条件次第では賛成…ととれるような論調ではありますが、労組側が求める条件はTPPを進める多国籍企業側にとって厳しい内容です。米国の労使間のせめぎあいが見える声明を翻訳掲載します。(翻訳:磯田 宏 監修:廣内かおり)

▽ ▼ ▽

北米3労働団体AFL-CIO、CLC、UNTによるTPPに関する共同声明
2012年7月11日
(英題:Joint Statement by AFL-CIO, CLC and UNT on the Trans-Pacific Partnership Free Trade Agreement / July 11, 2012)

 私たち(アメリカ、カナダ、メキシコの全国規模の労働者組織であるAFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合組織)、CLC(カナダ労働会 議)、UNT(労働者全国連合))は、メキシコとカナダのTPP交渉参加について、ここに重大な警鐘をならす。
 良質な雇用を創出し,基本的な労働者の権利(団結の自由や真の団体交渉権)の保護を強化し,環境を保全し,世界経済の成長と万人にとっての開発を促進するTPPなら歓迎するものの、またも企業志向の通商協定が繰り返されるならば、アメリカ,カナダ,メキシコの労働者はこれを受け入れることはできない。すべての労働者にとってのよい仕事、労働者権利、生活水準の向上を確保することが、TPP交渉の指針でなければならない。

 アメリカ、カナダ、メキシコの労働者世帯Working Familyに良い影響をもたらすために、TPPはNAFTA から手を切らなければならない。NAFTAは労働者世帯や地域社会、環境を犠牲にして、多国籍企業の権利と特権を拡大する破壊的な経済モデルを強いるからだ。NAFTAとはまさに、賃金、労働者権利、環境保護、および公共利益のための規制について、底辺への競争を促進するグローバル化モデルを法制化したものである。このモデルは需要を圧迫し、現在の世界的不況をもたらす主要因になったのである。
 世界的な不況から脱出するために、アメリカ、カナダ、メキシコは、NAFTAによる、目先の利益追求で破滅に向かう非建設的な成長モデルを放棄すべきである。そしてそれに替わるILOの基本的な条約に定められた、高い賃金と充実した手当てを伴う雇用創出など基本的な労働者権利の促進を含む通商モデルや、各国が自国の天然資源を保全し、 金融市場を安定させ、食料と農産物の安全性を確保し、ISDS 訴訟の脅威を受けることなく公共の利益を促進できるような国内政策を行なう権利を留保できるモデルを追求しなければならない。
 さらに交渉では、TPPのなかで改善された労働者に関する条項が、NAFTAで定められた、不当な同様の条項よりも優先されることを明確にしなければならない。さもなければ、労働者世帯にとって得られるものはない。また同様に、NAFTAのほうが労働者保護について厳しい条項を含む場合、その効力は保持されるか、またはTPPに織り込まれることも重要である。特にNAFTA付附属労働協定(NAALC)は、アメリカの他のFTAからほぼ欠落している出稼ぎ移民労働者の保護を含んでいる。我々、AFL-CIO、CLC、UNTは、TPPにおいて出稼ぎ移民労働者は、出稼ぎ先の国内労働者と同じ権利と保護を確実に享受されるべきだと、強く信じている。加えて、出稼ぎ移民労働者は詐欺的、あるいは不当な採用方法から保護されなければならない。

 3ヵ国の労働者世帯に対し、TPPが最終的にどのような影響を与えるかは、全く明らかになっていない。TPPで定められるルールのありよう次第である。したがって,協定の具体的内容が明らかにならない限り、メキシコとカナダの交渉参加を祝福することは到底できない。NAFTAで定められた規則が、TPPの主要な条項のなかで実質的に改善されれば、その分だけ、カナダとメキシコの交渉参加承諾が3ヵ国の労働者世帯に利益をもたらすことも可能だろう。もし、TPPが新自由主義モデルをたどり,国益を犠牲にして企業の利益を優先するようなことになれば、大企業は利益をむさぼり続け、その一方で、3ヵ国の労働者は、抑圧的な賃金や、団結しにくい労働環境、一般的な保護規制の崩壊、という代償を支払い続けることになるだろう。

 我々はそれぞれの政府に対し、TPP条項に厳格な労働者保護、健全な環境、安全な食品と農産物、そして今後の世界経済危機を回避するための金融その他市場を規制する権能の確保を含ませるべく、我々労組と協働するよう求めるものである。

The AFL-CIO, the CLC, and the UNT, the national labor organizations of the U.S., Canada, and Mexico, join in urging caution regarding the announcement that Mexico and Canada have been invited to join negotiations for the Trans-Pacific Partnership Free Trade Agreement (TPP).
Although we would welcome a TPP that creates good jobs, strengthens protection for fundamental labor rights -- such as freedom of association and authentic collective bargaining -- protects the environment, and boosts global economic growth and development for all, American, Canadian, and Mexican workers cannot afford another corporate-directed trade agreement. Good jobs, secure labor rights, and rising standards of living for all workers must guide the TPP negotiations.
To have a positive impact on working families in the U.S., Canada, and Mexico, the TPP must break from NAFTA, which imposed a destructiveeconomic model that expands the rights and privileges of multinational corporations at the expense of working families, communities, and the environment. The model of globalization enshrined in NAFTA promotes a race to the bottom in terms of wages, labor rights, environmental protection, and public interest regulation. By suppressing demand, this model became a leading cause of the current global recession.
To exit the global recession, the U.S., Canada, and Mexico must abandon the low-road growth model of NAFTA, and instead pursue a trade model that includes the promotion of fundamental labor rights included in the ILO core conventions; the creation of high wage, high benefit jobs; and the preservation of domestic policy space so that nations can conserve their natural resources, stabilize their financial markets, ensure food and product safety, and otherwise promote the public interest without fear of investor-state lawsuits.

Moreover, the negotiations must make clear that any improved provisions for workers in the TPP will override any corresponding harmful provisions in NAFTA -- otherwise, working families will have gained little. As important, any stronger provisions in NAFTA must remain in force or be reincorporated into the TPP. In particular, the NAFTA labor side agreement (the NAALC) includes protections for migrant workers -- a protection largely absent in subsequent U.S. FTAs. The AFL-CIO, CLC, and UNT strongly believe that the TPP should ensure that migrant workers are able to enjoy the same rights and protections as a country’s domestic
workforce. In addition, migrant workers must be protected from fraudulent or abusive recruitment schemes.
The ultimate impact of the TPP on working families in the U.S., Canada, and Mexico is by no means certain. It will depend entirely upon its rules. Therefore, it will be impossible to celebrate the inclusion of Mexico and Canada until the specifics of the agreement are known. To the extent that key TPP provisions represent enforceable improvements over NAFTA rules, Canada’s and Mexico’s accession has the potential to benefit working families in all three countries. If instead, the TPP
follows the neoliberal model and substitutes corporate interests for national interests, workers in all three countries will continue to pay a high price in the form of suppressed wages, a more difficult organizing environment, and general regulatory erosion, even as large corporations will continue to benefit.

We call on our governments to work with us to include in the TPP provisions to ensure strong worker protections, a healthy environment, safe food and products, and the ability to regulate financial and other markets to avoid future global economic crises.