2013年5月18日土曜日

オバマ政権が狙う他国の公共政策とは─2013年版「外国貿易障壁報告書」で明らかにする

米国のパブリック・シチズンが、“かの有名な”米国・外国貿易障壁報告書から、TPP参加国+日本をピックアップして批判を展開しました。TPPや事前協議では多少ソフトになっているものでさえ、この報告書ではかなり厳しい押し付けをしていることが分かります。

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マギー・ヘンダーソン(パブリックシティズン)
2013年4月4日

オバマ政権が「2013年版米国の外国貿易障壁報告書」で狙う
TPP加盟諸国における数々の公共政策

今回の報告書は保健、金融、宗教、その他配慮を要する政策を撤廃すべき「貿易障壁」として槍玉にあげ、TPP交渉の異論の多さを浮き彫りにする

ワシントンD.C発―オバマ政権は、TPP交渉国におけるセンシティブな国内政策を狙った報告書を発表し、アメリカが撤廃をめざす「貿易障壁」であることを確認した。これを受けて本日パブリックシティズンは、米国通商代表部(USTR)の2013年外国貿易障壁報告書で公表されたTPP加盟諸国の国内政策標的リストを見れば、11カ国の広範な協定の交渉がまとまらず、繰り返し交渉完了期限が過ぎている理由が驚くほどよくわかる、と述べた。

406ページにわたるUSTRの報告書は撤廃すべき「貿易障壁」として、公衆衛生に関する政策から金融規制、政治的に配慮を要する製造業および農業の政策、さらに宗教的規範に至るまでを槍玉にあげる。USTRは現在および今後予想されるすべてのTPP交渉相手国の政策を批判。その中には、医薬品価格を管理するニュージーランドで評判の良い保健政策、市民の個人健康情報の海外移転を防止するオーストラリアの法律、銀行に対する十分な自己資本の保有を定めた金融危機後のベトナムの規制、そしてチーズは生乳から作られることを要件とするカナダの基準が含まれている。

例えば、圧倒的にイスラム教徒が多いマレーシアに関して、USTRの報告書は(マレーシア)政府が「食肉処理場に対してハラール(訳注:イスラムの戒律に従って食肉処理した動物の肉)専用の施設を維持し、ハラールとハラールでない製品を確実に隔離輸送するよう定めている」ことを批判。イスラム教の食肉加工要件に関する概念をコーデックス委員会が定めた要件と一致させるよう提案している。コーデックス委員会とは国際的な食品規格団体であり、多国籍食品企業が中心的役割を果たしている団体である。また、5人のうち3人がイスラム教徒であるマレーシア人に伝統的に禁止されている豚肉およびアルコール飲料の輸入に対するマレーシアの規制にも異議を唱えている。さらに、消費者5人のうち3人がイスラム教徒である同国の豚肉およびアルコールの輸入制限も問題視している。

「他国の国内政策に対するこのあまり外交的とは言えないオバマ政権の標的リストが出される以前から、TPPは暗礁に乗り上げていた。多くの国の交渉担当者は、アメリカの要求する外国製薬会社の特許独占の拡大や、政府補償を命令できる国際法廷で外国人投資家が金融、保健、環境政策に対して異議申し立てできる条項を拒否してきたからだ」とパブリックシティズンのグローバル・トレード・ウォッチ責任者、ロリー・ワラックは言う。「アメリカが、撤廃を望むTPP諸国の国内政策をあからさまに挙げたところで、オバマ政権はこれらの国の人々のTPPに対する懸念を強めるだけである。」

この外国貿易障壁報告書のなかで、USTRが最も詳細に政策批判をおこなっているのが日本だ。日本は最近TPP交渉への参加の意思を表明した。報告書は16ページを費やして、食品表示制度が消費者によけいな情報を与えていると厳しく非難し、日本が公的保険制度をいかにして確実に再構築すべきかの大枠を示し、政府に対し(在日の)外国の大学に税制優遇措置を与えるよう促し、さらに日本の軍装備品に関する国産へのこだわりを嘆いている。(アメリカにも軍の調達に関して同様の規定がある。)

報告書はまた、日本の農業政策を狙い、例えば「日本の消費者は、もっと簡単に手に入るなら、高品質の米国産のコメを買うだろう」から、国内の米作農家に対する保護を緩和するようにと勧告している。安倍晋三首相率いる政党は、強力な農業団体の支持を受け、TPPの関税撤廃の対象からコメ、小麦、大麦、牛肉および豚肉、砂糖、乳製品の除外を国に求める政治的な立場を承認している。反対に、USTRの報告書はこれら配慮を要する分野のうち1つ(砂糖)以外のすべてを優先度の高い自由化の標的として挙げている。

複数のTPP諸国に対し、USTRの外国貿易障壁報告書は、米国議会でつぶされたオンライン海賊行為防止法案(SOPA)で提案されたものと同種の著作権実施対策の採用を奨励している。例えば、報告書はオバマ政権が「チリに対しインターネット接続サービス業者の責任制度を修正し、著作権および関連する権利を侵害するいかなる行為に対しても有効な対策を認めるよう促してきた」と指摘する。

USTRの報告書はいくつかのTPP諸国に言及するなかで、政府を汚職まみれ、あるいは無能力であるとまで言って非難している。例えば、報告書はペルーの連邦政府の3つの行政機関のうちの2つは、責任を全うするのに必要な「公平性」や「専門性」に欠けると述べている。

またUSTRは、TPP諸国の「貿易障壁」に対する世論の批判を盛り上げようとしている。しかし、その「貿易障壁」はあまりに定義が細かく、もたらされる結果も些末なもので、あきれるほど範囲の狭いアメリカの企業利益に動機づけられたようにみえる。例えば報告書は、シンガポールの「非医薬品チューインガム」の輸入制限、カナダの「パン粉をまぶしたチーズ・スティック」に対する高い関税、そしてペルーによる「5年以上経過した中古車」輸入の拒否を槍玉に上げているのだ。数百ページにわたる報告書の中で、以下はそうした内容を如実に表わすTPP諸国に関する論評の一部である。

【ベトナム】
· USTRはベトナムによる「銀行業界の資本基盤改善を目的とした新たな規制」を新しい形の貿易制限として挙げている。報告書は特に新たな自己資本比率規制をあげ、銀行に「艱難辛苦」をもたらすとして非難する。

・USTRは「『堕落している』とみなされる文化的製品」の輸入を阻止するベトナムの決定に注目し、その政策を「非関税障壁」の1つに挙げる。

・報告書はベトナム経由で他の目的地へ行く途中の特定の製品の輸送に関するベトナムの禁止措置を標的にしている。これらの「貿易に対する障壁」には「危険廃棄物、…冷凍の動物性副産物およびクズ肉」の積み替えの制限が含まれる。

・報告書は 「米国はベトナムに対し、デジタル上の著作権侵害を含め、深刻化する知的財産権侵害の問題と闘うため、より積極的な行動をとるよう引き続き要請していく」と述べている。報告書によると、こうした要請を受けてインターネット接続サービス業者と政府は「権利保有者」(例えば米国のメディア企業)が侵害とみなす違反をより厳重に取り締まることに関する話し合いが行われた。―この侵害は米国議会でつぶされたオンライン海賊行為防止法(SOPA)の重要な部分である。

・報告書は、あからさまにしかも断定的にベトナムを「公務員の汚職と非効率な官僚組織が蔓延している」と非難して結びとしている。

【シンガポール】
・シンガポールは「アジアで2番目にソフトの海賊版の率が低い」と褒めてはいるが、報告書はやはり、この国は「末端利用者のソフトに対する防止策となる罰則規定が不十分だ」と主張する。

・報告書は(シンガポールの)国内銀行の外国人の所有権の許容割合が増えているにもかかわらず、「シンガポールは3大地方金融機関の企業支配権あるいは企業取得を外国人に認めないと表明した」と指摘する。すなわち報告書は、シンガポールの最も重要な銀行の外国人による企業取得に対する同国の不安を貿易の障壁として挙げている。

・報告書は、ほとんどの「シンガポールに事務所を持つ外国の法律事務所はシンガポールで弁護士業務ができない…」という事実を嘆く。報告書はシンガポールで弁護士業務が許可されたとしても、外国の法律事務所はシンガポールの法の理解に基づいてシンガポールの法廷に訴訟を起こすことができないという点を指摘している。

・報告書は、アルコール、タバコ、自動車に対するシンガポールの税金を取り上げ、それらの税は「社会的および/あるいは環境的根拠から」課税されていることを指摘する。USTRはこれらの税の廃止を明白に求めてはいないが、迷惑な貿易障壁を列挙する報告書のなかで、そうした措置を取り上げる理由は見つけたようだ。

【ペルー】
・USTRはペルー政府に対し全面的な非難の言葉を挙げ連ね、3つの連邦行政機関のうちの2つを槍玉に上げている。報告書は率直にこう述べている。「米国、ペルーのどちらの企業も、行政機関の官庁、監督官庁、税務所、そして裁判所はそれぞれの任務を遂行するのに必要な財源、専門知識、あるいは公平さにしばしば欠けるのではないか、という懸念を持ち続けている。」しかし報告書はその後、連邦政府の公正さと能力をあからさまに問題視するような議論は展開していない。

・USTRは、ペルーの個人情報保護法が「国境を介したデータ流通に依存する企業の間に懸念を引き起こしている」と指摘する。報告書によると、それらの企業は、ペルー人の秘密情報を入手するときに事前に同意を得なければならないというペルーの要件に懸念を抱いているようだ。

・報告書はペルーが米国の中古品に興味がないことを貿易障壁として挙げている。中古品の中には「古着および使い古しの靴(慈善の寄付としてのものは除く)、中古のタイヤ、5年以上経過した自動車、(重量3トンまたはそれ以上の)8年以上経過した大型トラックなどがある。」

【ニュージーランド】
・USTRは、ニュージーランドの医薬品の費用抑制制度の運営に成功している同国の政府機関である医薬品管理局(PHARMAC)について「強い懸念」を表している。報告書によると、これらの懸念は「米国の利害関係者」―すなわち医薬品価格を抑制するためのニュージーランドの政策に長く反対してきた米国の製薬会社―から出たものである。USTRは、PHARMACがこれら「利害関係者」に対し適切な「透明性、適時性、および予測可能性」を提供していないと非難している。加えて、PHARMACが以前は「規制の対象外だった」医療機器などの分野にまで費用抑制政策を拡大しようとしていることに異議を唱えている。

・報告書は、オンラインの著作権侵害の申し立てを厳しく取り締まるニュージーランドの新しい法律について「権利保有者」(例えば米国のメディア企業)が支持していると指摘する。しかし、続いて報告書は、米国の複合メディア企業がその法律のもとで、侵害の疑いに対する訴訟に支払わなければならない費用に不快感を表明している。負担金は21ドルである。

【メキシコ】
・本レポートが挙げた最初の投資障壁は「メキシコの石油・天然ガスセクターが民間投資に非常に閉鎖的である…」という点だ。米通商代表部はこの理由が「メキシコ憲法が炭化水素鉱床の国有化を義務付けているから」であることは認めている。

・米通商代表部は「メキシコ沿岸50km以内にある住宅不動産の外国人保有」を禁止するメキシコの法律を取り上げることも妥当であると考えている。本レポートは、米国市民がメキシコ海岸地帯を買収できないことを「投資障壁」であるとまで指摘している。

・本レポートはメキシコに、政府調達政策をいかに変更するか、求められてもいない助言をし、例えば、国家レベルの透明性基準は「汚職を回避し競争を育成するように”調整”されるべき」とする勧告が含まれている。

【マレーシア】
・圧倒的にイスラム教徒が多いマレーシアに関して、USTRの報告書は(マレーシア)政府が「食肉処理場に対してハラール(訳注:イスラムの戒律に従って食肉処理した動物の肉)専用の施設を維持し、ハラールとハラールでない製品を確実に隔離輸送するよう定めている」と批判。イスラム教の食肉加工要件に関する概念をコーデックス委員会が定めた要件と一致させるよう報告書は提案している。コーデックス委員会とは国際的な食品規格団体であり、多国籍食品企業が中心的役割を果たしている団体である。

・USTR also takes issue with Malaysia’s restrictions on importation of pork and alcohol, products traditionally forbidden for the three out of every five Malaysians who are Muslim.
米通商代表部はまた、5人のうち3人がイスラム教徒であるマレーシア人に伝統的に禁止されている豚肉およびアルコール飲料の輸入に対するマレーシアの規制にも異議を唱えている。

・本レポートは「マレーシアにおける政府調達プロセスについて、米国政府は引き続き懸念を表明する」としている。「マレーシアが、伝統的に政府調達を利用して国の公共政策目標を後押ししてきた」というものだ。特に米通商代表部が困惑した政策目標として「マレー人先住民族であるブミプトラの経済活動への参画促進、地場産業への技術移転、外貨の流出削減、地元企業に対するサービス・セクターの雇用機会の創出、マレーシアの輸出能力向上」などが含まれている。

【チリ】
・本レポートによれば、米国は「チリに対して…著作権および著作隣接権のあらゆる侵害行為に対する効果的措置を講じられるよう、ネットサービス・プロバイダの法的責任管理体制の修正を強く迫っている。」なお、同様の条項は、あの失敗に終わったオンライン海賊行為防止法(SOPA)の一部として米国民および連邦議会によって完全に拒絶されている。同条項がユーザー作成型コンテンツへの徹底した取り締まりを可能にし、技術革新を阻害し、インターネットの自由を制限してしまうのではないかという懸念が広まったためである。

【カナダ】
・本レポートは、米国のイーライ・リリー製薬会社によって昨年提出された通知に言及し、米国製薬産業に関する懸念を伝えている。同通知でイーライ・リリー社は、カナダの特許政策全体に直接挑むために、北米自由協定(NAFTA)の投資家特権を利用する計画を発表した。この「投資家対国家」条項に基づく攻撃は、イーライ・リリー社製医薬品の特許がカナダの特許性基準を満たしていなかったために無効とされたカナダ判決に対して着手されたものだ。米通商代表部は、もう1つの最近の特許無効判決―ファイザー社のバイアグラに対するもの―についても言及している。この無効判決によるNAFTAの「投資家対国家」に基づく訴訟はまだ起きていない。米通商代表部がこれらの訴訟を含めるということは、米国企業がカナダの特許法に挑戦するのを政治的に支援するのでは、と公衆衛生当局担当者の間で不安が広がっている。

・本レポートは、主要な外国投資および買収が国に純便益を確実にもたらすように精査されねばならないとするカナダの政策に反論している。米通商代表部によると、この基準は適用範囲が余りに広すぎる。

・米通商代表部は、アルコールの流通を管理するカナダの地方政府の政策により、米国産ワインと蒸留酒のカナダへの輸出が大いに妨げられている、と失望感をあらわにしている。リポートは、政策を制定する「州運営の酒類管理委員会」を特に問題視しているが、これらは例えば、ペンシルベニア州酒類販売管理委員会などの州レベルの委員会と大差ないのである。

・本レポートは、カナダ連邦政府の幅広いデータを整理統合するプロジェクトについて説明し、データ統合に関わる企業が政府資料をカナダ国外に移すことが許されないとする規定について批判している。米通商代表部によれば、データの海外移転(オフショア)は「今日の情報に基づく経済」に合致するものであり、カナダ連邦政府は様々な政府資料を海外に移すことを躊躇してはならない、ということだ。

・本レポートは、カナダのセンシティブ品目である酪農および家禽類肉製品向けの一般的な供給管理プログラムについて攻撃している。米通商代表部によれば、当プログラムはカナダの農業従事者を支援し、生活を安定させているものの、米国生産者によるカナダへの大幅な輸出増を制限すると説明している。

・カナダの輸入障壁によって損なわれてきた米国産「酪農製品」の実例として、米通商代表部は一品目を選び出している。それは「チーズ・スティックのパン粉揚げ」である。

・本レポートはカナダの「チーズ成分規格」を、米国産「酪農製品」がカナダで販売されるのを阻害するものと非難している。米通商代表部が懸案事項として挙げる主要基準は、「チーズ製造プロセスにおける最低生乳(殺菌の必要がなく加工もされていない搾ったままの乳)含有量」についてのカナダの規定である。

【ブルネイ】
・本レポートはブルネイに対し、軍事調達プロセスについてすべての軍事契約決定の論理的根拠が「公開」されていない、と厳しく非難している。

【オーストラリア】
・通商代表部は、オーストラリアが市民の個人情報をクラウド・コンピューティング経由で諸外国へ移し、海外で保管することに抵抗していることに対し不満を表わしている。本レポートは、守秘義務のある医療保健記録のオフショア保管を禁止するオーストラリアの新たな法律を特に取り上げている。米通商代表部は「地理的リスクではなく、慎重に扱うべきデータの安全性を保障するリスクベース・アプローチ」を推奨している。とは言うものの同段落で、オーストラリアは愛国者法を引き合いに出して「クラウド・コンピューティングに付随する法的および規制上のリスクがあることを証明している」としており、控えめだがオーストラリアも実はリスクベースなのだ。米国人弁護士も、愛国者法は米国市民のデータ機密性を脅かすとして、長い間同じ様な懸念を表明してきた。本レポートは、愛国者法は擁護しないようである。

・本レポートは、オーストラリア関連の論評の中で一節(セクション)全体を「血漿文画製剤」にあてている。本レポートは、「米国は、オーストラリアで血漿文画のための競争的且つ開かれた入札制度が欠如していることをいまも憂慮している」と明確に述べている。米通商代表部は明らかに、米国企業がオーストラリア市民の血液を「文画」する平等な機会を得ることを望んでいる。

【日本(TPP参加見込み国)】
・本レポートは日本の食品表示政策を容認しないことを表明している。食品表示政策は「食材および食品添加物の名称をすべて含有率と共に列挙しなければならず、さらに製造過程の説明をも盛り込むことを義務づけている」。消費者たちが自ら消費する製品情報をこれまで以上に要求しているいま、日本の進歩的な食品表示政策は「厄介なもの」であり「ライバル企業に機密情報を公開してしまうリスクがある」と米通商代表部は苦情を述べている。

・本レポートは「日本郵政公社(国営の郵便・貯金・簡易保険の公共企業体)が民営化されるべきかどうかについては中立のままでいる」と慎重に述べている。しかし米通商代表部は「日本政府の郵政改革努力を米国企業は注意深く監視し続ける」ことを明言。さらに米通商代表部は、そうした監視は決して「中立的」ではなく、米国政府は「日本政府に対して日本の貯金・保険・宅配便市場において、日本郵政事業会社と民間セクターの参加企業との間に公平な競争の場を実現すべく、確実にあらゆる必要な対策が講じられるよう要求し続けることになる」とが明らかに述べている。このように米通商代表部は、国内唯一最大の公社が民営化されるべきかどうかの日本政府の決定を尊重している。だが一方、政府当局が典型的に、消費者に利するよう公的機関経由で提供している優遇措置は剥奪されるべきである、と強く印象づけている。

・米通商代表部は、日本の軍事調達契約すべてが外国企業に開かれていないことを厳しく非難している。本レポートは、防衛製品や防衛システムは国内で開発・生産されるものだとする日本人の「一般的な特恵」に対して苛立ちを見せる。「国の安全保障の要件(必需品)をもっと効率良く、もっと安価に満たせるような外国のオプションがある時…」は、国家安全保障論にはまったく根拠がないようだ。(但し、米国以外で議論される場合に限る。(米国の)バイ・アメリカン法は軍事調達品も対象にしているのだ)

・本レポートによると、米国政府は日本政府に「外国の大学と協働して、日本の学校と同等の優遇税制を与える全国規模の解決策を見つけるように迫っている」とのことだ。なぜ日本政府は、外国の私立大学にも日本の学校に便宜を図る優遇税制と同じものを提供すべきなのか? 米通商代表部によると、このむしろ変則的要求に応じることは、外国の大学が「日本の教育環境に比類なき貢献をし続けるため」に必要であるから、だそうだ。

・米通商代表部は、日本政府が頻繁に「不透明」な政策諮問団体を利用すると非難している。「会員でない者は、諮問団体の審議に情報提供する有意義な機会を与えられないことが多すぎる」と指摘しているのだ。しかしこの批判は、ほぼ文字通り、米通商代表部自身への非難にもなる。米通称代表部はメンバーのほとんどが企業代表から成る排他的で不透明な公式の貿易アドバイザー制度を管理運営しているのである。米通商代表部は日本に対し、利害関係者すべてが、必要に応じて参加したり直接情報を提供したりする有意義で十分な機会を確実に与えるように、と続けている。一方、米国の利害関係者もまた、米通商代表部に対して、密室で行われる貿易アドバイザー制度の門戸を開くよう要請しているが、いまだ「有意義」な変化は見られていない。

・米通商代表部は、日本における政治的にセンシティブなコメの輸入政策に狙いを定め、これらの政策を「高度に規制され、不透明な」制度と呼び、「日本の消費者への有意義なアクセスが制限されている」としている。本レポートは、当該制度の下では米国産米の殆どが日本の消費者に届かないと嘆き、さらに日本人消費者は「米国の高品質米がもっと容易に入手できるようになったら購入するであろう」と主張している。日本人消費者による米国産米への選好が実現されていないという主張を具体化するために、本レポートは「産業調査」を引用している。

・続けて本レポートは、コメ、小麦、牛肉、豚肉および酪農製品に関する日本の政策にひとつひとつ狙いを定め、関税や割り当て、国の流通制度に異議を唱えている。これら標的にされた農業部門は、日本において最も政治的にセンシティブなものに含まれ、TPP交渉において関税撤廃から外されねばならないセクターであると与党の自由民主党によって指摘されてきたセクターである。

(翻訳:戸田光子、小幡詩子/監修:廣内かおり)

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