2013年5月18日土曜日

ISD条項よりも問題?!──リーク翻訳から見える「Regulatory Coherence(規制の内外調和)」の実態

「Regulatory Coherence(規制の内外調和)」についてのリーク情報です。これは、日本でも問題視されている「ISDS」や「Transparency」と共にTPPの本質を代表する項目です。じっくり読むととんでもないことが書いてあります(訳語が一定していませんが、ここでは“規制の内外調和”としておきます)。また、TPPにおける非公開性・秘密主義がどのように取り扱われているかが、冒頭の文章で分かります。

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環太平洋パートナーシップ(TPP)
─ 規制の内外調和 ─

発出元:2010年3月4日付 機密指針

論拠:1.4(b)
機密扱いからの除外:TPP発効4年後、発効しなかった場合には交渉終了後4年後
*この文書は了解なく公表することはできない。しかし、郵送、もしくは機密扱外のeメール、ファクシミリ、盗聴防止機能のない電話での会話でやりとりされ、機密保護されていないPCへの保存は可能。資料はセキュリティの効いた建物、部屋、もしくは保管庫に施錠管理されること。

【規制の内外調和】

第Ⅹ.1章:
一般条項

1.規制の内外調和には以下のものが含まれる:
(TPP加盟国は規制の内外調和の定義に対する適切な範囲に関する検討を深めること)

2.加盟国(団体)は以下の重要性を認める:
a.規制の内外調和に関する条項、特に、加盟国間における、物品の貿易、サービス、投資の促進に関するものについて、本協定による恩恵を保つこと、
b.各国が妥当と認識する水準において、加盟国が規制上の優越事項を特定し、この優越事項に対応する規制措置を確立および行使する国家としての自主権、(※注1)

※注1.この文言は、加盟国の権利を規定する協定の前書きに記載されるべきか、または正当な目的を追求するうえでの各国の規制の権利に関する指針として別の章のなかで追記するか、再度見直しが必要とされる可能性がある。

c.この規制が公共政策の目的、つまり環境保護、労働権、市民や労働者の健康と安全を達成するために果たす役割、
d.規制措置を策定、遂行する上での幅広い利害関係者の参加、
e.加盟国の国際的な義務を考慮に入れた地域の規制協力。

第Ⅹ.2章
国家レベルの調整機関を含む、調整および検証の手順や仕組みを持つ中心的機関の設立

1.規制の内外調和とは、一般的に適用される規制措置を構築するための手順について、関係閣僚間の協議と調整を促す国内の仕組みを通して促進されるということを、加盟国は認めている。さらに加盟国は、規制措置に関する情報が確実に一元管理され、広く頒布されることによって、規制事項に関する加盟国間の関与が高まることを認識している。それゆえ、各国は、中央政府のレベルで新たな規制措置(”対象となる規制措置”)の一元的な調整と検証を促進するための手順または仕組みを確実に備えるよう努力すること。そして、この目的を達成するための国の調整機関の設立および管理を検討すること。各加盟国は、法律、条令、その他の手段のいずれかに関わらず、公表されている基準を基に、対象となる規制措置の範囲を決定すること。各加盟国が独自に対象となる規制措置の適切な範囲を決定してしまう可能性はあるが、その際は必ず、本章の適用を回避する目的で任意に範囲を制限することなく、十分に広い範囲を定めること。

国の調整機関またはその他の適切な手順または仕組みの設計、権限の範囲、制度上の位置づけなどが、各国の国内事情(発展段階および政治的、制度的構造の違いを含む)によって様々であることは予測されるものの、X2.1にて言及した調整機関、手順または仕組みは、概して、制度上の一貫性を促進させるために最大の効果を発揮できる一定の共通する特徴を有するべきであることを、加盟国は認める。その特徴は以下のとおり:

a.制度上の構成要素を定め、政府と外部関係者の信頼に足る十分な資源と地位が付与されていることを証明する法的、行政的公文書があること、
b.策定した措置により、以下のX.3章に規定された内容を含むがそれに限定されない
良い規制慣行がどの程度行われるかを判断するために、対象の規制措置を見直し、その見直しに基づいて提案する権限があること、
c.本協定のX章に盛り込まれた透明性の規律を促進する重要な役割を果たすこと、
d.省庁間の重複、反復を可能な限り減らし、省庁間で相反する要求が出ないようにするために、各省庁間の調整と協議を強化し、また、特定の規制分野に関心のある省庁に対し規制策定への参加を促して、一貫性のある規制の促進を保証する能力があること、 
e.決定権を持つ者に対して、構造的な規制改革を行うための提案能力があること、
f.検証した規制措置、構造的規制改革に対するあらゆる提案事項について、本調整機関自身の制度的改善に関する最新情報を含め、定期的に活動を報告すること。

3.国の調整機関、手順、仕組みを通じて、各加盟国は、(i)規制措置の策定に関して検証責任を持たない中央政府レベルのすべての規制当局、および(ii)各加盟国の領土内における、関連の準政府機関との連絡経路を維持する方法を、可能且つ適切な範囲で模索すること。

第Ⅹ.3:核心的な良い規制慣行の履行
1.国の調整機関、手続き、仕組みを通じ、各国は、対象となる規制措置の検証責任の遂行において、加盟国の目的を達成するためにもっとも良い措置を考案するため、各国によって設定された経済影響評価の限界を超える対象の規制措置を講じる場合は、国内法に準じて、規制影響評価の実施を行うよう関連当局を後押しすること。

a. RIA規制影響分析Regulatory Impact Analysisは、特に以下を確認すること:
(1)課題の重要性の評価と規制行動の必要性の説明を含め、規制当局が対応しようとする課題と政策目標、 
(2)政策目標を実現するための、潜在的に効果があり、且つ妥当な実現可能性を持つ
代案、
(3)該当する場合、選択された代案が、波及効果を考慮する一方、質的な利益を含む純利益を最大化する方法で、政策目標を実現すると結論づける理由。
b.規制影響評価には以下が含まれること
(1)計画された規制措置のあらゆる面において、政策目標達成のために規制する必要があるか、または国内法に準じて、規制によらず/自発的な方法で政策目標を達成できるか否かの検討。
(2)負担や利益は数量化することが難しいことを理解しつつ、実現可能性があり国内法に反しない範囲内での、可能な各代替案の費用と利益の評価。代替案のなかには、規制しないという選択肢を含む。
(3)その選択肢が他の代替案より優れている理由の説明。該当する場合は、可能な他の選択肢に対する純利益の規模の比較を提出すること。
(4)特定の規制当局が持つ権限、責務、資源の範囲内で、もっとも合理的に取得可能な、科学的、技術的、経済的その他の情報を基にした決定事項。

2.「純利益」とは、計画された規制活動による予想上の利益と費用との差である

2.加盟国は、RIA分析に関連する可能性のあるこれらとその他の「良い規制慣行」の概念が、APEC-OECD規制改革統合チェックリストおよび技術的規制のための良い規制慣行に関するAPEC情報記録に反映されることを認める。

3.加盟国は、技術的な事項に対応する規制措置のなかに、その措置を理解し、適用するには関連分野の専門性が必要になる場合があることを認識し、対象となる規制措置が簡潔明瞭、且つ整理され、理解しやすいものになることを保証すること。

4.各加盟国は、本協定第Ⅹ章に規定された透明性の規律に従い、関連する規制当局が、
対象となる規制措置、規制の分析、データおよびその捕捉資料を誰でも入手できるようにし、場合によっては、こうした情報を閲覧、再発行できるようオンライン上に掲示することを保証すること。

5.各加盟国は、政策目的を達成するためのより効果的な規制制度を作るため、具体的な
規制措置について、修正、簡素化、拡大、廃止が必要かどうかを決めるため、適切な頻度で、既存の重要な規制措置の一部またはすべてを検証する手続きを確立または維持すること。
加盟国が規制上の手段を見直す際に考慮すべき項目には、基本的な技術変化など環境の変化により措置が不要になったり、時代遅れとなっていないか、また規制での協力活動や規制の拡大を通してその効果が高められるものはないか、などが含まれる。

6.各加盟国は、規制当局によって今後最低12か月以内の発行が妥当と思われる規制措
置の記載を含む、規制予定報告書を毎年発行すること。

7.各加盟国は、対象となる規制措置に関して他の加盟国間および各関係者間をうまく協力させるためのあらゆる方法を検討すること。その一部は以下のとおり。

a.他の加盟国との情報交換、対話、会議
b.他の加盟国および中小企業を含む利害関係者との情報交換、対話、会議
c.他の加盟国との規制活動の協調
d.最良の方法を共有し、また、関連する規制手法、基準、手続きを調和させる取り組みへの参加、および、規制措置の策定過程におけるそうした取り組みの検討
e.他の加盟国の規制手法、および国内法に反しない適切な範囲内での、国際的、地域的、その他の協議の場における進捗を検討するのに十分な時間を確保した規制スケジュールへの配慮

第Ⅹ.4章:
セクター方式による取組み
加盟国は、本協定の他の章で定められた義務の範囲内で、該当する場合は、特定の商品およびサービスセクターに関連する規制の調和を高めることを目的に、具体的な手法を開発する取組みに価値があることを認める。
それゆえ、加盟国は、本協定の他の章の規定に基づいて設立された委員会や組織に定められた責任を害することなく、本協定の他の章のセクター間規制の一貫性に関する条項の実施と運用について、定期的に協議し、以下の第X.X章に関連する将来のセクター別手法の潜在性を念頭に、これらの条項に関するあらゆる知見との関連性を調査すること。


第Ⅹ.5章:
制度上の枠組み

1.加盟国はここに、規制の内外調和に関する委員会を設立する。同委員会は、総意に基づいて意思決定され、協定の発効後1年以内に召集され、その後少なくとも1年もしくは2年に1度召集され、本章の実施と運用に関する課題を検討し、将来の優先事項を確認する。その中には、本協定の他の章の下で定められている義務に関して、加盟国間の規制一貫性に関係する協力活動に対する潜在的なセクター別イニシアティブが含まれる。

2.将来の優先順位を特定するため、同委員会は協定の他の章に基づき設立された他の組織の活動を考慮し、活動が重複しないことを確認する。

3.同委員会は、規制協力への取り組みが徐々に重視されるようになること、他の関連する協議の場で進められている政策が軽視されたり、重複したりすることがないことを確実にするため、行動計画を策定、管理する。それゆえ委員会は、加盟国が参加している他の協議の場における協力活動を定期的に確認する。

4.加盟国は委員会に対し、Ⅹ章2.1遂行のために創設された手順または仕組みに関する情報を速やかに提供すること。この情報には、今後設立される予定の機関の責任と活動、対象となる規制措置の範囲が含まれる。さらに各加盟国は、協定発効後1年以内にⅩ章2と3の遂行に関して、他の加盟国の求めに応じ情報を提供するための連絡先を特定すること。

5.同委員会は、本協定発効後少なくとも5年に1度、国家の調整機関、手順、仕組みを維持する上での良い規制慣行や最良の実践事例、その規律強化と改善に向けたX章2および3を実行した加盟国の経験を検討すること。

第Ⅹ.6章:
利害関係者の関与

第1回の会合において、規制の内外調和に関する委員会は、全加盟国の様々な立場、分野の人の参加を保証するため、本協定を通じて、規制の内外調和を向上させる取組みに関心を持つ人々が見解を述べる、有意義な機会の提供を保証する仕組みを構築すること。

第Ⅹ.7章:
定義
「規制措置」とは、法令順守の義務が生じる中央政府レベルの規制当局により、提案または最終の形式で一般的に適用される措置を指す。

第Ⅹ.8章:
紛争解決
第Ⅹ章 このX章(紛争解決)への適用は「調整機能の一元化を促進し、新しい規制措置を検証するための手順または仕組み」を確保するという義務に限定される。ある加盟国が第Ⅹ章の目的に照らして約束不履行の訴訟を起こす場合、その加盟国は、相手の加盟国が(1)義務を侵したこと、(2)そのような侵害が両国間の貿易と投資活動を阻害したこと、を証明する必要がある。 

第Ⅹ.9章 秘密保持:
この章のいずれも、加盟国の国内法により開示が禁止または除外されている情報、または公開によって情報提供者の競争上の立場が不利になる情報などの機密情報の公開を要求するものではない。
(翻訳:田所剛/監修:廣内かおり)

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