2014年7月25日金曜日

米政府は、日本との市場アクセス問題での交渉条件を、10月に他のすべてのTPP交渉参加国に開示することを決定

翻訳をされた「TPP阻止国民会議」の了解を得て配信します。
Inside U.S. Trade  2001年7月18日

米政府は、日本との市場アクセス問題での交渉条件を、10月に他のすべてのTPP交渉参加国に開示することを決定

201年7月17日掲載

情報筋によると先週、米日両政府は、環太平洋連携協定(TPP)交渉で11月までに意義ある結果を得るために、交渉を強く押し進めていることを示すシグナルとして、他のすべてのTPP交渉諸国に対して、両国の市場アクセスに関する二国間協議の詳細を、10月に開示し、TPP12カ国間での集中関税交渉の新たな段階を開始するようにすることを約束した。

同情報筋によれば、米日両政府の担当者がこの約束を表明したのは7月3-12日にオタワ非公式協議の場であった。別の情報筋によると、このような展開は、他のTPP交渉国の共通の合意(不満)すなわち、市場アクセスをめぐる米日二国間の協議の交渉結果(成果)はTPP参加国すべてが共有し、またそれは最終的なTPP合意案に近いものであるべきだ、という主張がもたらしたものだ。

もし米国と日本が本当に10月までに市場アクセス分野で合意に達成することが出来れば、その開示は、他の10交渉国にとって、牛肉、豚肉、乳製品などセンシティブな農産物品目で一体、日本政府が米国にどのような譲歩を申し出たのかを理解することができる。

この情報開示は、TPP交渉の新局面を開くことになる。米日両国以外のすべてのTPP参加国―とくに農産物輸出国であるニュージーランド、オーストリアリア、カナダ、チリ、メキシコなど―が今度は、日本が米国に対して申し出た内容と同じ待遇を自分たちにも提供するよう説得しはじめることになる...と複数の情報筋が指摘する。もしこれらの国々が日本から同じ待遇を獲得することができなければ、各国は市場アクセス分野とルール問題について提案を考えていた譲歩のレベルを下げてくることになろうと、ある情報筋はのべた。

米日政府の市場アクセス交渉の詳細を10月に開示しようという計画は、米政府の、11月までに何らかのTPPの実質的成果を出そうとする、米国政府によるより広範な圧力の一環のようである。つまり11月10-11日に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議をふくめ、TPP交渉国首脳がアジアで予定されている一連の会議に参加する11月までに成果を出そうとする試みである。

その目標はオバマ大統領が先月ニュージーランドのジョン・キー首相との会談の後、公に設定したものである。ただし米通商代表部(USTR)はそのあとすぐに、米政府が特定の交渉期限にむけて動いているという見方は慎重にあつかってもらうように働きかけた。(Inside U.S. Trade, 6月27日)。

この計画のもう一つの問題要素は、米国がおしすすめようとしているアグレッシブな会議スケジュールである。複数の情報筋によると、オタワで、米国は8月に一連のTPPの技術的細目の事務局会議を開催し、続けて9月に首席交渉官の会議、10月に閣僚会議を開くことを提案したと伝えられる。しかし、同じ情報筋によれば、他のTPP諸国はまだこのスケジュールを検討はするも同意していないという。

他方、TPP交渉を観測し続けているグループからは逆に、この新しい提案(米日二国間交渉開示)を考慮に入れれば、11月合意という目標が達成できるかどうか懐疑的であるとの見方が今週だされた。そもそも、まず第一に、米国と日本が現実に10月までに市場アクセスについての最終取り決めに到達できるか疑問だとの複数の声がある。

第二に、もし本当に10月に日米交渉の詳細を参加国に明らかにするというスケジュールだと、この米日両政府間の機密情報(sensitive information)を11月4日の米議会中間選挙に先立って他のTPP当事国に配布するということになる。そのような情報はほぼ確実にリークされ、おそらく米国の農業関係者から大きな反対を引き起こし、そうなると中間選挙においては民主党に政治的ダメージを与える可能性がある。

ある情報筋は、オバマ政権は、政治的反動を恐れて、中間選挙の前にはTPPで譲歩することには特別な注意を払っていると述べた。

米日両政府の二国間交渉内容の発表計画にくわしい複数の情報筋は、米国の民間部門が協議の詳細について騒ぎたてる時間をできるだけ少なくするために、情報が公表されるときとTPP最終合意が決着するときまでの間をできるだけ短時間にしようと、オバマ政権は明確にねらっていると言っている。

米国政府は日本と注意深くバランスをとらなければならないという難題に直面している。米国は一方で、日本の複数のセンシティブな農業部門に対する関税全面撤廃は要求しないという譲歩をすでに行なっている。他方、米国政府は、米国内の生産者が交渉結果を支持してくれるか、或いは、すくなくとも議会に働きかけて協定を葬るような行為をしないように、彼らにとって経済的に意義をもたらす取り決めを作る必要がある。

第3に、たとえ米日政府の二国間交渉の詳細を10月に開示しても、市場アクセス交渉を完結させ、また懸案となっている主要なルール問題を解決するのに必要とされる時間を考慮すれば、他のTPP交渉10カ国が11月までに交渉を終結するのに充分な時間があるかどうか、TPP交渉を監視しているグループからは疑問の声が聞こえる。しかし一方では、TPPの市場アクセス部分についてのみ11月までに取決め合意することならば、可能かもしれないとの見方が複数の情報筋から示されている。

しかしながら、市場アクセス分野だけでも、交渉終結を1か月で決着をはかるのは、いくつかの理由で難しいかもしれない。1つは、ニュージーランドなど他の農業輸出国は米日の交渉結果に異議を呈するかもしれないし、あらかじめ決められた結果の受け入れを強制されることに抵抗するかもしれない。もうひとつの理由は、たとえTPP当事国すべてが日本との間では決着が成立したとしても、今度は、米国やニュージーランドなどいくつかの国は、カナダとの乳製品や鶏肉の市場アクセスについての交渉をしたいといいだすからである。それは容易ではなさそうである。

米国と日本が両国間の市場アクセス交渉の内容を10月に明らかにするとの公約は、オタワ非公式協議のもっとも意義のある結果のように見える。さもなければこの会議は、政治的対立の多い問題を避けて「技術的」ルール問題の解決だけに終始したはずだ。

7月12日オタワで日本の報道陣むけにおこなわれたブリーフィングで、鶴岡公二(つるおか・こうじ)首席交渉官は、TPP交渉国のひとつが技術的問題だと見ていることが別の国にとっては政治的問題かもしれないので、オタワ会議で進展を見るのは容易ではなかったとのべた。鶴岡氏はまた、首席交渉官交渉では労働者の権利、食品衛生・植物検疫(SPS)分野の諸問題では前進したと主張した。

SPSについてTPP首席交渉官たちは、その章が規定する義務をめぐる論点をいかに取り扱うかについて、まだこの問題での合意はできていないものの、意見の相違はせばめたと、先週情報筋が語った(Inside U.S. Trade, 7月11日)。

7月12日オタワで10日間開かれた非公式協議の終りに、カナダ政府が発表した最新情報は、交渉で各国が前進したかどうかについての示唆も、次の会合をいつ開くつもりであるかについての情報もなかった。

その代わりカナダ外務国際貿易省(DFATD)のウエブサイトに掲載された最新情報は、内容が非公式協議で首席交渉官たちが討議した題目およびその間におこなわれた実務グループの会合についての基本的な情報のみであり、そのほとんどはすでに公表されているものであった。

同じウエブサイトの別のページ上でDFATDは、今後のTPP交渉会合はスケジュールができているが日時と場所は確認されなかったことをほのめかした。「現時点で、次の交渉官会合の日取りと場所は確認されなかった。閣僚会合の日程も現時点で予定されていない」とのべた。

「各国首席交渉官は7月4日から12日まで会合をひらき、労働、国有企業、サービス諸分野、投資、すべての分野の市場アクセスなどを討議」したとDFSTDはウエブサイトでのべた。「これらの討議は、残されたルール作りを前進させる目的で開いた少人数の実務レベル、技術担当者グループの会合と並行しておこなわれた」。

「会合をおこなった実務者グループは、知的財産権(IP)が7月6-10日、国有企業(SOEs)が7月9-12日、原産地規則(ROO)/繊維が7月3-9日におこなわれた。カナダは交渉のいくつかの分野をまたがってわが国の利益を前進させるために複数の2国間会合を開いた」とDFATDのウエブサイトはのべた。

DFATDも米通商代表部(USTR)も、交渉の終了にあたって報道発表(press release)を出しておらず、USTRの報道官はオタワで見られた進展についてのコメントを繰り返し求められたが、一切応じなかった。

マシュー・シューエル(Matthew Schewel)記

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