2014年7月25日金曜日

米政府は、日本との市場アクセス問題での交渉条件を、10月に他のすべてのTPP交渉参加国に開示することを決定

翻訳をされた「TPP阻止国民会議」の了解を得て配信します。
Inside U.S. Trade  2001年7月18日

米政府は、日本との市場アクセス問題での交渉条件を、10月に他のすべてのTPP交渉参加国に開示することを決定

201年7月17日掲載

情報筋によると先週、米日両政府は、環太平洋連携協定(TPP)交渉で11月までに意義ある結果を得るために、交渉を強く押し進めていることを示すシグナルとして、他のすべてのTPP交渉諸国に対して、両国の市場アクセスに関する二国間協議の詳細を、10月に開示し、TPP12カ国間での集中関税交渉の新たな段階を開始するようにすることを約束した。

同情報筋によれば、米日両政府の担当者がこの約束を表明したのは7月3-12日にオタワ非公式協議の場であった。別の情報筋によると、このような展開は、他のTPP交渉国の共通の合意(不満)すなわち、市場アクセスをめぐる米日二国間の協議の交渉結果(成果)はTPP参加国すべてが共有し、またそれは最終的なTPP合意案に近いものであるべきだ、という主張がもたらしたものだ。

もし米国と日本が本当に10月までに市場アクセス分野で合意に達成することが出来れば、その開示は、他の10交渉国にとって、牛肉、豚肉、乳製品などセンシティブな農産物品目で一体、日本政府が米国にどのような譲歩を申し出たのかを理解することができる。

この情報開示は、TPP交渉の新局面を開くことになる。米日両国以外のすべてのTPP参加国―とくに農産物輸出国であるニュージーランド、オーストリアリア、カナダ、チリ、メキシコなど―が今度は、日本が米国に対して申し出た内容と同じ待遇を自分たちにも提供するよう説得しはじめることになる...と複数の情報筋が指摘する。もしこれらの国々が日本から同じ待遇を獲得することができなければ、各国は市場アクセス分野とルール問題について提案を考えていた譲歩のレベルを下げてくることになろうと、ある情報筋はのべた。

米日政府の市場アクセス交渉の詳細を10月に開示しようという計画は、米政府の、11月までに何らかのTPPの実質的成果を出そうとする、米国政府によるより広範な圧力の一環のようである。つまり11月10-11日に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議をふくめ、TPP交渉国首脳がアジアで予定されている一連の会議に参加する11月までに成果を出そうとする試みである。

その目標はオバマ大統領が先月ニュージーランドのジョン・キー首相との会談の後、公に設定したものである。ただし米通商代表部(USTR)はそのあとすぐに、米政府が特定の交渉期限にむけて動いているという見方は慎重にあつかってもらうように働きかけた。(Inside U.S. Trade, 6月27日)。

この計画のもう一つの問題要素は、米国がおしすすめようとしているアグレッシブな会議スケジュールである。複数の情報筋によると、オタワで、米国は8月に一連のTPPの技術的細目の事務局会議を開催し、続けて9月に首席交渉官の会議、10月に閣僚会議を開くことを提案したと伝えられる。しかし、同じ情報筋によれば、他のTPP諸国はまだこのスケジュールを検討はするも同意していないという。

他方、TPP交渉を観測し続けているグループからは逆に、この新しい提案(米日二国間交渉開示)を考慮に入れれば、11月合意という目標が達成できるかどうか懐疑的であるとの見方が今週だされた。そもそも、まず第一に、米国と日本が現実に10月までに市場アクセスについての最終取り決めに到達できるか疑問だとの複数の声がある。

第二に、もし本当に10月に日米交渉の詳細を参加国に明らかにするというスケジュールだと、この米日両政府間の機密情報(sensitive information)を11月4日の米議会中間選挙に先立って他のTPP当事国に配布するということになる。そのような情報はほぼ確実にリークされ、おそらく米国の農業関係者から大きな反対を引き起こし、そうなると中間選挙においては民主党に政治的ダメージを与える可能性がある。

ある情報筋は、オバマ政権は、政治的反動を恐れて、中間選挙の前にはTPPで譲歩することには特別な注意を払っていると述べた。

米日両政府の二国間交渉内容の発表計画にくわしい複数の情報筋は、米国の民間部門が協議の詳細について騒ぎたてる時間をできるだけ少なくするために、情報が公表されるときとTPP最終合意が決着するときまでの間をできるだけ短時間にしようと、オバマ政権は明確にねらっていると言っている。

米国政府は日本と注意深くバランスをとらなければならないという難題に直面している。米国は一方で、日本の複数のセンシティブな農業部門に対する関税全面撤廃は要求しないという譲歩をすでに行なっている。他方、米国政府は、米国内の生産者が交渉結果を支持してくれるか、或いは、すくなくとも議会に働きかけて協定を葬るような行為をしないように、彼らにとって経済的に意義をもたらす取り決めを作る必要がある。

第3に、たとえ米日政府の二国間交渉の詳細を10月に開示しても、市場アクセス交渉を完結させ、また懸案となっている主要なルール問題を解決するのに必要とされる時間を考慮すれば、他のTPP交渉10カ国が11月までに交渉を終結するのに充分な時間があるかどうか、TPP交渉を監視しているグループからは疑問の声が聞こえる。しかし一方では、TPPの市場アクセス部分についてのみ11月までに取決め合意することならば、可能かもしれないとの見方が複数の情報筋から示されている。

しかしながら、市場アクセス分野だけでも、交渉終結を1か月で決着をはかるのは、いくつかの理由で難しいかもしれない。1つは、ニュージーランドなど他の農業輸出国は米日の交渉結果に異議を呈するかもしれないし、あらかじめ決められた結果の受け入れを強制されることに抵抗するかもしれない。もうひとつの理由は、たとえTPP当事国すべてが日本との間では決着が成立したとしても、今度は、米国やニュージーランドなどいくつかの国は、カナダとの乳製品や鶏肉の市場アクセスについての交渉をしたいといいだすからである。それは容易ではなさそうである。

米国と日本が両国間の市場アクセス交渉の内容を10月に明らかにするとの公約は、オタワ非公式協議のもっとも意義のある結果のように見える。さもなければこの会議は、政治的対立の多い問題を避けて「技術的」ルール問題の解決だけに終始したはずだ。

7月12日オタワで日本の報道陣むけにおこなわれたブリーフィングで、鶴岡公二(つるおか・こうじ)首席交渉官は、TPP交渉国のひとつが技術的問題だと見ていることが別の国にとっては政治的問題かもしれないので、オタワ会議で進展を見るのは容易ではなかったとのべた。鶴岡氏はまた、首席交渉官交渉では労働者の権利、食品衛生・植物検疫(SPS)分野の諸問題では前進したと主張した。

SPSについてTPP首席交渉官たちは、その章が規定する義務をめぐる論点をいかに取り扱うかについて、まだこの問題での合意はできていないものの、意見の相違はせばめたと、先週情報筋が語った(Inside U.S. Trade, 7月11日)。

7月12日オタワで10日間開かれた非公式協議の終りに、カナダ政府が発表した最新情報は、交渉で各国が前進したかどうかについての示唆も、次の会合をいつ開くつもりであるかについての情報もなかった。

その代わりカナダ外務国際貿易省(DFATD)のウエブサイトに掲載された最新情報は、内容が非公式協議で首席交渉官たちが討議した題目およびその間におこなわれた実務グループの会合についての基本的な情報のみであり、そのほとんどはすでに公表されているものであった。

同じウエブサイトの別のページ上でDFATDは、今後のTPP交渉会合はスケジュールができているが日時と場所は確認されなかったことをほのめかした。「現時点で、次の交渉官会合の日取りと場所は確認されなかった。閣僚会合の日程も現時点で予定されていない」とのべた。

「各国首席交渉官は7月4日から12日まで会合をひらき、労働、国有企業、サービス諸分野、投資、すべての分野の市場アクセスなどを討議」したとDFSTDはウエブサイトでのべた。「これらの討議は、残されたルール作りを前進させる目的で開いた少人数の実務レベル、技術担当者グループの会合と並行しておこなわれた」。

「会合をおこなった実務者グループは、知的財産権(IP)が7月6-10日、国有企業(SOEs)が7月9-12日、原産地規則(ROO)/繊維が7月3-9日におこなわれた。カナダは交渉のいくつかの分野をまたがってわが国の利益を前進させるために複数の2国間会合を開いた」とDFATDのウエブサイトはのべた。

DFATDも米通商代表部(USTR)も、交渉の終了にあたって報道発表(press release)を出しておらず、USTRの報道官はオタワで見られた進展についてのコメントを繰り返し求められたが、一切応じなかった。

マシュー・シューエル(Matthew Schewel)記

環太平洋経済連携協定(TPP)に関する記者会見の発言記録 (米議会下院前広場 2014年7月9日)

翻訳をされた「TPP阻止国民会議」のご厚意と了解をいただいて配信しています。

環太平洋経済連携協定(TPP)に関する記者会見の発言記録
米議会下院前広場 2014年7月9日 午前10時15分


【概要】 オタワでTPP交渉に出席している米代表が最終決着をはかろうとしているときも、米議会の古参議員や新しい市民社会の各分野の代表者もTPP反対に加わるようになり、米国でTPP反対の高まりを浮き彫りにした。発言した議員のなかには、議会で、協定への多数の支持を得るためにはどのような条件が必要かをのべた100人余の下院議員が署名した一連の重要なTPP書簡のスポンサーが含まれていた

-    TPPにおける強制力のある通貨規制条項は、下院議員230人、上院議員60人の要求であった。TPPはこの条件がなければ、即却下されてしまうが、いまのところこの問題は交渉でとりあげられていない。 
-    労働者の権利:下院議員153人が、ベトナム、マレーシア、メキシコ、ブルネイなど労働者の権利にかかわる重大な問題を抱えている国々にについて、労働者および労働組合の条件が改善されない限り、また改善されるまでは、いかなるTPPの商業的利益も効力を発生させることに反対することを明らかにした。
-    ブルネイの人権/シャリア(イスラム刑法)にかんする書簡:民主党議員120人がブルネイとのTPP交渉を中止させるよう求めた。
-    環境問題での書簡―下院議員130人がTPPを支持する条件として制裁実施可能な環境ルールを求めた。
-    バイアメリカンの原則に基づく調達に制限をもうけてはならない
-    入手しやすい薬品へのアクセスについて、また、医薬品の特許期間延長と薬品処方集の利用制限についての米通商代表部の要求に反対する複数の書簡
-    米国憲法のもとでは議会は貿易協定を承認または拒否する権限をもっているが、現在にいたるまで米交渉代表はTPPについてのこのような要求を無視してきた。TPP交渉の方向にたいする不快感が議会で広がっていることからオバマ大統領が最近、11月10-11日のAPEC首脳会議を協定の新しい期限とすると発表したことは驚きであった。

発言者は以下の通り:ローザ・デローロ下院議員(民主党・コネチカット州選出)、ジョージ・ミラー下院議員(民主党・カリフォルニア州)、ルイーズ・スローター下院議員(民主党・ニューヨーク州)、ロレッタ・サンチェス下院議員(民主党・カリフォルニア州)、ピーター・デファツィオ下院議員(民主党・オレゴン州)、マーク・ポカン下院議員(民主党・ウィスコンシン州)、ドナ・エドワーズ下院議員・メリーランド州)、ドゥオン・チャン=ブロガー・市民社会活動家・VOICE(Vietnamese Overseas Initiative for Conscience Empowerment)在外ベトナム人の良心向上イニシアチブ)、ゲイリン・バロー=フェミニストマジョリティ、ジェラミ・デイビス=PAW=Pride at Work(仕事に誇りを).

【発言記録】
(記録のコピーをお求めの方はダン・ホックスミス dhocksmith※citizen.orgまで ←※を@に)

ローザ・デローロ下院議員(コネチカット下院第3選挙区)

おはようございます。郵便局同様、雨・みぞれでも雪でも、私たちはやってきます。集まった皆さん、ありがとうございます。今朝ここには同僚議員が来ています。下院のジョージ・ミラーさん、ロレッタ・サンチェスさん、リック・ノランさん、マーク・ポカンさんです。このほかにもこれから来る議員もいます。さらに、私たちとともにVOICEのドゥオン・チャンさん、「仕事に誇りを」(Pride at Work)のジェラミ・デイビスさんも来ています。「フェミニスト・マジョリティ」のエリー・スミールさんも加わるはずです。

TPP協定にかかわる諸問題―雇用から労働者の諸権利、食品の安全にいたるまでの諸問題について皆さんの声をあげていただきありがとうございます。ちょうどいま、NAFTA(北米自由貿易協定)型の協定に取り組んでいる米国を含む12カ国の貿易担当者が、なんらかの合意にこぎつけようと交渉を続けています。これらの交渉者、あるいは米政権も、議会や一般国民の間でおきているTPPの一括承認促進(fast-tracking)への強い反対を考慮に入れている様子はありません。この協定を結ぶことが労働者や家族にどう影響するのかについて、私たちが多くの懸念をとりあげてきても、それらに耳を傾ける様子もありません。

米政府および米通商代表あてにこの2年間に送られてきた書簡のサンプリングを紹介させていただきます。

私の仲間でありますドナ・エドワーズさんとニック・ラホールさんは他の67人の方々とともに大統領にたいして、バイ・アメリカン(Buy American=米国製品優先購入)法にしたがった調達の諸政策をこの協定のなかで規制しないようにと迫りました。これらの政策はもしTPPが調印されれば無くなってしまいます。

マイク・ミショードさん[下院議員]は、雇用を犠牲にし、赤字を増大させる通貨操作を抑えることを検討するよう大統領に求め、230人の下院議員とともに書簡を送る先頭に立ちました。しかし私たちの知る限り、これは討議にさえ付されていません。

ジョージ・ミラー下院議員は米通商代表にたいして労働者の権利を保護するよう求める書簡を153人のメンバー(下院議員)とともに送る先頭にたちました。

ヤン・シャコウスキ―下院議員[女性]は、USTR(米通商代表部)にたいして、開発途上諸国でジェネリック医薬品(後発医薬品)へのアクセスができるいおおうにすることを求めました。

アール・ブルメンアウア議員、ピーター・デファツィオ議員、サンディ・レビン議員をはじめとする122人の下院議員は通商代表部にたいし、天然資源を保護し気候変動に取り組めるようにするための強制力ある環境条項をつらぬくよう求めました。

下院議員119人がブルネイにたいし、いかなる取り決めにも合意する前に、非難されるべき人権侵害に取り組むことを要求するよう、ケリー(国務)長官に求めました。

下院議員151人が、私とジョージ・ミラー下院議員、ルイーズ・スローター下院議員と一緒に貿易促進権限(Fast Track authority)を大統領に付与することに反対を表明しました。

交渉をまとめる前にこの法案で提起された、多くの食品の安全についての懸念に取り組むよう求める超党派の書簡をウォルター・ジョーンズ下院議員、メアリ・ランドリュ上院議員とともに先頭に立って提出する機会をえました。

この書簡についてちょっとのべさせていただきます。このほかの書簡については他の方々が述べられます。ひとつの例ですが、食品医薬品局(FDA)の試験で、ベトナムからの輸入海産食品が以上に高いレベルの残留抗生物質(antibiotic residue )、微生物汚染(microbial contaminations)などの食品安全問題におかされていることが確認されています。2012年にベトナムからの海産食品が、汚染、腐食、残留薬品、未承認食品添加物、サルモネラ菌などの懸念を理由として206回上陸(entry)拒否されました。

提案される取り決めはこれらの食品の安全性の問題や、私が言及しなかったものもふくめてTPPによって提起された、その他、知財産から金融規制にいたるまですべての問題に対処しなければなりません。

悲しい事実としてこの協定は規制を後退させてしまう、環境基準や、私たちが利用する医薬品、私たちが食べる食品、子どもたちに与える玩具の安全性を守る法律を後退させてしまうのです。

また、連邦議会や州議会議員が将来的に協定のダメージを緩和できないようにするため無数の分野で法的拘束力をもつ政策をつくりだすことになります。

米国民の3分の2近くがファスト・トラック(貿易促進権限)を付与することに反対しているのも当然ですし、下院議員の(民主、共和)両党の178人が公然と反対を表明しています。

米通商代表部と政権は、協定および貿易交渉において決定的に重要な意味を持つ監督の役割をになう議会を、この交渉のあいだじゅう真っ暗闇におくのではなく、わたしたち(議員)とアメリカ国民がこの提案された協定についてもっている多くの懸念に取り組むべきです。

以上をもって、ジョージ・ミラー下院議員を紹介したいと思います。

ジョージ・ミラー下院議員(カリフォルニア大11選挙区)

ローザ、ありがとう。きょう私たちと一緒に集まってくれた同僚議員のみなさん、そしてチャンさん、ジェラミ・デイビスさん、ありがとう。

TPP交渉諸国の貿易交渉代表は、私たちがのべたとおり、きょうオタワに集まってTPPの取り決めを現実のものにしようとしています。しかし現実にはTPPはアメリカあるいは他のTPP諸国の勤労家族にとってよい取り決めになるには何光年もかかります。ここに立っている私たちはみな、TPPはアメリカの労働者と家族を保護し、他の国々の労働者が基本権を侵害されないようなものでなければならないということで一致しています。

貿易担当高官がオタワに集まりますが、そのような取り決めには近づいてはいません。明らかに、近づいていません。アメリカ国民の間では近づいていないのです。米合衆国議会においても近づいていません。いかなるTPP協定も、賃金から医療にいたるまで、アメリカの家族に影響を及ぼします。

私たちはきょう、アメリカの勤労者家族を脅かすようないかなる協定、つまり無謀なウォール街の取引を可能にする協定、環境基準を引き下げてしまい私たちが利用する医薬品や、私たちが食べる食品、子どもたちに与えるおもちゃの安全性をまもっている法律を弱めてしまいかねないいかなる取り決めにも反対して共に立ち上がっています。

ベトナム、マレーシア、ブルネイ、メキシコはひどい労働者の権利侵害が行われている国で、それはわたしたち集団の意識に衝撃を与えています。児童労働、肉体的暴力、強制労働、超長時間労働など、これらの侵害はTPP協定をすすめるまえになくさねばなりません。

私たちはNAFTA(北米自由貿易協定)やコロンビアとの自由貿易協定など、自由貿易取り決から厳しい教訓を学びました。労働者保護措置は、それがあとからの付け足しとして扱われると、また付帯協定の一部とされると機能しません。私たちはこの協定で、教訓を学びなおさなければならないというようなことになるべきではありません。

大企業がTPPの取り決めを推進しているのは、アメリカの労働者や家族を犠牲にしてでも自分たちの利益になることを知っているからです。一方、労働者や人権擁護者、環境保護団体、米連邦議会議員は蚊帳の外におかれています。

昨年、150人以上の連邦議会議員が透明性を高めるよう要求し、貿易促進権限(ファスト・トラック)の活用や貿易交渉における議会の権限を無視するようなTPPの承認手続きをとることに明確に反対を表明しました。

今年これまでに153人の連邦議会議員がフロマン大使[米通商代表]にたいし、TPPで強力な強制力のある労働者保護措置を確実にするという、よりよい仕事をするよう要請しました。

連邦議会議員たちは声を大にして明確に発言しています。フロマン大使よく聞きなさい。

この取り決めで意味のある改善がはかられるまで、また議会が検討する機会を得るまでは、最終合意はありません。

私たちはいまのような協定で、私たちの(アメリカの)家族の権利、外国の労働者の権利が傷つけられること、私たちの国家が傷付けられることを深く懸念しています。だから私たちは反対し続けるのです。

オタワでの成功を願っていますが、かれら[交渉代表]はこの国の国民と議会を念頭に置かなければならないのです。ありがとうございます。次にマーク・ポカン議員を紹介します。

マーク・ポカン下院議員(ウィスコンシン第2選挙区)

ジョージ、ありがとうございます。同僚議員の皆さんと一緒にここに立ってTPPについてお話しできることをうれしく思っています。労働基準から環境問題、食品の安全性、通貨操作、さらには人権にいたるまで多くの理由でTPPに反対しています。

ブルネイはTPP交渉に参加している国のひとつですが、最近シャリア法を採択しました。これは同性愛や不倫その他女性の権利にかかわる問題などにたいする罰として石打ちを求めるという厳しい法律です。

人権を侵害し権利の平等を制限し続けている国々にたいして私たちは通商上の特権を与えるべきではありません。米国は世界の指導者として世界中の人権状況を改善しようとその影響力を行使するという伝統を持っていますが、TPPにおいて私たち[米国]はそれと真逆のことをやっています。

ですから119人の連邦議会議員は、きょうここに参加しているすべての議員を含め、「人権キャンペーン」(Human Rights Campaign)、「仕事に誇りを」(Pride at Work)などLGBT(性的少数者,lesbian, gay, bisexual, and transgender)諸組織を含む議会外団体とともに、米通商代表とケリー(国務)長官にたいし、あのひどい法律が廃棄されない限りブルネイをTPP交渉に参加させないようにと要求しました。

ここでこの要請に参加したもう一つの団体、「仕事に誇りを」(Pride at Work)を紹介したいと思います。きょう私たちとともにここにきている事務局長(executive director)のジェレミ・デービスさんがこの問題について彼の視点からお話しします。

「仕事に誇りを」(Pride at Work)事務局長ジェレミ・デービス

(ポカン)議員、ありがとう。まず始めに、ポカン下院議員とともに、デローロ下院議員にたいしこの問題でリーダーシップを取られていることに感謝したいと思います。おふたりはこの恐ろしい貿易取り決め反対の取り組みで、非常に大きな存在としてやってきました。ポカン議員がのべたとおり、私の名前はジェラミ・デービスです。「仕事に誇りを」(Pride at Work)の事務局長(executive director)です。私たちは労働組合のLGBTのメンバーからなる全米組織です。

6月には「仕事に誇りを」(Pride at Work)は全米ゲイ・レスビアン・タスクフォース(National Gay and Lesbian Taskforce)、人権キャンペーン (Human Rights Campaign)、全米性転換者同権センター(National Center for Transgender Equality)も加わってオバマ大統領あての書簡を書きました。その書簡で私たちはオバマ大統領に可能なあらゆる手段をつうじて世界中のLGBTの人々の基本的人権を守るという約束をまもるよう要請しました。

私たちはTPP交渉は、これらの法律にたいする責任をブルネイに負わせるための手段であると考えます。(ポカン)議員が述べたようにこれらの法律は、LGBTの人々を石打ちによって死刑にするとの規定を含んでおり、人権と基本的な品性を傷つけるものであります。私たちは人権を乱用するものは米国の最恵国待遇(preferential treatment)を受けるべきでないと考えます。

2週間前、私はワシントンDCのブルネイ大使館の外側での抗議に参加しました。50人近くの人々が集まってこれらの新しい法律に抗議し、UNITE/HERE[労働組合]が私たちに加わってロサンゼルスはじめ世界中にあるブルネイ保有のホテルで行われている労働組合つぶしに抗議しました。LGBTの人々、有色の人々、アメリカのすばらしい多様性全体がこの抗議行動にみられました。しかしひとつ私が感動したことがありました。それは、ラテン系の女性が子ども2人を連れて抗議に参加したのですが、それは問題が彼女とその家族にとっても非常に重要な問題であると考えるからでした。

わが国はLGBTの権利の平等に向けて大きな歩みをしてきており、もし私たちが、ブルネイの新法に特有のひどい虐待をみのがし、同国に特権的な貿易上の地位を与えたとすれば甚大な一歩後退となります。ブルネイはTPPをめぐる大きな問題の一片にすぎませんが、国民の基本的人権の乱用をおこなっている国ぐにを含む取り決めは意味のないものと言うべきです。ありがとうございました。

デロ―ロ下院議員:
さてベトナム系コーカス共同議長のロレッタ・サンチェス下院議員に、次の発言者を招待していただきます。

ロレッタ・サンチェス下院議員(カリフォルニア第46選挙区)

同僚議員はじめお集まりのすべてのみなさん、ありがとうございます。デロ―ロ議員、ミラー議員、ありがとうございます。私は長い間ベトナムにおける人権問題に関して活動してまいりました。

私はTPPについて、本気で反対しなければいけないと思っています。人権とりわけ労働者の権利にかんして交渉がうまくいっていないからです。

ベトナムとの貿易取り決めをするときはいつも、ベトナム側がいろいろな約束をしますが、実際の人権状況はなんら改善していません。

これまで20年だけ見ても、ベトナムではこんにちの労働条件を理由に5,000件を超える労働者のストライキが発生しました。人々は1日12時間から15時間の労働を余儀なくされています。彼らの賃金は月70ドル以下です。未払いのケースも多くあります。彼らは健康保険がなく、職場では無権利です。

じっさい、米労働省はベトナムを、強制労働もしくは児童契約労働によって服飾が生産されていると見られる理由がある4カ国のうちのひとつに挙げています。

ですから、もし私たちが自由、正義、人権を真に支持するのであれば、私たちは現在交渉されているようなこの貿易協定に反対すべきです。私がここで強調したのは、私たちは、とくにベトナムにおけるこれら労働者の権利を無視するわけにはいかないということであります。

今日、ドゥオン・チャン(Doan Trang)さんが一緒に参加してくださっています。彼女はブロガーで市民社会活動家、在外ベトナム人の良心向上イニシアチブ(VOICE=Vietnamese Overseas Initiative for Conscience Empowerment)のメンバーです。彼女はきょうここにVOICEを代表して参加しており、ベトナムにおける労働条件の現状についてお話しします。

ドゥオン・チャン(Doan Trang)―VOICE

皆さんおはようございます。私はチャン(Trang)と申します。私はベトナム出身のジャーナリストでブロガーです。ベトナムにおける労働者の権利について、またなぜTPPが成功の見込みがないかについてお話しさせていただくことに感謝します。

みなさん、6月26日、29歳の労働者の権利擁護活動家が刑務所から釈放されました。これは朗報です。しかしながら、これで労働者の権利、土地の権利、表現の自由の権利という3つの権利がベトナムでもっとも広範にもっともひどく侵害されているという事実が変わるわけではありません。

ベトナムでは毎日、何百件もの労働者のストライキがあり、そのうちの95%は違法ストとみなされています。なぜ違法ストなのか。それは現在の労働法および労働組合法は自主労組の存在を認めておらず、そうした法律のもとでストライキは適法ではないからです。

ベトナムのすべての労働組合が、ベトナム労働総同盟(VGCL)を除いて非合法であるというのが実態なのです。VGCLは政権党、(ベトナム)共産党傘下にあります。CGCLの役員はすべて党の役員で、規約で党の利益に奉仕することと規定しています。私たちは、VGCLがストライキを指導した人と逮捕し罰するよう警察に求めていることを示す内部文書を入手しています。

労働法はまた、労働者が適法的にストライキを行えるようにするまえには仲裁、調停がおこなわれなければならないと規定しています。ですから、そのような厳しい要件のもとではベトナムにおけるストライキの95%が違法とみなされているというのは理解できることだということがわかるでしょう。また、ベトナムのストライキの95%が低賃金、低所得と関連しているのです。ベトナムは2008年以来、不況で推移してきました。労働者は農民で、最悪の犠牲者にかぞえられます。労働者はより多くの収入を得るために残業をしますが不払いになっています。社会保険も加入させてもらえません。多くの場合、とくに民間部門では、保険、医療プログラムを受けられないでいます。

また、労働条件は低下させられ集団食中毒も広がってきました。わずか1週間あまり前、ホーチミン市のある会社で200人以上の従業員が食中毒にかかりました。それより前、5月15日には、会社が出した飲料水で500人余りが中毒にかかりました。これは明るみになったものだけです。似たようなケースで知られないままになっているものが沢山あり、いまでもこうした集団食中毒にたいしてだれも責任をとわれていません。

さらに強制労働という労働者の権利侵害があります。私たちのところには刑務所で服役者に服飾や家具、カシューナッツなどを製造させて搾取している問題についての元政治囚からの報告があります。
みなさん、私たちは、ベトナムが労働者の権利侵害をやめさせたいといっていると理解しています。しかし、そうしていません。かれらは税金を引き上げるのではなくただ罰金を払うだけにしたいのです。私たちはまた、人権擁護活動家、労働者の権利擁護活動家を釈放することによって彼らは世界に向けて労働者の権利要求を尊重しているふりをしようとしているのです。しかし沢山の似たようなケースがあります。9年間の服役中の2人の仲間ように。

ベトナムにおける人権侵害についてお話ししましたが、それでもトンネルの先に光が見えます。最後に、それはフェイスブックなどインターネットを利用した活動であることを指摘しておきたいと思います・

ベトナムで労働者の権利擁護のために積極的に活動しているNGOや認証を受けていないNGOが数十あります。私たちがそれを知っているのは在外ベトナム人の良心向上イニシアチブ(VOICE=Vietnamese Overseas Initiative for Conscience Empowerment)がこれらの団体と連絡を取ってきているからです。

VOICEを代表して私が申し上げたいことは、労働者の権利が強制的に実行できないようないかなる貿易協定も受け入れてはなりません。

いかなる貿易協定も、労働者の権利の実施を前提としてください。

わが(ベトナム)国民は経済的繁栄を望んでいますが、それは自由と相まってすすめなければなりません。どうか、私たちとともに歩んでください。ありがとうございました。

デロ―ロ下院議員:
つぎに、フェミニスト・マジョリティのゲイリン・バローさんが、書簡についてお話しします。

ゲイリン・バロー―フェミニスト・マジョリティ

みなさん、お早うございます。私はゲイリン・バローと申します。私はフェミニスト・マジョリティの政策部長 (policy director)をやっており、スルタンが支配するブルネイで、布告によるタリバン流の刑を強行したことに反対しています。この法律は、全面的に実施されると石打ちによる死刑を求めるものです。繰り返します。ゲイ、レスビアンの人々や不倫で有罪になった人々にたいしては石打ちの死刑、妊娠中絶をした人にたいしては後悔むち打ちが科されます。

この法律は人権侵害であります。私たちは議員の皆さんが今日ここで、この重要な時に立ちあがってくださっていることに感謝したいと思います。

TPPはまさに、成功の見込みがないものです。人権は利潤を得たり貿易をおこなったりするために後景に追いやられるべきものではありません。

フェミニスト・マジョリティは、いくつかの人権・男女同権をかかげる組織と一緒にオバマ政権にむかって、ブルネイのスルタンが刑法を廃止するまではTPP交渉を停止するよう求めてきました。

米国はブルネイといつものとおりビジネスをおこなうことによってこれらの種類の法律を許すべきではありません。私たちはこの新しい刑法を変えるようスルタンに圧力をかけるためにあらゆる入手可能な、また適切な政策的道具を利用すること追求しなければなりません。

ブルネイがこの新刑法を採択するなかでTPP交渉を継続することは受け入れがたいことです。この刑法は米国の原理、目標、価値観に真っ向から対立するものです。

文明社会においては、ゲイを殺す、女性にむち打ち刑を加える刑法は許されません。わが国の外交政策や通商政策は女性の権利、人権、基本的尊厳を守るという私たちの決意を反映しなければなりません。

デロ―ロ下院議員:
ドナ・エドワーズ下院議員はアメリカの製造業をまもることについて。

ドナ・エドワーズ下院議員(メリーランド第4選挙区)

どうもありがとう。

沢山の発言を聞きました。そのメッセージはほんとうに非常に簡潔です。読めばわかります。[スローガンを掲げる反TPP抗議参加者に向かって]ミドルクラスをダメにしてはいけない!アメリカの雇用と製造業をまもれ!人を優先させよ!人権尊重を!私たちの環境を守れ!これらは簡潔なメッセージです。

20年ほどの間、アメリカは公正な貿易ではない自由貿易のでたらめを信じ込まされてきました。いまこそそれを止めなければなりません。

私は同僚議員とともにTPP交渉をめぐる政策、手続きを深く懸念しているということを申し上げたいと思います。

1933年にバイアメリカン法(米国製品優先購入法)が制定されたとき、その条項は、米政府は税金を米国の雇用を支援し、刷新(innovation)を促進し、米国の製造業部門を強化するために使うことを保証するというものでした。過去の自由貿易協定は締約国にたいし、国内の政府調達契約の入札に外国の企業が同等に参加できるようにすることをもとめていました、

現在進行中の交渉はバイアメリカン政策を大幅に制限する条項が提案されていて懸念されており、その結果アメリカの雇用、労働者、製造業者に大きな影響を与えています。

2012年5月、私は下院の68人の同僚議員とともに書簡をつくり大統領にたいしTPP協定ではバイアメリカン政策をまもり貿易協定によって米国民がお金を米国製品やサービスに使う権利を制限しないよう保証することを要請しました。

残念ながら私たちは私たちの製造業部門を支援し良質の高賃金雇用を創出するためには、引き続き政府調達を利用することが必要です。

私はとくに、私たちが聞いているベトナムにおける多くの中国企業のように、TPP諸国につくられる企業がバイアメリカン政策の義務免除を得てしまうこととなり、依然として人権蹂躙をおこなうことを憂慮しています。

これでは、私たちが税金で納めたドルが他の国々の製造業部門をつよめこそすれ、米国の製造業は強化しないことに投資されてしまいます。

さらに、米国の政府調達市場はTPPの調達市場を全部あわせてより10倍以上大きいのです。繰り返します。米国の調達市場はTPPの調達市場全部あわせたより10倍以上も大きいのです。

それが意味するのは、米連邦政府調達5560億ドルへの米国企業の優先的アクセスを、わずか530億ドルの他の国々の新たな調達市場と引き換えに売り払うということです。それは受け入れがたいものであり、米国の製造業を完全に危険に陥れるものです。それはこのいわゆる協定のもとでは1ドルの利益にたいして10ドル以上を失うことになります。一部の米国企業のTPP諸国における契約入札へのアクセスは、調達のバイアメリカン優先を除外するという本当にひどい相殺です。

各年、私のメリーランド州の納税者は連邦政府が110億ドルという巨額の買い物をするのに融資するのです。それはメリーランド州納税者1人あたり2,364ドルを米政府に送って調達にあてていることになります。なぜそれが米国の製造業にとっての損失になるのでしょうか。TPPは実際には悪循環を断ち、より多くの外国の企業が、メリーランド住民が納めた税金をめぐって競争できるようにしますが、それは米国じゅうの住民も同じことです。

議会が雇用創出や米国製造業の基盤再活性化を重視しなければならないときに、貿易協定が、私たちが米ドルを米国製品やサービスを購入する権利を制限することでその基盤を崩すようなことがあってはなりません。

そこで、私は「メイドインアメリカ」製品、米合衆国で製造された製品にyesと言いましょう、アメリカの雇用にyes、良い高賃金の雇用にyesと言いましょう、というよびかけをもって発言を終えたいと思います。それはすなわちTPPのバイアメリカン条項禁止にたいして「絶対ノー」と言わなければならないということなのです。
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デロ―ロ下院議員:
オレゴン州選出のピーター・デファチオ下院議員は、環境問題とTPP

デロ―ロ下院議員 (オレゴン州第4選挙区)

ローザさん、来ていただきありがとう。フロマン大使(通商代表)からのステートメントがありますが、非常に強力なものでした。「われわれはTPPのなかの、断固とした、充分に実行可能な環境分野を主張し、それなしにはわれわれは協定に同意しない」。私は大賛成です。

残念ながら、リークされた交渉分野、また、もちろんここにある「TPP:テキストを公開せよ」からわかるように、私たちは、この協定の状況がどうなっているのか知りません。

選挙でえらばれえた代表(議員)は、もし望むならば、通商代表部にこの文書を議員事務所に持ってこさせることができます。スタッフは同席できず、ノートも取れない、しかし文書をぱらぱらとめくってみることはできます。

500人の企業代表者はリアルタイムで、安全が確保されたインターネットをアクセスできるのに、私たち(議員)はそれができないのです。

これはたいへん異常です。彼らは何を隠そうとしているのでしょうか。

リークされた環境分野は常軌を逸した内容です。それはジョージ・ブッシュ(政権)時代の超党派による、これらの貿易協定のなかの商業上の基準と同じように執行可能な基準ができるような将来の貿易取り決めにかんする5月10日の合意から後退させるものです。

私たちにはTPPにかんしてここでまたとない機会があります。私たちは基本的に、将来、規制を受けない漁、毎年漁獲量の20%ぐらいと推定される海洋資源の枯渇を止め始めるためのロードマップ(行程表)をつくることができます。それは持続可能なものではなく、法律、条約の外で行われているものです。

私たちは中国その他の象牙の取引で巨大な市場になった一連の条約締約国に対処することができます。そして今、私たちは、劇的な措置が採られないかぎり野生のゾウがいなくなる可能性に注目しています。

私たちは違法伐採、森林に注意を払っています。それは国内、われわれ自身の森林の生産業に影響を与えるからであり、沢山の収穫をするところだからであり、その問題をTPPでも取り扱ってしかるべきだからです。ですから私たちには、考えられないぐらい強力で充分に執行可能な環境分野の問題にTPPのなかでとり組んでしかるべき一連の関心事があります。

私たちは、労働問題や環境問題で拘束力のない付属協定がつくられたNAFTAの轍を踏むことはできないのです。NAFTAでは後に是正されることになっていましたが、じっさいには行われませんでした。

デロ―ロ下院議員:
ニューヨーク州選出のルイーズ・スロータ―下院議員は、貿易投資全体について

Rep. Louise Slaughter (NY-25) ルイーズ・スロータ―下院議員(ニューヨーク州第25選挙区)

みなさんはファスト・トラックの意味をご存知だと思います。私たちがファスト・トラックを取り上げたとき私は議事運営委員会の議長でしたからよく知っています。煮詰めて言えば、議会はそれにかかわることはできなかったのです。交渉は秘密でおこなわれています。

私たちが聞いている噂では、経済の一定の部分がこれらの交渉をおこなって自助努力をしているということです。私たちは選挙区を代表して発言することはできません。

ファスト・トラックのもとで私たちが得られるのは、政権が交渉してきた完成法案だけで、それに賛成票あるいは反対票を投じるのです。これはとんでもないことで、私たちは、それはもはやできません。

私たち(米国)が世界最大の製造業を誇っていた70年代だったらよかったのですが、いまはもはやそのような状況ではありません。

私たちが失った雇用は驚くべきものです。NAFTAの20周年を迎えたばかりですが、祝えたものではありませんでした。NAFTAはかつて私たちが見たこともない最悪の交渉でした。私の地区で私たちはニューヨーク州西部で25万の雇用ができると約束されました。NAFTAが調印された当時、イーストマン・コダック社には62,000人ほどの従業員がおりました。いまでは約4,000人です。経営破たんもしました。私たちは約束された雇用を得られませんでした。まさに雇用破壊であり、今年、米韓自由貿易協定の交渉で私たちはふたたびそれを見ました。

あの、韓国との協定は本当にやっかいなものでした。おそらく私が一番懸念した協定であり、大統領とも話し合いました。韓国側はアメリカの自動車を売+らなくなります。韓国には自動車販売会社が26ありますが、米国車も販売しています。ですから韓国との貿易不均衡はすでに大きくなっていましたが、新しい自由貿易協定後、不均衡はさらに広がりました。貿易赤字は47%増えて206億ドルという史上最高になりました。

忘れてならないことは、もしどこかの国が韓国を攻撃したら、条約によってわれわれは韓国のために戦う義務を負っている。でも、韓国は米国製品を買うのでしょうか?断じてNoです。

真実はといえば、私が議会に選出されて以来、政府によってつくられた貿易協定でアメリカの製造業者あるいはアメリカの従業員に利益をもたらし、これを続けるのを私は見たことがありません。

この貿易協定によって私たちが受けるダメージは非常に深いので、食品の安全の面だけでも、私たちがのぞむ、また私たちが大切にしているその他のすべてで、私たちが承認した正常な空気、清浄な水に関する法律が危うくなるのです。私たちはそういうことを望んでいません。私たちが法律を守り、国の法制度を無視して貿易協定に国が調印するのを私たちは望みません。狂気の沙汰です。

私たちは、どんなことが起きるか分かっています。もっとたくさんの雇用が失われるのです。貿易赤字がもっと増え、賃金が下がり雇用保障がよわまるのです。

どれだけ多くのこういう協定をつくったら私たちはじっさいにそのような教訓を学ぶことができるのでしょうか?この橋を渡るにはあまりにも長い時間がかかっています。私たちはこの協定を支持するわけにはいきません。

私たちは教訓をまなぶところに近付きつつあると思います。今朝ここに集まったみなさんにお会いして嬉しくおもうとともに、この問題で一所懸命活動してきたわたしの同僚議員に感謝します。

ピーターが言った通りです。私の地区に残った企業のひとつは、ベトナムとの貿易協定を懸念していました。私は、私たちのためにどんなことがくわだてられているのかを知りたいと求めたのですが、私のスタッフを伴うことができず―私には歳入委員会の人が何人かいたのですが。2人の女性が私のところにやってきてスプレッドシートを見せてくれたのですが、中身のないものでした。

国民によって選挙された代表(議員)に対しておこなわれていることがこういうことです。私たちひとりひとりが代表している800,000人は。これらの貿易協定にとりくむなかで基本的に発言権がないのです。このようなことをやめさせなければなりません。すすめ方においてこれをやめさせなければなりません。

 国際貿易の問題は」おわっていません。わたしたちは逆戻りしようと思っているのではありません。しかし米国にとって公正なものにするときです。実行可能な貿易協定を作成することによってそれができます。

もし私たちが強制力を貿易協定にもりこみ、もしルールが目に見えない障壁その他のトリックによって蹂躙され、われわれ(アメリカ)の製品を買わないようにするなら協定を停止できるようになります。そうなれば、ほとんどの友人や同僚議員が満足して見ることができる唯一の貿易協定になります。

デロ―ロ下院議員 
ルイーズさん、ありがとう。今朝ここに集まっている議員や各代表者のみなさんは、沢山の人々を代表しています。この手紙の束(TPPにかんする議会の手紙の分厚い束をかかげて)はこの2年間のものですが、きわめて大きな困難をかかえファスト・トラックに反対し、明るみにだされたいろいろな問題を理由にこの条約そのものに反対している議会の(民主、共和)両党の議員のみなさんです。それが食品の安全、環境保護、金融規制、通貨操作、人権 ―全般―のいずれについてであっても、みなさん協定に反対しているのです。私たちは、この問題での私たちの声が引き続き届くようにします。

充分に感謝を申し上げられません、議員だけではありません。今日ここにあつまったのは諸組織のみなさんです。ドゥオンさん、ジェラミさん、ゲイリンさんそれにエリー・スミ―ルさん、この取り組みに参加してくださってありがとうございます。

そしてすべてのみなさんに、これらのしるしは意味のない論評ではありません。その一つは議会メンバーの気持ちを代弁していますがもっと重要なことは、この国の国民の気持ちを表しているということです。ありがとう。では質問をどうぞ。

【質疑応答】

ジム・バーガー(ワシントン・トレード・デイリーWashington Trade Daily)

 私が理解しているところでは、ひとつだけ議員のみなさんがこの協定についてわかっていることは、それが大詰めに来ているということです。議会で反対票を数えてみましたか?

デロ―ロ下院議員
ファスト・トラックの部分については、調べています。反対が圧倒的で、成功の見込みがないといいことです。事実、議員は―ここにおられる同僚のみなさんにもお願いするのですが―私たち議員は、責任ある行動をしようとしています。だれも文書を見たことがありません。ですから人々は、文書を見てみよう、と言いたいのです。それは非常に理にかなっていると思います。文書をだせ!私たちはみな、通商代表部の前などで座り込みをするなど同じ経験をしてきました。それでも文書は秘密扱いになっています。文書をみるために座り込みをする人々が必要です。しかし、率直にいって、これらの問題に取り組むうえで議員たちは信頼されていません。ですが、わたしたちは、それぞれが代表する人々の名において日々取り組みます。

デファチオ下院議員:
私たち(議員)が信頼されていないという問題ではないのです。問題は私たちに知られたくない、なぜなら情報を選挙区に伝えてしまう、そうすると選挙区の人々は呆れて反対する、からなのです。反対のうねりが増大します。あなたの質問にもっと端的にお答えすれば、これは超党派の反対表明なのです。ここでは超党派的なものはそんなに見られません。特にファスト・トラックに反対している共和党の議員はかなりの数いますが、彼らが理解しているこの協定にも反対しています。ですから私はいま、最終段階にあるとは思っていません。彼らはファスト・トラックなしに最終段階にもっていくことができるとは思いません。なぜなら、協定のなかには議会が取り除きたいと考えるようなとんでもない条項があるからです。また、アメリカが主張しているように、ニュージーランドとオーストラリアがそれぞれの医療制度を医薬品産業のために放棄するというとんでもない条項があるのです。他の国々も別の問題で譲歩をせまられています。白昼にこの問題がまるごと消滅します。

(質問聴取不能)

デロ―ロ下院議員:
7月4日(独立記念日)の休日からもどってきましたが、通常ひとびとがそれぞれの選挙区の議員と連絡をとりあっているときうねりがおきるのですが、ファスト・トラックへの反対、この協定そのものにはもっと多くの人々が反対しています。ですから現場での取り組みが必須です。多くの団体がこのことやどんな損害がでるかなどを語っています。そしてそうした団体は通常、それについて考えていたりあるいは決めかねていたりしてこれから態度を決めようとしている議員からの回答を得られるのです。デファチオさんが指摘した、非常によいコメントです。ファスト・トラックへの反対はかなりあります。TPPそのものにたいする反対も同様だと思います。

アイラ・テノウィッツ(Mlex)
もしファスト・トラックがなければ、あなたがたはいろいろな修正を提案しますか?その場合のプロセスはどんなものになるでしょう?

デロ―ロ下院議員
私はTPPに修正を加えることができる機会があることを期待しています。デファチオ議員が指摘したように、私たちはそこまで到達しないかもしれないと思います。最終文書がどんなふうになるかについてなんの保証もないのであれば、この努力をしている他の国々が
この取り決めに決着をつける意思があるかどうか、私にはわかりません。でも確かに、私たちは、下院でも上院でもおなじだと思いますが、提案される法案を修正できる機会を望みます。

 (質問聴取不能)

デロ―ロ下院議員
政権はTPPにかんしてさまざまな期限を口にしてきました。私はこれからも政権はそうするだろうと思います。彼らは議会がダックになればそれをひとつの機会と見るでしょう。ですから、私たちはいまやっていること、ファスト・トラックに欲求はないという革新をもち続けます。私は貿易協定に全面的に反対しなければならないと確信します。

みなさん、ここに立っておられる議員のみなさん、どうもありがとうございました。私たちは大きな弾みを得ましたので続けていきます。私たちはNAFTAや韓国との協定、その他の貿易協定で起きたのと同じことでミドルクラスや勤労世帯の生活、食品の安全、われわれの環境保護規制、金融規制を狂わせ、人々の能力をあやうくし、かれらの製薬業界をわが国の製薬業界に屈伏させるといったことを許さないことをめざしています。それは間違った方向であり、それをワ達したちは阻止するのです。ありがとうございます。

以上

2014年7月10日木曜日

オバマ大統領、TPPで11月に成果を期待(ロイタ-2014年6月20日)

日本でも報道されましたが、訪米中のニュージーランドのキー首相との会談後、オバマ大統領は記者団に対し、従来と少し異なる内容で、「11月のアジアで首脳会談でのTPPについて一定の合意を期待している」ことを語りました。先に各国から早期妥結の意欲が様々に表明されている一方、年明けまでは無理だろうとの見方が報道されています。

またTPP交渉のけん引役でもあるニュージーランドや豪州、シンガポールの首脳からは、改めて日本の市場開放を求め、年内妥結を促す発言が続いています。そしてオバマ発言の前日19日にはTPPとTPAに関して大きな影響力を持つ米国下院・歳入委員会の委員長デイビッド・キャンプ議員(共和党)から、TPP交渉の妥結を促しつつ、その前提としてのTPA法案の早期成立とTPPへの米国議会の強い要求(国有企業、ISDS、知財、為替操作規制等々)を求め、かつ市場アクセスでの日本・カナダへの厳しい姿勢が表明されています。

一方TPPに批判的なチリの新大統領が6月30日から7月第一週に米国・シンガポールを訪問し、首脳会談が行われます。8月いっぱいの米国議会閉会、中間選挙を前に、TPPも首脳レベルでのせめぎあいが動きつつあるようです。今までとは少し異なる展開に中止する必要があるかも知れません。

以下は6月20日のオバマ大統領の発言を軸にした報道記事の翻訳です。(翻訳:近藤康男/監修:廣内かおり)

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オバマ大統領、TPPで11月に成果を期待(ロイタ-2014年6月20日)

 オバマ大統領は6月20日、「11月には、TPP関係国が国民、利害関係者に対して何らかの合意を明らかに出来ることを期待している」と語った。
  大統領は、11月15~16日のG20首脳会合出席を含むアジア訪問時に、関係各国の首脳と議論をするための何らかの文書を用意することが目標だと語った。同じ時期にAPEC首脳会合も中国で開催される。

 米国は11月4日に中間選挙を予定しており、多くの貿易専門家は、雇用への影響を懸念する労働組合を支持基盤に持つ民主党への選挙での影響を考えると、今年中の妥結は絶望的と見ていた。
  オバマ大統領は、TPP参加国でありワシントンを訪問中のニュージーランドのキー首相と今年中の妥結の時間軸について議論したと語った。ちなみにTPP参加12ヶ国の経済規模は世界のGDPの5分の2、貿易の3分の1を占めている。
  大統領はキー首相との会談後、2人が再度11月に会うまでに、議会とも協議がなされ、国民への閲覧という手順を踏んだ何らかの文書を用意し、協議を前進させて妥結するための説得力ある議論が出来るようにしたい、と述べた。

 「もちろん、それまでになすべきことは山積している」

 オバマ政権は、米国のアジアへのシフトという戦略の一環として昨年中のTPP妥結を期待していたが、日本の農産物関税の問題で行き詰った。日本政府が米、小麦、酪農製品、砂糖類、そして牛・豚肉製品を守ろうとする一方、米国政府は市場競争力を強化している日本車から米国の自動車業界を守ろうとしている。
 しかし、4月の日米首脳会談後、交渉に新たな勢いが出てきたと交渉筋は伝えている。メキシコの関係者はロイターに、複数の国が遅くとも9月の妥結に向けて交渉を押しすすめている、と語った。ただ他の国々はそれほど楽観的ではない。
 6月の第2週に米国を訪問した豪州の貿易担当相ロブ氏は6月18日、「今年中の妥結はあり得ないだろう。しかし来年前半の妥結は期待出来るかも知れない」と述べたという。
 「(市場アクセスについて)妥協できないのなら日本はTPP交渉から除外されるべき」と語ったニュージーランドのキー首相は、高水準で包括的なTPPを達成できると確信している、と語った。
「どのような交渉でも、参加各国間でガップリ組んだ腕相撲状態になる時期はあるものだし、一瞬、夜明け前のもっとも暗い時間のように感じることもあるものだ」

 TPP交渉には、米・日・豪・NZ以外に、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ペルー、シンガポール、そしてベトナムが参加している。(翻訳:近藤康男/監修:廣内かおり)

2014年7月6日日曜日

アメリカ連邦議会下院歳入委員会デイヴ・キャンプ委員長が6月 19日「グローバル・ビジネス対話」に寄せた所見(文書)

オバマ大統領が「年内合意のための文書」について記者会見で述べた前日の6月19日、議会の重鎮であり、またTPA法案の共同提出者である下院歳入委員会の委員長であるディビッド・キャンプ議員(共和党)が“グロ-バル・ビジネス対話”に所見を寄せ、TPA、TPP、更にはTTIP環大西洋貿易投資パ-トナ-シップ協定、TISA(WTO有志国・地域によるサービス貿易協定)に関する考え方を展開しています。

6月から7月冒頭に掛けて、豪州、ニュージ-ランド、チリの首脳が米国を訪問し、TPPについて発言をしています。

カナダのオタワで始まった首席交渉官会合の行方、更にはその後の展開を読みとる上でポイントとなる記事の一つと思われます。(翻訳:磯田宏・戸田光子/監修:近藤康男)

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アメリカ連邦議会下院歳入委員会デイヴ・キャンプ委員長が6月 19日「グローバル・ビジネス対話」に寄せた所見(文書)


おはようございます。サラさん、ご紹介ありがとうございます。モリス審査員及び「グローバル・ビジネス対話」に対しても、アメリカ通商課題の将来について話をさせていただく機会をいただいたことに感謝申し上げます。「グローバル・ビジネス対話」は有益な計画と分析を通して貿易政策を大いに前進させてきました。私は本日参加させていただきうれしく思っています。

私が下院の歳入委員会委員長になって以来、私たちは自由貿易協定の実施に大成功を収めてきました。米国内における実績のある効果的な雇用の創出―これはここ米国内で生産された物とサービスが世界中に輸出されうることを保証するものです。私たちはすでにコロンビア、韓国そしてパナマとの協定から相当の利益を享受しています。このことは超党派の強い支持を得ています。なぜなら議会とアメリカ国民が最優先と考えるものをこれらの協定が反映しているからです。

アメリカが通商協定の交渉に際して我々の潜在力を全面的に開花させることを保証するための鍵は、貿易促進権限であり、それは過去2年間、通商問題における私の最高の優先事項であり続けました。我々は現在、3つの大きな通商交渉の最中にあります。すなわち TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ協定)、および TISA(WTOの有志国・地域によるサービス貿易協定)の交渉です。しかしもし貿易促進権限がなければ,我々はこれらの協定がアメリカにもたらしうる大きな景気の押し上げを実現できないことになるでしょう。

理由は簡単です。貿易促進権限がなければ,わが国の交渉官達は手を縛られたままとなるからです。貿易促進権限なしでも確かに交渉を前進させることはできますが、どんな政権もそれなしにアメリカ人にとって完全な実現しうる最善の協定を得ることはできません。貿易促進権限型の法律制定が繰り返された80年の歴史は、貿易促進権限なしに主要な通商協定を妥結することができたことは一度たりともなかったことを物語っています。連邦議員としての 20年間に、私はNAFTAを含む、それ以降の全ての通商協定に賛成してきました。私は民主党政権と共和党政権にまたがってUSTRと密接に協力し働いてきました。これらの経験から、実現しうる最善の協定は貿易促進権限なしには達成できないことは明らかなのです。

フランクリン・ルーズベルト以来全ての大統領は、貿易相手国に対して、貿易促進権限があるがゆえに連邦議会が自分のパートナーであると述べ、そしてそれら貿易相手国に、アメリカ政府は真剣であり、形ばかりのポーズを取ったり気弱なオファーをするのは止める時が来たと明示することができました。しかしオバマ大統領は、残念ながらまだそうすることができていません。それは当然のこととして、オバマ大統領が最善の協定を妥結できないことを意味します。要するに、我々にとっての優先諸事項を反映し、わが国の製造業、サービス業、農業者、労働者の利益を創出するような最善の通商協定に至る唯一の道は、貿易促進権限だということです。

これは何を意味するのでしょうか?TPPのような主要な通商諸協定を妥結する前に、貿易促進権限が審議されなければならないということです。さもなければ、議会がそのような協定を支持しないであろうし、支持するべきではないという、非常に現実的なリスクを生み出すことになります。それには2つの理由があります。

第1に、どうして我々がアメリカ国民にとって実現しうる最善の協定以外のものを承諾しようとするでしょうか?

第2に、議会は貿易促進権限を欠いたまま通商協定を妥結することは、議会の優先権と( ※貿易促進権限法に書き込まれる)協定交渉の諸目的をないがしろにし、さらに議会の憲法上の役割を無視するものだと見なすだろうからです。

そこで私は問わなければなりません。オバマ大統領はなぜ彼の自由になるあらゆる手段を講じて交渉を妥結するよう試みないのか?
大統領は、なぜ協定交渉に有用な手段を持たないまま妥結しようとするのでしょう?オバマ政権は、最善の協定ではないような協定を本気で結ぼうとしているのでしょうか?私はそうでないことを望みます。そして議会も同様です。我々はアメリカ国民にとって最善のものを求めます。アメリカ国民はまさにそれにふさわしい国民です。

以下のことをはっきりさせておきたいと思います。もしオバマ政権が私の TPPへの支持を望むなら、政権は TPP妥結前に議会で貿易促進権限法を成立させることを確実にすべきです。もし私に貿易促進権限を支持して欲しいなら,その(法成立)前に TPPを妥結させてはなりません。私の見解に疑問を持たれる方には、私は議会下院歳入委員の仲間や、共和党の指導部や、下院議員の過半数が同じ考えであることをはっきり示すことができます。

では貿易促進権限法を成立させるために何をしなければならないか?今年1月に私がハッチ上院議員と当時の上院議員ボーカス氏とともに提案した貿易促進権限法案は史上最強のものです。それは我が国の輸出に対する障壁に対処するための、超党派の合意を反映した交渉諸目的を設定しています。それは政権が、議会およびアメリカ国民と十分かつ効果的に(合意に至る)協議をすることを確保しています。しかしオバマ大統領は未だに沈黙を守っています。我々はオバマ大統領が積極的かつ個人的にも献身的に取り組まない限り、同法案を議会で成立させるつもりはありません。さらに法案それ自体が答えを出していない疑問など、何一つ提示されていません。前下院議長のペロシ氏の意見はごもっともですが、私は人々に法案に何が書いてあるかを是非知って欲しいのです。そうすれば我々はそれを成立させることができます。―その逆ではありません。

しかし成立のためには、共和党、民主党、ホワイトハウス、および財界が取り組まなければなりません。財界の多くの人々が、オバマ政権があまりに受け身なので、(これら通商協定から)熱意を失いつつあることを認めています。しかし大統領が集中力を失っているからといって、財界がそのレーザー光線の焦点を捨て去るべきだということにはなりません。そんなことをしたら、我々はグローバル競争で生き残ることができなくなるだけです。大統領も財界も、議会民主党に対して( ※貿易促進権限法に)しっかり取り組むよう圧力をかけるための鍵となります。

私は上院財政委員会ワイデン委員長(民主党)と協力して、超党派による法案に早急に取りかかることができるよう前進する道を見いだすことを望んでいます。民主党の中には(貿易権限法審議を)中間選挙後にしたいと望む議員もいますが、我々は党の主要な支持者が困惑するかも知れないというだけの理由で、アメリカ経済を留め置くことはできません。我々が後れを取っている間に他の諸国が機会をうまく利用するのを、わきに座って見ているわけにはいかないのです。もし仮に貿易権限法案が議会の「死に体会期」( ※事実上 8月 1日~ 9月7日の夏休み終了後,再開された議会は,中間選挙投票前は何も大きなことは決められない)までは審議されないとしても、中間選挙終了後直ちに動くことができるように今の時点で支持陣営を固めておかなければなりません。

政権が、議会と密接に協力し、情報への完全なアクセスを議会に供与するとともに交渉の対等なパートナーとして扱えば、議会に通商協定を通過させ、実施させることに成功することは出来ます。我々(議員)の役割はパートナーとして、政策と戦略の観点から議会とアメリカ国民が支持するような分析と指針を提供することです。そのためには、何が今起こっているかを我々は知る必要があります。そうでないと、我々は憲法上の役割を果たすことはできません。平たく言えば、政権は通商政策に関して議会から受けた憲法上の代理権限の下で交渉に当たるのであって、その逆はありえないのです。

私は今日、通商促進権限についてだけ話に来たわけではなく、まずはこれを取り上げなければならないということです。そうしなければその他の保留中の通商諸問題に移れないのです。その重要な問題の一つがTPPです。TPPは大きく前進を遂げていますが、“高水準”の内容に合致しない諸国との協定を妥結してはなりません。

とりわけ私は、日本が自国の農産物と自動車市場へのわが国の参入を阻害している厳しい規制の全面的撤廃をかたくなに拒否していることに、深い懸念を抱いています。日本はあまりにも長く閉鎖的でしたが、ついにそれらの市場への本格的な参入を実現する時がきました。我々は、日本が農産物関税を完全に撤廃する約束をしない限り、日本を含めた TPPを前に進めることはできません。関税撤廃からの例外は議会の反対を意味し、非農業分野も含めた協定の広範な領域に渡る強い期待をつぶすことになります。

加えて、わが国の自動車メーカーが直面している日本の複雑で執拗な障壁に対処するための日本との自動車協議における合意が、議会の支持を得るには必須です。その合意は我々にとってのモデルである米韓 FTAにおける自動車条項を基にして構築されるでしょう。また市場参入で問題があるのは日本だけではありません。カナダは―正当性もなく―乳製品と家禽類に対する険しい障壁の維持を主張しています。

さらに問題を広げれば、国有企業、 ISDS(投資家対国家の紛争解決)、越境データフロー、知的財産権保護、および為替操作規制のような決定的に重要な諸問題に対処するための規則に関する諸条項についても、まだ相当になすべき作業が残っています。我々はTPP協定への議会の支持を得るためには、高水準の内容を達成しなければなりません。好ましくない協定は議会を通過しないし、させるべきでもありません。

(以下, TTIPについては省略し、TISAについて続ける)

TISA(WTO加盟有志国・地域により昨年来進められている新サービス貿易協定)はアメリカ国内の雇用創出と経済成長に計り知れない潜在力を持っています。全世界に対するサービス提供におけるわが国の主導的役割を考えれば、TISAはわが国の巨大なサービス産業に、さらにはそれらサービスが支えている製造業や農業に、膨大な機会を約束します。他の諸協定と同様、その水準を満たす意思と能力を持つことを示すことの出来る国々だけが、協定に参加すべきです。中国は未だそれが出来ていません。私は我々の水準が満たされない限り中国の加入を支持することはないでしょう。

これら3つの協定交渉に加えて、他の分野においても、米国の物品・サービスに対してグローバル市場を開放すべく、我々は着実な前進を続けています。

(以下, WTOの ITA情報技術協定・環境商品貿易交渉・貿易円滑化境地・紛争処理での勝訴,アメリカの特恵関税制度・アフリカ成長機会法 AGOAについては省略)

(翻訳:磯田宏・戸田光子/監修:近藤康男)