2014年12月30日火曜日

「アメリカ経済を保護するための政府の権能をないがしろにするような通商協定を許容することはできない」ウォレン議員らがフロマン代表宛の書簡

先に日本からは、12月7~12日のワシントンでの首席交渉官会合に向けて、12月10日付けでUSTRフロ-マン氏に宛てた書簡が出されましたが、米国では17日付で3名の著名な上院議員がフロ-マン氏に宛てて、TPP交渉を批判する書簡を出しています。その一人ウォ-レン議員は破産法の専門家で金融界に対する厳しい姿勢の持ち主として知られ、でTPPの秘密交渉を批判しています。
九州大学大学院教員の磯田 宏さんが翻訳されたものを同氏の了解を得てブログ掲載・配信をさせていただくものです。(翻訳:磯田 宏/監修:廣内かおり)

★ ☆ ★


2014年12月17日

USTR フロマン代表殿

我々は、TPPによって、連邦議会や規制当局が金融危機を未然に防ぐことが今以上に難しくなることを懸念している。何百万もの家族がいまだに先の金融危機とその後の大不況から立ち直るために苦闘しているなか、アメリカ経済を保護するための政府の権能をないがしろにするような通商協定を許容することはできない。
我々が懸念しているのは、TPPに含まれる可能性のある以下の3つの条項に関するものである。

投資家対国家間紛争解決
投資家対国家間紛争解決制度において、外国企業はアメリカの裁判所を迂回し、いずれの国の法体系にも属さない民間弁護士で構成された陪審団に、アメリカ政府の政策を訴えることが可能になる。  またその外国企業が勝訴した場合、陪審団はアメリカの裁判所の再調査なしに、アメリカの税金による賠償金の支払いを命じることができる。このように投資家対国家間紛争解決制度は、外国企業に対してアメリカの企業よりも強力な対アメリカ政府訴訟権限を賦与していることになる。また、投資家対国家間紛争解決制度を利用できるのは(外国の)投資家のみであることから、この制度は、当該通商協定に利害を有する労働組合、環境団体、あるいはその他の、投資家でない利害関係者よりも、はるかに強力な政府の施策に対する訴訟能力を投資家たちに賦与している。

これまでの通商協定にも、外国企業が投資家対国家間紛争解決制度を利用して政府のさまざまな金融政策を訴えることが出来る条件が含まれていたことはある。例えば2006年に、投資家対国家間紛争陪審団がチェコ政府に対してオランダ投資企業に2億3,600万ドルの支払いを命じたが、このときはチェコ政府がそのオランダ投資企業が所有権を有する民間銀行を救済しなかったという理由であった(※翻訳者:注を省略し、その概要を盛り込んだ)。

TPPの類似の条項によっても、アメリカの多岐にわたる極めて重要な金融規制が、さらに多くの外国企業から訴えられるという問題が起きる可能性は十分にあるだろう。それにもかかわらず、最近の議会での説明でUSTRは、アメリカの交渉官はTPPにさらに広範な条項を含めることを望んでいると言明した。これはアメリカの金融規制に関連して、外国企業に「最低待遇基準」を保証しようとする条項である。これまでアメリカが締結したいかなる通商協定でも、アメリカの金融政策がこれほどあいまいな義務に晒されたことはなかった。「最低待遇基準」条項とは、アメリカの通商協定の下でおこなわれたこれまでの投資家対国家間訴訟における、ほとんどの勝訴の根拠にほかならない。この条項がTPPで金融政策にまで拡張されれば、一外国企業の期待を裏切ったという理由で、アメリカの金融規制が訴えられる可能性が出てくるだろう。

私たちは、TPPに投資家対国家間紛争解決制度を含めるべきではないと確信している。TPPにそのような条項が含まれれば、アメリカの納税者は巨額の損失に晒され、政府が外国の銀行に影響を及ぼす新たな規制の策定や施行を躊躇する可能性が出てくる。その結果、わが国の規制関係諸機関は次なる金融危機を未然に防ぐ手段を剥ぎ取られてしまうことになるだろう。

市場アクセス
私たちは、WTOによって明記されたものと類似の「市場アクセス」の規則を、アメリカの金融部門にも負わせる条項を含めることにも懸念を抱いている。アメリカの金融市場へのアクセスを阻むとして、こうした規則は、極めてリスクの高い形態の金融派生商品など略奪的または有毒な金融商品への基本的、非差別的な(米国の)規制すらも禁止していると解釈される可能性があるのだ。また、こうした「市場アクセス」の規則は、預金者の資金を高リスク取引から守るための(米国の)規制など金融機関の規模や事業活動に関する制限についても、禁止あるいは抑制していると解釈される可能性がある。

消費者を保護し、連鎖的金融危機の根源に対処するためには、連邦議会が有害な金融諸商品や、金融機関の行動あるいは構造を制限できる柔軟性を保持することが欠かせない。私たちはそうした柔軟性を制約する条項をTPPに含めることに反対する。

資本規制
私たちは、政府が資本規制を行使する権能を制約する可能性がある条項をTPPに含めることにも反対する。IMFおよび主導的な経済学者らは、金融危機を未然に防ぎあるいは緩和するための正当な政策手段として、資本規制を支持してきた。資本移転の無制限な自由を義務づけた過去の通商協定の条項がTPPに含まれれば、TPPが、資本規制のみならず金融取引税のような基礎的改革手段を立法化する連邦議会の権限までも制約する可能性が出てくる。TPPによってこのような手段が排除されてはならない。

従って私たちは、2014年(※2015年の誤植か)1月6日までに以下の質問に回答するよう要求する。
1.TPPにこれらの諸条項を含めることについて、USTRはいかなる立場にあるのか?
2.もしUSTRがこれら諸条項のいずれかでもTPPに含めることを支持しているのなら、UST
Rは、何故これらの諸条項が連邦議会および規制諸当局が将来の金融危機を未然に防ぐのに役立つと確信するのか?

加えて私たちは、本書簡で議論してきた3つの条項に関連するアメリカ政府の諸提案および未合意の交渉中の条文の全てを、フロマン代表から私たちに提供するよう要求する。この要求はTPPの投資、金融サービス、投資家対国家間紛争、および例外規定に関する、未合意の条文ならびに関連するすべてのアメリカ政府提案を含むものであるが、これに限定されるものではない。最近TPP参加各国が妥結は真近であると言及していることから、これらの資料を2015年1月6日までに提供するよう要請する。

私たちはこれらの決定的に重要な諸問題についてフロマン代表と協働することを望んでいる。

連邦上院議員
エリザベス・ウォレン(Elizabeth Warren、民主党・マサチューセッツ州選出)
タミー・ボルドウィン(Tammy Baldwin、民主党・ウィスコンシン州選出)
エドワード・J・マーキー(Edward J. Markey、民主党・マサチューセッツ州選出)

※ウォレン議員による書簡発表会見(写真も)および書簡本文についてのサイトは、
http://www.warren.senate.gov/?p=press_release&id=693
(翻訳:磯田 宏/監修:廣内かおり)

「通貨操作に関わる規則を提案しないこと、要求もしないこと」フローマン大使に宛てた通貨条項に関する書簡

現在米国議会・米国自動車業界において為替条項をTPPに入れる声が声高に叫ばれ、フローマン代表も上院において「最後の段階で提案する」と表明しています。漏れ伝わる内容によれば、経常収支黒字国でかつ6ヶ月分の輸入代金を支払い可能な外貨準備高がある国を対象とし、協定前の輸入関税に戻すという罰則を含むようです。

この場合対象となるのはまず日本、続いてマレーシア、シンガポールとなります。
12月7~12日にワシントンで首席交渉官会合という名目のミニ交渉官会合が開かれ、場合によっては通貨条項も議論されるのではないかとのパブリック・シチズンの判断と依頼があり、篠原孝衆議院議員(前農水副大臣として)及び山田正彦前農水大臣の連名でUSTRフローマン氏に書簡を送りました。

これは、当初マレーシアと日本の閣僚経験者数名づつによる書簡として準備していたものですが、首席交渉官会合の日程がバタバタと決まり、また日本の衆院解散・総選挙が重なり、急遽日本からお二方の連名で出すこととなったものです。1月末の首席交渉官会合からも目が離せません。

          ★ ☆ ★

拝啓
フローマン大使殿

 私たちは、2013年6月6日付の下院435名中の230名、及び9月24日付の上院100名中の60名による超党派の議員による、通貨操作に対する規則をTPP協定に求める書簡を承知しています。また合衆国憲法が定める政治体制のそれぞれの機関の役割によれば、TPPが発効するためには連邦議会の承認が必要であることも承知しています。
 そうであれば、TPP協定に通貨に関する規則が含まれない限り、議会の承認は得られず、発効も不可能であるということにもなります。その結果、仮に合衆国の交渉官がTPPの条文としてそのような条項を提案する意図が無いとしても、最終的には議会において通貨操作に対する規則を協定に含めることが求められるため、合衆国の交渉官によって、TPP交渉においてこのことが提案されることになるものと理解するものです。
 TPP交渉参加国は現在、市場アクセスの条件について交渉をしており、通貨操作の規則が求められることを想定すべき段階にあります。従って、交渉参加国にとって、合衆国が果たして通貨条項について提案をするのか、またそれはいつになるのかを知ることが喫緊の課題となっています。
 大使閣下、是非合衆国の交渉官が通貨操作に関わる規則を提案しないこと、要求もしないことを確約していただくことは出来ないでしょうか?そのような確約をいただけないとしても、通貨操作に関する規則がいつかは提案されるものと想定せざるを得ず、いつ合衆国の交渉官が提案を明らかにするのか知ることが出来れば、とも考えるものです。通貨操作に関わる規則は、我々の国にとってのTPPの功罪に深刻な影響を与えるものです。是非とも貴職から回答をいただきたい、きわめて重要な情報なのです。

2014年12月10日
敬具
前農林水産大臣
山田 正彦
民主党衆議院議員 
前農林水産副大臣
篠原 孝

12 December,  2014
Dear Ambassador Froman,

We are aware of the letter from 230 of the 435 US House Members dated 6 June 2013 and the 24 September 2013 letter from a bipartisan group of 60 of the 100 US Senators calling for disciplines on currency manipulation in the Trans-Pacific Partnership Agreement (TPPA).  And, we are aware that under the terms of the US Constitution setting forth the roles of each branch of government, the TPPA would have to be approved by the U.S. Congress for it to take effect.
Given this, it appears that the TPPA cannot pass the US Congress and thus cannot go into effect unless there are disciplines on currency manipulators included in the TPPA. As a result even if US negotiators have not yet proposed such terms for the TPPA text, we understand that ultimately inclusion of currency manipulation disciplines in the TPPA will be required by the US Congress and thus eventually will be proposed by US negotiators.
Since TPPA countries are now negotiating market access terms, a stage in negotiations that requires taking into account the prospective demand for such currency disciplines, it is critical that TPPA parties know if and when a U.S. currency proposal will be forthcoming.
Can you please assure us that US officials will not propose nor require terms disciplining currency manipulators within the TPPA context? If you cannot give us such an assurance, we must assume that such terms will be forthcoming and we would appreciate knowing when US officials intend to present their proposal. As this would significantly affect the costs and benefits of the TPPA for our countries, this is a crucial piece of information that we need from you.
Sincerely,

Masahiko YAMADA
Former Diet Member of Japan
and
Former Minister of Agriculture, Forestry and Fisheries

Takashi SHINOHARA
Democratic Party of Japan
Member of the House of Representative
and
Former Vice Minister of Agriculture, Forestry and Fisheries

2014年12月13日土曜日

EU委員会、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)は一層の透明性向上を

14年11月19日、欧州委員会は、TTIPにおける情報開示の一層の透明性向上について協議をしています。具体的なところはこれからですが、守秘義務への疑問、EU提案の公表、各国からのISDSへの反対など、日本政府にも少しは見習ってもらいたいものです。(翻訳:田中 久雄/監修:廣内 かおり)

                ★ ★ ★

EU委員会、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)は一層の透明性向上を

欧州委員会は本日、現在進められているEUと米国との環太平洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)交渉における透明性の向上や、交渉内容に関する市民への一層の適切且つ詳細な情報提供の方法について協議した。これは、ユンケル委員長率いる欧州委員会が優先的に取り組んでいる透明性向上の一環であり、セシリア・マルムストロムEU通商担当委員が最近発表したTTIPの「再出発」を反映するものである。

「TTIPは非常に重要な協定であり、雇用と経済成長をもたらし、さまざまな基準となる大きな可能性をもっています。しかし、このTTIPは、委員会によるこれまでのどの交渉よりも透明性が高く、開放的であるとはいえ、交渉内容についていまだに多くの不信を招いています」と、マルムストロム委員は語った。

「こうしたことから、TTIPについてもっと多くの人々と協議できることを望んでおり、また透明性という点でも進展させたいと考えています。 透明性をあげることで、私たちは一層明確に交渉内容を示すことができ、秘密性を取り除くことができるのです。これは、利害関係者や一般の人たちを広く巻きこむための基盤になるでしょう」と、マルムストロム委員は語った。

同委員は、透明性向上の主要な2つの提案の概要を述べた。

第1は、これまで欧州議会の国際通商委員会という限られた委員にのみ公開されていたTTIP原案をすべての欧州議会議員に広げること、

第2に、TTIPに関してEUが提案する具体的な交渉原案を公表することである。
本日の討論に続き、来週の委員会で今回の提案が採用される予定だ。

本日の全体会合での議論は、他の分野の透明性向上も対象にしており、欧州委員会委員、委員官房、総局局長らと、透明性登録簿(Transparency Registry)に登録している利益団体や個人が連絡をとる際には、公開が担保されることになる。
マルムストロム委員は、このTTIPの透明性に関する提案を12月3日に開かれる欧州議会の国際通商委員会に提出する。委員会は今年中にこの新たな措置を実施したい考えだ。
(翻訳:田中 久雄/監修:廣内 かおり)

一挙公開!世界中からISDS等に対する反対の声

 パブリック・シチズンが、各国特に欧州でのTTIPのISDS条項に対する反対、そして既存の2国間投資協定におけるISDS条項に対する途上国からの反対の巻き返しの声を拾ってくれました。

 TPP交渉の政府説明会で繰り返される「日本が損をすることはない」「今までのEPA、FTA,投資協定で日本も受け入れてきている」という説明をそののまま受け入れる必要もないし、日本の損得ではなく、グロ-バル経済における公平・公正の観点で批判をしていくこと、更には必ずしも“投資家保護”が、その目的とする投資の増大にも結びついていている訳ではないことも、認識しておいていいと思います。(翻訳:池上明/監修:廣内 かおり)




               ★ ★ ★

 TTP(環太平洋経済連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)    /TAFTA(環大西洋自由貿易協定) ISDS(国家投資家間紛争解決条項)に対して広がる反対の声

 ISDSに反対するオーストラリア
「ISDSは法律より上位のものか」と題し、オーストラリア連邦高等裁判所(最上級の裁判所)の首席裁判官(高等裁判所長官)が、ISDSの国家の司法制度への影響を批判。
公共放送ABCラジオの「Background Briefing」(ドキュメンタリ番組)が、ISDSを「貿易協定に潜む悪魔」と批判。
野党、労働党のメリサ・パーク議員が議会でISDS反対の演説。

TTIP/TAFTAのISDSに反対するフランス
「フランスは、ISDSが交渉の対象になることを望んでいなかった。我々は、自国の基準を自国で設定して適用する権利を守り、司法制度の公平性を維持し、フランスおよび世界の人々がそれぞれの価値基準を行使できるようにしなければならない」。
―マティアス・フェクル外務・通商・観光振興・在外国民担当大臣。2014年11月17日

TTIP/TAFTAのISDSに反対するドイツ
「〔ドイツ〕連邦政府の見解では、アメリカとドイツはすでに国内の裁判制度の下で十分な法的保護制度を有している」。ドイツ政府は「EU-アメリカ間の貿易協定に紛争解決のための新たな規定は必要ないという立場をすでに明確にしている」。
         ―ジグマール・ガブリエル経済・エネルギー大臣。2014年3月26日
「わが国が、このような投資家保護の協定を拒否するのは自明だ」。
   ―ジグマール・ガブリエル大臣のTAFTAに関する国会討論での発言。2014年
9月25日

オーストリア議会がTTIP/TAFTAおよびCETA(包括的経済貿易協定)におけるISDS条項を疑問視
「今のところ、成熟した司法制度を有する国々(イギリス、アメリカ、カナダなど)との協定にISDS条項を含める意義は認められない」。
              ―多数決で採択されたオーストリア議会決議。2014年10月1日

欧州委員会がTTIP/TAFTAのISDSを疑問視
「(しかしながら)、私は自由貿易という祭壇に、ヨーロッパの安全、保健、社会保障およびデータ保護基準、文化的多様性などの生贄を捧げるつもりはないことを、欧州委員会の委員長として、明確にしておきたい…また、投資家紛争のための特別な制度によってEU加盟国内の裁判所の権限が制限されることも受け入れられない」。
        ―ジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長。2014年7月15日
「ISDSはここでも、他の国の議会でも、非常に毒性の強い問題である…TTIPには自動的にISDSが含まれることになるのか?いや、そんなことはない。私は、この条項が最後の段階で除外される可能性もあると思っている」。
―セシリア・マルムストローム、新EU貿易担当委員。2014年9月29日

TTIPにISDSを含めるよう要請した書簡にEU加盟国の半数が署名せず
EU加盟国28カ国のうち14カ国は、マルムストローム欧州委員会貿易担当委員宛てのTTIP/TAFTAへのISDS導入を要請する書簡に署名をしなかった。非署名国はオーストリア、ベルギー、ブルガリア、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニアなど、主要加盟国が多く含まれていた。
                                                     ―2014年10月21日

欧州社会民主進歩同盟(EU議会第2の勢力)がTTIP/TAFTAのISDSに反対

「我々は、この制度(ISDS)が、法の支配を十分に尊重している二国間の協定には不要だと考える。ISDSを認めれば、大企業がEUの法規制に対して自らの利害を強要する道を開くことになり、国家が保健や環境など重要な領域で不可欠な政策を実施する機会を奪われることになる。我々が欧州委員会に望むのは、TTIPのISDS条項を今より良いものにするための交渉ではない。ISDS条項そのものをTTIPから削除することを求めている」。
        ―欧州議会における社会民主進歩同盟の意見表明。2014年1月21日

TTIP/TAFTAのISDSにアメリカの政治領域を横断する諸団体(実業界、労働界、自由主義者)が反対
「貿易協定が相当な反発を招いている主な原因の1つはISDSにある。ところが、ISDSは貿易の自由化に不可欠な条件ですらない。にもかかわらず、なぜこのように余分な荷物を引き受けなければならいのか?TPPおよびTTIPから ISDSを一掃することは、経済的にも政治的にも理にかなうものであり、これらの交渉に対する不安を軽減し、反自由化勢力を分断し、今以上に自由化された貿易への道を開くことになるだろう」。
     ―ケイトー(CATO)研究財団ダニエル・イケンソン。2014年3月4日          

「ISDSは国内の法廷(アメリカ合衆国憲法第3条、司法制度を含む)を通らず、直接、アメリカ政府を相手に国際仲裁機関に異議を申し立てる、国内の投資家にはない権利を外国投資家に与えている。ISDSの審査員団は、民主的に選出されたわけでも、国民に責任を負うわけでもなく、アメリカの法の基本原則を考慮することも求められていない…」。
      ―アメリカの労働、保健、消費者、実業、小規模農業、信仰およびその
他の利害団体(アメリカ産業協議会、アメリカ労働総同盟産業別組合
会議(AFL-CIO)、消費者組合、全米農業組合、自然資源保護委員会、
アメリカ長老派教会など)。2014年2月28日

大西洋両岸の市民団体の大勢力がTTIP/TAFTAのISDSに反対

「我々はつぎのような理由で、TTIPからISDSを除外することを強く求める。
・ISDSによって、政府は、公的保健、環境、労働およびその他の公益に資する
政策と実施に対して、納税者の資金を使って企業に補償しなければならなくなる。
・ISDSは、環境に優しいエネルギー、鉱業、土地利用、保健、労働、その他公
益に資する政策を攻撃するために使われている…ISDSは民主的な政策決定を脅かす。
・ISDSは、外国企業に対し、非公開の法廷で、直接、政府の政策や活動に異議
を申し立てる権利を認めている。その国の法廷を経ることもなく、外国企業および多国籍企業だけが利用できる新たな司法制度が作られる…ヨーロッパ諸国やアメリカの司法制度で投資にかかわる紛争に対応することは可能である。
・EU諸国とアメリカには、盤石な国内の裁判制度および財産権の保護制度があ
る。TTIPへのISDSの導入は、その国の法廷なら問題ないと思われる国内制度を攻撃する新しい手段を企業に与えることにしかならないだろう」。   
 ―労働、環境、保健、プライバシー、無料インターネット、金融、開発、小
規模家族農業、信仰および消費者などのアメリカとEUの178の団体。2013年12月16日

法律学者、TTIP/TAFTAのISDSに反対
「TTIPにISDSを盛りこむことをそもそもなぜ考えるのか…投資家国家間の仲裁制度は、外国投資家に過度の特恵を付与する仕組みを与え、国内企業を犠牲にして市場を歪曲する危険性をはらむ。ここでの外国投資家にとっての特恵とは、次のようなものである。
特別な審判法廷を活用できる特権、権利および利害に影響がある関係者の関与がないまま当該事案および論調を展開できる特権、仲裁者の構成を決定する排他的な権限、主権国家に対する判決の強要、投資家または資本輸出大国に直接責任を持つ審判団を指名出来る機能、そして司法の独立性という制度的な不正予防措置の欠如だ。本来の司法の独立性とは、非対称的な裁定において、仲裁者を、仲裁を請求しようとする者との金銭的な関係から隔離するものである。そして、政治家、政府官僚、裁判所と外国投資家との関係から得られるその他の恩恵による、交渉における優位性も外国投資家にとっての特恵である。
根本的にこの制度では、巨額資産を持つ外国企業が優先され、代表者の選出も参加も民主的手続きと司法制度でのみ行われる人々の利益からはかけ離れていることを意味している。 
 ―アメリカ、EU加盟国及びその他諸国における120名の法律学者。2014年7
 月

EUとアメリカの消費者、保健、環境及び労働団体がTTIP/TAFTAの化学物質にかかわる書簡のなかでISDSに反対
「(さらに)投資家国家間紛争解決(ISDS)条項をTTIPに入れる提案は、企業が国内法廷を回避し、法廷外の仲裁機関にそのような保護規定に対して直接、異議を申し立てる権利を与えるもので、化学物質の確固たる規制制度を脅かすことになるだろう、」。
                   ―アメリカ及びEUにおける111の組織。2014年7月10日

米国の金融規制団体がTTIP/TAFTAおよびTPPのISDSに反対
「投資家対国家間紛争解決条項を拒否せよ。TPPおよびTTIPにおいて、アメリカの交渉団は、外国銀行が国内法廷を回避し、超法規の仲裁機関の前にアメリカ政府を引きずり出し、TPPまたはTTIPの約定違反であるという理由で、直接、国内の金融保護規定に異議を申し立てる権限を与える『投資家対国家』の紛争解決手続きに賛成している。これら仲裁機関は、通常3人の民間弁護士で構成され、銀行の『将来予測利益』の侵害になるとみられる金融規制について、納税者負担を伴う無制限の補償を命ずる権限を持つ。そのように強力な『投資家対国家』の規則は、すでにアメリカの一連の『自由貿易』協定に盛りこまれ、世界中で企業が何十億ドルもの訴えを起こしている。我々は、TPPおよびTTIP加盟国に複数の拠点を持つ金融機関が、アメリカの納税者が補償を支払わなければアメリカの金融規制を順守しないとする主張を押し通すために、アメリカの裁判所を回避する手段を持つことがないよう、議会に強く要求する」
  ―250団体からなる金融改革のためのアメリカ市民同盟による書簡。2013年
12月19日

全米退職者協会(AARP)、AFL-CIO、及びアメリカ最大の労働団体、消費者団体および保健団体によるTTIP/TAFTAおよびTPPのISDSに関する懸念の表明
「…我々はISDSに関して強い懸念を抱いている。アメリカの州議会、連邦議会そして公共機関が公的施策の中で薬価を管理するために用いている制度に対して、世界的な製薬企業が異議を申し立てられる制度を認めることになるためだ…保健施策をISDSの対象とし、何百万というアメリカ国民の健康の安全保障を危うくするとは無責任であろう」。
             ―アメリカの14の有力団体及び労働組合。2014年9月4日

投資家対国家間条項の制度に対し、世界的な反対行動が拡大
ボリビアとベネズエラがICSID (投資紛争解決国際センター)条約から脱退
ボリビアは2007年、ベネズエラは2012年にICSID条約からの脱退を公式に申し立てた。また、ベネズエラは2008年、オランダとの二国間投資協定(BIT)を解消した。
 典拠先:http://www.bilaterals.org/?icsid-and-latin-america-criticisms

ブラジル議会は、憲法規定に「合致しない」との理由で投資協定を拒否
ブラジルは外国との投資協定を1つも実施していない。ブラジルは1990年代末に14の協定を交渉したが、いずれも実施されていない。そのうちの6つは、間接収用および投資家対国家の紛争解決条項が憲法規定に合致しないという理由でブラジル議会によって拒否された。
典拠先:
http://unctad-worldinvestmentforum.org/wp-content/uploads/2014/10/Godinho.pdf

エクアドルはICSID (投資紛争解決国際センター)から脱退し、また10の二国間投資協定を解消。残りの二国間投資協定も審理中
エクアドルは2008年以降、10の二国間投資協定を解消し、また「市民審理委員会」を発足させた。この委員会は、二国間投資協定やその他の国際的な仲裁機関が国益を満たしているか否かの評価及び再検討を目的としている。エクアドルは2009年、ICSID条約から脱退した。
 典拠先:
http://www.latinarbitrationlaw.com/ecuador-evaluates-investment-treaty-framework/

クロアチア、ISDS体制の妥当性を疑問視
今日まで、海外投資の増加と国際投資協定の締結数に明確な相関関係は見られていない。反対に、投資家対国家の紛争は数多くの明らかな欠陥を露呈しつつ確実に増加している。
提訴された国が負う莫大な仲裁費用(とりわけ提訴が理不尽な場合で、最近は第三者による訴訟費用提供による安易な提訴をされる事態に追い込まれる国がある)と政策実施範囲の縮小はどちらも多くの国家にとって大きな懸念材料だ。しかし、それを別にしても、我々がつくったこの制度が法的確実性と安定性からはほど遠いという事実を無視することはできない。今日の制度は、数多くの矛盾する判決、そうした判決の執行に伴う問題、不透明な手続き、不十分な上訴の仕組みなどの課題を抱えている。
典拠先
:http://unctad-worldinvestmentforum.org/wp-content/uploads/2014/10/Alajbeg.pdf

インド政府は二国間投資協定の見直し/解消の議論を進めている
インドの通商産業大臣は、インドが調印している投資の推進及び保護に関する83の二国間協定全ての解消を推奨しており、経済関係局は条約の見直しと再交渉を要求している。
典拠先:
http://archive.financialexpress.com/news/ministries-for-scrapping-of-bilateral-investment-pacts/1269646/1

インドネシアは60の二国間投資協定解消を計画

2014年の初め、同国の二国間投資協定のうち60の協定を解消する計画を発表した。インドネシアはオランダに対して、両国間の二国間投資協定を2015年7月に終結させる意向を伝えている。
典拠先:
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/3755c1b2-b4e2-11e3-af92-00144feabdc0.html#axzz30ezmIt5L

ナミビアはFDI(海外直接投資)と投資条約との相関性を疑問視:懸念を表明
「ISDSを含む各条約のなかで規定された投資保護の潜在的な利益と費用を考察した最近の経済的研究によれば、投資の流入と二国間投資協定の普及の間には全く相関性がないことが明らかであり、各国がその条約に参加することの根拠に疑問が残る。投資受け入れ国、とりわけ開発途上国にとって、ISDSは重大な負の影響をもたらすという事実は良く知られているとおりで、統計によると提訴側は圧倒的に先進国からの投資家である。また、弁護士費用および仲裁費用がかさむことは、特に開発途上国にとって大きな問題であり、当然、憂慮すべき事項である。最終的な判決内容および、必要不可欠な弁護費用や仲裁手数料などISDSにかかる巨額の費用は、多くの開発途上国にとって重大な財政的脅威となりうる。内国民待遇や投資設立前の権利のような二国間投資協定によくみられる条項により、規制する権利を制限され、開発途上国では自国の利害に基づくせ活動が阻害されるなど、政府が契約上の義務を負うことになる。仲裁および紛争解決に関する手続き全体がいまだ透明だとは言い難く、外国投資の保護と促進を目指す手段として投資条約および仲裁制度が今後も継続されるかどうかは疑問が多い」。
 典拠先:
http://unctad-worldinvestmentforum.org/wp-content/uploads/2014/10/Lindeque.pdf

南アフリカ共和国は二国間投資協定からの脱退手続きを開始
南アフリカは、ベルギー、ルクセンブルグ、スペイン、オランダとの二国間投資協定を解消する手続きを始めており、その他のEU加盟国との二国間協定からも脱退を始める意向を伝えている。南アフリカの通商産業大臣は次のように書いている。「現行の国際的な投資協定は50年前のモデルをもとにしており、先進国の投資家利益に主眼が置かれたままである。開発途上国にとっての大きな懸念材料は、二国間投資協定の交渉過程の中でいっさい取り上げられていない」。
  典拠先:
http://www.iisd.org/itn/2012/10/30/news-in-brief-9/ http://www.engineeringnews.co.za/article/sa-proceeds-with-termination-of-bilateral-investment-treaties-2013-10-21


スリランカが二国間投資協定からの「離脱」を検討
「スリランカは、a)二国間投資協定と国内向け投資増加額との関連性が希薄である、 b)国際仲裁制度から苦い教訓が得られた、c)二国間投資協定によって国内政策の実施が制限される傾向にある、という理由により「二国間投資協定から離脱」し、「国内に流入する海外直接投資(FDI)を保護するための適切な国内法を確立する」ことを検討している」。
 典拠先:
http://unctad-worldinvestmentforum.org/wp-content/uploads/2014/10/Malalgoda.pdf
(翻訳:池上明/監修:廣内 かおり)