2014年12月30日火曜日

「アメリカ経済を保護するための政府の権能をないがしろにするような通商協定を許容することはできない」ウォレン議員らがフロマン代表宛の書簡

先に日本からは、12月7~12日のワシントンでの首席交渉官会合に向けて、12月10日付けでUSTRフロ-マン氏に宛てた書簡が出されましたが、米国では17日付で3名の著名な上院議員がフロ-マン氏に宛てて、TPP交渉を批判する書簡を出しています。その一人ウォ-レン議員は破産法の専門家で金融界に対する厳しい姿勢の持ち主として知られ、でTPPの秘密交渉を批判しています。
九州大学大学院教員の磯田 宏さんが翻訳されたものを同氏の了解を得てブログ掲載・配信をさせていただくものです。(翻訳:磯田 宏/監修:廣内かおり)

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2014年12月17日

USTR フロマン代表殿

我々は、TPPによって、連邦議会や規制当局が金融危機を未然に防ぐことが今以上に難しくなることを懸念している。何百万もの家族がいまだに先の金融危機とその後の大不況から立ち直るために苦闘しているなか、アメリカ経済を保護するための政府の権能をないがしろにするような通商協定を許容することはできない。
我々が懸念しているのは、TPPに含まれる可能性のある以下の3つの条項に関するものである。

投資家対国家間紛争解決
投資家対国家間紛争解決制度において、外国企業はアメリカの裁判所を迂回し、いずれの国の法体系にも属さない民間弁護士で構成された陪審団に、アメリカ政府の政策を訴えることが可能になる。  またその外国企業が勝訴した場合、陪審団はアメリカの裁判所の再調査なしに、アメリカの税金による賠償金の支払いを命じることができる。このように投資家対国家間紛争解決制度は、外国企業に対してアメリカの企業よりも強力な対アメリカ政府訴訟権限を賦与していることになる。また、投資家対国家間紛争解決制度を利用できるのは(外国の)投資家のみであることから、この制度は、当該通商協定に利害を有する労働組合、環境団体、あるいはその他の、投資家でない利害関係者よりも、はるかに強力な政府の施策に対する訴訟能力を投資家たちに賦与している。

これまでの通商協定にも、外国企業が投資家対国家間紛争解決制度を利用して政府のさまざまな金融政策を訴えることが出来る条件が含まれていたことはある。例えば2006年に、投資家対国家間紛争陪審団がチェコ政府に対してオランダ投資企業に2億3,600万ドルの支払いを命じたが、このときはチェコ政府がそのオランダ投資企業が所有権を有する民間銀行を救済しなかったという理由であった(※翻訳者:注を省略し、その概要を盛り込んだ)。

TPPの類似の条項によっても、アメリカの多岐にわたる極めて重要な金融規制が、さらに多くの外国企業から訴えられるという問題が起きる可能性は十分にあるだろう。それにもかかわらず、最近の議会での説明でUSTRは、アメリカの交渉官はTPPにさらに広範な条項を含めることを望んでいると言明した。これはアメリカの金融規制に関連して、外国企業に「最低待遇基準」を保証しようとする条項である。これまでアメリカが締結したいかなる通商協定でも、アメリカの金融政策がこれほどあいまいな義務に晒されたことはなかった。「最低待遇基準」条項とは、アメリカの通商協定の下でおこなわれたこれまでの投資家対国家間訴訟における、ほとんどの勝訴の根拠にほかならない。この条項がTPPで金融政策にまで拡張されれば、一外国企業の期待を裏切ったという理由で、アメリカの金融規制が訴えられる可能性が出てくるだろう。

私たちは、TPPに投資家対国家間紛争解決制度を含めるべきではないと確信している。TPPにそのような条項が含まれれば、アメリカの納税者は巨額の損失に晒され、政府が外国の銀行に影響を及ぼす新たな規制の策定や施行を躊躇する可能性が出てくる。その結果、わが国の規制関係諸機関は次なる金融危機を未然に防ぐ手段を剥ぎ取られてしまうことになるだろう。

市場アクセス
私たちは、WTOによって明記されたものと類似の「市場アクセス」の規則を、アメリカの金融部門にも負わせる条項を含めることにも懸念を抱いている。アメリカの金融市場へのアクセスを阻むとして、こうした規則は、極めてリスクの高い形態の金融派生商品など略奪的または有毒な金融商品への基本的、非差別的な(米国の)規制すらも禁止していると解釈される可能性があるのだ。また、こうした「市場アクセス」の規則は、預金者の資金を高リスク取引から守るための(米国の)規制など金融機関の規模や事業活動に関する制限についても、禁止あるいは抑制していると解釈される可能性がある。

消費者を保護し、連鎖的金融危機の根源に対処するためには、連邦議会が有害な金融諸商品や、金融機関の行動あるいは構造を制限できる柔軟性を保持することが欠かせない。私たちはそうした柔軟性を制約する条項をTPPに含めることに反対する。

資本規制
私たちは、政府が資本規制を行使する権能を制約する可能性がある条項をTPPに含めることにも反対する。IMFおよび主導的な経済学者らは、金融危機を未然に防ぎあるいは緩和するための正当な政策手段として、資本規制を支持してきた。資本移転の無制限な自由を義務づけた過去の通商協定の条項がTPPに含まれれば、TPPが、資本規制のみならず金融取引税のような基礎的改革手段を立法化する連邦議会の権限までも制約する可能性が出てくる。TPPによってこのような手段が排除されてはならない。

従って私たちは、2014年(※2015年の誤植か)1月6日までに以下の質問に回答するよう要求する。
1.TPPにこれらの諸条項を含めることについて、USTRはいかなる立場にあるのか?
2.もしUSTRがこれら諸条項のいずれかでもTPPに含めることを支持しているのなら、UST
Rは、何故これらの諸条項が連邦議会および規制諸当局が将来の金融危機を未然に防ぐのに役立つと確信するのか?

加えて私たちは、本書簡で議論してきた3つの条項に関連するアメリカ政府の諸提案および未合意の交渉中の条文の全てを、フロマン代表から私たちに提供するよう要求する。この要求はTPPの投資、金融サービス、投資家対国家間紛争、および例外規定に関する、未合意の条文ならびに関連するすべてのアメリカ政府提案を含むものであるが、これに限定されるものではない。最近TPP参加各国が妥結は真近であると言及していることから、これらの資料を2015年1月6日までに提供するよう要請する。

私たちはこれらの決定的に重要な諸問題についてフロマン代表と協働することを望んでいる。

連邦上院議員
エリザベス・ウォレン(Elizabeth Warren、民主党・マサチューセッツ州選出)
タミー・ボルドウィン(Tammy Baldwin、民主党・ウィスコンシン州選出)
エドワード・J・マーキー(Edward J. Markey、民主党・マサチューセッツ州選出)

※ウォレン議員による書簡発表会見(写真も)および書簡本文についてのサイトは、
http://www.warren.senate.gov/?p=press_release&id=693
(翻訳:磯田 宏/監修:廣内かおり)

「通貨操作に関わる規則を提案しないこと、要求もしないこと」フローマン大使に宛てた通貨条項に関する書簡

現在米国議会・米国自動車業界において為替条項をTPPに入れる声が声高に叫ばれ、フローマン代表も上院において「最後の段階で提案する」と表明しています。漏れ伝わる内容によれば、経常収支黒字国でかつ6ヶ月分の輸入代金を支払い可能な外貨準備高がある国を対象とし、協定前の輸入関税に戻すという罰則を含むようです。

この場合対象となるのはまず日本、続いてマレーシア、シンガポールとなります。
12月7~12日にワシントンで首席交渉官会合という名目のミニ交渉官会合が開かれ、場合によっては通貨条項も議論されるのではないかとのパブリック・シチズンの判断と依頼があり、篠原孝衆議院議員(前農水副大臣として)及び山田正彦前農水大臣の連名でUSTRフローマン氏に書簡を送りました。

これは、当初マレーシアと日本の閣僚経験者数名づつによる書簡として準備していたものですが、首席交渉官会合の日程がバタバタと決まり、また日本の衆院解散・総選挙が重なり、急遽日本からお二方の連名で出すこととなったものです。1月末の首席交渉官会合からも目が離せません。

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拝啓
フローマン大使殿

 私たちは、2013年6月6日付の下院435名中の230名、及び9月24日付の上院100名中の60名による超党派の議員による、通貨操作に対する規則をTPP協定に求める書簡を承知しています。また合衆国憲法が定める政治体制のそれぞれの機関の役割によれば、TPPが発効するためには連邦議会の承認が必要であることも承知しています。
 そうであれば、TPP協定に通貨に関する規則が含まれない限り、議会の承認は得られず、発効も不可能であるということにもなります。その結果、仮に合衆国の交渉官がTPPの条文としてそのような条項を提案する意図が無いとしても、最終的には議会において通貨操作に対する規則を協定に含めることが求められるため、合衆国の交渉官によって、TPP交渉においてこのことが提案されることになるものと理解するものです。
 TPP交渉参加国は現在、市場アクセスの条件について交渉をしており、通貨操作の規則が求められることを想定すべき段階にあります。従って、交渉参加国にとって、合衆国が果たして通貨条項について提案をするのか、またそれはいつになるのかを知ることが喫緊の課題となっています。
 大使閣下、是非合衆国の交渉官が通貨操作に関わる規則を提案しないこと、要求もしないことを確約していただくことは出来ないでしょうか?そのような確約をいただけないとしても、通貨操作に関する規則がいつかは提案されるものと想定せざるを得ず、いつ合衆国の交渉官が提案を明らかにするのか知ることが出来れば、とも考えるものです。通貨操作に関わる規則は、我々の国にとってのTPPの功罪に深刻な影響を与えるものです。是非とも貴職から回答をいただきたい、きわめて重要な情報なのです。

2014年12月10日
敬具
前農林水産大臣
山田 正彦
民主党衆議院議員 
前農林水産副大臣
篠原 孝

12 December,  2014
Dear Ambassador Froman,

We are aware of the letter from 230 of the 435 US House Members dated 6 June 2013 and the 24 September 2013 letter from a bipartisan group of 60 of the 100 US Senators calling for disciplines on currency manipulation in the Trans-Pacific Partnership Agreement (TPPA).  And, we are aware that under the terms of the US Constitution setting forth the roles of each branch of government, the TPPA would have to be approved by the U.S. Congress for it to take effect.
Given this, it appears that the TPPA cannot pass the US Congress and thus cannot go into effect unless there are disciplines on currency manipulators included in the TPPA. As a result even if US negotiators have not yet proposed such terms for the TPPA text, we understand that ultimately inclusion of currency manipulation disciplines in the TPPA will be required by the US Congress and thus eventually will be proposed by US negotiators.
Since TPPA countries are now negotiating market access terms, a stage in negotiations that requires taking into account the prospective demand for such currency disciplines, it is critical that TPPA parties know if and when a U.S. currency proposal will be forthcoming.
Can you please assure us that US officials will not propose nor require terms disciplining currency manipulators within the TPPA context? If you cannot give us such an assurance, we must assume that such terms will be forthcoming and we would appreciate knowing when US officials intend to present their proposal. As this would significantly affect the costs and benefits of the TPPA for our countries, this is a crucial piece of information that we need from you.
Sincerely,

Masahiko YAMADA
Former Diet Member of Japan
and
Former Minister of Agriculture, Forestry and Fisheries

Takashi SHINOHARA
Democratic Party of Japan
Member of the House of Representative
and
Former Vice Minister of Agriculture, Forestry and Fisheries

2014年12月13日土曜日

EU委員会、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)は一層の透明性向上を

14年11月19日、欧州委員会は、TTIPにおける情報開示の一層の透明性向上について協議をしています。具体的なところはこれからですが、守秘義務への疑問、EU提案の公表、各国からのISDSへの反対など、日本政府にも少しは見習ってもらいたいものです。(翻訳:田中 久雄/監修:廣内 かおり)

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EU委員会、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)は一層の透明性向上を

欧州委員会は本日、現在進められているEUと米国との環太平洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)交渉における透明性の向上や、交渉内容に関する市民への一層の適切且つ詳細な情報提供の方法について協議した。これは、ユンケル委員長率いる欧州委員会が優先的に取り組んでいる透明性向上の一環であり、セシリア・マルムストロムEU通商担当委員が最近発表したTTIPの「再出発」を反映するものである。

「TTIPは非常に重要な協定であり、雇用と経済成長をもたらし、さまざまな基準となる大きな可能性をもっています。しかし、このTTIPは、委員会によるこれまでのどの交渉よりも透明性が高く、開放的であるとはいえ、交渉内容についていまだに多くの不信を招いています」と、マルムストロム委員は語った。

「こうしたことから、TTIPについてもっと多くの人々と協議できることを望んでおり、また透明性という点でも進展させたいと考えています。 透明性をあげることで、私たちは一層明確に交渉内容を示すことができ、秘密性を取り除くことができるのです。これは、利害関係者や一般の人たちを広く巻きこむための基盤になるでしょう」と、マルムストロム委員は語った。

同委員は、透明性向上の主要な2つの提案の概要を述べた。

第1は、これまで欧州議会の国際通商委員会という限られた委員にのみ公開されていたTTIP原案をすべての欧州議会議員に広げること、

第2に、TTIPに関してEUが提案する具体的な交渉原案を公表することである。
本日の討論に続き、来週の委員会で今回の提案が採用される予定だ。

本日の全体会合での議論は、他の分野の透明性向上も対象にしており、欧州委員会委員、委員官房、総局局長らと、透明性登録簿(Transparency Registry)に登録している利益団体や個人が連絡をとる際には、公開が担保されることになる。
マルムストロム委員は、このTTIPの透明性に関する提案を12月3日に開かれる欧州議会の国際通商委員会に提出する。委員会は今年中にこの新たな措置を実施したい考えだ。
(翻訳:田中 久雄/監修:廣内 かおり)

一挙公開!世界中からISDS等に対する反対の声

 パブリック・シチズンが、各国特に欧州でのTTIPのISDS条項に対する反対、そして既存の2国間投資協定におけるISDS条項に対する途上国からの反対の巻き返しの声を拾ってくれました。

 TPP交渉の政府説明会で繰り返される「日本が損をすることはない」「今までのEPA、FTA,投資協定で日本も受け入れてきている」という説明をそののまま受け入れる必要もないし、日本の損得ではなく、グロ-バル経済における公平・公正の観点で批判をしていくこと、更には必ずしも“投資家保護”が、その目的とする投資の増大にも結びついていている訳ではないことも、認識しておいていいと思います。(翻訳:池上明/監修:廣内 かおり)




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 TTP(環太平洋経済連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)    /TAFTA(環大西洋自由貿易協定) ISDS(国家投資家間紛争解決条項)に対して広がる反対の声

 ISDSに反対するオーストラリア
「ISDSは法律より上位のものか」と題し、オーストラリア連邦高等裁判所(最上級の裁判所)の首席裁判官(高等裁判所長官)が、ISDSの国家の司法制度への影響を批判。
公共放送ABCラジオの「Background Briefing」(ドキュメンタリ番組)が、ISDSを「貿易協定に潜む悪魔」と批判。
野党、労働党のメリサ・パーク議員が議会でISDS反対の演説。

TTIP/TAFTAのISDSに反対するフランス
「フランスは、ISDSが交渉の対象になることを望んでいなかった。我々は、自国の基準を自国で設定して適用する権利を守り、司法制度の公平性を維持し、フランスおよび世界の人々がそれぞれの価値基準を行使できるようにしなければならない」。
―マティアス・フェクル外務・通商・観光振興・在外国民担当大臣。2014年11月17日

TTIP/TAFTAのISDSに反対するドイツ
「〔ドイツ〕連邦政府の見解では、アメリカとドイツはすでに国内の裁判制度の下で十分な法的保護制度を有している」。ドイツ政府は「EU-アメリカ間の貿易協定に紛争解決のための新たな規定は必要ないという立場をすでに明確にしている」。
         ―ジグマール・ガブリエル経済・エネルギー大臣。2014年3月26日
「わが国が、このような投資家保護の協定を拒否するのは自明だ」。
   ―ジグマール・ガブリエル大臣のTAFTAに関する国会討論での発言。2014年
9月25日

オーストリア議会がTTIP/TAFTAおよびCETA(包括的経済貿易協定)におけるISDS条項を疑問視
「今のところ、成熟した司法制度を有する国々(イギリス、アメリカ、カナダなど)との協定にISDS条項を含める意義は認められない」。
              ―多数決で採択されたオーストリア議会決議。2014年10月1日

欧州委員会がTTIP/TAFTAのISDSを疑問視
「(しかしながら)、私は自由貿易という祭壇に、ヨーロッパの安全、保健、社会保障およびデータ保護基準、文化的多様性などの生贄を捧げるつもりはないことを、欧州委員会の委員長として、明確にしておきたい…また、投資家紛争のための特別な制度によってEU加盟国内の裁判所の権限が制限されることも受け入れられない」。
        ―ジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長。2014年7月15日
「ISDSはここでも、他の国の議会でも、非常に毒性の強い問題である…TTIPには自動的にISDSが含まれることになるのか?いや、そんなことはない。私は、この条項が最後の段階で除外される可能性もあると思っている」。
―セシリア・マルムストローム、新EU貿易担当委員。2014年9月29日

TTIPにISDSを含めるよう要請した書簡にEU加盟国の半数が署名せず
EU加盟国28カ国のうち14カ国は、マルムストローム欧州委員会貿易担当委員宛てのTTIP/TAFTAへのISDS導入を要請する書簡に署名をしなかった。非署名国はオーストリア、ベルギー、ブルガリア、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニアなど、主要加盟国が多く含まれていた。
                                                     ―2014年10月21日

欧州社会民主進歩同盟(EU議会第2の勢力)がTTIP/TAFTAのISDSに反対

「我々は、この制度(ISDS)が、法の支配を十分に尊重している二国間の協定には不要だと考える。ISDSを認めれば、大企業がEUの法規制に対して自らの利害を強要する道を開くことになり、国家が保健や環境など重要な領域で不可欠な政策を実施する機会を奪われることになる。我々が欧州委員会に望むのは、TTIPのISDS条項を今より良いものにするための交渉ではない。ISDS条項そのものをTTIPから削除することを求めている」。
        ―欧州議会における社会民主進歩同盟の意見表明。2014年1月21日

TTIP/TAFTAのISDSにアメリカの政治領域を横断する諸団体(実業界、労働界、自由主義者)が反対
「貿易協定が相当な反発を招いている主な原因の1つはISDSにある。ところが、ISDSは貿易の自由化に不可欠な条件ですらない。にもかかわらず、なぜこのように余分な荷物を引き受けなければならいのか?TPPおよびTTIPから ISDSを一掃することは、経済的にも政治的にも理にかなうものであり、これらの交渉に対する不安を軽減し、反自由化勢力を分断し、今以上に自由化された貿易への道を開くことになるだろう」。
     ―ケイトー(CATO)研究財団ダニエル・イケンソン。2014年3月4日          

「ISDSは国内の法廷(アメリカ合衆国憲法第3条、司法制度を含む)を通らず、直接、アメリカ政府を相手に国際仲裁機関に異議を申し立てる、国内の投資家にはない権利を外国投資家に与えている。ISDSの審査員団は、民主的に選出されたわけでも、国民に責任を負うわけでもなく、アメリカの法の基本原則を考慮することも求められていない…」。
      ―アメリカの労働、保健、消費者、実業、小規模農業、信仰およびその
他の利害団体(アメリカ産業協議会、アメリカ労働総同盟産業別組合
会議(AFL-CIO)、消費者組合、全米農業組合、自然資源保護委員会、
アメリカ長老派教会など)。2014年2月28日

大西洋両岸の市民団体の大勢力がTTIP/TAFTAのISDSに反対

「我々はつぎのような理由で、TTIPからISDSを除外することを強く求める。
・ISDSによって、政府は、公的保健、環境、労働およびその他の公益に資する
政策と実施に対して、納税者の資金を使って企業に補償しなければならなくなる。
・ISDSは、環境に優しいエネルギー、鉱業、土地利用、保健、労働、その他公
益に資する政策を攻撃するために使われている…ISDSは民主的な政策決定を脅かす。
・ISDSは、外国企業に対し、非公開の法廷で、直接、政府の政策や活動に異議
を申し立てる権利を認めている。その国の法廷を経ることもなく、外国企業および多国籍企業だけが利用できる新たな司法制度が作られる…ヨーロッパ諸国やアメリカの司法制度で投資にかかわる紛争に対応することは可能である。
・EU諸国とアメリカには、盤石な国内の裁判制度および財産権の保護制度があ
る。TTIPへのISDSの導入は、その国の法廷なら問題ないと思われる国内制度を攻撃する新しい手段を企業に与えることにしかならないだろう」。   
 ―労働、環境、保健、プライバシー、無料インターネット、金融、開発、小
規模家族農業、信仰および消費者などのアメリカとEUの178の団体。2013年12月16日

法律学者、TTIP/TAFTAのISDSに反対
「TTIPにISDSを盛りこむことをそもそもなぜ考えるのか…投資家国家間の仲裁制度は、外国投資家に過度の特恵を付与する仕組みを与え、国内企業を犠牲にして市場を歪曲する危険性をはらむ。ここでの外国投資家にとっての特恵とは、次のようなものである。
特別な審判法廷を活用できる特権、権利および利害に影響がある関係者の関与がないまま当該事案および論調を展開できる特権、仲裁者の構成を決定する排他的な権限、主権国家に対する判決の強要、投資家または資本輸出大国に直接責任を持つ審判団を指名出来る機能、そして司法の独立性という制度的な不正予防措置の欠如だ。本来の司法の独立性とは、非対称的な裁定において、仲裁者を、仲裁を請求しようとする者との金銭的な関係から隔離するものである。そして、政治家、政府官僚、裁判所と外国投資家との関係から得られるその他の恩恵による、交渉における優位性も外国投資家にとっての特恵である。
根本的にこの制度では、巨額資産を持つ外国企業が優先され、代表者の選出も参加も民主的手続きと司法制度でのみ行われる人々の利益からはかけ離れていることを意味している。 
 ―アメリカ、EU加盟国及びその他諸国における120名の法律学者。2014年7
 月

EUとアメリカの消費者、保健、環境及び労働団体がTTIP/TAFTAの化学物質にかかわる書簡のなかでISDSに反対
「(さらに)投資家国家間紛争解決(ISDS)条項をTTIPに入れる提案は、企業が国内法廷を回避し、法廷外の仲裁機関にそのような保護規定に対して直接、異議を申し立てる権利を与えるもので、化学物質の確固たる規制制度を脅かすことになるだろう、」。
                   ―アメリカ及びEUにおける111の組織。2014年7月10日

米国の金融規制団体がTTIP/TAFTAおよびTPPのISDSに反対
「投資家対国家間紛争解決条項を拒否せよ。TPPおよびTTIPにおいて、アメリカの交渉団は、外国銀行が国内法廷を回避し、超法規の仲裁機関の前にアメリカ政府を引きずり出し、TPPまたはTTIPの約定違反であるという理由で、直接、国内の金融保護規定に異議を申し立てる権限を与える『投資家対国家』の紛争解決手続きに賛成している。これら仲裁機関は、通常3人の民間弁護士で構成され、銀行の『将来予測利益』の侵害になるとみられる金融規制について、納税者負担を伴う無制限の補償を命ずる権限を持つ。そのように強力な『投資家対国家』の規則は、すでにアメリカの一連の『自由貿易』協定に盛りこまれ、世界中で企業が何十億ドルもの訴えを起こしている。我々は、TPPおよびTTIP加盟国に複数の拠点を持つ金融機関が、アメリカの納税者が補償を支払わなければアメリカの金融規制を順守しないとする主張を押し通すために、アメリカの裁判所を回避する手段を持つことがないよう、議会に強く要求する」
  ―250団体からなる金融改革のためのアメリカ市民同盟による書簡。2013年
12月19日

全米退職者協会(AARP)、AFL-CIO、及びアメリカ最大の労働団体、消費者団体および保健団体によるTTIP/TAFTAおよびTPPのISDSに関する懸念の表明
「…我々はISDSに関して強い懸念を抱いている。アメリカの州議会、連邦議会そして公共機関が公的施策の中で薬価を管理するために用いている制度に対して、世界的な製薬企業が異議を申し立てられる制度を認めることになるためだ…保健施策をISDSの対象とし、何百万というアメリカ国民の健康の安全保障を危うくするとは無責任であろう」。
             ―アメリカの14の有力団体及び労働組合。2014年9月4日

投資家対国家間条項の制度に対し、世界的な反対行動が拡大
ボリビアとベネズエラがICSID (投資紛争解決国際センター)条約から脱退
ボリビアは2007年、ベネズエラは2012年にICSID条約からの脱退を公式に申し立てた。また、ベネズエラは2008年、オランダとの二国間投資協定(BIT)を解消した。
 典拠先:http://www.bilaterals.org/?icsid-and-latin-america-criticisms

ブラジル議会は、憲法規定に「合致しない」との理由で投資協定を拒否
ブラジルは外国との投資協定を1つも実施していない。ブラジルは1990年代末に14の協定を交渉したが、いずれも実施されていない。そのうちの6つは、間接収用および投資家対国家の紛争解決条項が憲法規定に合致しないという理由でブラジル議会によって拒否された。
典拠先:
http://unctad-worldinvestmentforum.org/wp-content/uploads/2014/10/Godinho.pdf

エクアドルはICSID (投資紛争解決国際センター)から脱退し、また10の二国間投資協定を解消。残りの二国間投資協定も審理中
エクアドルは2008年以降、10の二国間投資協定を解消し、また「市民審理委員会」を発足させた。この委員会は、二国間投資協定やその他の国際的な仲裁機関が国益を満たしているか否かの評価及び再検討を目的としている。エクアドルは2009年、ICSID条約から脱退した。
 典拠先:
http://www.latinarbitrationlaw.com/ecuador-evaluates-investment-treaty-framework/

クロアチア、ISDS体制の妥当性を疑問視
今日まで、海外投資の増加と国際投資協定の締結数に明確な相関関係は見られていない。反対に、投資家対国家の紛争は数多くの明らかな欠陥を露呈しつつ確実に増加している。
提訴された国が負う莫大な仲裁費用(とりわけ提訴が理不尽な場合で、最近は第三者による訴訟費用提供による安易な提訴をされる事態に追い込まれる国がある)と政策実施範囲の縮小はどちらも多くの国家にとって大きな懸念材料だ。しかし、それを別にしても、我々がつくったこの制度が法的確実性と安定性からはほど遠いという事実を無視することはできない。今日の制度は、数多くの矛盾する判決、そうした判決の執行に伴う問題、不透明な手続き、不十分な上訴の仕組みなどの課題を抱えている。
典拠先
:http://unctad-worldinvestmentforum.org/wp-content/uploads/2014/10/Alajbeg.pdf

インド政府は二国間投資協定の見直し/解消の議論を進めている
インドの通商産業大臣は、インドが調印している投資の推進及び保護に関する83の二国間協定全ての解消を推奨しており、経済関係局は条約の見直しと再交渉を要求している。
典拠先:
http://archive.financialexpress.com/news/ministries-for-scrapping-of-bilateral-investment-pacts/1269646/1

インドネシアは60の二国間投資協定解消を計画

2014年の初め、同国の二国間投資協定のうち60の協定を解消する計画を発表した。インドネシアはオランダに対して、両国間の二国間投資協定を2015年7月に終結させる意向を伝えている。
典拠先:
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/3755c1b2-b4e2-11e3-af92-00144feabdc0.html#axzz30ezmIt5L

ナミビアはFDI(海外直接投資)と投資条約との相関性を疑問視:懸念を表明
「ISDSを含む各条約のなかで規定された投資保護の潜在的な利益と費用を考察した最近の経済的研究によれば、投資の流入と二国間投資協定の普及の間には全く相関性がないことが明らかであり、各国がその条約に参加することの根拠に疑問が残る。投資受け入れ国、とりわけ開発途上国にとって、ISDSは重大な負の影響をもたらすという事実は良く知られているとおりで、統計によると提訴側は圧倒的に先進国からの投資家である。また、弁護士費用および仲裁費用がかさむことは、特に開発途上国にとって大きな問題であり、当然、憂慮すべき事項である。最終的な判決内容および、必要不可欠な弁護費用や仲裁手数料などISDSにかかる巨額の費用は、多くの開発途上国にとって重大な財政的脅威となりうる。内国民待遇や投資設立前の権利のような二国間投資協定によくみられる条項により、規制する権利を制限され、開発途上国では自国の利害に基づくせ活動が阻害されるなど、政府が契約上の義務を負うことになる。仲裁および紛争解決に関する手続き全体がいまだ透明だとは言い難く、外国投資の保護と促進を目指す手段として投資条約および仲裁制度が今後も継続されるかどうかは疑問が多い」。
 典拠先:
http://unctad-worldinvestmentforum.org/wp-content/uploads/2014/10/Lindeque.pdf

南アフリカ共和国は二国間投資協定からの脱退手続きを開始
南アフリカは、ベルギー、ルクセンブルグ、スペイン、オランダとの二国間投資協定を解消する手続きを始めており、その他のEU加盟国との二国間協定からも脱退を始める意向を伝えている。南アフリカの通商産業大臣は次のように書いている。「現行の国際的な投資協定は50年前のモデルをもとにしており、先進国の投資家利益に主眼が置かれたままである。開発途上国にとっての大きな懸念材料は、二国間投資協定の交渉過程の中でいっさい取り上げられていない」。
  典拠先:
http://www.iisd.org/itn/2012/10/30/news-in-brief-9/ http://www.engineeringnews.co.za/article/sa-proceeds-with-termination-of-bilateral-investment-treaties-2013-10-21


スリランカが二国間投資協定からの「離脱」を検討
「スリランカは、a)二国間投資協定と国内向け投資増加額との関連性が希薄である、 b)国際仲裁制度から苦い教訓が得られた、c)二国間投資協定によって国内政策の実施が制限される傾向にある、という理由により「二国間投資協定から離脱」し、「国内に流入する海外直接投資(FDI)を保護するための適切な国内法を確立する」ことを検討している」。
 典拠先:
http://unctad-worldinvestmentforum.org/wp-content/uploads/2014/10/Malalgoda.pdf
(翻訳:池上明/監修:廣内 かおり)
              

2014年11月16日日曜日

11月7日に「いま言いたい!TPP交渉」開催!100名が参加しました

TPP交渉はできるだけ早期の「大筋合意」をめざして、各級交渉会合が展開され、中国で開催されるAPECに平行して閣僚会議も開かれる。米国議会の中間選挙で野党・共和党が上下両院で圧勝したこの時期に約100名の参加者を得て上記院内集会が開かれた。

 主催は「リレートーク いま言いたい!TPP交渉」実行委員会で、その共同代表には「TPP交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の醍醐聡、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」の中野和子、「主婦連合会」の山根香織の3名が名を連ねた。

1)まず、本実行委員会共同代表の醍醐聡さんより開会あいさつがあり、各国の規制を「非関税障壁だ」として撤廃しようとするのがTPPの本質であること、日本も高齢化時代の老後破産に象徴される貧困化の状態はTPPによって拍車がかかる、と危機感を訴えた。11月8日を中心に反TPP国際共同行動も行われており、その一環として今日はTPP阻止のために闘おうとの行動提起があった。国会議員も駆けつけ、グローバル化の問題点を指摘した。共産党の紙智子議員は日豪EPAが11月6日に参議院の外交防衛委員会と農林水産委員会の合同審議の後、外交防衛委員会で採択され(その後参議院本会議で採択の後、国会で批准した)、豪州産牛肉の関税が早くも2015年4月から10%も引き下げられ、国内の牛肉価格が下落する恐れがあること、関税はTPPの関税率に合わせて引き下げられる条項もあることを批判した。

共産党の田村智子議員は、TPP交渉の中で医療面において医薬品メーカーの意向をうけ規制緩和され、健康保険制度が保険会社の意向を受けて改悪されようとしている、と訴えた。
 同じく共産党の吉良よし子議員は、安倍政権は地方再生を掲げているが、TPPは本来あるべき地方再生を破壊するものでしかない、と批判した。


 民主党議員で「TPPを慎重に考える会」の篠原孝会長は、韓国でも韓米FTAに盛り込まれたISD条項は主権の侵害だ、との批判が多く出ている。先進国間の日豪EPAにはないが、日本は新興国とのEPAには盛り込み、現地の暴動による進出企業の利益を図るためなどとしている。しかしISD条項は、日本国憲法76条の司法権を侵害し各国においても主権を侵害するものであると、TPPに盛り込むことは問題だとした。同日参議院本会議があり、参加予定の、社民党の吉田党首、民主党徳永議員、民主党郡議員、生活の党畑こうじ議員は参加できなかったが、それぞれの秘書の方々も本集会に参加した。

2)次に、各界代表からのリレートークに移った。
全国農協青年組織協議会からは、TPPで地方は衰退し、疲弊してしまう。政府はTPP交渉においては不退転の決意で臨んでほしい、とのメッセージが届けられた。
 全国保険医団体連合会の住江会長は、TPP交渉では事前交渉を含め、新薬の薬価を市場価格で高く設定すること、SPS協定分野でも新薬の危険性に対して予防原則による事前規制を認めないル―ルがまかり通ること、知的財産権分野では、また特許の範囲を薬だけでなく診断方法や手術方法にまで拡大すること、すでに日本で実施され始めた混合診療によって事業者が儲ける仕組みが作られており、今後国民の健康・生命を米国に引き渡すことになる、特許の保護期間に関して日本政府は昨年の態度を変えて米国とともに特許保護期間の延長を主張している、と批判した。
 千葉県農民連の大木会長は、農家は安全・安心な米作りを続けてきたが今年の米価暴落はTPPの先取りであること、米価安定のための「ナラシ対策」は農家が参加しておらず、現実的ではないこと、農協は米代金の概算金を農家に払うだけで、追加金の支払いは全く期待できず、農家は販売しても生産コストをまかなえない。このままでは後継者もおらず耕作放棄地は増え地域は疲弊する一方だと、現状を訴えた。
 建設政策研究所の村松専務理事は、国内企業は海外への進出傾向が高まり、地域社会や労働者にとってもその悪影響が出ている。その状況に加えて、TPPは公共調達の開放を促そうとしており、自治体の公契約条例への介入、PFIへの米国企業の参入、入札において資材の品質基準を相互承認できるなど基準の緩和を行おうとしているなど、国内建設業への影響は大きい、と危惧した。
 郵政産業労働者ユニオンの須藤書記長は、米国USTRの外国貿易障壁報告書などで以前より郵政民営化への攻撃が続いてきたが、すでに保険・貯金の新商品の販売は禁止され、米国アフラック保険は日本へ進出している。今や、郵便貯金、簡保生命の約300兆円の資産が米国企業によって狙われている。労働分野においては労働者派遣法の改悪、労働法の改悪によって「限定正社員」の導入、成果主義の給与制度などが強引に行われようとしており、これらはTPPの先取りといえる、と訴えた。
 主婦連合会の河村事務局長は、消費者団体として一貫してTPPに反対してきたが、それは、競争市場ルールによって不公平な貿易ルールが押しつけられ関税が撤廃され、暮らしの安全が損なわれるからだ。またTPPの秘密交渉も大問題だ。これは日本の消費者にとってもメリットはなく、今後も国際連帯行動を伴う反対運動を展開したい、と決意を述べた。
 大学教員の会の大西慶大教授は、TPPをめぐる利害対立は日米などの国益ばかりでなく、日本国内における自動車など輸出を拡大している産業と農業、保険、医療などとの対立がその背後に存在することをみなければならない。また日本の輸出産業はアベノミクスが進める円安によって利益を得ていることを忘れてはならない、と分析した。
 星野全農協労連書記は、共済研究会として、共済制度に対してTPPからの攻撃が激しくなっている。国内法的にも適用除外とされる農協共済などとは異なり、とりわけPTA共済や障害者共済などの助け合い、相互扶助の理念が強い制度は、無認可保険だなどとの攻撃がしかけられ民間保険への誘導が進められている。TPPは助け合い精神を破壊するものだ、と訴えた。
 弁護士ネットワークの和田弁護士は、米国からは司法制度への攻撃がすでにかけられてきたが、中間選挙で圧勝した共和党の主張はレームダック化したオバマ政権に日本への強い攻撃となって現れてくるだろう。これに対して弁護士ネットとして反対を続けていく。国民の貧困化をいっそう進めるTPP交渉の差し止めを求めて、個人の取り組みにおいても、「違憲訴訟」も進める、と述べた。

3)会場との意見交換では、TPPのメリット・デメリットをめぐって、TPPの先取りである国家戦略特区制度、ISD条項批判、11月8日を中心とした国際反TPPデイの状況、などが討議された。

4)最後に本実行委員会の事務局の坂口さんより、今日の議論でTPPの内容として人々にはメリットがないこと、手続きとしても交渉の秘密主義が問題であることが明らかになった。これまでTPP交渉を合意させなかったのは、人々の協働の成果でもある。まず年内の妥結を阻止しよう、との閉会挨拶があり集会を締めくくった。
(記 山浦康明)


2014年11月4日火曜日

11月4日(火)18:30〜STOP TPP!! 官邸前アクション TPP反対!国際統一アクションデー

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STOP TPP!! 官邸前アクション
TPP反対!国際統一アクションデー

“なし崩しの交渉妥結は許さない!
  官邸前でSTOP TPP!!”

2014.11.4(火)18:30~20:00
※時間が変更になっていますのでご注意ください

http://tpp.jimdo.com/2014/10/31/11-4-kanteimae/
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 9月23日、24日の日米関税協議が物別れに終わって以降、10月のオーストラリアでの首席交渉官会合と閣僚会合が開かれましたが、ここでも交渉に大きな進展はなかったと報じられています。
 しかし、11月4日の米国中間選挙、そして中国でのAPECなどの動きの中で、年内に妥結をめざそうとする動きは完全に止まったわけではありません。また並行する形で、国会では日豪EPA採択の流れがさらに進められています。
 一見、停滞しているかのように見られる交渉ですが、秘密交渉の中でどのような議論がされているか、また日本は日米協議にてどこまでの譲歩案を米国に提示したのか、私たちは知ることができません。日米関税協議が進めばTPP交渉が大きく進展してしまう危険性もあります。これ以上、無理な交渉を重ねて国民を裏切ることは許せません。
 国際的にも、TPP交渉の山場が11月の米国中間選挙後ととらえ、11月8日を「国際統一アクションデー」として、米国やオーストラリア、ニュージーランドで市民による大規模なアクションが予定されています。今回の官邸前アクションは、この国際アクションの一環として、より幅広い方々への参加を呼びかけます。


●日時:2014年11月4日(火)18:30~20:00
  ※通常より開始時間が30分遅くなっていますのでご注意ください。

●場所:首相官邸前(国会記者会館側)
    丸ノ内線・千代田線「国会議事堂前」駅 3番出口(徒歩1分)
    地図:http://yahoo.jp/v1pfet

●内容:呼びかけ人、ゲスト、国会議員によるスピーチ
    路上演劇 他

●呼びかけ人
安部芳裕(プロジェクト99%)/内田聖子(アジア太平洋資料センター〈PARC〉)/こみねまいこ(プロジェクト99%)/坂口正明(全国食健連)/まつだよしこ(TPPって何?)/安田美絵(『サルでもわかるTPP』著者)

【主催・お問合せ】
STOP TPP!! 官邸前アクション実行委員会
〒101-0063 千代田区神田淡路町1-7-11 東洋ビル3F
アジア太平洋資料センター(PARC) 気付
TEL.03-5209-3455
FAX.03-5209-3453

2014年10月31日金曜日

11月7日(金)11:00〜「TPPって何?」が院内集会開催

 STOP TPP!! 市民アクションの構成団体でもあるFacebookグループ「TPPって何?」が11月7日に議員会館でイベントを開催します。

           ☆ ★ ☆

 Facebookグループ「TPPって何?」は2011年8月発足当初から、少ない公開資料やリーク文書、国内外の団体との情報・意見交換を通して、TPP協定交渉の内容について情報を収集し、分析してきました。産業界からの強い要望で始まったこのTPP協定ですが、政府の説明によれば、TPP協定交渉は通商条約ではなく「交渉参加国による新グローバル経済秩序構築の過程」と位置づけられているそうです。言い換えれば新しい経済のルールを決める交渉をしており、協定の行方によっては我が国の国民生活に大きく影響を与えるものになる可能性が高いものです。

 日米両政府の強い希望により、早期妥結を目指すTPP協定交渉の節目となり得るAPEC首脳会合を前に、11月8日を中心として世界各地の一般国民からなる団体などによるTPPを始めとする自由貿易協定に関する様々な催しが予定されています。

 そこでこの機会に、私たち「TPPって何?」では改めてTPP協定が国民生活にとって、どのような影響を与えるのかを中心に、これまでの調査結果を共有し合い、議論を進めるための集会を開きたいと考えています。そして最終的にはこのTPP協定を始めとする自由貿易協定で決まっていくとされる新しいグローバル経済秩序が、どのような姿になれば産業界だけでなく、我が国の国民生活、ひいては協定圏の国々の一般の人々の生活を真に豊かにしていくことができるのか、生活者としての視点で政府対策本部に対する提言を行っていくことを目的としています。

《集会概要》
日時: 2014年11月7日 11:00~13:00
場所: 参議院議員会館 地下1階B109会議室 〒100-0014 東京都 千代田区永田町2-1-1
主催: Facebookグループ「TPPって何?」
https://www.facebook.com/groups/whatisTPP/

※参加希望者は当日10:30に参議院議員会館入口に集合してください。入口で「TPPが国民生活に与える影響について考えるための勉強会」というサインを持ったスタッフから入館証を受け取り、入館してください。

※入館の際、手荷物検査がありますので、時間には余裕を持ってお越しください。

2014年10月26日日曜日

11月7日(金)10:30〜リレートーク 「いま言いたい!TPP交渉」を開催!

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉は、11月「大筋合意」をめざして、各級交渉会合が展開されています。
 しかし、交渉の秘密主義は解決されず、TPPについて様々な分野から発せられている懸念は払拭されていません。それどころか、衆参農林水産委員会における国会決議が守られた交渉になっているのかさえ、定かではありません。
 私たちは、このままTPP交渉が「合意」されることを受け入れることはできません。
 いまこそ、日本を含む参加各国の人々の暮らしや健康、雇用、地域を脅かしかねないTPP交渉に対して、「秘密交渉のまま合意することは許されない」という世論を喚起するため、各界の思いを政府に、国会に、そして社会にアピールすべき時だと考え、標記リレートークの場を設定し、参加を呼びかけることとしました。
 TPP交渉へのスタンスは、「反対」「慎重に」あるいは「国会決議実現」などいろいろとは思いますが、秘密交渉のまま11月「大筋合意」は許されないの思いを共有し、アピールしたいと考えています。なお、この時期、参加各国の市民組織も、TPP交渉への思いをアピールする国際行動を予定しており、私たちのリレートークもまた国際的なアピールの場にもなると考えています。

【開催概要】
日時:2014年11月7日(金)10時30分~12時30分
場所:参議院議員会館「101号室」
内容:①各界からのアピール(各5分)
   ②超党派国会議員からのアピール・決意(各5分)
   ③マスコミからの取材・質疑

リレートーク「いま言いたい!TPP交渉」実行委員会
共同代表:醍醐聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会)     
     中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク)                 
     山根香織(主婦連合会)
事務局:STOP TPP!! 市民アクション
連絡先:全国食健連(〒151-0053 渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3階)
    電話03-3372-6112/FAX 03-3370-8329

2014年9月1日月曜日

TPPをめぐる運動のこれからを考える 9.27全国交流集会のご案内

TPPをめぐる運動のこれからを考える
9.27全国交流集会のご案内

 2010年秋、当時の菅首相が「TPPへの参加」を言い出してから4年、全国でTPP参加に反対する、あるいは慎重に、さらには国会決議を守れという運動が精力的に進められています。しかも、各界・各層の人たち、団体が共同して運動をすすめていることが大きな特徴です。政府に最終的な「妥協」・「合意」を許していない力になっています。

 この中で、交渉が秘密主義のゆえに先行きが見えにくいことも反映して、「これからの運動をどう進めるか」「各地の経験にも学びたい」という声が聞かれます。昨年の「これでいいのか?!TPP12.8大行動」、今年の「もうやめよう!TPP交渉3.30大行動」をよびかけた、大学教員の会、弁護士ネットワーク、主婦連などが中心になって、これらの声に応えて、全国的な交流集会を開催することにしました。

 オバマ大統領が主張しているように、この年末もまた、「合意」の目標にされ、大きな山場になろうとしています。「もうやめよう!TPP交渉」の声をさらに強めるために、ぜひたくさんの方々、団体のご参加をよびかけます。

【全体会会場の地図】
《日時》:
2014年9月27日(土)11~19時

《場所》:
東京御茶ノ水「明治大学リバティータワー 1022教室」ほか

《内容》:
 11時~12時30分 全体会での報告
   *「いま世界と日本の流れの中でのTPPの意義」
    鈴木宣弘さん(東京大学大学院教授 )
  *「TPP交渉はじめ通商交渉の現局面と国際的な対抗運動」
    内田聖子さん (アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長)
   *「各界・各層を結集した共同運動の実践報告」(要請中)          

 13時30分~16時 分科会
    ①「TPPやその先取りの動きへの対抗運動」
    ②「地域での共同運動を前進させるために」
    ③「秘密主義の克服、情報共有のために」
    ④「全国的な運動や国際連帯強化のために」
    をテーマに、各分科会でレポートを受け討論します。 
 *各分科会での活動紹介や今後の運動に関するレポートを募集します。

 16時~17時  全体会(分科会報告とまとめ)
【懇親会会場の地図】
17時20分~19時 懇親会(各地の美味しいものを持ち寄りましょう)
 (場所は「在日本韓国YMCA・アジア青少年センター」に移動)

《参加費》:
集会資料代500円
懇親会参加費3,000円

《主催》:
TPPをめぐる運動のこれからを考える全国交流集会実行委員会

《共同代表》:
 醍醐 聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会)
 中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク)
 山根香織(主婦連合会)

《事務局連絡先・申し込み先》:
※「申込書」をダウンロードし、必要事項を明記の上、以下の宛先へお送り下さい。
■申込書(wordファイル)
https://dl.dropboxusercontent.com/u/1521351/927moushikomi.doc

全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)
〒151-0053 
東京都渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3階
TEL 03-3372-6112 
FAX 03-3370-8329
Eメール:center※shokkenren.jp(※を@に)

2014年8月23日土曜日

TPP等の貿易協定発効前に 交渉参加国に対して法律変更を求める 米国の法的「承認手続き」に関するQ&A


TPP等の貿易協定発効前に
交渉参加国に対して法律変更を求める
米国の法的「承認手続き」に関するQ&A


Q&A ON THE US LEGAL REQUIREMENT FOR 'CERTIFICATION' OF
TRADE PARTNERS’ COMPLIANCE
BEFORE AN AGREEMENT LIKE THE TPPA GOES INTO EFFECT

Professor Jane Kelsey, Faculty of Law, The University of Auckland, New Zealand and
Sanya Reid Smith, Legal Adviser and Senior Researcher, Third World Network

2014年8月20日
STOP TPP!! 市民アクション

PDF版ダウンロード>
https://dl.dropboxusercontent.com/u/1521351/140821_Certification.pdf

* * *


日本語版翻訳にあたって

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に日本が参加してから丸1年が経った。
 日本が参加した後、ブルネイでの全体交渉会合(2013年8月以来開かれていない)や各分野別会合、首席交渉官会合などが重ねられ、またAPEC等の国際会合に合わせて閣僚級会合も持たれてきた。さらに各国は、二国間での交渉を並行して進めている。
 しかし、常に「年内妥結」という目標が掲げられるものの、交渉の実態は困難に満ちている。
 最大の論点といわれる日米の関税交渉、知的財産、環境、国有企業などの懸案分野の妥結の目処は立たず、2014年夏のカナダ・オタワでの交渉会合を経てもその行く末は見えていない。
 秘密交渉であるTPP交渉については、そもそも交渉テキスト(条文)は非公開であり、各参加国が交渉参加前に交わす「保秘契約」があるため、政府交渉官は自国のステークホルダーはもちろん、同じ政権与党の国会議員にすら交渉の詳細を明らかにできないことになっている。各国の市民社会、国民・住民に交渉の中身がほとんど知らされていないことはいうまでもない。

 そんな中、TPPに反対する国際NGOグループは、日常的には情報交換や行動戦略を練り、また交渉官会合・閣僚会合が行われる際には現地に赴き情報収集に努めている。日本の市民グループ「STOP TPP!!市民アクション」のメンバーも、その一員である。
 7月のオタワ会合を経た後、国際NGO主要メンバーより、米国内の貿易協定発効までの承認手続き(Certification)が実行されれば、米国以外の交渉参加国の国内法や政策の変更が強いられる危険性があるとして、広く周知を行う呼びかけがあった。
 すでに様々な自由貿易協定(FTA)にて「活用」されているこの承認手続きについては、各国の市民はもちろんのこと、法曹界、ジャーナリスト、国会議員の間でも十分に知られていない。しかし80年代以降に数々と結ばれてきたFTAとそれを認めるための承認手続きにおいて、米国がいかに強く他国の法律変更を要求し、自らの要求を実現してきたか。国際NGOメンバーによる本ペーパーは、その驚くべき実態を詳細にレポートしている。
 承認手続きによって、米国はそもそも協定文書に書かれていない内容についてまでも、相手国に法律変更を要求してきた。知的財産権、テレコミュニケーション、税関、農産品、紛争解決、外国企業のための措置、医薬製造承認におけるデータ保護期間の変更などじつに多岐にわたる分野である。
 いうまでもなく、TPP交渉においても米国はこの「承認手続き」を用いて、他の交渉参加国に対して国内法・制度・慣行の変更を要求するものと思われる。その際のターゲットの筆頭が、日本である、というのが本ペーパーの主旨でもある。そもそもTPP交渉以前から、米国は『貿易障壁報告書』等で日本の様々な法制や規制、慣行を「貿易の障壁だ」と列挙してきた。これら「壊すべき規制」は、TPP交渉と並行させられながら、仮に協定文に具体的な文言として盛り込まれていなかったとしても、この承認手続きのプロセスにおいて、強硬に「変更を強いられる」ことは間違いない。
TPP反対運動の関係者はもちろん、弁護士、国会議員、一般の人たちへ周知のため、ここに問題提起を行いたい。
 国際NGOグループは、すでに英文のウェブサイト(http://tppnocertification.org/)を立ち上げ、様々な文書を発信している。本ペーパーの日本語版についても、近日中に同ウェブサイトに掲載予定である。
 
STOP TPP!! 市民アクション
アジア太平洋資料センター(PARC) 内田聖子

* * *


【INDEX】
1.承認手続きとは何か?
2.承認手続きという制度はいつ、なぜ導入されたのか?
3.なぜ承認手続きは、近年になってより長期間を要するようになっているのか?
4.承認手続きの法的権限は何か?
5.同様な法的義務がTPPAにも適用されることになるのか?
6.承認手続きは、ファスト・トラックとどう違うのか?
7.もし米国大統領がファスト・トラック権限を持っていても、なお議会はTPPA最終条文の変更ができるのか?
8.為替操作のような規則が、何らかの形でTPPに含まれることがあるのか?
9.議会メンバーは協定相手国と直接交渉できるのか?
10.もし大統領がファスト・トラックを賦与され、さらに議会がTPPを承認したら、承認手続きは自動的に達成されたことになるのか?
11.もし大統領がファスト・トラック権限を有しない場合はどうなるか?
12.実際に承認手続きとはどのように動くのか?
13.このことは、米国が過去に結んだFTA相手国にとって実際的に何を意味したのか?
14.米国政府担当官達が協定参加他国の法案作成に関わるというのは本当か?
15.米国企業がこの承認手続きプロセスで果たす役割は何か?
16.米国市民社会もまた、承認手続きプロセスに影響力を行使できるのか?
17.米国政府による他の協定諸国の諸法案作成に対する介入は公になるのか?
18.承認手続きにはどれくらいの時間をかけることができるのか?
19.承認手続きは正式な法制度にだけ適用されるのか?
20.協定の条文が曖昧で解釈の余地がある場合はどうなるのか?
21.協定内容を国内法制に反映させる仕組みが異なる場合、承認手続きはそれに対処できるのか?
22.協定内容を上回るような要求を米国はおこなっているか?
23.米国の主張を裏づけるエビデンス(証拠)は別途必要なのか?
24.そのような合意がなされた際に交渉に参加していなかった国の扱いは?
25.TPPの参加協議での合意事項を米国は利用できるか?
26.米国とのTPP並行交渉の設置は参加承認の条件となっているか?
27.米国の要求を拒んだらどうなるか?
28.米国が要求する法制度の変更を拒んだらどうなるか?
29.米国のFTAは相手国の民主的プロセスにどのような影響を及ぼしてきたか?
30.米国を相手に再交渉をおこなうことは可能か?
31.承認手続きは米国の干渉に対する国内の反発を引き起こさないのか?
32.TPPのような複数国間協定でも個別の承認となるのか?
33.原産地規則は非承認国をどのように扱うのか?
34.承認手続きの過程で米国はTPPでの約束事項を変更することができるのか?
35.他の交渉参加国は、自国の承認手続きを米国に要求できるのか?
36.どのような法律が承認手続きで狙われてきたのか?

* * *


1.承認手続きとは何か?
米国大統領は、自由貿易協定(FTA)の合意相手国が協定を遵守するのに必要となる国内諸法や諸政策を、米国側の期待を満足させるものに変更していると米国政府が承認するまで、自国の国内承認プロセスを完了したという相手国への公式通知を保留する。
このことが意味するところは、仮に米国議会が環太平洋連携協定(TPP)を承認し、さらに他の締結国が独自の国内承認過程を完了したとしてもなお、米国政府が「他国が協定内容を実施した」と承認しない限り、また承認するまでTPPは発効しないということである。
 この承認プロセスは、米国政府に対してすでに交渉を通じて達した合意を書き換えさせる「テコ」を与え、また協定が署名された後にさらに追加的な譲歩を確実に獲得させることになる可能性を持つ。

2.承認手続きという制度はいつ、なぜ導入されたのか?
「承認手続き」という条文は、米国議会が関税や輸入割当量を超えて拡大された諸内容を含む「通商」協定を承認するようになって以来、アメリカの通商協定実施法に含まれるようになった。それが最初に適用されたのは1988年のカナダ・アメリカ自由貿易協定(CUFTA)であり、次いで1993年の北米自由貿易協定(FTA)であった(註1)。承認手続き規定の条文は、その後ほとんど同じ形で維持されてきた。その重大な含意にも関わらず、米国のこの承認手続きは、その犠牲者となった諸国を除けば、良く知られていない。

3.なぜ承認手続きは、近年になってより長期間を要するようになっているのか?
チリ政府は、米国-チリFTAにおける知的財産権について、米国側がチリの義務だと考える事柄を遵守するために、米国からの圧力に直面した。チリ政府は米国とのFTAが効力を発揮した後にそのような変更を行なうことを拒否した。また米国からは、オーストラリアが医薬品と知的財産権に関する米豪FTAの諸義務を、オーストラリアが果たしていないという懸念が報告された(註2)。それ以来、企業があからさまに要求した諸変更をさせることにより多くの焦点があてられるようになっており、そのため以下に論じるような長期間の遅延が生じるようになったのである。

4.承認手続きの法的権限は何か?
承認手続きは、米国大統領に対して法的拘束力を持った義務である。それは過去26年間に米国が締結した各FTA実施のために議会を通過した法律に含まれている。最近の例として米韓FTAの実施法があるが、そこでは以下のように明言している。
協定発効のための諸条件:本協定が発効する期日に効力を発揮する本協定の諸条項を遵守するために必要な諸手段を韓国政府が措置したと米国大統領が判断した時にはじめて、2012年1月1日ないしそれ以降に、米国大統領は韓国政府との間で本協定が米国に関して発効する旨を記載した覚書を交換する権限を与えられる(註3)。

5.同様な法的義務がTPPにも適用されることになるのか?
同様の一方的な承認手続き義務が、TPPにも適用される可能性がある。実際、承認手続き義務が達成されているかどうについてUSTRが議会と協議するための新たで追加的な諸義務が、大統領にファスト・トラック権限を与えるための議会提出法案に含まれている。2014年1月にTPPのためのファスト・トラックを賦与すべく提案された「2014年超党派通商優先事項法(キャンプ・ボーカス法案の名でも知られている)」は,第4項(a)(2)として,以下の条文を含んでいる。
発効する前の協議:通商協定を発効するための覚書を交換する前に、USTRは密接かつ時宜を得た形でパラグラフ(1)に特定した議会および同委員会メンバーと協議を行ない、協定相手国が当該協定が発効する期日に当該協定の諸条文を遵守するために効力を発する措置を全面的に通知し続けること。

6.承認手続きは、ファスト・トラック(TPA)とどう違うのか?
承認手続きは、ファスト・トラック(つまり貿易促進権限:TPA)とは別のプロセスである。ファスト・トラックとは、議会が米国大統領に対して、議会での採択前にある協定の交渉・署名・および加入の権限を与え、その上で議会が当該FTAを一括承認するか否決するかを90日以内に投票することを保証するものである。ファスト・トラックは協定についていかなる修正も許さないだけでなく、協定について議会が審議する時間をも制限し、それらによって迅速な通過を確実にしようとするものである(註4)。

7.もし大統領がファスト・トラック権限を持っていても、議会はTPP最終条文の変更ができるのか?
大統領にファスト・トラックが賦与されていても、議会の多数派はTPPに変更を加えることができると主張している。実際彼らはそうしてきた。例えば2007年にジョージ・W・ブッシュ大統領が署名した米韓FTAが一例である。2011年に大統領が署名した同協定が議会を通過しないことが明白になると、バラク・オバマ大統領は自動車と農産物の貿易に関する追加的な譲歩を韓国に要求した(註5)。もし韓国がそれに同意していなければ、韓国は承認手続きの前提条件として「変更を行なうように」という新たな圧力を受けていただろう。

8.為替操作のような規則が、何らかの形でTPPに含まれることがあるのか?
TPPがすべての協定国に普遍的に適用される、いわゆる為替操作に対する規則を含まないで署名された場合、米国政府が署名後に追加的な要求としてそれを求める可能性はある。韓米FTA署名の4年後に起きた事態のように、米国政府担当官達が「追加的な譲歩なしには署名された協定を議会で通過させることができない」と表明することになるだろう。米国政府が定義した追加的な規則が、新たな条文を付与する附属合意書をつうじて追加され、TPPAの中核条文に一体化され、その附属合意書の実効化に伴って完全な強制力を持つことが可能となる。

9.議会メンバーは協定相手国と直接に交渉できるのか?
公式には、行政府が外国政府との交渉において米国国家を代表する。しかし実際には、議会メンバーは、自分達がFTA実施法案を支持する条件としてさらなる譲歩を外国政府に対して直接に要求するという行動に関与してきた。
例えば、当時のブッシュ大統領が対ペルーFTAに署名してから何年も経ってから、議会下院歳入委員会は同大統領に労働および環境分野に新たな条文を追加するよう圧力をかけた。同時にペルー政府に対して、労働、森林、およびその他の法律や措置について、彼らが同FTAを遵守するために必要だと考える内容を指定して要求する文書を提出したのだ。ペルー政府は明らかにそれらに応じる態度を見せ、変更のいくつかを実際に措置した。このようにしてFTAは議会を通過したのだった。しかし歳入委員会メンバーはなお、彼らの要求リストすべてが達成されない限り、ブッシュ大統領が承認手続きをすべきではないと主張したのである。
ブッシュ大統領は、医薬品ロビイ団体が承認手続きの条件として要求していた知的財産権について、ペルー政府が変更をしたことを強調したが、最終的に歳入委員会が承認手続き前に実行されるべきだとした労働、環境・森林に関する変更リストすべてを要求することはしなかった。その結果、今では今後の通商権限には、協定が発効となる前にいっそう強力な承認手続き諸義務を含むことについての超党派による賛同が存在している。

10.もし大統領がファスト・トラックを賦与され、さらに議会がTPPを承認したら、承認手続きは自動的に達成されたことになるのか?
そうではない。協定が議会を通過した後でさえ、協定相手諸国が米国が考える協定遵守を満たしたと米国が承認しない限り、協定は発効しない。承認手続きは、米国議会と米国産業界に対して、協定が署名され承認された後でさえ、協定相手諸国に対して追加的な譲歩を実現させるための追加的な「テコ」を賦与するものなのである。

11.もし大統領がファスト・トラック権限を持たない場合はどうなるか?
オバマ大統領は現在、ファスト・トラックを有していない。実際、過去20年間で議会がこの特別な権限を大統領に付与したのは2002~2007年の計5年間に過ぎない。ファスト・トラックがない場合、通常の議会投票手続きが適用される。第一に、下院と上院の該当委員会がTPP実施法案に修正提案をすることができ、協定条文に追加的な内容を盛り込ませたり、米国政府が行なった譲歩を取り除かせたりすることを、実施法案成立の条件にすることになる。あるいはまた該当委員会は、署名された協定そのものを単純に否決ないし承認するかもしれないが、その場合、当該協定は米国については実施される法的強制力を持たないことになってしまうことを意味する。
次いで上院本会議での審議について言えば、単純に、審議を終えたら承認のために100名の上院議員のうち60人の圧倒的多数の賛成が必要となる。もしこのハードルがクリアされたら、どの上院議員も本会議で修正を提案できる。下院では、議事運営員会がいくつの修正提案を本会議で審議することを許容するかを決定する。

12.実際に承認手続きとはどのように動くのか?
米国政府担当官達が協定が発効することを許容する前に、米国政府が協定相手諸国に対して、米国政府が要求する各国国内諸法および諸政策変更リストを伝達する。それから米国政府担当官達はそれらが遵守されているかを監視し、米国の目からして変更すべき内容を満たすまで、相手国政府に対してその国内諸法や諸政策を変えるよう圧力をかける。USTRは2009年に次のように表明している。「USTRは,FTAへの遵守が達成されるまで,遵守に関する承認をしないという我が国の法的義務を非常に良く認識している」と(註6)。

13.このことは、米国が過去に結んだFTA相手国にとって実際的に何を意味したのか?
米国政府が他国に対して、各国で提案されている実施法案すべてを報告するよう要求し、それを米国が精査しコメントできるようにするという、共通したパターンがある。それに続いて、それら実施法案について米国政府との何ヶ月もの交渉が行なわれる。この交渉会合は当該国および米国の両方で行なわれる。
報告された多くの事例がある。エルサルバドルは少なくとも3回の交渉を持たされた(うち2回は米国にて)。高官レベルの政府代表団、さらに農業および経済大臣までもが、そもそも中米FTA条文には含まれていなかった米国の畜肉・家禽検査を受け入れろという要求への交渉のために派遣された(後述)(註7)。
米国政府は、コスタリカの7つの法律について条文を承認したが、それはコスタリカ自身がそれらを採択するより前のことだった。それらの法律とは、外国企業のための知的財産権、著作権、電気通信、税関手続き、農業、刑事訴訟手続き、および流通システム作りに関連するものだった。米国政府は,それら法案の最終版に何ら変更がないことを確証するために、検閲していたのである(註8)。
ニカラグアは中米FTAを実施するために成立させた法律を、なんとニカラグア大統領が署名する前に米国政府に検閲のために送っていた。米国政府は、ニカラグアがすべての実施プロセスを完遂するのを確実に保障するために、同法を公開するよう要求したのだった。米国政府は、あからさまに法案の中の数々の運用諸措置を明確化させようとした(註9)。
パナマ政府の担当官達は、USTRと「密接に作業している」と述べていた(註10)。
ドミニカ共和国の中米FTA承認手続きをめぐって、米国政府は同国の7つの中米FTA実施法の条文を事前承認し、さらに承認手続きに達する以前にいかなる変更もなされていないことを確証するために最終法を検閲していた(註11)。
グアテマラは2006年5月下旬に中米FTAを発効させるための法律を成立させたが、それはUSTRとの密接な協議を経てのことであり、しかしなお法律が米国政府の諸条件に合致しているかをUSTRが確認するために数ヶ月も待たされたのだった(註12)。

14.米国政府担当官達が協定参加他国の法案作成に関わるというのは本当か?
このことを文書で示している最もよい事例は、ペルーのケースである。2008年にUSTR代表代行がペルーに向かい、米国政府が要求していた「35の新たな法案をペルー政府が仕上げるのを支援した」ことが報じられた。おまけに、2チームの米国政府法律顧問がペルー政府が環境およびビジネス法案を作成するのを支援したのである(註13)。報告によれば、この35の法律には医薬品のデータ保護、投資家紛争処理、先住民族の土地所有権および教育システムへの変更が含まれていた(註14)。
米国情報自由法によって公開された諸文書が、さらに詳細な内容を提供している(註15)。付録Aの文書は、USTRスタッフ、リマの米国大使館スタッフ、その他の米国政府担当官、およびペルー政府担当官の間で2008年と2009年の期間、すなわち米国・ペルーFTAにおいて、ペルーが米国政府の期待を満たすために自国の諸法律や諸規制を変更するよう要求されていた時期に交わされたコミュニケーションからの抜粋である。
これらの変更は、ペルーが同FTAを2009年2月1日に発効させる前提条件として義務づけられた事項を達成したとする、米国政府の一方的承認を得るために行なわれたものである。
それらコミュニケーションのほとんどが、特にFTAの要求についてのUSTRの解釈をペルーが遵守するために採用された論争的な法令、すなわちペルー森林・野生動物法LD1090をめぐるものだった。それらは特に表記がない限りUSTR内部でのコミュニケーションである。

15.米国企業がこの承認手続きプロセスで果たす役割は何か?
報道によれば、米国の法律がFTAを承認する場合に求める詳細に加えて、米国企業の利害が承認手続きプロセスでの米国政府の要求の背景になっていることを示している。これら米国企業の利害には、米国のコメや豚肉産業(註16)、全米繊維産業団体評議会(註17)、シェブロン(訳注:巨大石油企業)(註18)、アルコール産業(註19)、国際知的財産同盟(註20)、米国研究製薬工業協会(註21)、そして全米肉牛生産者協会,全米豚肉生産者評議会,家禽肉輸出業者が含まれる(註22)。

16.米国市民社会も承認手続きプロセスに影響力を行使できるのか?
米国の諸労働組合は、米国政府担当官が対ペルーFTAを遵守するために必要と考えていた以上に、ペルーの労働諸法の追加的な変更を追求していた。労働組合と環境保護NGO組織の双方が、彼らが解釈するところの同FTAに合致するための諸法律が変更されない限り承認手続きに反対するという議論をしていた(註23)。
オバマ大統領は、コロンビア政府が合意された労働アクションプランを完全に実施していないにも関わらず、米国とのFTA遵守を承認してしまった。これが、民主党議員達が共和党議員達と同様に、彼らがTPPを遵守していると見なすことを確実に保障するために承認手続きを利用すると判断した理由の一つである。

17.米国政府による他の協定諸国の諸法案作成に対する介入は公になるのか?
公式の記録を見いだすのは困難である。利用可能な情報のほとんどは報道メディア、主要にはInside US Trade誌で提供されるものである。同誌は米国の業界の視点、米国あるいは米国の標的になっている国の政府担当官や政治家達のコメントを報道している。
米国政府と他のTPP協定参加国政府の間のコミュニケーションもまた、協定が発効してから4年後までは背景文書類の公表が妨げられるという同交渉の秘密条項の対象になってしまう可能性がある。この秘密条項が適用される文書類の分類もまた秘密であるがゆえに、何らかの確定的なことを述べるのは不可能なのだ。
いくつかのTPP交渉諸国内では、各国政府間のコミュニケーションは厳格な保秘義務に従うことになり、情報の自由法による公開対象にすらならないとされている。したがって他のTPPA交渉国の一般公衆はもとより国会議員にとってさえ、米国が各国の諸法律や諸政策の立案に関与していたり関与したことがあること、あるいはどのような異なる解釈が提案されたか、また自分達の政府が妥協したのかどうかについて知ることが不可能になるかもしれないのである。

18.承認手続きにはどれくらいの時間をかけることができるのか?
表Aに示すように、各国が批准のために必要な手続きをおこなってから、何年も後まで承認手続きを先延ばしにすることが可能である。米・パナマFTAの場合、パナマの議会承認は2007年であるが、米国議会の最終的な承認までには4年以上かかった。さらに、米国は(協定の発効に必要な)正式な通知をもう1年保留した。特許、著作権、金融サービス、電気通信、政府調達、税関手続き、貿易救済などの面で、パナマの法制度の変更が、米国を満足させるものではなかったのがその理由である。
つまり、米国のFTA実施法案が作成される過程では、この承認手続きにより協定の発効が無期限で保留される可能性がある。(TPPとのかかわりで)ベトナム、ブルネイなどの国々にこのような扱いを求める書簡が、2014年5月に米国の超党派の議員154名によって提出された。書簡は、以下のようにTPPの労働分野での義務化を問題にしている。
米国政府は、著しく不適切な労働基準を断じて認めてはならず、これらの国々が自国の労働法制の変更を受け入れ、その実施に向けて積極的な行動をとるまでは、協定の履行を保留すべきである(註24)。

表A                
FTA相手国    相手国の
議会承認など    米国の
実施法案成立    協定発効    遅延期間
エルサルバドル    2004年12月17日    2005年7月28日    2006年3月1日    7ヶ月
ホンジュラス    2005年3月3日    2005年7月28日    2006年4月1日    8ヶ月
ニカラグア    2005年10月9日    2005年7月28日    2006年4月1日    6ヶ月
グアテマラ    2005年3月10日    2005年7月28日    2006年7月1日    11ヶ月
ドミニカ共和国    2005年9月6日    2005年7月28日    2007年3月1日    18ヶ月
コスタリカ    2007年10月7日    2005年7月28日    2009年1月1日    15ヶ月
ペルー    2006年6月28日    2007年11月4日    2009年2月1日    14ヶ月
パナマ    2007年7月11日    2011年10月12日    2012年10月31日    12ヶ月
韓国    2011年11月22日    2011年10月12日    2012年3月15日    3ヶ月
注:1)コスタリカの承認日は国民投票がおこなわれた日付である。   
  2)遅延期間は相手国または米国の後の方の承認日と発効日から計算している。
  3)米韓FTAは2007年6月30日に署名したが、米国議会の主張により、自動車の追加的な市場アクセスで再交渉がおこなわれた。米国議会は、ファスト・トラックがあったにもかかわらず、FTA実施法案を承認する条件として再交渉を要求した(註25)。


19.承認手続きは正式な法制度にだけ適用されるのか?
否である。もっと広範囲の措置に適用される。これまでに知られているものを挙げれば、規制措置(註26)、制度・規制上の取り決め事項(註27)、国際協定(註28)、政令(註29)も対象になっている。

20.協定の条文が曖昧で解釈の余地がある場合はどうなるのか?
FTA協定の条文は、難航した問題であればあるほど、曖昧で不明瞭な妥協の産物となっており、各国が好ましいように解釈する余地が残されている。だからこそ、加盟国はFTAの条文に同意しているのである。米国は、そのような条文の解釈の仕方は有効だと主張している。

21.協定内容を国内法制に反映させる仕組みが異なる場合、承認手続きはそれに対処できるのか?
ひじょうに難しい。2006年に下院歳入委員会の民主党筆頭理事だったチャールズ・ランゲル議員は、CAFTAの実施が遅れた事情を次のように述べている。
CAFTAの実施が遅れたのは、USTRと中米諸国の間で、法解釈に根本的な相違があったことも要因である。FTAの署名国は、知的財産や農産品の市場アクセスといったすべての事項について、協定の内容を反映させて国内法制を変更しなければならない、とUSTRは主張した。逆に、中米諸国は自国の立法体系の下で、FTAが国内法制よりも上位にあるとはいえない、と反論したのである。(註30)
その結果、USTRは問題に応じて対処の仕方を変えた。知的財産分野ではCAFTAに参加する中米諸国に国内法制の変更を求めたものの、国際労働協定の遵守については、それを国内法制に導入するだけで十分である、とした(註31)。

22.協定内容を上回るような要求を米国はおこなっているか?
確かにおこなっている。協定本文に書かれていないことであっても、相手国が合意したと米国が考えているものは臆せず要求している。
CAFTAの場合、米国の食品製造施設の検査基準に同意するよう、中米諸国に要求している。そのことは協定本文には書かれていなかったが、USTRによれば合意事項であり、協定の発効前にこの米国基準に同意する必要があることをこれら中米諸国も認識していた、と主張していた。CAFTAの経験から引き出される教訓は、加盟国はもっと明瞭なかたちで、文書でそれをおこなうことを含めて、実施約束をすべきだと指摘する者もいる(註32)。
民主党議員で、上院財政委員会のチャールズ・グラッスリー委員長の認識も同じである。協定本文に記載はないが、中米諸国は協定の実施に先立って「同等の措置」(米国の食品製造施設の検査基準に同意すること)を受け入れなければならないことを認識していた、と言う。グラッスリー議員は、この問題が対処されるまでCAFTAの実施を急ぐ必要はない、とも述べている(註33)。
 過去にも、協定本文に含まれていないが、単なる「口約束」ではないとUSTRが主張する譲歩を獲得するために、米国は協定の承認を拒んだことがある。このような「荒っぽい交渉」のひとつの例として、グアテマラが医薬品に3年間のデータ保護を措置したことが挙げられる。これもCAFTAの本文にはなかったことである(註34)。

23.米国の主張を裏づけるエビデンス(証拠)は別途必要なのか?
米国は、協定本文の内容をはみだすような口頭の合意事項が存在していることを主張するわけだが、それを裏づけるようなエビデンス(証拠)が必要であるとは思っていないようだ。これまでも、米国の政府関係者は合意事項の存在を一方的に断定してきた。例えば、CAFTAをめぐっては、ファスト・トラック法が規定しているFTAの利害にかかわる米国の声明を、グラッスリー議員が引き合いに出したことがある。そこではこう書かれていた。
2005年6月にCAFTAの実施法案が上程された際、加盟国による「同等性」の判断は差し迫ったものであった。したがって、議会によるCAFTAの承認も、米国の食肉検査システムの「同等性」を加盟国が認めるだろうという見込みに基づいたものであった。(註35)

24.そのような合意がなされた際に交渉に参加していなかった国の扱いは?
TPPのように後から追加的な参加国が生まれている場合、このような米国の振る舞いはそうした参加国にとって問題となる。後から参加した国は、それまでに合意した事項をすべて受け入れることが求められているようだ。しかしこうした国々は、合意事項をめぐってどのような議論がおこなわれたのかを知らない。議事録があったとしても、それがどの程度詳細なものなのか、そして準備作業にかかわる正式な記録があるのかどうかは不明瞭である。もしそうしたものがあったとしても、米国は口頭の合意事項の存在を理由に、多くの対応を迫ってくるのである。

25.TPPの参加協議での合意事項を米国は利用できるか?
TPP交渉の参加条件として、後からの参加国は協議のプロセスを経る必要がある。そのプロセスで取り上げられるのは、TPPで十分な対処できそうにないと米国が考える事項、相手国の実施に曖昧性のある事項、米国が考えるようには相手国が十分な変更をおこなってこなかった事項などである。具体的には、食品の安全基準、自動車の排ガス基準、国有企業改革を含む競争法に関連した事項、電気通信規制などである。

26.米国とのTPP並行交渉の設置は参加承認の条件となっているか?
まさにそうなっている。CAFTAの場合、SPS分野で米国の食品検査制度の「同等性」を認めることは、協定に含まれていなかった。このことは、SPS分野の並行交渉で取り上げられたのである(註36)。
TPPでは、日本がこの面で深刻な問題を抱えている。並行交渉の設置は、米国が日本のTPP交渉参加を承認するための条件だったが、未だに日米間で大きな隔たりがある。そこで取り上げられているのは、日本の農産品重要5品目と自動車の非関税措置、食品の安全基準、 知財、国有企業(特に日本郵政)、投資、国内規制などである。

27.米国の要求を拒んだらどうなるか?
すべての交渉参加国は自国の法制度を決定する主権と、それを解釈する権限を有している。もしも米国がFTAの承認を拒んだなら、相手国は関税引き下げのようなメリットを米国から享受できなくなるだろう。
しかしながらTPPの場合、事態はもっと複雑である。もしも米国以外の国々の間でTPPが発効したとしても、知財分野のジェネリック医薬品に関するルールや国有企業の規律を各国は遵守しなければならない。米国がTPPの承認を拒んだらなら、米国という最も魅力的な市場は失われることになるが、その時でも米国以外の国々の間ではTPPは発効し、国内法制の変更が義務づけられることになるだろう。それは各国における新法として有効なものとなり、米国は何らの譲歩をおこなうことなく、その利益を獲得することができるのである。

28.米国が要求する法制度の変更を拒んだらどうなるか?
その場合、米国大統領が協定の承認を拒否することになり、TPPは発効しないだろう。

29.米国のFTAは相手国の民主的プロセスにどのような影響を及ぼしてきたか?
ペルーの場合、議会の承認がなくとも法律を制定する権限が、特例措置によって大統領に180日間与えられた(註37)。2008年7月4日の時点で、98もの法律がこの特例措置により成立していた(註38)。ペルー政府は、米ペルーFTAとは無関係の法改正でもこの権限を用いたと非難された。
パナマも行政上の権限を用いて多くの措置を実施している(註39)。

30.米国を相手に再交渉をおこなうことは可能か?
米国は再交渉を受け入れなければならず、貿易促進権限法が成立した場合であっても追加交渉が認められることになるだろう。米国が追加交渉に同意すれば、相手国は交渉による変更の代償として、いっそうの譲歩をせざるを得なくなるだろう。このことは、米国に新たな要求をおこなう余地を与えることになる。ただし、重大な変更があれば新たな議会の議決が必要だろう。
新たな譲歩の内容次第であるが、その国との協定が発効していない国々も、そこから利益を引き出そうと画策するだろう。

31.承認手続きは米国の干渉に対する国内の反発を引き起こさないのか?
承認手続きに伴う諸問題は、その国の政府が対処すべき国内問題として扱われる。ペルーの例を挙げれば、大統領が議会を無視して法制定をおこなう権限をもつことに抗議するべく、野党勢力と市民社会組織が全国規模のストライキを呼びかけた。先住民達も、鉱山開発と森林破壊に対する彼らの関与を薄れさせるような土地法制に抗議した。労働組合の反対行動も、中小企業法制の変更が労働者の権利を奪うことに向けられた(註40)。
ペルーは米国とのFTAに従い、アマゾン流域での石油・ガス開発と森林伐採に関連した投資措置を成立させた。2009年6月5日、ペルーの治安部隊は抗議行動をおこなっていたアワジュン族とワンビス族に対する武力行使をおこなった。そこには女性や子供も含まれていた。後に「バグア虐殺」と呼ばれるようになったこの衝突で、30人以上の人命が失われた(註41)。彼らは、大統領に与えられた法制定の特権の取消を求めて道路を封鎖していた。この虐殺の4日前に交わされた米国の外交公電を、ウィキリークスが暴露している。それによれば、ペルー政府が「寛大」な態度をとっていることを米国は問題視し、先住民の要求に屈することはFTAに「影響」を与えることになる、と警告を発していた。
コスタリカでは、生物多様性に影響を及ぼす知財ルールの制定を違憲とする判決を、最高裁が下した。このルールは先住民との協議を一切おこなわずに制定され、(先住民の権利を規定した)ILO第169号条約に違反している。しかし、この判決は軽視され、制定を押し止めることはできなかった(註42)。最高裁には再審理が要請され、最終的には合憲との判断を下したのである(註43)。
グアテマラでも、ジェネリック医薬品産業が知財法制に異議を唱えた(註44)。

32.TPPのような複数国間協定でも個別の承認となるのか?
前掲表に示したように、米国は相手国によって異なる時点でCAFTAを承認している。そのことは、米国の要求に従う相手国の意思次第である。TPPでも同じことになるだろう。

33.原産地規則は非承認国をどのように扱うのか?
この問題が生じたのはCAFTAである。すでに協定を実施していた国は、繊維製品で「累積」ルールを利用しようとしたが、まだ米国が承認していない国をそこに含めることはできなかった(註45)。CAFTAの中米諸国は、期待していた利益にあずかることなく、協定の実施を余儀なくされた。米国が承認を留保していた国があったからである。

34.承認手続きの過程で米国はTPPでの約束事項を変更することができるのか?
承認手続きというよりも、議会での承認手続きとのかかわりで、このような変更がなされる場合が多い。CAFTAの例を挙げれば、下院がCAFTAを承認しそうにないことが明らかになった時点で、USTRは原産地規則の変更を求めた。その目的は、衣料品のポケット部分で第三国の布地を使用することを排除するためだった。このことは、米国の繊維の業界団体が強く要望していたことでもあった。
CAFTAでは、原産地規則を変更する際には、全加盟国の承認を必要としていた。USTRは個別にこの交渉をおこなった。グアテマラは同意したものの、それと引き換えに米国から交換条件を引き出すことは困難を極めた(註46)。ドミニカ共和国もこれに合意したが、ドミニカに与えられた交換条件は他国に比べて乏しいものとなった。ドミニカとの間では、ズボンとスーツの製造にかかわる追加的な譲歩が、後日与えられるという了解が交わされたに留まった。これによっても、その困難性がうかがえる(註47)。

35.他の交渉参加国は、自国の承認手続きを米国に要求できるのか?
技術的には、他のTPP参加国は、米国に対して抵抗することによって、TPPが効力を持つことを拒絶できる。まず、実際にそれは政治的な影響力を持つ主要国になるだろう(とりわけ日本だろう)。日本にとってでさえ、米国はTPPを通じてアクセスしたい主要な市場である。
米国議会の議論に拘束されているために米国が何の譲歩もしないであろうことは、信じられないことのように見える。相互の承認手続きの結果は、米国以外の国による孤立や後退を意味することになるだろう。TPPのいくつかの内容は、米国の現行法に従うように計画されているということが事実であることを示すことができる。

36.どのような法律が承認手続きで狙われてきたのか?
コメと豚肉に関する輸入承認(グアテマラ、エルサルバドル):米国のコメ・豚肉産業は、グアテマラ、エルサルバドルにおける従来の輸入業者から、輸入承認を取り上げることを要求した。これは、関税割当制度を使って潜在的な購入量を最大にしようという目的のもと、大手業者に直接販売するための輸入承認や権限を割り当てる新たな法律を求める内容であった(註48)。

食用肉の承認を米国のものと同等にすること(グアテマラ、エルサルバドル):米国は、食用肉の輸送の際に、米国にて検疫・承認されたものを明確に受け入れるよう主張した(註49)。これはSPS(衛生植物検疫措置)の章に明記されていなかった。政府担当者は、この要求は「エルサルバドルにとっては、政治的な問題を持ち出されたということである。なぜなら、米国は意のままに新たな特権を要求しているからだ」と述べたといわれている(註50)。USTRは、この要求はCAFTAの内容にはないことは認識していたが、「参加調印した国々はこの内容を守ると約束した」と述べている(註51)。
この要求は、とても簡単には認められない内容だったために、エルサルバドル大統領は他国すべての大統領に対して、SPS問題を議論する会議を呼びかけ、またすべての国の経済産業大臣とのフォローアップ会議も呼びかけた(註52)。結局、エルサルバドルは食用肉と乳製品に関して、米国の食の安全と検査システムに準じることに合意をし、その結果、米国の食用肉と乳製品に必要とされている検査を行なわないことになった(註53)。米国は同様の要求を、ペルーとのFTAに署名する際の条件として提示し、そのことが農業分野の章が発表される際の論争点の一つとなった(註54)。
米国は、米国の基準に適合しないという理由から、その基準に達していない協定参加国からの食肉の輸出に関する相互的な承認を提案しなかった(註55)。

データ保護の期間延長(グアテマラ):CAFTAは5年間のデータ保護を規定している。米国は、たとえ特許がないすでに存在する医薬品であっても、新たな使用がなされた臨床試験データに対してさらに3年間の独占権を付与するように要求した。このことは、仮に特許がなくても、その医薬品が新たに使用される際の独占期間中は、ジェネリック薬品の販売を事実上阻止するものである(註56)。米国はCAFTA交渉中にこれを提案したが、中央アメリカ諸国の交渉官から激しい抵抗にあったために、提案は拒絶された(註57)。それにもかかわらず、グアテマラはこの3年間の独占権を付与することを要求された(註58)。

より多くの医薬品にデータ保護が適用(ドミニカ共和国):CAFTAの条文に書かれていないにもかかわらず、米国はドミニカ共和国に対して「承認手続き」の間、ほとんどすべてが古い成分である医薬品に対してでさえデータ保護を認めるように圧力をかけた。ドミニカ共和国は、これに同意した(註59)。

企業のデータ保護がより簡単に可能に(グアテマラ):「承認手続き」の中で、米国はグアテマラに対して、大手の有名製薬メーカーが販売承認登録できた際に、いかなる期間の制限もしないようにすること、またそのメーカーがデータ保護の恩恵を受けられるようにすることを求めた(註60)。これは、グアテマラにてより多くの医薬品のデータ保護が独占され、グアテマラ国民が新薬を手にするまで長い期間待たなくてはいけないという結果をもたらしている。

特許の共通承認(グアテマラ):「承認手続き」の中で、米国はグアテマラに対し、グアテマラで特許の申請がなされなくても、米国や他国において特許分野での自動的な承認が可能になるよう圧力をかけた。これはCAFTAの条文で求められている内容でなかったにもかかわらずである(註61)。この変更は、知的所有権に関する法律の中で適用可能である重要なセーフガードを取り除くことにつながる。つまり、何を特許として認めるべきか、そしてその基準を高いものに設定するというその国独自の基準をなくすということを意味している(註62)。

特許の二次使用(グアテマラ):「承認手続き」の中で、米国はグアテマラに、古い医薬品における新たな使用と、既存の化学製品に対して、特許を適用させるように圧力をかけた。
それはCAFTAの条文で求められている内容でなかったにもかかわらず、である(註63)。国連「健康に対する権利」特別報告では、この「エバーグリーン戦略」(訳注:特許を有する企業が実質的に該当医薬品に対する特許権の保護期間を延長し市場を独占できる方法)や、医薬品に関するその他の知的所有権の保護のさらなる強化に対して警鐘を鳴らしている(註64)。

燃料の輸送に関する契約(ドミニカ共和国):米国企業シェブロンは、ドミニカ共和国の2つの法律が、米国企業が燃料輸送サービスを提供することを妨げており、条約と不適合な国内規制などに関する不適合措置(NCM)が適用されていないとして、これら法律に異を唱えた(註65)。
ドミニカ共和国は、これら法律が中米自由貿易協定(CAFTA)に違反しているとは考えておらず、この法律は国家安全保障上、必要であると主張した(註66)。同国は、「米国に対して、この問題については柔軟になるよう求めた。特に、ドミニカ共和国はこれまで繰り返し米国から出されてきた、法律改正の要求に応じてきたからだ。それらは、CAFTAに適合させるための国内法の見直しが正式に終わった後でも行なわれてきたものだ」と語ったとされる。ドミニカ共和国政府がこれらの変更に抵抗し続けてきた理由の一つは、「ある問題が決着した直後に、新たな問題が生じるという、CAFTAの実施手続きに困憊した」からだと推測される(註67)。度重なる米国による圧力の下で、ドミニカ共和国は二つの法律を無効化することに合意した。その数日後、USTRは「ドミニカ共和国は、CAFTA発効に向けたすべての必要条件を満たした」と発表した(註68)。

【註】 ※註に関しては近日中に日本語への翻訳を行いウェブサイトに掲載予定である。

1.See eg the North American Free Trade Agreement Sec. 101(b) CONDITIONS FOR ENTRY INTO FORCE OF THE AGREEMENT — The President is authorized to exchange notes with the Government of Canada or Mexico providing for the entry into force, on or after January 1, 1994, of the Agreement for the United States with respect to such country at such time as— (1) the President—
(A) determines that such country has implemented the statutory changes necessary to bring that country into compliance with its obligations under the Agreement and has made provision to implement the Uniform Regulations provided for under article 511 of the Agreement regarding the interpretation, application, and administration of the rules of origin, and (B) transmits a report to the House of Representatives and the Senate setting forth the determination under subparagraph (A) and including, in the case of Mexico, a description of the specific measures taken by that country to— (i) bring its laws into conformity with the requirements of the Schedule of Mexico in Annex 1904.15 of the Agreement, and (ii) otherwise ensure the effective implementation of the binational panel review process under chapter 19 of the Agreement regarding final antidumping and countervailing duty determinations; and (2) the Government of such country exchanges notes with the United States providing for the entry into force of the North American Agreement on Environmental Cooperation and the North American Agreement on Labor Cooperation for that country and the United States. (H.R. 3450 (103rd), signed by the president December 8, 1993.) Similar language was included in the 1988 Canada-United States Free Trade Agreement Implementation Act Sec. 102(b).
2.USTR Increases Pressure on Guatemala to Drop Data Protection law, Inside US Trade, 14 January 2005
3.United States-Korea Free Trade Agreement Implementation Act, Section 101 (b) (H.R. 3080 (112th), signed by the President on 21 October 2011.
4.Third World Network, ‘The TPP and the US Congress – without Fast Track Authority’ 20 November 2013, http://www.twnside.org.sg/title2/FTAs/General/TPP&USCongress-withoutFastTrackAuthority_21%20Nov2013.doc
5.http://www.ustr.gov/trade-agreements/free-trade-agreements/korus-fta
6.‘Democrats Urge Caution on Implementing FTA After Peru Passes Legislation’, Inside US Trade, 16 January 2009
7.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006; ‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
8.‘Dominican Republic Moves Closer to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 1 December 2006
9.‘Honduras, Nicaragua May Implement CAFTA Next Month as Guatemala Lags’, Inside US Trade, 31 March 2006
10.‘Panama Moves Ahead With FTA Implementation As October Goal Nears’, Inside US Trade, 7 September 2012
11.‘Dominican Republic Moves Closer to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 1 December 2006
12.‘USTR Calls for Further Steps After Guatemala Approves CAFTA Bill’, Inside US Trade, 26 May 2006
13.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society over Labor, Investment’, Inside US Trade, 4 July 2008.
14.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society over Labor, Investment’, Inside US Trade, 4 July 2008.
15.Email communications between staff of the Office of the U.S. Trade Representative, the U.S. Embassy in Lima, other U.S. government officials, and officials of Peru’s Trade Ministry (MINCETUR), July 2008 – January 2009.  Obtained via U.S. Freedom of Information Act request, March 2010.
16.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
17.‘NCTO Steps Up Pressure For Legislation Implementing CAFTA Fixes’, Inside US Trade, 26 May 2006; ‘U.S., Dominican Republic Fail to Agree on New CAFTA Pocketing Concessions’, Inside US Trade, 2 February 2007
18.‘Dominican Republic Continues to Work For CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 12 January 2007
19.‘Dominican Republic Continues to Work For CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 12 January 2007
20.‘Industry Highlights CAFTA Implementation Problems in Costa Rica’, DR, Inside US Trade,16 February 2007
21.‘Industry Highlights CAFTA Implementation Problems in Costa Rica’, DR, Inside US Trade,16 February 2007
22.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006
23.‘Democrats Urge Caution on Implementing FTA After Peru Passes Legislation’, Inside US Trade, 16 January 2009
24.Letter to USTR Michael Froman from 153 House Democrats, 29 May 2014, http://democrats.edworkforce.house.gov/sites/democrats.edworkforce.house.gov/files/documents/5.29.14-TPPLettertoFroman.pdf
25.USTR, New Opportunities for U.S. Exporters Under the U.S.-Korea Trade Agreement,  http://www.ustr.gov/trade-agreements/free-trade-agreements/korus-fta
26.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society Over Labor, Environment’, Inside US Trade, 4 July 2008
27.‘USTR Calls for Further Steps After Guatemala Approves CAFTA Bill’, Inside US Trade, 26 May 2006
28.Panama was required by the US FTA to adopt the Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure of 1077, as amended in 1980s; the Patent Cooperation Treaty of 1970s, as amended in 1979; the Trademark Law Treaty of 1994; and the International Convention for the Protection of New Varieties of Plants of 1991. ‘Panama Touts Progress on IPR Treaties Ahead of Meeting with USTR’, Inside US Trade, 20 July 2012
29.‘Panama Moves Ahead With FTA Implementation As October Goal Nears’, Inside US Trade, 7 September 2012
30.‘USTR Announces Delay in CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 6 January 2006; see also Honduras, Nicaragua May Implement CAFTA Next Month as Guatemala Lags, Inside US Trade, 31 March 2006
31.‘USTR Announces Delay in CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 6 January 2006
32.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006
33.‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
34.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
35.‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
36.‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
37.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society Over Labor, Environment’, Inside US Trade, 4 July 2008
38.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society Over Labor, Environment’, Inside US Trade, 4 July 2008
39.‘Panama Moves Ahead With FTA Implementation As October Goal Nears’, Inside US Trade, 7 September 2012
40.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society Over Labor, Environment’, Inside US Trade, 4 July 2008
41.‘On the Fifth Anniversary of Peru FTA Bagua Massacre of Indigenous Protestors, State Department Cables Published on Wikileaks Reveal U.S. Role’, Amazon Watch/Public Citizen, 9 June 2014 http://www.citizen.org/documents/press-release-peru-bagua-massacre-amazon-watch.pdf
42.‘Costa Rican High Court Rules Against CAFTA Legislation’, Inside US Trade, 12 September 2008; ‘Costa Rica Pushes For Deadline Extension for CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 19 September 2008; ‘Costa Rica Gets Three More Months to Pass CAFTA Implementing Bill, Inside US Trade, 3 October 2008; ‘Costa Rican Court to Review CAFTA Bill Again; Deadline Looms’, Inside US Trade, 24 October 2008
43.‘Costa Rica Approves Final Bill to Implement CAFTA’, Inside US Trade, 14 November 2008
44.‘USTR Calls for Further Steps After Guatemala Approves CAFTA Bill’, Inside US Trade, 26 May 2006
45.‘U.S., Dominican Republic Fail to Agree on New CAFTA Pocketing Concessions’, Inside US Trade, 2 February 2007; ‘Honduras, Nicaragua May Implement CAFTA Next Month as Guatemala Lags’, Inside US Trade, 31 March 2006
46.‘USTR Calls for Further Steps After Guatemala Approves CAFTA Bill’, Inside US Trade, 26 May 2006; US, Guatemala move closer, 30 June 2006
47.‘U.S., Dominican Republic Fail to Agree on New CAFTA Pocketing Concessions’, Inside US Trade, 2 February 2007; ‘U.S. Says Dominican Republic Fuel Resolution Violates CAFTA’, Inside US Trade, 16 February 2007
48.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006; ‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
49.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
50.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006
51.‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
52.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006; ‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
53.USTR, National Trade Estimates Report, 2007, 193 http://www.ustr.gov/archive/assets/Document_Library/Reports_Publications/2007/2007_NTE_Report/asset_upload_file13_10942.pdf
54.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006
55.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006
56.For example aspirin was used as a painkiller and then it was found to be useful in thinning the blood to prevent strokes.  The use of aspirin to prevent strokes is a ‘new use’ of an old medicine.
57.U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
58.‘Bush Announces Start of CAFTA Implementation For El Salvador’, Inside US Trade, 3 March 2006
59.‘Dominican Republic Moves Closer to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 1 December 2006
60.‘Portman Says CAFTA Implementation By Guatemala Months Away’, Inside US Trade, 7 April 2006; ‘USTR Announces Delay in CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 6 January 2006
61.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
62.The WTO’s Agreement On Trade-Related Aspects Of Intellectual Property Rights (TRIPS) allows member countries, including Guatemala, to set what constitutes new, inventive and industrially applicable, http://www.wto.org/english/docs_e/legal_e/27-trips_01_e.htm. This can be set high (as countries such as India have done), which means that fewer patents are granted, so fewer medicines and other technology are available only at the monopoly prices during the patent.
63.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
64.http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/HRC/11/12
65.‘Dominican Republic Continues to Work For CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 12 January 2007; ‘New Fuel Transportation Resolution Possible CAFTA Violation in DR’, Inside US Trade, 26 January 2007
66.‘New Fuel Transportation Resolution Possible CAFTA Violation in DR’, Inside US Trade, 26 January 2007
67.‘U.S. Says Dominican Republic Fuel Resolution Violates CAFTA’, Inside US Trade, 16 February 2007
68.‘Dominican Republic Implements CAFTA After Concession To U.S.’, Inside US Trade, 2 March 2007

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STOP TPP!! 市民アクション
http://stoptppaction.blogspot.jp/

2014年8月20日
翻訳:磯田 宏(九州大学農学研究院)
内田聖子(アジア太平洋資料センター)
東山 寛(北海道大学)

【本件に関する問い合わせ担当】
アジア太平洋資料センター(PARC)内田聖子
TEL. 03-5209-3455 FAX. 03-5209-3453 E-mail: office※parc-jp.org(※を@に)

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2014年7月25日金曜日

米政府は、日本との市場アクセス問題での交渉条件を、10月に他のすべてのTPP交渉参加国に開示することを決定

翻訳をされた「TPP阻止国民会議」の了解を得て配信します。
Inside U.S. Trade  2001年7月18日

米政府は、日本との市場アクセス問題での交渉条件を、10月に他のすべてのTPP交渉参加国に開示することを決定

201年7月17日掲載

情報筋によると先週、米日両政府は、環太平洋連携協定(TPP)交渉で11月までに意義ある結果を得るために、交渉を強く押し進めていることを示すシグナルとして、他のすべてのTPP交渉諸国に対して、両国の市場アクセスに関する二国間協議の詳細を、10月に開示し、TPP12カ国間での集中関税交渉の新たな段階を開始するようにすることを約束した。

同情報筋によれば、米日両政府の担当者がこの約束を表明したのは7月3-12日にオタワ非公式協議の場であった。別の情報筋によると、このような展開は、他のTPP交渉国の共通の合意(不満)すなわち、市場アクセスをめぐる米日二国間の協議の交渉結果(成果)はTPP参加国すべてが共有し、またそれは最終的なTPP合意案に近いものであるべきだ、という主張がもたらしたものだ。

もし米国と日本が本当に10月までに市場アクセス分野で合意に達成することが出来れば、その開示は、他の10交渉国にとって、牛肉、豚肉、乳製品などセンシティブな農産物品目で一体、日本政府が米国にどのような譲歩を申し出たのかを理解することができる。

この情報開示は、TPP交渉の新局面を開くことになる。米日両国以外のすべてのTPP参加国―とくに農産物輸出国であるニュージーランド、オーストリアリア、カナダ、チリ、メキシコなど―が今度は、日本が米国に対して申し出た内容と同じ待遇を自分たちにも提供するよう説得しはじめることになる...と複数の情報筋が指摘する。もしこれらの国々が日本から同じ待遇を獲得することができなければ、各国は市場アクセス分野とルール問題について提案を考えていた譲歩のレベルを下げてくることになろうと、ある情報筋はのべた。

米日政府の市場アクセス交渉の詳細を10月に開示しようという計画は、米政府の、11月までに何らかのTPPの実質的成果を出そうとする、米国政府によるより広範な圧力の一環のようである。つまり11月10-11日に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議をふくめ、TPP交渉国首脳がアジアで予定されている一連の会議に参加する11月までに成果を出そうとする試みである。

その目標はオバマ大統領が先月ニュージーランドのジョン・キー首相との会談の後、公に設定したものである。ただし米通商代表部(USTR)はそのあとすぐに、米政府が特定の交渉期限にむけて動いているという見方は慎重にあつかってもらうように働きかけた。(Inside U.S. Trade, 6月27日)。

この計画のもう一つの問題要素は、米国がおしすすめようとしているアグレッシブな会議スケジュールである。複数の情報筋によると、オタワで、米国は8月に一連のTPPの技術的細目の事務局会議を開催し、続けて9月に首席交渉官の会議、10月に閣僚会議を開くことを提案したと伝えられる。しかし、同じ情報筋によれば、他のTPP諸国はまだこのスケジュールを検討はするも同意していないという。

他方、TPP交渉を観測し続けているグループからは逆に、この新しい提案(米日二国間交渉開示)を考慮に入れれば、11月合意という目標が達成できるかどうか懐疑的であるとの見方が今週だされた。そもそも、まず第一に、米国と日本が現実に10月までに市場アクセスについての最終取り決めに到達できるか疑問だとの複数の声がある。

第二に、もし本当に10月に日米交渉の詳細を参加国に明らかにするというスケジュールだと、この米日両政府間の機密情報(sensitive information)を11月4日の米議会中間選挙に先立って他のTPP当事国に配布するということになる。そのような情報はほぼ確実にリークされ、おそらく米国の農業関係者から大きな反対を引き起こし、そうなると中間選挙においては民主党に政治的ダメージを与える可能性がある。

ある情報筋は、オバマ政権は、政治的反動を恐れて、中間選挙の前にはTPPで譲歩することには特別な注意を払っていると述べた。

米日両政府の二国間交渉内容の発表計画にくわしい複数の情報筋は、米国の民間部門が協議の詳細について騒ぎたてる時間をできるだけ少なくするために、情報が公表されるときとTPP最終合意が決着するときまでの間をできるだけ短時間にしようと、オバマ政権は明確にねらっていると言っている。

米国政府は日本と注意深くバランスをとらなければならないという難題に直面している。米国は一方で、日本の複数のセンシティブな農業部門に対する関税全面撤廃は要求しないという譲歩をすでに行なっている。他方、米国政府は、米国内の生産者が交渉結果を支持してくれるか、或いは、すくなくとも議会に働きかけて協定を葬るような行為をしないように、彼らにとって経済的に意義をもたらす取り決めを作る必要がある。

第3に、たとえ米日政府の二国間交渉の詳細を10月に開示しても、市場アクセス交渉を完結させ、また懸案となっている主要なルール問題を解決するのに必要とされる時間を考慮すれば、他のTPP交渉10カ国が11月までに交渉を終結するのに充分な時間があるかどうか、TPP交渉を監視しているグループからは疑問の声が聞こえる。しかし一方では、TPPの市場アクセス部分についてのみ11月までに取決め合意することならば、可能かもしれないとの見方が複数の情報筋から示されている。

しかしながら、市場アクセス分野だけでも、交渉終結を1か月で決着をはかるのは、いくつかの理由で難しいかもしれない。1つは、ニュージーランドなど他の農業輸出国は米日の交渉結果に異議を呈するかもしれないし、あらかじめ決められた結果の受け入れを強制されることに抵抗するかもしれない。もうひとつの理由は、たとえTPP当事国すべてが日本との間では決着が成立したとしても、今度は、米国やニュージーランドなどいくつかの国は、カナダとの乳製品や鶏肉の市場アクセスについての交渉をしたいといいだすからである。それは容易ではなさそうである。

米国と日本が両国間の市場アクセス交渉の内容を10月に明らかにするとの公約は、オタワ非公式協議のもっとも意義のある結果のように見える。さもなければこの会議は、政治的対立の多い問題を避けて「技術的」ルール問題の解決だけに終始したはずだ。

7月12日オタワで日本の報道陣むけにおこなわれたブリーフィングで、鶴岡公二(つるおか・こうじ)首席交渉官は、TPP交渉国のひとつが技術的問題だと見ていることが別の国にとっては政治的問題かもしれないので、オタワ会議で進展を見るのは容易ではなかったとのべた。鶴岡氏はまた、首席交渉官交渉では労働者の権利、食品衛生・植物検疫(SPS)分野の諸問題では前進したと主張した。

SPSについてTPP首席交渉官たちは、その章が規定する義務をめぐる論点をいかに取り扱うかについて、まだこの問題での合意はできていないものの、意見の相違はせばめたと、先週情報筋が語った(Inside U.S. Trade, 7月11日)。

7月12日オタワで10日間開かれた非公式協議の終りに、カナダ政府が発表した最新情報は、交渉で各国が前進したかどうかについての示唆も、次の会合をいつ開くつもりであるかについての情報もなかった。

その代わりカナダ外務国際貿易省(DFATD)のウエブサイトに掲載された最新情報は、内容が非公式協議で首席交渉官たちが討議した題目およびその間におこなわれた実務グループの会合についての基本的な情報のみであり、そのほとんどはすでに公表されているものであった。

同じウエブサイトの別のページ上でDFATDは、今後のTPP交渉会合はスケジュールができているが日時と場所は確認されなかったことをほのめかした。「現時点で、次の交渉官会合の日取りと場所は確認されなかった。閣僚会合の日程も現時点で予定されていない」とのべた。

「各国首席交渉官は7月4日から12日まで会合をひらき、労働、国有企業、サービス諸分野、投資、すべての分野の市場アクセスなどを討議」したとDFSTDはウエブサイトでのべた。「これらの討議は、残されたルール作りを前進させる目的で開いた少人数の実務レベル、技術担当者グループの会合と並行しておこなわれた」。

「会合をおこなった実務者グループは、知的財産権(IP)が7月6-10日、国有企業(SOEs)が7月9-12日、原産地規則(ROO)/繊維が7月3-9日におこなわれた。カナダは交渉のいくつかの分野をまたがってわが国の利益を前進させるために複数の2国間会合を開いた」とDFATDのウエブサイトはのべた。

DFATDも米通商代表部(USTR)も、交渉の終了にあたって報道発表(press release)を出しておらず、USTRの報道官はオタワで見られた進展についてのコメントを繰り返し求められたが、一切応じなかった。

マシュー・シューエル(Matthew Schewel)記

環太平洋経済連携協定(TPP)に関する記者会見の発言記録 (米議会下院前広場 2014年7月9日)

翻訳をされた「TPP阻止国民会議」のご厚意と了解をいただいて配信しています。

環太平洋経済連携協定(TPP)に関する記者会見の発言記録
米議会下院前広場 2014年7月9日 午前10時15分


【概要】 オタワでTPP交渉に出席している米代表が最終決着をはかろうとしているときも、米議会の古参議員や新しい市民社会の各分野の代表者もTPP反対に加わるようになり、米国でTPP反対の高まりを浮き彫りにした。発言した議員のなかには、議会で、協定への多数の支持を得るためにはどのような条件が必要かをのべた100人余の下院議員が署名した一連の重要なTPP書簡のスポンサーが含まれていた

-    TPPにおける強制力のある通貨規制条項は、下院議員230人、上院議員60人の要求であった。TPPはこの条件がなければ、即却下されてしまうが、いまのところこの問題は交渉でとりあげられていない。 
-    労働者の権利:下院議員153人が、ベトナム、マレーシア、メキシコ、ブルネイなど労働者の権利にかかわる重大な問題を抱えている国々にについて、労働者および労働組合の条件が改善されない限り、また改善されるまでは、いかなるTPPの商業的利益も効力を発生させることに反対することを明らかにした。
-    ブルネイの人権/シャリア(イスラム刑法)にかんする書簡:民主党議員120人がブルネイとのTPP交渉を中止させるよう求めた。
-    環境問題での書簡―下院議員130人がTPPを支持する条件として制裁実施可能な環境ルールを求めた。
-    バイアメリカンの原則に基づく調達に制限をもうけてはならない
-    入手しやすい薬品へのアクセスについて、また、医薬品の特許期間延長と薬品処方集の利用制限についての米通商代表部の要求に反対する複数の書簡
-    米国憲法のもとでは議会は貿易協定を承認または拒否する権限をもっているが、現在にいたるまで米交渉代表はTPPについてのこのような要求を無視してきた。TPP交渉の方向にたいする不快感が議会で広がっていることからオバマ大統領が最近、11月10-11日のAPEC首脳会議を協定の新しい期限とすると発表したことは驚きであった。

発言者は以下の通り:ローザ・デローロ下院議員(民主党・コネチカット州選出)、ジョージ・ミラー下院議員(民主党・カリフォルニア州)、ルイーズ・スローター下院議員(民主党・ニューヨーク州)、ロレッタ・サンチェス下院議員(民主党・カリフォルニア州)、ピーター・デファツィオ下院議員(民主党・オレゴン州)、マーク・ポカン下院議員(民主党・ウィスコンシン州)、ドナ・エドワーズ下院議員・メリーランド州)、ドゥオン・チャン=ブロガー・市民社会活動家・VOICE(Vietnamese Overseas Initiative for Conscience Empowerment)在外ベトナム人の良心向上イニシアチブ)、ゲイリン・バロー=フェミニストマジョリティ、ジェラミ・デイビス=PAW=Pride at Work(仕事に誇りを).

【発言記録】
(記録のコピーをお求めの方はダン・ホックスミス dhocksmith※citizen.orgまで ←※を@に)

ローザ・デローロ下院議員(コネチカット下院第3選挙区)

おはようございます。郵便局同様、雨・みぞれでも雪でも、私たちはやってきます。集まった皆さん、ありがとうございます。今朝ここには同僚議員が来ています。下院のジョージ・ミラーさん、ロレッタ・サンチェスさん、リック・ノランさん、マーク・ポカンさんです。このほかにもこれから来る議員もいます。さらに、私たちとともにVOICEのドゥオン・チャンさん、「仕事に誇りを」(Pride at Work)のジェラミ・デイビスさんも来ています。「フェミニスト・マジョリティ」のエリー・スミールさんも加わるはずです。

TPP協定にかかわる諸問題―雇用から労働者の諸権利、食品の安全にいたるまでの諸問題について皆さんの声をあげていただきありがとうございます。ちょうどいま、NAFTA(北米自由貿易協定)型の協定に取り組んでいる米国を含む12カ国の貿易担当者が、なんらかの合意にこぎつけようと交渉を続けています。これらの交渉者、あるいは米政権も、議会や一般国民の間でおきているTPPの一括承認促進(fast-tracking)への強い反対を考慮に入れている様子はありません。この協定を結ぶことが労働者や家族にどう影響するのかについて、私たちが多くの懸念をとりあげてきても、それらに耳を傾ける様子もありません。

米政府および米通商代表あてにこの2年間に送られてきた書簡のサンプリングを紹介させていただきます。

私の仲間でありますドナ・エドワーズさんとニック・ラホールさんは他の67人の方々とともに大統領にたいして、バイ・アメリカン(Buy American=米国製品優先購入)法にしたがった調達の諸政策をこの協定のなかで規制しないようにと迫りました。これらの政策はもしTPPが調印されれば無くなってしまいます。

マイク・ミショードさん[下院議員]は、雇用を犠牲にし、赤字を増大させる通貨操作を抑えることを検討するよう大統領に求め、230人の下院議員とともに書簡を送る先頭に立ちました。しかし私たちの知る限り、これは討議にさえ付されていません。

ジョージ・ミラー下院議員は米通商代表にたいして労働者の権利を保護するよう求める書簡を153人のメンバー(下院議員)とともに送る先頭にたちました。

ヤン・シャコウスキ―下院議員[女性]は、USTR(米通商代表部)にたいして、開発途上諸国でジェネリック医薬品(後発医薬品)へのアクセスができるいおおうにすることを求めました。

アール・ブルメンアウア議員、ピーター・デファツィオ議員、サンディ・レビン議員をはじめとする122人の下院議員は通商代表部にたいし、天然資源を保護し気候変動に取り組めるようにするための強制力ある環境条項をつらぬくよう求めました。

下院議員119人がブルネイにたいし、いかなる取り決めにも合意する前に、非難されるべき人権侵害に取り組むことを要求するよう、ケリー(国務)長官に求めました。

下院議員151人が、私とジョージ・ミラー下院議員、ルイーズ・スローター下院議員と一緒に貿易促進権限(Fast Track authority)を大統領に付与することに反対を表明しました。

交渉をまとめる前にこの法案で提起された、多くの食品の安全についての懸念に取り組むよう求める超党派の書簡をウォルター・ジョーンズ下院議員、メアリ・ランドリュ上院議員とともに先頭に立って提出する機会をえました。

この書簡についてちょっとのべさせていただきます。このほかの書簡については他の方々が述べられます。ひとつの例ですが、食品医薬品局(FDA)の試験で、ベトナムからの輸入海産食品が以上に高いレベルの残留抗生物質(antibiotic residue )、微生物汚染(microbial contaminations)などの食品安全問題におかされていることが確認されています。2012年にベトナムからの海産食品が、汚染、腐食、残留薬品、未承認食品添加物、サルモネラ菌などの懸念を理由として206回上陸(entry)拒否されました。

提案される取り決めはこれらの食品の安全性の問題や、私が言及しなかったものもふくめてTPPによって提起された、その他、知財産から金融規制にいたるまですべての問題に対処しなければなりません。

悲しい事実としてこの協定は規制を後退させてしまう、環境基準や、私たちが利用する医薬品、私たちが食べる食品、子どもたちに与える玩具の安全性を守る法律を後退させてしまうのです。

また、連邦議会や州議会議員が将来的に協定のダメージを緩和できないようにするため無数の分野で法的拘束力をもつ政策をつくりだすことになります。

米国民の3分の2近くがファスト・トラック(貿易促進権限)を付与することに反対しているのも当然ですし、下院議員の(民主、共和)両党の178人が公然と反対を表明しています。

米通商代表部と政権は、協定および貿易交渉において決定的に重要な意味を持つ監督の役割をになう議会を、この交渉のあいだじゅう真っ暗闇におくのではなく、わたしたち(議員)とアメリカ国民がこの提案された協定についてもっている多くの懸念に取り組むべきです。

以上をもって、ジョージ・ミラー下院議員を紹介したいと思います。

ジョージ・ミラー下院議員(カリフォルニア大11選挙区)

ローザ、ありがとう。きょう私たちと一緒に集まってくれた同僚議員のみなさん、そしてチャンさん、ジェラミ・デイビスさん、ありがとう。

TPP交渉諸国の貿易交渉代表は、私たちがのべたとおり、きょうオタワに集まってTPPの取り決めを現実のものにしようとしています。しかし現実にはTPPはアメリカあるいは他のTPP諸国の勤労家族にとってよい取り決めになるには何光年もかかります。ここに立っている私たちはみな、TPPはアメリカの労働者と家族を保護し、他の国々の労働者が基本権を侵害されないようなものでなければならないということで一致しています。

貿易担当高官がオタワに集まりますが、そのような取り決めには近づいてはいません。明らかに、近づいていません。アメリカ国民の間では近づいていないのです。米合衆国議会においても近づいていません。いかなるTPP協定も、賃金から医療にいたるまで、アメリカの家族に影響を及ぼします。

私たちはきょう、アメリカの勤労者家族を脅かすようないかなる協定、つまり無謀なウォール街の取引を可能にする協定、環境基準を引き下げてしまい私たちが利用する医薬品や、私たちが食べる食品、子どもたちに与えるおもちゃの安全性をまもっている法律を弱めてしまいかねないいかなる取り決めにも反対して共に立ち上がっています。

ベトナム、マレーシア、ブルネイ、メキシコはひどい労働者の権利侵害が行われている国で、それはわたしたち集団の意識に衝撃を与えています。児童労働、肉体的暴力、強制労働、超長時間労働など、これらの侵害はTPP協定をすすめるまえになくさねばなりません。

私たちはNAFTA(北米自由貿易協定)やコロンビアとの自由貿易協定など、自由貿易取り決から厳しい教訓を学びました。労働者保護措置は、それがあとからの付け足しとして扱われると、また付帯協定の一部とされると機能しません。私たちはこの協定で、教訓を学びなおさなければならないというようなことになるべきではありません。

大企業がTPPの取り決めを推進しているのは、アメリカの労働者や家族を犠牲にしてでも自分たちの利益になることを知っているからです。一方、労働者や人権擁護者、環境保護団体、米連邦議会議員は蚊帳の外におかれています。

昨年、150人以上の連邦議会議員が透明性を高めるよう要求し、貿易促進権限(ファスト・トラック)の活用や貿易交渉における議会の権限を無視するようなTPPの承認手続きをとることに明確に反対を表明しました。

今年これまでに153人の連邦議会議員がフロマン大使[米通商代表]にたいし、TPPで強力な強制力のある労働者保護措置を確実にするという、よりよい仕事をするよう要請しました。

連邦議会議員たちは声を大にして明確に発言しています。フロマン大使よく聞きなさい。

この取り決めで意味のある改善がはかられるまで、また議会が検討する機会を得るまでは、最終合意はありません。

私たちはいまのような協定で、私たちの(アメリカの)家族の権利、外国の労働者の権利が傷つけられること、私たちの国家が傷付けられることを深く懸念しています。だから私たちは反対し続けるのです。

オタワでの成功を願っていますが、かれら[交渉代表]はこの国の国民と議会を念頭に置かなければならないのです。ありがとうございます。次にマーク・ポカン議員を紹介します。

マーク・ポカン下院議員(ウィスコンシン第2選挙区)

ジョージ、ありがとうございます。同僚議員の皆さんと一緒にここに立ってTPPについてお話しできることをうれしく思っています。労働基準から環境問題、食品の安全性、通貨操作、さらには人権にいたるまで多くの理由でTPPに反対しています。

ブルネイはTPP交渉に参加している国のひとつですが、最近シャリア法を採択しました。これは同性愛や不倫その他女性の権利にかかわる問題などにたいする罰として石打ちを求めるという厳しい法律です。

人権を侵害し権利の平等を制限し続けている国々にたいして私たちは通商上の特権を与えるべきではありません。米国は世界の指導者として世界中の人権状況を改善しようとその影響力を行使するという伝統を持っていますが、TPPにおいて私たち[米国]はそれと真逆のことをやっています。

ですから119人の連邦議会議員は、きょうここに参加しているすべての議員を含め、「人権キャンペーン」(Human Rights Campaign)、「仕事に誇りを」(Pride at Work)などLGBT(性的少数者,lesbian, gay, bisexual, and transgender)諸組織を含む議会外団体とともに、米通商代表とケリー(国務)長官にたいし、あのひどい法律が廃棄されない限りブルネイをTPP交渉に参加させないようにと要求しました。

ここでこの要請に参加したもう一つの団体、「仕事に誇りを」(Pride at Work)を紹介したいと思います。きょう私たちとともにここにきている事務局長(executive director)のジェレミ・デービスさんがこの問題について彼の視点からお話しします。

「仕事に誇りを」(Pride at Work)事務局長ジェレミ・デービス

(ポカン)議員、ありがとう。まず始めに、ポカン下院議員とともに、デローロ下院議員にたいしこの問題でリーダーシップを取られていることに感謝したいと思います。おふたりはこの恐ろしい貿易取り決め反対の取り組みで、非常に大きな存在としてやってきました。ポカン議員がのべたとおり、私の名前はジェラミ・デービスです。「仕事に誇りを」(Pride at Work)の事務局長(executive director)です。私たちは労働組合のLGBTのメンバーからなる全米組織です。

6月には「仕事に誇りを」(Pride at Work)は全米ゲイ・レスビアン・タスクフォース(National Gay and Lesbian Taskforce)、人権キャンペーン (Human Rights Campaign)、全米性転換者同権センター(National Center for Transgender Equality)も加わってオバマ大統領あての書簡を書きました。その書簡で私たちはオバマ大統領に可能なあらゆる手段をつうじて世界中のLGBTの人々の基本的人権を守るという約束をまもるよう要請しました。

私たちはTPP交渉は、これらの法律にたいする責任をブルネイに負わせるための手段であると考えます。(ポカン)議員が述べたようにこれらの法律は、LGBTの人々を石打ちによって死刑にするとの規定を含んでおり、人権と基本的な品性を傷つけるものであります。私たちは人権を乱用するものは米国の最恵国待遇(preferential treatment)を受けるべきでないと考えます。

2週間前、私はワシントンDCのブルネイ大使館の外側での抗議に参加しました。50人近くの人々が集まってこれらの新しい法律に抗議し、UNITE/HERE[労働組合]が私たちに加わってロサンゼルスはじめ世界中にあるブルネイ保有のホテルで行われている労働組合つぶしに抗議しました。LGBTの人々、有色の人々、アメリカのすばらしい多様性全体がこの抗議行動にみられました。しかしひとつ私が感動したことがありました。それは、ラテン系の女性が子ども2人を連れて抗議に参加したのですが、それは問題が彼女とその家族にとっても非常に重要な問題であると考えるからでした。

わが国はLGBTの権利の平等に向けて大きな歩みをしてきており、もし私たちが、ブルネイの新法に特有のひどい虐待をみのがし、同国に特権的な貿易上の地位を与えたとすれば甚大な一歩後退となります。ブルネイはTPPをめぐる大きな問題の一片にすぎませんが、国民の基本的人権の乱用をおこなっている国ぐにを含む取り決めは意味のないものと言うべきです。ありがとうございました。

デロ―ロ下院議員:
さてベトナム系コーカス共同議長のロレッタ・サンチェス下院議員に、次の発言者を招待していただきます。

ロレッタ・サンチェス下院議員(カリフォルニア第46選挙区)

同僚議員はじめお集まりのすべてのみなさん、ありがとうございます。デロ―ロ議員、ミラー議員、ありがとうございます。私は長い間ベトナムにおける人権問題に関して活動してまいりました。

私はTPPについて、本気で反対しなければいけないと思っています。人権とりわけ労働者の権利にかんして交渉がうまくいっていないからです。

ベトナムとの貿易取り決めをするときはいつも、ベトナム側がいろいろな約束をしますが、実際の人権状況はなんら改善していません。

これまで20年だけ見ても、ベトナムではこんにちの労働条件を理由に5,000件を超える労働者のストライキが発生しました。人々は1日12時間から15時間の労働を余儀なくされています。彼らの賃金は月70ドル以下です。未払いのケースも多くあります。彼らは健康保険がなく、職場では無権利です。

じっさい、米労働省はベトナムを、強制労働もしくは児童契約労働によって服飾が生産されていると見られる理由がある4カ国のうちのひとつに挙げています。

ですから、もし私たちが自由、正義、人権を真に支持するのであれば、私たちは現在交渉されているようなこの貿易協定に反対すべきです。私がここで強調したのは、私たちは、とくにベトナムにおけるこれら労働者の権利を無視するわけにはいかないということであります。

今日、ドゥオン・チャン(Doan Trang)さんが一緒に参加してくださっています。彼女はブロガーで市民社会活動家、在外ベトナム人の良心向上イニシアチブ(VOICE=Vietnamese Overseas Initiative for Conscience Empowerment)のメンバーです。彼女はきょうここにVOICEを代表して参加しており、ベトナムにおける労働条件の現状についてお話しします。

ドゥオン・チャン(Doan Trang)―VOICE

皆さんおはようございます。私はチャン(Trang)と申します。私はベトナム出身のジャーナリストでブロガーです。ベトナムにおける労働者の権利について、またなぜTPPが成功の見込みがないかについてお話しさせていただくことに感謝します。

みなさん、6月26日、29歳の労働者の権利擁護活動家が刑務所から釈放されました。これは朗報です。しかしながら、これで労働者の権利、土地の権利、表現の自由の権利という3つの権利がベトナムでもっとも広範にもっともひどく侵害されているという事実が変わるわけではありません。

ベトナムでは毎日、何百件もの労働者のストライキがあり、そのうちの95%は違法ストとみなされています。なぜ違法ストなのか。それは現在の労働法および労働組合法は自主労組の存在を認めておらず、そうした法律のもとでストライキは適法ではないからです。

ベトナムのすべての労働組合が、ベトナム労働総同盟(VGCL)を除いて非合法であるというのが実態なのです。VGCLは政権党、(ベトナム)共産党傘下にあります。CGCLの役員はすべて党の役員で、規約で党の利益に奉仕することと規定しています。私たちは、VGCLがストライキを指導した人と逮捕し罰するよう警察に求めていることを示す内部文書を入手しています。

労働法はまた、労働者が適法的にストライキを行えるようにするまえには仲裁、調停がおこなわれなければならないと規定しています。ですから、そのような厳しい要件のもとではベトナムにおけるストライキの95%が違法とみなされているというのは理解できることだということがわかるでしょう。また、ベトナムのストライキの95%が低賃金、低所得と関連しているのです。ベトナムは2008年以来、不況で推移してきました。労働者は農民で、最悪の犠牲者にかぞえられます。労働者はより多くの収入を得るために残業をしますが不払いになっています。社会保険も加入させてもらえません。多くの場合、とくに民間部門では、保険、医療プログラムを受けられないでいます。

また、労働条件は低下させられ集団食中毒も広がってきました。わずか1週間あまり前、ホーチミン市のある会社で200人以上の従業員が食中毒にかかりました。それより前、5月15日には、会社が出した飲料水で500人余りが中毒にかかりました。これは明るみになったものだけです。似たようなケースで知られないままになっているものが沢山あり、いまでもこうした集団食中毒にたいしてだれも責任をとわれていません。

さらに強制労働という労働者の権利侵害があります。私たちのところには刑務所で服役者に服飾や家具、カシューナッツなどを製造させて搾取している問題についての元政治囚からの報告があります。
みなさん、私たちは、ベトナムが労働者の権利侵害をやめさせたいといっていると理解しています。しかし、そうしていません。かれらは税金を引き上げるのではなくただ罰金を払うだけにしたいのです。私たちはまた、人権擁護活動家、労働者の権利擁護活動家を釈放することによって彼らは世界に向けて労働者の権利要求を尊重しているふりをしようとしているのです。しかし沢山の似たようなケースがあります。9年間の服役中の2人の仲間ように。

ベトナムにおける人権侵害についてお話ししましたが、それでもトンネルの先に光が見えます。最後に、それはフェイスブックなどインターネットを利用した活動であることを指摘しておきたいと思います・

ベトナムで労働者の権利擁護のために積極的に活動しているNGOや認証を受けていないNGOが数十あります。私たちがそれを知っているのは在外ベトナム人の良心向上イニシアチブ(VOICE=Vietnamese Overseas Initiative for Conscience Empowerment)がこれらの団体と連絡を取ってきているからです。

VOICEを代表して私が申し上げたいことは、労働者の権利が強制的に実行できないようないかなる貿易協定も受け入れてはなりません。

いかなる貿易協定も、労働者の権利の実施を前提としてください。

わが(ベトナム)国民は経済的繁栄を望んでいますが、それは自由と相まってすすめなければなりません。どうか、私たちとともに歩んでください。ありがとうございました。

デロ―ロ下院議員:
つぎに、フェミニスト・マジョリティのゲイリン・バローさんが、書簡についてお話しします。

ゲイリン・バロー―フェミニスト・マジョリティ

みなさん、お早うございます。私はゲイリン・バローと申します。私はフェミニスト・マジョリティの政策部長 (policy director)をやっており、スルタンが支配するブルネイで、布告によるタリバン流の刑を強行したことに反対しています。この法律は、全面的に実施されると石打ちによる死刑を求めるものです。繰り返します。ゲイ、レスビアンの人々や不倫で有罪になった人々にたいしては石打ちの死刑、妊娠中絶をした人にたいしては後悔むち打ちが科されます。

この法律は人権侵害であります。私たちは議員の皆さんが今日ここで、この重要な時に立ちあがってくださっていることに感謝したいと思います。

TPPはまさに、成功の見込みがないものです。人権は利潤を得たり貿易をおこなったりするために後景に追いやられるべきものではありません。

フェミニスト・マジョリティは、いくつかの人権・男女同権をかかげる組織と一緒にオバマ政権にむかって、ブルネイのスルタンが刑法を廃止するまではTPP交渉を停止するよう求めてきました。

米国はブルネイといつものとおりビジネスをおこなうことによってこれらの種類の法律を許すべきではありません。私たちはこの新しい刑法を変えるようスルタンに圧力をかけるためにあらゆる入手可能な、また適切な政策的道具を利用すること追求しなければなりません。

ブルネイがこの新刑法を採択するなかでTPP交渉を継続することは受け入れがたいことです。この刑法は米国の原理、目標、価値観に真っ向から対立するものです。

文明社会においては、ゲイを殺す、女性にむち打ち刑を加える刑法は許されません。わが国の外交政策や通商政策は女性の権利、人権、基本的尊厳を守るという私たちの決意を反映しなければなりません。

デロ―ロ下院議員:
ドナ・エドワーズ下院議員はアメリカの製造業をまもることについて。

ドナ・エドワーズ下院議員(メリーランド第4選挙区)

どうもありがとう。

沢山の発言を聞きました。そのメッセージはほんとうに非常に簡潔です。読めばわかります。[スローガンを掲げる反TPP抗議参加者に向かって]ミドルクラスをダメにしてはいけない!アメリカの雇用と製造業をまもれ!人を優先させよ!人権尊重を!私たちの環境を守れ!これらは簡潔なメッセージです。

20年ほどの間、アメリカは公正な貿易ではない自由貿易のでたらめを信じ込まされてきました。いまこそそれを止めなければなりません。

私は同僚議員とともにTPP交渉をめぐる政策、手続きを深く懸念しているということを申し上げたいと思います。

1933年にバイアメリカン法(米国製品優先購入法)が制定されたとき、その条項は、米政府は税金を米国の雇用を支援し、刷新(innovation)を促進し、米国の製造業部門を強化するために使うことを保証するというものでした。過去の自由貿易協定は締約国にたいし、国内の政府調達契約の入札に外国の企業が同等に参加できるようにすることをもとめていました、

現在進行中の交渉はバイアメリカン政策を大幅に制限する条項が提案されていて懸念されており、その結果アメリカの雇用、労働者、製造業者に大きな影響を与えています。

2012年5月、私は下院の68人の同僚議員とともに書簡をつくり大統領にたいしTPP協定ではバイアメリカン政策をまもり貿易協定によって米国民がお金を米国製品やサービスに使う権利を制限しないよう保証することを要請しました。

残念ながら私たちは私たちの製造業部門を支援し良質の高賃金雇用を創出するためには、引き続き政府調達を利用することが必要です。

私はとくに、私たちが聞いているベトナムにおける多くの中国企業のように、TPP諸国につくられる企業がバイアメリカン政策の義務免除を得てしまうこととなり、依然として人権蹂躙をおこなうことを憂慮しています。

これでは、私たちが税金で納めたドルが他の国々の製造業部門をつよめこそすれ、米国の製造業は強化しないことに投資されてしまいます。

さらに、米国の政府調達市場はTPPの調達市場を全部あわせてより10倍以上大きいのです。繰り返します。米国の調達市場はTPPの調達市場全部あわせたより10倍以上も大きいのです。

それが意味するのは、米連邦政府調達5560億ドルへの米国企業の優先的アクセスを、わずか530億ドルの他の国々の新たな調達市場と引き換えに売り払うということです。それは受け入れがたいものであり、米国の製造業を完全に危険に陥れるものです。それはこのいわゆる協定のもとでは1ドルの利益にたいして10ドル以上を失うことになります。一部の米国企業のTPP諸国における契約入札へのアクセスは、調達のバイアメリカン優先を除外するという本当にひどい相殺です。

各年、私のメリーランド州の納税者は連邦政府が110億ドルという巨額の買い物をするのに融資するのです。それはメリーランド州納税者1人あたり2,364ドルを米政府に送って調達にあてていることになります。なぜそれが米国の製造業にとっての損失になるのでしょうか。TPPは実際には悪循環を断ち、より多くの外国の企業が、メリーランド住民が納めた税金をめぐって競争できるようにしますが、それは米国じゅうの住民も同じことです。

議会が雇用創出や米国製造業の基盤再活性化を重視しなければならないときに、貿易協定が、私たちが米ドルを米国製品やサービスを購入する権利を制限することでその基盤を崩すようなことがあってはなりません。

そこで、私は「メイドインアメリカ」製品、米合衆国で製造された製品にyesと言いましょう、アメリカの雇用にyes、良い高賃金の雇用にyesと言いましょう、というよびかけをもって発言を終えたいと思います。それはすなわちTPPのバイアメリカン条項禁止にたいして「絶対ノー」と言わなければならないということなのです。
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デロ―ロ下院議員:
オレゴン州選出のピーター・デファチオ下院議員は、環境問題とTPP

デロ―ロ下院議員 (オレゴン州第4選挙区)

ローザさん、来ていただきありがとう。フロマン大使(通商代表)からのステートメントがありますが、非常に強力なものでした。「われわれはTPPのなかの、断固とした、充分に実行可能な環境分野を主張し、それなしにはわれわれは協定に同意しない」。私は大賛成です。

残念ながら、リークされた交渉分野、また、もちろんここにある「TPP:テキストを公開せよ」からわかるように、私たちは、この協定の状況がどうなっているのか知りません。

選挙でえらばれえた代表(議員)は、もし望むならば、通商代表部にこの文書を議員事務所に持ってこさせることができます。スタッフは同席できず、ノートも取れない、しかし文書をぱらぱらとめくってみることはできます。

500人の企業代表者はリアルタイムで、安全が確保されたインターネットをアクセスできるのに、私たち(議員)はそれができないのです。

これはたいへん異常です。彼らは何を隠そうとしているのでしょうか。

リークされた環境分野は常軌を逸した内容です。それはジョージ・ブッシュ(政権)時代の超党派による、これらの貿易協定のなかの商業上の基準と同じように執行可能な基準ができるような将来の貿易取り決めにかんする5月10日の合意から後退させるものです。

私たちにはTPPにかんしてここでまたとない機会があります。私たちは基本的に、将来、規制を受けない漁、毎年漁獲量の20%ぐらいと推定される海洋資源の枯渇を止め始めるためのロードマップ(行程表)をつくることができます。それは持続可能なものではなく、法律、条約の外で行われているものです。

私たちは中国その他の象牙の取引で巨大な市場になった一連の条約締約国に対処することができます。そして今、私たちは、劇的な措置が採られないかぎり野生のゾウがいなくなる可能性に注目しています。

私たちは違法伐採、森林に注意を払っています。それは国内、われわれ自身の森林の生産業に影響を与えるからであり、沢山の収穫をするところだからであり、その問題をTPPでも取り扱ってしかるべきだからです。ですから私たちには、考えられないぐらい強力で充分に執行可能な環境分野の問題にTPPのなかでとり組んでしかるべき一連の関心事があります。

私たちは、労働問題や環境問題で拘束力のない付属協定がつくられたNAFTAの轍を踏むことはできないのです。NAFTAでは後に是正されることになっていましたが、じっさいには行われませんでした。

デロ―ロ下院議員:
ニューヨーク州選出のルイーズ・スロータ―下院議員は、貿易投資全体について

Rep. Louise Slaughter (NY-25) ルイーズ・スロータ―下院議員(ニューヨーク州第25選挙区)

みなさんはファスト・トラックの意味をご存知だと思います。私たちがファスト・トラックを取り上げたとき私は議事運営委員会の議長でしたからよく知っています。煮詰めて言えば、議会はそれにかかわることはできなかったのです。交渉は秘密でおこなわれています。

私たちが聞いている噂では、経済の一定の部分がこれらの交渉をおこなって自助努力をしているということです。私たちは選挙区を代表して発言することはできません。

ファスト・トラックのもとで私たちが得られるのは、政権が交渉してきた完成法案だけで、それに賛成票あるいは反対票を投じるのです。これはとんでもないことで、私たちは、それはもはやできません。

私たち(米国)が世界最大の製造業を誇っていた70年代だったらよかったのですが、いまはもはやそのような状況ではありません。

私たちが失った雇用は驚くべきものです。NAFTAの20周年を迎えたばかりですが、祝えたものではありませんでした。NAFTAはかつて私たちが見たこともない最悪の交渉でした。私の地区で私たちはニューヨーク州西部で25万の雇用ができると約束されました。NAFTAが調印された当時、イーストマン・コダック社には62,000人ほどの従業員がおりました。いまでは約4,000人です。経営破たんもしました。私たちは約束された雇用を得られませんでした。まさに雇用破壊であり、今年、米韓自由貿易協定の交渉で私たちはふたたびそれを見ました。

あの、韓国との協定は本当にやっかいなものでした。おそらく私が一番懸念した協定であり、大統領とも話し合いました。韓国側はアメリカの自動車を売+らなくなります。韓国には自動車販売会社が26ありますが、米国車も販売しています。ですから韓国との貿易不均衡はすでに大きくなっていましたが、新しい自由貿易協定後、不均衡はさらに広がりました。貿易赤字は47%増えて206億ドルという史上最高になりました。

忘れてならないことは、もしどこかの国が韓国を攻撃したら、条約によってわれわれは韓国のために戦う義務を負っている。でも、韓国は米国製品を買うのでしょうか?断じてNoです。

真実はといえば、私が議会に選出されて以来、政府によってつくられた貿易協定でアメリカの製造業者あるいはアメリカの従業員に利益をもたらし、これを続けるのを私は見たことがありません。

この貿易協定によって私たちが受けるダメージは非常に深いので、食品の安全の面だけでも、私たちがのぞむ、また私たちが大切にしているその他のすべてで、私たちが承認した正常な空気、清浄な水に関する法律が危うくなるのです。私たちはそういうことを望んでいません。私たちが法律を守り、国の法制度を無視して貿易協定に国が調印するのを私たちは望みません。狂気の沙汰です。

私たちは、どんなことが起きるか分かっています。もっとたくさんの雇用が失われるのです。貿易赤字がもっと増え、賃金が下がり雇用保障がよわまるのです。

どれだけ多くのこういう協定をつくったら私たちはじっさいにそのような教訓を学ぶことができるのでしょうか?この橋を渡るにはあまりにも長い時間がかかっています。私たちはこの協定を支持するわけにはいきません。

私たちは教訓をまなぶところに近付きつつあると思います。今朝ここに集まったみなさんにお会いして嬉しくおもうとともに、この問題で一所懸命活動してきたわたしの同僚議員に感謝します。

ピーターが言った通りです。私の地区に残った企業のひとつは、ベトナムとの貿易協定を懸念していました。私は、私たちのためにどんなことがくわだてられているのかを知りたいと求めたのですが、私のスタッフを伴うことができず―私には歳入委員会の人が何人かいたのですが。2人の女性が私のところにやってきてスプレッドシートを見せてくれたのですが、中身のないものでした。

国民によって選挙された代表(議員)に対しておこなわれていることがこういうことです。私たちひとりひとりが代表している800,000人は。これらの貿易協定にとりくむなかで基本的に発言権がないのです。このようなことをやめさせなければなりません。すすめ方においてこれをやめさせなければなりません。

 国際貿易の問題は」おわっていません。わたしたちは逆戻りしようと思っているのではありません。しかし米国にとって公正なものにするときです。実行可能な貿易協定を作成することによってそれができます。

もし私たちが強制力を貿易協定にもりこみ、もしルールが目に見えない障壁その他のトリックによって蹂躙され、われわれ(アメリカ)の製品を買わないようにするなら協定を停止できるようになります。そうなれば、ほとんどの友人や同僚議員が満足して見ることができる唯一の貿易協定になります。

デロ―ロ下院議員 
ルイーズさん、ありがとう。今朝ここに集まっている議員や各代表者のみなさんは、沢山の人々を代表しています。この手紙の束(TPPにかんする議会の手紙の分厚い束をかかげて)はこの2年間のものですが、きわめて大きな困難をかかえファスト・トラックに反対し、明るみにだされたいろいろな問題を理由にこの条約そのものに反対している議会の(民主、共和)両党の議員のみなさんです。それが食品の安全、環境保護、金融規制、通貨操作、人権 ―全般―のいずれについてであっても、みなさん協定に反対しているのです。私たちは、この問題での私たちの声が引き続き届くようにします。

充分に感謝を申し上げられません、議員だけではありません。今日ここにあつまったのは諸組織のみなさんです。ドゥオンさん、ジェラミさん、ゲイリンさんそれにエリー・スミ―ルさん、この取り組みに参加してくださってありがとうございます。

そしてすべてのみなさんに、これらのしるしは意味のない論評ではありません。その一つは議会メンバーの気持ちを代弁していますがもっと重要なことは、この国の国民の気持ちを表しているということです。ありがとう。では質問をどうぞ。

【質疑応答】

ジム・バーガー(ワシントン・トレード・デイリーWashington Trade Daily)

 私が理解しているところでは、ひとつだけ議員のみなさんがこの協定についてわかっていることは、それが大詰めに来ているということです。議会で反対票を数えてみましたか?

デロ―ロ下院議員
ファスト・トラックの部分については、調べています。反対が圧倒的で、成功の見込みがないといいことです。事実、議員は―ここにおられる同僚のみなさんにもお願いするのですが―私たち議員は、責任ある行動をしようとしています。だれも文書を見たことがありません。ですから人々は、文書を見てみよう、と言いたいのです。それは非常に理にかなっていると思います。文書をだせ!私たちはみな、通商代表部の前などで座り込みをするなど同じ経験をしてきました。それでも文書は秘密扱いになっています。文書をみるために座り込みをする人々が必要です。しかし、率直にいって、これらの問題に取り組むうえで議員たちは信頼されていません。ですが、わたしたちは、それぞれが代表する人々の名において日々取り組みます。

デファチオ下院議員:
私たち(議員)が信頼されていないという問題ではないのです。問題は私たちに知られたくない、なぜなら情報を選挙区に伝えてしまう、そうすると選挙区の人々は呆れて反対する、からなのです。反対のうねりが増大します。あなたの質問にもっと端的にお答えすれば、これは超党派の反対表明なのです。ここでは超党派的なものはそんなに見られません。特にファスト・トラックに反対している共和党の議員はかなりの数いますが、彼らが理解しているこの協定にも反対しています。ですから私はいま、最終段階にあるとは思っていません。彼らはファスト・トラックなしに最終段階にもっていくことができるとは思いません。なぜなら、協定のなかには議会が取り除きたいと考えるようなとんでもない条項があるからです。また、アメリカが主張しているように、ニュージーランドとオーストラリアがそれぞれの医療制度を医薬品産業のために放棄するというとんでもない条項があるのです。他の国々も別の問題で譲歩をせまられています。白昼にこの問題がまるごと消滅します。

(質問聴取不能)

デロ―ロ下院議員:
7月4日(独立記念日)の休日からもどってきましたが、通常ひとびとがそれぞれの選挙区の議員と連絡をとりあっているときうねりがおきるのですが、ファスト・トラックへの反対、この協定そのものにはもっと多くの人々が反対しています。ですから現場での取り組みが必須です。多くの団体がこのことやどんな損害がでるかなどを語っています。そしてそうした団体は通常、それについて考えていたりあるいは決めかねていたりしてこれから態度を決めようとしている議員からの回答を得られるのです。デファチオさんが指摘した、非常によいコメントです。ファスト・トラックへの反対はかなりあります。TPPそのものにたいする反対も同様だと思います。

アイラ・テノウィッツ(Mlex)
もしファスト・トラックがなければ、あなたがたはいろいろな修正を提案しますか?その場合のプロセスはどんなものになるでしょう?

デロ―ロ下院議員
私はTPPに修正を加えることができる機会があることを期待しています。デファチオ議員が指摘したように、私たちはそこまで到達しないかもしれないと思います。最終文書がどんなふうになるかについてなんの保証もないのであれば、この努力をしている他の国々が
この取り決めに決着をつける意思があるかどうか、私にはわかりません。でも確かに、私たちは、下院でも上院でもおなじだと思いますが、提案される法案を修正できる機会を望みます。

 (質問聴取不能)

デロ―ロ下院議員
政権はTPPにかんしてさまざまな期限を口にしてきました。私はこれからも政権はそうするだろうと思います。彼らは議会がダックになればそれをひとつの機会と見るでしょう。ですから、私たちはいまやっていること、ファスト・トラックに欲求はないという革新をもち続けます。私は貿易協定に全面的に反対しなければならないと確信します。

みなさん、ここに立っておられる議員のみなさん、どうもありがとうございました。私たちは大きな弾みを得ましたので続けていきます。私たちはNAFTAや韓国との協定、その他の貿易協定で起きたのと同じことでミドルクラスや勤労世帯の生活、食品の安全、われわれの環境保護規制、金融規制を狂わせ、人々の能力をあやうくし、かれらの製薬業界をわが国の製薬業界に屈伏させるといったことを許さないことをめざしています。それは間違った方向であり、それをワ達したちは阻止するのです。ありがとうございます。

以上

2014年7月10日木曜日

オバマ大統領、TPPで11月に成果を期待(ロイタ-2014年6月20日)

日本でも報道されましたが、訪米中のニュージーランドのキー首相との会談後、オバマ大統領は記者団に対し、従来と少し異なる内容で、「11月のアジアで首脳会談でのTPPについて一定の合意を期待している」ことを語りました。先に各国から早期妥結の意欲が様々に表明されている一方、年明けまでは無理だろうとの見方が報道されています。

またTPP交渉のけん引役でもあるニュージーランドや豪州、シンガポールの首脳からは、改めて日本の市場開放を求め、年内妥結を促す発言が続いています。そしてオバマ発言の前日19日にはTPPとTPAに関して大きな影響力を持つ米国下院・歳入委員会の委員長デイビッド・キャンプ議員(共和党)から、TPP交渉の妥結を促しつつ、その前提としてのTPA法案の早期成立とTPPへの米国議会の強い要求(国有企業、ISDS、知財、為替操作規制等々)を求め、かつ市場アクセスでの日本・カナダへの厳しい姿勢が表明されています。

一方TPPに批判的なチリの新大統領が6月30日から7月第一週に米国・シンガポールを訪問し、首脳会談が行われます。8月いっぱいの米国議会閉会、中間選挙を前に、TPPも首脳レベルでのせめぎあいが動きつつあるようです。今までとは少し異なる展開に中止する必要があるかも知れません。

以下は6月20日のオバマ大統領の発言を軸にした報道記事の翻訳です。(翻訳:近藤康男/監修:廣内かおり)

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オバマ大統領、TPPで11月に成果を期待(ロイタ-2014年6月20日)

 オバマ大統領は6月20日、「11月には、TPP関係国が国民、利害関係者に対して何らかの合意を明らかに出来ることを期待している」と語った。
  大統領は、11月15~16日のG20首脳会合出席を含むアジア訪問時に、関係各国の首脳と議論をするための何らかの文書を用意することが目標だと語った。同じ時期にAPEC首脳会合も中国で開催される。

 米国は11月4日に中間選挙を予定しており、多くの貿易専門家は、雇用への影響を懸念する労働組合を支持基盤に持つ民主党への選挙での影響を考えると、今年中の妥結は絶望的と見ていた。
  オバマ大統領は、TPP参加国でありワシントンを訪問中のニュージーランドのキー首相と今年中の妥結の時間軸について議論したと語った。ちなみにTPP参加12ヶ国の経済規模は世界のGDPの5分の2、貿易の3分の1を占めている。
  大統領はキー首相との会談後、2人が再度11月に会うまでに、議会とも協議がなされ、国民への閲覧という手順を踏んだ何らかの文書を用意し、協議を前進させて妥結するための説得力ある議論が出来るようにしたい、と述べた。

 「もちろん、それまでになすべきことは山積している」

 オバマ政権は、米国のアジアへのシフトという戦略の一環として昨年中のTPP妥結を期待していたが、日本の農産物関税の問題で行き詰った。日本政府が米、小麦、酪農製品、砂糖類、そして牛・豚肉製品を守ろうとする一方、米国政府は市場競争力を強化している日本車から米国の自動車業界を守ろうとしている。
 しかし、4月の日米首脳会談後、交渉に新たな勢いが出てきたと交渉筋は伝えている。メキシコの関係者はロイターに、複数の国が遅くとも9月の妥結に向けて交渉を押しすすめている、と語った。ただ他の国々はそれほど楽観的ではない。
 6月の第2週に米国を訪問した豪州の貿易担当相ロブ氏は6月18日、「今年中の妥結はあり得ないだろう。しかし来年前半の妥結は期待出来るかも知れない」と述べたという。
 「(市場アクセスについて)妥協できないのなら日本はTPP交渉から除外されるべき」と語ったニュージーランドのキー首相は、高水準で包括的なTPPを達成できると確信している、と語った。
「どのような交渉でも、参加各国間でガップリ組んだ腕相撲状態になる時期はあるものだし、一瞬、夜明け前のもっとも暗い時間のように感じることもあるものだ」

 TPP交渉には、米・日・豪・NZ以外に、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ペルー、シンガポール、そしてベトナムが参加している。(翻訳:近藤康男/監修:廣内かおり)

2014年7月6日日曜日

アメリカ連邦議会下院歳入委員会デイヴ・キャンプ委員長が6月 19日「グローバル・ビジネス対話」に寄せた所見(文書)

オバマ大統領が「年内合意のための文書」について記者会見で述べた前日の6月19日、議会の重鎮であり、またTPA法案の共同提出者である下院歳入委員会の委員長であるディビッド・キャンプ議員(共和党)が“グロ-バル・ビジネス対話”に所見を寄せ、TPA、TPP、更にはTTIP環大西洋貿易投資パ-トナ-シップ協定、TISA(WTO有志国・地域によるサービス貿易協定)に関する考え方を展開しています。

6月から7月冒頭に掛けて、豪州、ニュージ-ランド、チリの首脳が米国を訪問し、TPPについて発言をしています。

カナダのオタワで始まった首席交渉官会合の行方、更にはその後の展開を読みとる上でポイントとなる記事の一つと思われます。(翻訳:磯田宏・戸田光子/監修:近藤康男)

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アメリカ連邦議会下院歳入委員会デイヴ・キャンプ委員長が6月 19日「グローバル・ビジネス対話」に寄せた所見(文書)


おはようございます。サラさん、ご紹介ありがとうございます。モリス審査員及び「グローバル・ビジネス対話」に対しても、アメリカ通商課題の将来について話をさせていただく機会をいただいたことに感謝申し上げます。「グローバル・ビジネス対話」は有益な計画と分析を通して貿易政策を大いに前進させてきました。私は本日参加させていただきうれしく思っています。

私が下院の歳入委員会委員長になって以来、私たちは自由貿易協定の実施に大成功を収めてきました。米国内における実績のある効果的な雇用の創出―これはここ米国内で生産された物とサービスが世界中に輸出されうることを保証するものです。私たちはすでにコロンビア、韓国そしてパナマとの協定から相当の利益を享受しています。このことは超党派の強い支持を得ています。なぜなら議会とアメリカ国民が最優先と考えるものをこれらの協定が反映しているからです。

アメリカが通商協定の交渉に際して我々の潜在力を全面的に開花させることを保証するための鍵は、貿易促進権限であり、それは過去2年間、通商問題における私の最高の優先事項であり続けました。我々は現在、3つの大きな通商交渉の最中にあります。すなわち TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ協定)、および TISA(WTOの有志国・地域によるサービス貿易協定)の交渉です。しかしもし貿易促進権限がなければ,我々はこれらの協定がアメリカにもたらしうる大きな景気の押し上げを実現できないことになるでしょう。

理由は簡単です。貿易促進権限がなければ,わが国の交渉官達は手を縛られたままとなるからです。貿易促進権限なしでも確かに交渉を前進させることはできますが、どんな政権もそれなしにアメリカ人にとって完全な実現しうる最善の協定を得ることはできません。貿易促進権限型の法律制定が繰り返された80年の歴史は、貿易促進権限なしに主要な通商協定を妥結することができたことは一度たりともなかったことを物語っています。連邦議員としての 20年間に、私はNAFTAを含む、それ以降の全ての通商協定に賛成してきました。私は民主党政権と共和党政権にまたがってUSTRと密接に協力し働いてきました。これらの経験から、実現しうる最善の協定は貿易促進権限なしには達成できないことは明らかなのです。

フランクリン・ルーズベルト以来全ての大統領は、貿易相手国に対して、貿易促進権限があるがゆえに連邦議会が自分のパートナーであると述べ、そしてそれら貿易相手国に、アメリカ政府は真剣であり、形ばかりのポーズを取ったり気弱なオファーをするのは止める時が来たと明示することができました。しかしオバマ大統領は、残念ながらまだそうすることができていません。それは当然のこととして、オバマ大統領が最善の協定を妥結できないことを意味します。要するに、我々にとっての優先諸事項を反映し、わが国の製造業、サービス業、農業者、労働者の利益を創出するような最善の通商協定に至る唯一の道は、貿易促進権限だということです。

これは何を意味するのでしょうか?TPPのような主要な通商諸協定を妥結する前に、貿易促進権限が審議されなければならないということです。さもなければ、議会がそのような協定を支持しないであろうし、支持するべきではないという、非常に現実的なリスクを生み出すことになります。それには2つの理由があります。

第1に、どうして我々がアメリカ国民にとって実現しうる最善の協定以外のものを承諾しようとするでしょうか?

第2に、議会は貿易促進権限を欠いたまま通商協定を妥結することは、議会の優先権と( ※貿易促進権限法に書き込まれる)協定交渉の諸目的をないがしろにし、さらに議会の憲法上の役割を無視するものだと見なすだろうからです。

そこで私は問わなければなりません。オバマ大統領はなぜ彼の自由になるあらゆる手段を講じて交渉を妥結するよう試みないのか?
大統領は、なぜ協定交渉に有用な手段を持たないまま妥結しようとするのでしょう?オバマ政権は、最善の協定ではないような協定を本気で結ぼうとしているのでしょうか?私はそうでないことを望みます。そして議会も同様です。我々はアメリカ国民にとって最善のものを求めます。アメリカ国民はまさにそれにふさわしい国民です。

以下のことをはっきりさせておきたいと思います。もしオバマ政権が私の TPPへの支持を望むなら、政権は TPP妥結前に議会で貿易促進権限法を成立させることを確実にすべきです。もし私に貿易促進権限を支持して欲しいなら,その(法成立)前に TPPを妥結させてはなりません。私の見解に疑問を持たれる方には、私は議会下院歳入委員の仲間や、共和党の指導部や、下院議員の過半数が同じ考えであることをはっきり示すことができます。

では貿易促進権限法を成立させるために何をしなければならないか?今年1月に私がハッチ上院議員と当時の上院議員ボーカス氏とともに提案した貿易促進権限法案は史上最強のものです。それは我が国の輸出に対する障壁に対処するための、超党派の合意を反映した交渉諸目的を設定しています。それは政権が、議会およびアメリカ国民と十分かつ効果的に(合意に至る)協議をすることを確保しています。しかしオバマ大統領は未だに沈黙を守っています。我々はオバマ大統領が積極的かつ個人的にも献身的に取り組まない限り、同法案を議会で成立させるつもりはありません。さらに法案それ自体が答えを出していない疑問など、何一つ提示されていません。前下院議長のペロシ氏の意見はごもっともですが、私は人々に法案に何が書いてあるかを是非知って欲しいのです。そうすれば我々はそれを成立させることができます。―その逆ではありません。

しかし成立のためには、共和党、民主党、ホワイトハウス、および財界が取り組まなければなりません。財界の多くの人々が、オバマ政権があまりに受け身なので、(これら通商協定から)熱意を失いつつあることを認めています。しかし大統領が集中力を失っているからといって、財界がそのレーザー光線の焦点を捨て去るべきだということにはなりません。そんなことをしたら、我々はグローバル競争で生き残ることができなくなるだけです。大統領も財界も、議会民主党に対して( ※貿易促進権限法に)しっかり取り組むよう圧力をかけるための鍵となります。

私は上院財政委員会ワイデン委員長(民主党)と協力して、超党派による法案に早急に取りかかることができるよう前進する道を見いだすことを望んでいます。民主党の中には(貿易権限法審議を)中間選挙後にしたいと望む議員もいますが、我々は党の主要な支持者が困惑するかも知れないというだけの理由で、アメリカ経済を留め置くことはできません。我々が後れを取っている間に他の諸国が機会をうまく利用するのを、わきに座って見ているわけにはいかないのです。もし仮に貿易権限法案が議会の「死に体会期」( ※事実上 8月 1日~ 9月7日の夏休み終了後,再開された議会は,中間選挙投票前は何も大きなことは決められない)までは審議されないとしても、中間選挙終了後直ちに動くことができるように今の時点で支持陣営を固めておかなければなりません。

政権が、議会と密接に協力し、情報への完全なアクセスを議会に供与するとともに交渉の対等なパートナーとして扱えば、議会に通商協定を通過させ、実施させることに成功することは出来ます。我々(議員)の役割はパートナーとして、政策と戦略の観点から議会とアメリカ国民が支持するような分析と指針を提供することです。そのためには、何が今起こっているかを我々は知る必要があります。そうでないと、我々は憲法上の役割を果たすことはできません。平たく言えば、政権は通商政策に関して議会から受けた憲法上の代理権限の下で交渉に当たるのであって、その逆はありえないのです。

私は今日、通商促進権限についてだけ話に来たわけではなく、まずはこれを取り上げなければならないということです。そうしなければその他の保留中の通商諸問題に移れないのです。その重要な問題の一つがTPPです。TPPは大きく前進を遂げていますが、“高水準”の内容に合致しない諸国との協定を妥結してはなりません。

とりわけ私は、日本が自国の農産物と自動車市場へのわが国の参入を阻害している厳しい規制の全面的撤廃をかたくなに拒否していることに、深い懸念を抱いています。日本はあまりにも長く閉鎖的でしたが、ついにそれらの市場への本格的な参入を実現する時がきました。我々は、日本が農産物関税を完全に撤廃する約束をしない限り、日本を含めた TPPを前に進めることはできません。関税撤廃からの例外は議会の反対を意味し、非農業分野も含めた協定の広範な領域に渡る強い期待をつぶすことになります。

加えて、わが国の自動車メーカーが直面している日本の複雑で執拗な障壁に対処するための日本との自動車協議における合意が、議会の支持を得るには必須です。その合意は我々にとってのモデルである米韓 FTAにおける自動車条項を基にして構築されるでしょう。また市場参入で問題があるのは日本だけではありません。カナダは―正当性もなく―乳製品と家禽類に対する険しい障壁の維持を主張しています。

さらに問題を広げれば、国有企業、 ISDS(投資家対国家の紛争解決)、越境データフロー、知的財産権保護、および為替操作規制のような決定的に重要な諸問題に対処するための規則に関する諸条項についても、まだ相当になすべき作業が残っています。我々はTPP協定への議会の支持を得るためには、高水準の内容を達成しなければなりません。好ましくない協定は議会を通過しないし、させるべきでもありません。

(以下, TTIPについては省略し、TISAについて続ける)

TISA(WTO加盟有志国・地域により昨年来進められている新サービス貿易協定)はアメリカ国内の雇用創出と経済成長に計り知れない潜在力を持っています。全世界に対するサービス提供におけるわが国の主導的役割を考えれば、TISAはわが国の巨大なサービス産業に、さらにはそれらサービスが支えている製造業や農業に、膨大な機会を約束します。他の諸協定と同様、その水準を満たす意思と能力を持つことを示すことの出来る国々だけが、協定に参加すべきです。中国は未だそれが出来ていません。私は我々の水準が満たされない限り中国の加入を支持することはないでしょう。

これら3つの協定交渉に加えて、他の分野においても、米国の物品・サービスに対してグローバル市場を開放すべく、我々は着実な前進を続けています。

(以下, WTOの ITA情報技術協定・環境商品貿易交渉・貿易円滑化境地・紛争処理での勝訴,アメリカの特恵関税制度・アフリカ成長機会法 AGOAについては省略)

(翻訳:磯田宏・戸田光子/監修:近藤康男)

2014年6月23日月曜日

シドニー市議会とウィロビー市議会、TPPに批判的な決議を可決

 この春以降豪州での大衆的なTPP反対の運動が活発になっています。3月には各地で大規模な街頭行動が取り組まれ、私たちの「もう止めよう!TPP交渉 3.30大行動」への連帯のメッセ-ジも送られてきました。5月に入り閣僚会合を前に対政府要請、賛同署名提出などが大規模に取り組まれました。

 以下の翻訳は、AFTINET豪州公正な貿易と投資のためのネットワ-クが現在取り組んでいる地方議会での決議です。普遍的な要求として「情報公開要求」「ISDS反対」を掲げると共に、地域に焦点を宛てて、地域政策に影響を与える条項を協定に含まないよう貿易担当大臣に確約を迫っている点です。

 日本での取り組みの参考にしてよいのではないでしょうか?(翻訳:西本 裕美/監修:廣内かおり)


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シドニー市議会とウィロビー市議会、TPPに批判的な決議を可決2014年6月7日(土)

オーストラリアのNGO、AFTINETでは、オーストラリア国内の数百におよぶ全地方議会にTPPに関する書簡を送付したが、現在、可能なかぎり議員達への追跡調査をおこなっている。

以下に、シドニー地域でもっとも重要な2つの市議会、シドニー市議会とウィロビー市議会で可決された決議を示す。

AFTINETメンバーは、他の自治体の議員からも同様の決議に向けて努力中であると聞いているが、まだ結果が出たという報告はない。

この市議会で決議されたことは、

a. 以下に留意する。
i. オーストラリアは現在、米国及び環太平洋10か国とのTPP交渉の最終段階にある。
ii. これらの交渉は内密に行われ、国民やオーストラリア議会は、この協定が署名されるまで交渉の内容を知らないことになる。
iii. TPP最終合意は、地方自治体に影響を与え得るが、実感するのは署名後のことになるだろう。

b. 貿易担当相(※)に対し、内閣による合意に先立ち、国民の意見聴取と議会による審議のために、合意文書の草稿を公開するよう求める。
(※訳注:オーストラリアの現在の体制では、「貿易・投資大臣(Minister for Trade and Investment)」 http://www.australia.or.jp/en/news/cabinet.php)

c. 貿易担当相に対し、以下の条項がこの合意に含まれないことを確実にするよう要求する。
i. 外国人投資家に、市・州・国レベルの政策・法律・規制をめぐる損害賠償請求のための政府や地方議会を相手取った告訴の権限を与える条項
(※訳注:上記のiiはiの誤記と思われる。)
ii.著作権料の対象となる期間の延長、及び/又は、インターネットからの一時的なダウンロード行為に対する制約や罰則を強化する条項
iii.地域の雇用を促進し、地域経済・産業の発展を支援し、適切な雇用の実践と取組を奨励する地方自治体の政策を制約する条項
iv.環境への適切な実践と取組を奨励する地方自治体の政策を制約する条項
v.地方自治体による公共サービスの提供とその規定を制約すること、又は公共サービスの営利化を要求する条項
vi.地域の供給・納入業者を優先する地方自治体の調達方針を妨げる条項
(翻訳:西本 裕美/監修:廣内かおり)

2014年6月22日日曜日

岐路に立つ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP) 元通商代表 クレイトン・ヤイター


  米国の政治家の間に配信されているCONGRESS BLOGに寄稿された元通商代表クレイトン・ヤイタ-氏の、TPPの行方に対する見立てを翻訳チ-ムの小幡さんが訳して下さいました。現状、更には通商交渉というものを大きな枠組みでかつ現実的に捉えようとする元通商代表らしい見方のように思われます。彼の見立てのようにTPP交渉の現実が進むのかは誰も断定は出来ませんが、このところ流布される多くの情報が、各国とも着地点を見出すことを意識し始めていること、しかし最大の不確定要素は米国内政治であり、TPPが着地するには未だ時間が掛る可能性を否定できないこと、を示唆しているように思います。(翻訳:小幡 詩子/監修:廣内 かおり) 

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岐路に立つ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)
元通商代表 クレイトン・ヤイター(2014年6月6日)

TPP交渉が締結に近づくにつれ、疲労といら立ちがつのり始めている。別に驚くことではない。TPPはこれまでにない野心的な貿易交渉の1つなのだ。うまくいけば、世界の貿易と経済成長を著しく増大させることになる。

オバマ大統領が数週間前に日本を訪問したときの優先議題はTPPだった。2ヵ国の首脳が貿易交渉で意見をぶつけ合うというだけでもいささか怖く、当然、他の10ヵ国の首脳は戦々恐々となった。日本とアメリカという2大国家の合意による恩恵が自分たちにまで及ぶとは限らないのだ。しかし通常、貿易交渉は通商大臣らの管轄であり、国家の首脳たちの関与は限られている。結果として、マイケル・フロマン米通商代表が追及されることになった。日本で一体何があったのか、つまり「フロマン代表がやると有言した通り、進展に近づいたのか」と。

他の10ヵ国の通商大臣たちも、米国の手の内を知りたがっている。特に、米国が日本に対し、時間をかけてもあらゆる関税をゼロにするよう要求し続けるのか、米国が軟化したという日本の報道は本当なのか、という点についてだ。米国の主要な利害関係グループも、とりわけ農産物輸出業者は、同様の質問をしている。

不確実な点がある場合は、最悪のシナリオを想定するのが常だ。しかしその結果、他の参加国は、日米間の自動車及び農産物に関する「ミニ交渉」の結果を待ちつつ、自分たちの切り札を握ったまま、という手詰まり状態になる。同時に利害関係者も焦りや不満をつのらせる。例えば、米国の複数の農業団体は、日本が農産物の段階的関税撤廃に難色を示すのであればTPPから脱退させるのみだ、と主張している。また、攻めと守りの両方で思惑があるカナダは、攻めの戦略(牛肉、酪農製品、小麦、ナタネ)を保留のまま、守りの分野(特に家禽類の肉や酪農製品)では、日本を盾に取っている。

誰もが神経を尖らせているいまこそ、TPPについて何が既に達成され、交渉は(混乱状態は除いて)どこまで来ているのか、進展する可能性のある分野とそのペースはどのようなものか、大局的見地に立って概観する時期だろう。

TPPは「21世紀型自由貿易協定」(より正確には、特恵貿易協定)として策定されたものだが、そうした描写に値するものだ。TPPで取り扱う分野は、かつて行われたいかなる主要な貿易交渉をも凌駕しており、既に環境規制、労働者の権利、知的財産、国有企業、貿易円滑化などの分野でかなり進展している。交渉担当官たちは、「全てが合意されるまで何も合意されない」というルールの下で任務を遂行しており、これまでの成果を口にすることはできない。しかし、それぞれの分野は大きく進展している。

典型的な貿易交渉の議題(関税及び非関税障壁)において、参加国はまず低くぶら下がっている(もぎ取りやすい)果実を摘み取る。しかし、そうした戦略をとると、ほとんど進展がなかった分野も進展があるように見えるというリスクが伴う。その結果、TPPでは交渉担当官たちが、2013年内までの交渉妥結の可能性を示唆することに疑問を持たなかったようだが、これは非現実的だった。結局、この暫定期限を守れないことに対する不満がつのり、米国は非難の的になっている。

幸いにも、我々は再び軌道に乗った。オバマ・安倍会談からのメッセージによると、TPPは、最難関に立ち向かう心構えができている。「大詰め」が近づいており、少なくとも日米両国には、もっとも難易度の高い課題についても、見込みのある「着陸地点」が見えてきた。これは励みになる。今こそ、他の8か国もそれぞれ日米両国との交渉を加速させる必要がある。

2014年内の締結はありそうにない。まだやるべきことは山ほどあるのだから。最も困難な問題を進展させるには、時間がかかる。交渉担当官たちは、もし可能なら今年後半に、さもなければ来年早々にも、交渉を終結させられるよう、今まで以上に懸命に働く必要がある。他の参加国もそれぞれの政治日程があるが、米国の我々にとっては、大統領選挙の年(注:2016年)に、賛否の分かれる貿易問題に取り組むことは望ましい戦略ではない。したがって、この歴史的協定の決着は早ければ早いほど良い。

TPPはあのドーハ・ラウンドではない。何しろドーハ・ラウンドは10年以上の交渉を経てひどく落胆する結果になった。TPPは遙かに推進力があり、参加全10ヵ国にとって上首尾の結果をもたらすのに十二分の勢いがある。一方、米国は2つの障害に留意しておかなければならない。ひとつは貿易促進権限、即ち「ファスト・トラック」権限の必要性だ。米国の交渉チームの交渉力はずば抜けているが、米国ほど権限を持たない交渉担当官もいない。連邦議会はこの状況を、今年が無理なら来年早々にも是正する必要がある。

2つ目の懸案事項は、米国もしくは相手国がTPP交渉を人質に取り、非現実的な要求をするかもしれないということだ。TPPの下で欲しいものを全て手に入れられるわけではなく、それは他の国も同様である。我々は日本側に、あらゆる関税を徐々にゼロにするよう圧力をかけ続けるべきではあるが、そのようなことは起こりそうにもない。(我々自身も実際のところ、自分たちの関税全てを徐々にゼロにするなど気が進まない。)関税ゼロの可能性がない中で、気に入らないからさっさと止めるという議論も、日本を最終合意から外せと要求する議論も、全くばかげている。自ら損失を招くなど、何の特にもならないのだ。最近、遙かに良い取り組み方法がニュージーランドの通商大臣、ティム・グローサー氏によって提案された。グローサー氏は、交渉担当官たちは段階的関税撤廃に相当する貿易自由化の結果を出すべきだと主張した。つまり、関税がゼロにはならない生産物に対して、関税割当制の自由化を利用することを意味している。フロマン特命大使(USTR代表)も最近、最終的包括案では、有意義でより良い、今後も続く、実際的に価値のある市場アクセスを、早い時期に達成すべきであると提案し、本質的に同じ結論に達した。私が通商代表だったころも、レーガン大統領が、3/4のパンでも全く無いよりは常にましだ、と言及し同じことを主張していた。

向こう数か月間に、少しばかりの実利主義と的確な判断があれば、TPPも現実と成り得る。そうすれば、我々米国人もTPP協定の主な受益者の仲間に入ることになろう。

クレイトン・ヤイター氏はホーガン・ロヴェルズ法律事務所の上級顧問で、国際貿易と投資、及び食料と農業問題に携わっている。1985年~1988年までレーガン大統領政権下で米通商代表を務め、89年~93年までジョージ・ブッシュ大統領政権下で米国農務長官を務めた。(翻訳:小幡 詩子/監修:廣内 かおり)